ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
玉石混交の初日と違い、玉が揃ったベスト16は一度に行われる試合数が絞られ、代わりにイベントらしく選手紹介などの時間が設けられた。
動画配信サービスというビジネスが絡む時代らしい大会運営だろうか。
聖鳳学園の相手は九州の我梅学院。全国大会一回戦で宮里学院を完封した全国大会常連校。自他ともに認める強豪校だ。
対戦ステージは宇宙。無数の隕石が漂う岩礁宙域。
エリがスミオとフミナへ問う。
「アジアカップ予選でガンタンクの人が負けたステージですね。ステージいっぱい障害物だらけです。どうします?」
このステージ環境だと、電子戦支援機のデルタプラスは地上戦のように高高度から一方的に電子戦を仕掛ける、ということが難しい。
「エリはホシノさんとペアを組んでくれ。ホシノさんはこれまで通り狙撃だ。ぼくが猟犬役を務めて射線上へ誘い込む。接近された場合は地形を利用して足を止めるんだ」
スミオはフミナとエリへ言いながら、ジェガンの装備を変えていく。
ジェガンの武装を銃の両手持ちをやめ、右手に連射が可能なショットガン。左腕にMkVに用いていたパイルバンカー。ジェガンの関節強度がパイルバンカーの反動に耐えられることは確認済みだ。両肩のミサイルはそのまま。
「接近戦主体に?」
「うん。我梅学院は三人ともザクのフルカスタム機で、中近距離戦闘向けの装備をしていた。障害物の多いステージであることを考えると、向こうの得意距離で戦うことになりそうだからね」
スミオはフミナにも説明するようにエリへ答え、赤黒のAC風ジェガンの換装を終える。
凛々しい目つきを鋭くして、呟いた。
「せいぜい腕前のほどを見せてもらおう」
スミオが珍しく敵意を込めた物言いをしたことに、フミナが目を瞬かせた。
「……あの人達がスドウさん達をバカにしたから、怒ってます?」
ふむ、とスミオは顎先を撫でてからフミナへ語り掛ける。
「全国行きを懸けた地区予選決勝。スドウさんはぼくがエリとペアを組んだスーパーガンダムを一人で押さえ込んだ。ステージの地理的要素もあったけれど、あれをスドウさんが成し遂げられるはずが”ない”んだ」
「それは、どういう……」
戸惑うフミナへ、スミオはどこか熱を込めて続ける。
「ファイターとしての実力はぼくが上だ。ビルダーとしての実力はエリが上だ。スドウさんがぼく達を抑え込めるはずがない。けれど、スドウさんは成し遂げた。仲間がホシノさんを倒し、ぼくらを3機掛かりで叩く状況を作り上げた。それどころか延長戦でぼくを倒してみせた」
言われてみれば、とフミナは息を呑む。スミオとエリの実力は間近で見てきたフミナが一番よく分かる。エリが”本気”で作り上げた機体を”本気”で操ったスミオに対し、スドウ・シュンスケは実力と性能差を覆して勝ったのだ。
「そんなスドウさんを雑魚呼ばわりする連中だ。どれほどの腕前なのか、見せて貰おうじゃないか」
冷厳に宣うスミオに、フミナは思う。
やっぱり怒ってますよね?
〇
スミオ達が我梅学園と試合を始める一方、隣のユニットでは有志チーム『コーテックス』がスドウを率いる宮里学院と試合に臨んでいた。
「まーた全国大会出場校かぃ」
たわわな胸元を強調するギャルファッションのアキホが鼻を鳴らし。
「全国出場ゆぅても一回戦負けやん。御気の毒ぅ」
地雷系ゴスロリノッポのイツキがやっぱり煽り。
「ぁあっ!? なんですってっ!?」
宮里学院の紅一点にして負けん気の強いサカシタ・ヨミが噛みつけば。
「ひょえっ!」
イツキは即座にアキホの背に隠れ、その上背を折りたたむ。
「煽り入れるくせすーぐビビる。難儀な性格しよってからに」
再び鼻を鳴らすアキホの隣で、ホノカがヨミ達へ平身低頭詫びる。
「すんません、ほんとすんません!」
「たしかに俺達は全国大会で一回戦負けした。それは事実だ。だが……」
宮里学院のリーダー、スドウはケースから紫色のシナンジュを取り出して三人娘を真っ直ぐ見据える。
「俺達が弱いかどうかは、君達自身で体験してみれば良い」
「……ニィちゃん、おもろいこと言うやんけ」
アキホはラメ入りグロスを塗った唇の端を大きく吊り上げた。イツキもアキホの背から出て、黒く塗った唇の両端を大きく曲げる。ホノカも2人同様に獰猛な笑みを湛えた。
「がっかりさせんなよ、東京モン。うちらは強いでぇ!!」
「そっくりそのまま返してやるわ、関西人! ぶっ飛ばしてやる!」
ヨミが吼え、ヤス・メグタも愛機をGPベースにセット。スドウは仲間2人へ告げた。
「征くぞ、お前達! 出撃だ!!」
「「おう!!」」
〇
ベスト16の戦いは最初に4組が戦い、その次に残りの4組が戦う。
後半に回された私立ガンプラ学園の面々は、それぞれ注目しているチームの戦いに視線を注ぐ。
「上手い」キジマ兄はスミオが駆るジェガンの動きを見て呟き。
「上手い」キジマ妹は重MSを操る三人娘の連携を見て呟く。
仲良し兄妹だな、とスガはとぼけたことを思いつつ、まずは聖鳳学園と我梅学院の戦いへ目を向けた。
赤黒のジェガンは隕石が高密度かつ乱数的に漂う岩礁宙域内を、さながら蛇のようにするするとすり抜け、滑らかに飛び回る。厄介な隕石を遮蔽物に、盾に、囮に使い、我梅学院の白い高機動型ザク、白兵格闘戦特化の緑色の高機動型ザク、サイコミュ仕様の黒い高機動型ザクを翻弄している。銃撃をかわし、白兵攻撃を避け、有線サイコミュアームとファンネルのビームをよけ、返礼の散弾を浴びせる。
我梅学院のザク達がジェガンに意識を注ぎ過ぎて脇が甘くなれば、レールガンの狙撃が飛んでくる。障害物だらけで射線が限られるため命中精度は高くないが、高威力の一撃は決して油断できず、外れても隕石に着弾した場合、飛礫が散弾となって襲ってくる。
「……ジェガンの動きが良い点を差し引いても我梅学院の連中、動きにキレがねェ。連中はザコだがここまでじゃあないはずだ」
アドウが鋭い目つきで戦況を見つめ、黄色いF90の背後に控える飛行形態のデルタプラスへ目線を定めた。
「ECMか。我梅の連中の通信とセンサー系へ妨害を仕掛けてるわけだ。姑息な真似しやがるぜ」
「姑息ではなく、我梅の怠慢だ。大会初日で電子戦が得意なチームがいると分かったのだから、昨夜のうちに対策を用意しておけば何も問題なかった」
ウィルフリッドは我梅学院に冷厳な評価を下しつつ、赤黒ジェガンを注視し続ける。
「……ハンター・キラー戦術、いや猟犬役だな」
「エースが猟犬役か」アドウが薄笑いを引き締め「となると、我梅の連中が採る手は」
「エースで猟犬役のジェガンを抑え、他の二人で狩人と電子戦支援機を潰す」
横からスガ・アキラが口を挟んだ。スガの言葉通り、我梅学園はエースの操る白いザクが単独で赤黒ジェガンへ挑み、残る2機のザクが後方のF90とデルタプラスの排除に向かう。
「ま、聖鳳学園の方は織り込み済みだろうけどな」
飛行形態を解かないデルタプラスと黄色いF90が、2機のザクの接近に合わせて装備していたミサイルを全弾発射。
デルタプラスのミサイルの群れが宙を漂う隕石群へ飛び込み、爆発。小さな隕石は木っ端微塵に砕け、中大の隕石は表面から破片を飛散させながら爆発エネルギーに押されて動き、ビリヤードの弾のように連鎖して激突と反跳、欠片の飛散を繰り返す。宙域を満たすおびただしいほどの隕石の欠片と小片による粉塵。
そこにF90のフラッシュミサイルが大閃光をばらまく。
近接戦闘仕様の緑ザクが予期せぬ隕石の動きと強烈な目潰しに動きを鈍らせ、死角から押し流されてきた大型の隕石に撥ねられる。
『うぎゃっ!?』『!? おい、大丈―――』
仲間の事故にサイコミュ仕様の黒ザクが反射的に足を止めたところを、レールガンの狙撃で撃ち抜かれた。もちろん、大型隕石に撥ねられて損壊した緑ザクもまた、仲間の運命に続く。
「あーぁ……言わんこっちゃない」
スガが鼻息をつく。我梅学院のリーダーである白いザクも時間の問題だろう。スガは目線を『コーテックス』のバトルへ向け、シアに問う。
「戦況はどう?」
「宮里学院がピンチよ」
重MS化グスタフ・カールのチームが初代ガンダムの舞台―――ガルマ・ザビが戦死した北米の街を駆けていく。
デコ盛り機体、中二病機体、地味機体の三機は互いに死角を補い、構えている。多少被弾していたが、機体の動きは微塵も損なわれていなかった。
対する宮里学院は劣勢に追いやられている。
最年少ヤス・メグタが駆るパーフェクト・ジオングは既に胴体を破壊され、ジオングヘッドとなっていた。
紅一点サカシタ・ヨミの操るVガンダムとインパルスガンダムのミキシング機体も隻腕状態。なお、残った左腕でジオングヘッドを抱えている。
そんなチームメイトを指揮しながら、スドウ・シュンスケが気を吐いている。全国大会の焼き直しのような光景。
しかし、かつての戦いとは違う。
スドウも仲間達もまったく諦めていない。
『うちらにここまで食らいつくたぁやるやんけ!!』
コテコテにデコられた機体のアキホが野武士のように笑う。
『気に入らへん』隣のイツキが毒づく『腕も機体もそこそこのくせにぃ~』
『イツキちゃん、失礼なこと言うたらあかん! ほんますんません!』
悪態を吐くイツキにホノカがすかさず嗜め、スドウに詫びる。
スドウの操る紫色のシナンジュが右手のライフルとシールドのロケットバズーカを構えた。
『勝負はここからだ』
『カッカッカッ! その意気や良しっ!! ホノカ、イツキ、征くでっ!』
アキホのグスタフ・カールを先頭にホノカとイツキが続く。3機は不等辺三角形を描くように位置取りながら、スドウ達へ襲い掛かる。
『俺が彼女達の頭を抑える! サカシタ! ヤスを連れて廃墟の中へ潜れっ!』
『了解っ!』サカシタのVガンダムがジオングヘッドを抱えて、廃墟群へ後退していく。
アキホの機体が両手で抱えるビームガトリングガンで弾幕を張り、続くホノカが右肩のグレネードキャノンをぶっ放し、最後尾のイツキがスドウの反応とサカシタ達の伏撃に合わせるべく、スマートガンを構えて備える。
スドウは引き撃ちを選択。左腕の盾で弾幕とグレネードの熱圧衝撃波を防ぎつつ、右手のライフルでまずアキホを狙う。
紫シナンジュの反撃に対し、ギャル風グスタフ・カールが速度を落とし、地味グスタフ・カールが前に出て左肩の盾を展開。ホノカがシナンジュの攻撃を受け止めている間に、中二病グスタフ・カールがスマートガンの強烈な一撃を発射。
シナンジュが咄嗟に右旋回で回避。攻撃の手は止めない。が、その攻撃は突出するホノカに防がれ、イツキの反撃が飛来。再び回避を強いられる。その間、アキホはサカシタ達の横入りに備えて側面援護に徹していた。
緊密な連携。素早い反応。よどみない動き。これだけでも三人娘がどれほど練習を重ねてきたのか分かる。それぞれが自分の役割を完全に理解し、仲間に全幅の信頼を寄せて自分のやるべき務めを果たしている。
「見事なもんだ」スガは手放しで称賛した。「純粋に連携の練度だけ見たら、ウチよりもずっと上だな」
「ウチは個人主義ですもんね」シアが微苦笑をこぼす。
スドウがブースターを強く吹かした。νガンダム系統の強力な推進力が機体をロケットのように廃墟都市の空へ押し上げていく。
三機の個性的な重MS化グスタフ・カール達は追従して空に上がらず、それぞれの火器を上方へ向け、発砲。空に上がらず連携を保ったまま、機動する。
「空中戦を避けた?」
「あの図体と重武装だ。どれだけ強力なジェネレーターを積んでいても重力下の上昇性能や飛行性能は鈍い。空中戦は不得手だろうさ。あの紫のシナンジュはそこを見抜いたんだ」
シアの疑問に答え、スガは紫のシナンジュが三機から対空射撃を受けながらも対地攻撃を行い、仲間に指示出しし、側面から奇襲させる様を見て、賛嘆をこぼした。
「数的不利に陥っても戦意に衰えも無ければ、動きに焦りもない。しかもあれだけ苦境に身を置きながら味方を指揮してる。良い選手だな」
「そうかな」シアは同意しかねると言いたげに「操縦技術も機体の出来も中の上といったところだと思うけど」
「バトルは操縦技術と機体が全てじゃないさ。格上相手で不利な戦況でも諦めず、仲間を鼓舞し続け、指揮統率を乱さない。大したもんだ」
スガの賛辞にそういうものか、とシアは受け止める。言いたいことは分かるし、納得も出来るけれど、実感として理解したかは怪しいところ。なんせシアもまた個の才能と力を重視するガンプラ学園の生徒だから。
大きな歓声が上がった。
隣の試合に決着がついたらしい。
ダークホースのアリサワ・スミオが我梅学院のエース、白いザクをパイルバンカーでぶち抜き、ブーストキックで蹴り飛ばし、トドメにミサイルの斉射で木っ端微塵に吹き飛ばしていた。
「向こうは終わったか」
よそ見しているスガへ、シアが言った。
「こっちも試合が動きそうよ」
シナンジュの抵抗に頭を抑えられ、横からジオングヘッドと隻腕Vガンダムにチクチク刺されている状況に苛立ちがてっぺんに達したのか、アキホががなる。
『横からちょこちょこウザいっ! ホノカ、なんとかせえ!』
『しゃあないなぁ……イツキちゃん、アキちゃんの御守りをお願い!』
『まかされたぁ~!』
地味グスタフ・カールが離脱し、廃墟群の中から一撃離脱を繰り返すジオング頭と隻腕Vガンダムへ向け、跳躍していく。残ったデコ盛りグスタフ・カールと中二病グスタフ・カールが紫シナンジュと向き直る。
『こちらの手負いは彼女一人で十分という訳か』スドウが苦い声で言えば。
『そらぁそうやろぉ? ぷーくすくすぅ~』イツキが呷るように笑う。
『ニィちゃん、言うとくけどなぁ』アキホもまた不敵に笑い『ホノカはウチのエースやで』
〇
基礎が爆散し、倒壊する高層ビル。大量に降り注ぐ瓦礫の豪雨。街区を満たす粉塵の濃霧。傲然とアイバイザーを光らせながら現れる大型化グスタフ・カール。
その姿は地味な塗装と相まって酷く怪物的だった。
高層ビルを破壊しながら現れた怪物に、サカシタ・ヨミは即応した。愛機の隻腕Vガンダムが抱えていたジオングヘッドを投げ出し、ミキシング装備のソードユニットから斬艦刀を抜刀。
投げ出されたジオングヘッドがVガンダムを支援すべく、粉塵の中を躍る。
悪鬼染みたグスタフ・カールは瓦礫を蹴り砕き、踏み潰しながらVガンダムへ傲然と迫る。
『やぁああああああああああああっ!!』
Vガンダムは背中のブーストを吹いて大型化グスタフカールへ躍りかかり、片腕で握る斬艦刀を叩きつけるように振り下ろす。
大型化グスタフ・カールは左肩のシールドをわずかに動かして切っ先を逸らすや、長く太くゴツい左腕の拳をVガンダムの顔面へ叩き込む。
『きゃあっ!?』
あまりにも強烈な左のカウンターフック。豪快な衝撃音。飛び散る破片。潰れ砕けたVガンダムの顔面からバイザーのガラス片やフレーム片がぱらぱらと零れ落ちていく。
『まず一つ』
グスタフ・カールは顔貌を潰されてヨレたVガンダムの右脇へ、左腕のビームブレードが叩き込み、左肩へ向かって焼き切り裂く。コクピットとジェネレーターをぶった切り、爆散寸前のVガンダムを引っ掴んでゴミ袋を扱うように背後へぶん投げた。
『あっ!?』
側背へ回り込んでいたヤスのジオングヘッドが放ったビームは、Vガンダムに当たって爆発。高熱圧衝撃波を浴び、サッカーボールのように通りを吹き飛び転がされるジオングヘッド。
『わぁああああああっ!?』
行き止まりの建物に激突し、ジオングヘッドはなんとか止まり――――メインディスプレイいっぱいに映るグスタフカールの大きな足底。
『これで二つ』
『ヒィッ』
ヤスが悲鳴を上げた直後、ジオングヘッドが踏み潰された。
宮里学院の二機を仕留め終え、ホノカは通信を入れる。
『アキちゃん、イツキちゃん。裏から回り込むわ』
返事を待たず、ホノカは地味グスタフ・カールのブースターを焚いた。
『……サカシタとヤスはやられたか』
スドウは愛機を高層ビルの屋上に立たせ、IFFの反応が消失したことを確認して大きく息を吐く。味方は全滅。残り時間と機体状況を考慮。機体は小破状態。動きに問題は無いが、粒子残量は三分の一を切った。ビームライフル、ロングバズーカ、どちらも残弾が乏しい。
相手はチーム全員が健在で、目立ったダメージはまるで無し。彼我の実力と機体性能を比較考慮した場合、ここから逆転勝利の可能性は極めて低かろう。
―――だからと言って諦める理由にはならない。
眼下に迫る二機の重モビルスーツ。彼女達の言葉が正しければ、エースは今この場にいない。
―――ここで二機を仕留め、残る一機を迎え撃つ。
スドウは再び大きく深呼吸し、シナンジュを高層ビルの屋上から跳躍させた。
紫のシナンジュが宙を駆け、眼下で対空砲火を放つ二機の派手な重モビルスーツへ急降下襲撃を仕掛ける。打ち上げられる弾幕をヨーイングとロール運動で避けながら、手持ちの全火力を叩きつけた。
地上で生じる爆炎。アスファルトや建物が爆ぜ砕け、瓦礫を飛散させて粉塵を立ち昇らせる。
シナンジュを外したグスタフカールの砲弾や熱光線が背後の高層ビルに直撃し、無数のガラスと外壁片、瓦礫が粉塵と共に路上へ雪崩落ちていく。
隕石のように頭上から迫るシナンジュへ向け、中二病グスタフ・カールが両手で抱え持つスマートガンを最大出力で発射。
シナンジュは左腕の盾を構えながら必死に回避するも、大出力ビームが右ブースターユニットをかすめて破壊。加速が落ち、動きが鈍る。
その間隙を逃さず、デコ盛りグスタフ・カールがビームガトリングを捨て左腕のビームブレードを発振、フルブーストで急上昇して邀撃へ出る。
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
裂帛の気合を叫ぶシナンジュもライフルを捨ててビームサーベルを抜刀。
交錯する二振りの光刃。
切り飛ばされるシナンジュの右下腕。左半身を袈裟に斬られて中破するデコ盛りグスタフ・カール。
『!? マジかィっ!?』
シナンジュは背中と右腕から黒煙を曳きながら、吃驚を上げるデコ盛りグスタフ・カールを振り切り、地上の中二病グフタフ・カールへ急迫。シールドのギミックを稼働させてロケットバズーカをパージし、シールド裏のビームアックスを発振して斬りかかる。
『なめんなぁっ!』中二病グスタフ・カールは長砲身のスマートガンを放り出し、左腕のビームブレードを展開。迎え撃つ。
光刃が粉塵をバチバチと焼き払いながら交錯。
『そんなっ!?』
切り落とされるゴツく長い左腕。イツキの悲鳴が上がる中、シナンジュが返す刃でボディの両断を図る、も。
『させっかぁっ!!』空中のデコ盛りグスタフ・カールが肩装備のグレネードランチャーを発射。シナンジュは至近弾の爆圧衝撃波に吹き飛ばされ、斬撃の軌道がズレて胴ではなく片足を斬り飛ばすに留まった。
『もっと優しゅう助けてやぁっ!』毒づきながら中二病グスタフ・カールは背部メインブースターと各部スラスターを激しく焚いて姿勢を制御。隻腕隻足状態ながら倒れ込むことなくその場から離脱した。
―――仕留めきれなかった……っ!
スドウは思わず歯噛みした。乾坤一擲の突撃は失敗に終わった。大きなダメージは与えられたものの、一機も倒せなかった。しかもこちらは片翼(ブースター)と右腕を失った。残る武装は頭部バルカンとシールドのビームアックスだけ。
それでも―――スドウは口端を上げ、ビームアックスを展開しているシールドを構えた。
『まだだ! まだやれる!』
『いや、終いですわ』
真後ろから、それもすぐ傍から声が届き、スドウは戦慄する。
シナンジュが振り向くより先に地味グスタフ・カールのビームブレードが振るわれ、シナンジュの体躯は袈裟に両断された。
『バトルエンド!』
システムが戦いの終了を告げた。
宮里学院、パンパシフィック・チャンピオンシップ日本予選。ベスト16敗退。
Tips
我梅学院
原作のネームドモブ。原作ではアドウ・サガやガンプラ学園の実力の高さをアピールする噛ませ犬扱いだった。
チームリーダーのモデルはシン・マツナガらしい。
宮里学院。
原作の地区予選編におけるラスボスチーム。
本作では同校のエース、スドウ・シュンスケがやたら高評価で書かれているけれど、操縦技術や制作技術はそんなに高くない。この人の強さは指揮能力やリーダーシップ、精神的なタフネスなどにある。という設定。