ビルドファイターズ・レイヴン 作:コウサカさんちのコーヒー
コロニーの落ちた地。
アイルランドの首都ダブリン。そこに大都市を吹き飛ばし、焼き尽くした人工天体がそびえ立つ。
円筒形の巨大人工物は神話に出てくる巨塔のようであり、落着時の衝撃で半壊した姿は超巨大な墓標のようであり、コロニーの周辺を埋めつくすように剥落した無数の外壁や外殻の破片、破壊された都市建築物が乱立する様は巨大な墓地を思わせる。
ガンダムという壮大な物語において人類が同胞に対して如何に冷酷で、地球という母星に対してどれほど愚かであるかを示す光景。
そんな曇天の下に広がるカリカチュア的舞台を、巨神が進む。
超大型二脚機体ディバステイターガンダムは郊外から廃都市の中心――半壊した
無情なる巨神の左右肩に『へんなの』がしがみつき、胴体を形成する小型球形モビルアーマー『ボール』に設けられた眼球型センサーボールをぐりぐりと動かし、周辺警戒を続けている。
『雲が厚いな……イギリスは一年の半分以上が曇りらしいが』『ここはイギリスじゃないぜ、パブロ。アイルランドだ』『同じようなもんだろ』
『へんなの』を駆るパブロとアルベールは周辺警戒をしつつ、アイルランド人が聞いたら噴飯物のやり取りを交わす。
『アルベール。電波状況を注視しろ。相手には電子戦機がいる』
巨神ディバステイターガンダムを操るダニエルが鋭い声を発した。
『了解』アルベールは素直に承服する。
『ディバステイターのレーダーならマップ全域を捜索可能だぞ』
『こちらのレーダー性能を明かしてやる必要はない。向こうが動いてからで十分だ』
パブロの提案を否定し、ダニエルは代わりに指示を出す。
『お前はセンサーベイをコロニーへ集中して探れ。狙撃手が籠るならあそこだ』
ダニエル・ナカソネは傲慢で鼻持ちならない女好きのボンボンで、チームメイトのパブロとアルベールを手下扱いする嫌な奴だ。しかし、ガンプラバトル・ファイターとしての実力と戦術眼は確かで、パブロとアルベールの『へんなの』もダニエルの伝手を通じて設計図と改造パーツを得ていた。
ゆえに、不承不承ながらバトルにおいては、パブロとアルベールはダニエルをリーダーと認め、その指揮と判断に従っている。
巨神がコロニーの落着衝撃で大きく歪み波打つ道路を踏み割りながら進んでいくと、
『! レーダー波感知!』
右肩にしがみつくアルベールのアイボールセンサーがぎょろぎょろと蠢く。
『発信源は……高度22000。マッハ1・5で旋回機動中』
レーダー波の発信源は成層圏下部。当然ながら超巨大二脚兵器ディバステイターガンダムに高度20キロ以上まで飛び上がる能力などなく、直掩機の『へんなの』も飛行能力を備えていない。まぁ、彼らの場合は飛翔能力など無用だ。飛べなくとも十分な対空火力がある。
『目障りだ。落とすぞ』
ダニエルがビーム砲を搭載する両腕を上げかけた矢先、彼らの操縦ブース内に警告音が走り、ディスプレイ上に真っ赤な警告表示が浮かぶ。
『上空からレーダー照射!』『くそ、ロックオンが速いなっ! ダニエル、ECM展開っ!』『既にやっている。それでもロックオンを外せない。やるな』
慌てる2人に対し、ダニエルは薄く笑う。
ディバステイターガンダムはその巨躯を活かし、非常に高出力な索敵系と電子戦装備を搭載している。並みの電子戦妨害など出力だけで返り討ちに出来てしまうし、なんなら逆に相手へ電子戦妨害を仕掛けられる。
にもかかわらず、上空を飛ぶ電子戦機は巨神の暴圧的な電波に負けることなく、レーダー照準を保持していた。
『撃ってきたっ!』
アルベールの悲鳴と共にロックオン警報と警告表示が激しくなった。
センサーとレーダーが捉えた動体物はモビルスーツよりはるかに小さい。速度は音速以下。ミサイルよりはるかに遅い。おそらく自由落下中の爆弾。常識で考えれば、自動識別誘導弾頭かAI搭載の自律誘導弾頭。
問題は爆弾の形式。もしも
『迎撃する!』
アルベールが『へんなの』の胴体に担いだビームガトリングガンの多砲身を上空に向け、曇天の穴から高速落下してくる小型物体を捕捉するや否や、極短照射ビームの防空弾幕を展開する。雨霰と打ち上げられる大量の熱光弾。
しかし、大量の熱光弾は爆弾を打ち砕けない。アルベールのディプレイに映る火器管制表示がブレ、迫る爆弾を正確に捕捉できなかった。
『なんで―――
『跳躍回避する』ダニエルは背部と脚部のスラスターベイを稼動。周辺を焼き払うほどの排出炎を放ちながら『パブロ、周辺警戒を怠るな。仕掛けてくるならこのタイミングだ』
『
パブロが応答した直後に巨神が跳躍飛翔する。暴虐的排気炎に炙られた廃墟や可燃性遺物がたちまち延焼を起こし、廃墟内に火災が生じる。
馬鹿馬鹿しいほどの大質量が、背の高い廃ビルを蹴り崩しながら数ブロックほど跳躍。着地の強烈な振動に廃墟都市が震え、そびえ立つコロニーからバラバラと幾つかの外壁や外殻の破片が剥落し、倒壊しかかっていた廃ビルや廃墟がガラガラと崩れていく。
『爆弾の誘導が止まった。着弾コース外から出たぞ!』
アルベールが喜色を滲ませて叫んだ、直後。
爆弾の着弾地点に巨大な爆発が発生した。
小型戦術核と誤認するほどの高熱圧衝撃波が街区を呑み込み、ダブリンに蓋をする雲が一瞬で吹き飛ばされた。
数千度に達する超高熱と数十バールに届く圧力が街区と隣接する巨神にも届く。装甲表面の塗装が焼かれ、衝撃波と共に襲い掛かる大量の飛散瓦礫が巨躯を殴りつけた。付随発生した電磁気の嵐にセンサーベイや電子機材が悲鳴を上げる。
巻き上げられた莫大な粉塵と瓦礫、膨大な燃焼煙がどす黒いきのこ雲を生み出し、ダブリンの空を覆っていく。
『被害を報告しろ!』ダニエルが吠え、
『システムの再起動が要るが、それだけだ。機体と装備に実被害なし!』
『こっちも被害はない。だが、索敵系が麻痺してる!』
パブロとアルベールが報告したことはダニエルの巨神も同じだった。
電磁気の嵐によって軽微なシステムエラーが発生。物理的な粉塵で光学系を塞がれ、センサー系は再起動中。レーダー系は爆発で生じた電磁気の乱れとコロニーの残骸金属片に阻害されマトモに利かない。
ダニエルは走査線が歪み曲がるメインディスプレイから周辺状況を窺い、
『サーモバリックだと……小賢しい真似を』
悪態に被せるように巨神の胸部装甲板を殴りつける轟音。超大質量の巨体がわずかに揺らぐ。
分厚い装甲は抜かれなかった。だが、その肉を深々と抉られている。
遅れて届く砲声を聞きつつ、ダニエルは鋭く尖った声で仲間を質す。
『パウロ、観測できたかっ!?』
『ああ! ぎりぎり見えた! やはりコロニーだっ! 射点位置をそちらに送る!』
『へんなの』が観測した狙撃手の位置情報がダニエルのホログラムコンソロールへ届く。
ダニエルは即座にホログラムコンソロールを操作し、巨神の両腕を持ち上げて十指の先をそびえるコロニーへ向けて、発射。
十条の大出力熱光線が粉塵を焼き払いながら廃墟の中を駆け抜け、コロニーの外壁を焼き、外殻を貫く。コロニー内に達した十本のビーム光はそのまま、廃コロニー内の廃墟を焼き払い、爆散させる。爆発煙と粉塵が無数に存在するコロニーの穴からもうもうと噴出していく。まるで大きな炉か竈のようだ。
その黒煙の狭間でチカッと小さな光が生じ、極超音速の電磁飛翔体が飛来。巨神の体躯に着弾して凄まじい轟音を廃市街に響かせる。後れて届く砲声。
『しぶとい鼠だ』
ダニエルは冷笑し、巨神を操る。
『ハイメガ粒子砲を撃つ! 備えろ!!』
ディバステイターガンダムが両脚をわずかに開いて腰を落とす。胸部に収まるハイメガ粒子砲が展開。高周波音を発しながらエネルギーが充填され、
ずどん!
光の暴流が奔る。
射線上に存在する全てが焼き払われ、焼き尽くされ、融解し、吹き飛び、消滅し。
廃都市の真ん中にそびえ立つ巨塔に熱光の暴流が激突し、大爆発した。
打ち砕かれたコロニーの外壁や外殻が大きく爆ぜ飛び、コロニー内にも激甚な破壊をもたらす。
破壊による物理的支持の喪失と甚大な衝撃振動をうけ、自重を支えきれなくなったコロニーの一角が山崩れのように剥離滑落。轟音と共に落着の衝撃波が廃都市内を駆け抜け、大規模な粉塵が立ち昇る。
大都市の過半を覆うほど大量の煙と塵。巻き上げられた莫大な建材の瓦礫と金属物。派手で大規模な攻撃の代償にレーダーやセンサー群が塞がれた。
『目標、ロストした』パブロがどこかぼやくように言い、
『こっちもだ。上空の敵機を見失っちまった』アルベールが唸る。
『能書きはいらない。さっさと敵を』
ダニエルの言葉を遮るように、再びの着弾衝撃と轟音。遅れて届く砲声。
『本当にしぶといな』
苛立たしげに舌打ちし、ダニエルが再びコロニーへ向けて両腕のビーム砲を構えるも、今度はブース内にロックオン警報が鳴り響く。
『どうなってるっ! レーダー照射は受けてないぞ!?』
パブロが怒鳴り、アルベールが怒鳴り返す。
『熱だ! ディバステイターの放熱を捕捉されてる!』
超巨体ゆえに戦闘状態時の放熱量はバカでかい。加えて大推力スラスターベイを使用したし、ビーム砲とハイメガ粒子砲を撃った後だ。どうしたって巨体が熱々になっている。周辺の火災熱と立ち込める戦塵と煤煙でも隠しきれない。
『また空爆が来るぞっ! アルベール、対空警戒だっ!』パブロが叫び、
『この状況とECMだぞ、何も見えねぇよっ!』アルベールが喚き。
『
ロックオン警報が鳴り響く中、ダニエルが慌てるチームメイト達へ叱声を張った刹那。黒煙を立ち昇らせるコロニーからレールガンの砲撃が放たれた。着弾衝撃と轟音。揺れる巨躯。遅れて届く砲声。
残響が戦場に溶けていく最中、左側面から熱光線が煤煙を引き裂いて飛来し、巨神の大きな左腕を直撃する。
分厚い装甲表面が焼かれ、融解した装甲表面が蒸散破裂。真っ赤に溶けた金属や弾けた高熱粒子が飛散し、周囲の廃墟を焼く。
『側面に敵機ッ!!』
パブロが叫びながら機体に搭載されたビームキャノンを撃ち返す。が、煤煙の奥に浮かんだ赤黒の影は即座に廃墟の中へ姿を消した。パブロは牽制の意味を込めて幾度かビームキャノンを盲撃ちする。散発的な爆炎が廃墟に延焼の灯を生んだ。
ダニエルは小さく息を吐き、ロックオン警報が絶えない中で仲間達へ告げる。
『お前ら、落ち着け。この程度の状況は今までも経験してきただろう。いいか、奴らの攻撃はディバステイターには通じやしないんだ。ビビるな。焦るな。慌てるな』
諭すように言われ、パブロとアルベールは言葉を嚙み殺すように口を噤んだ。ダニエルという人間には思うところはあれど、リーダーとしての意見は正しい。
そして、ロックオン警報が続けど、空爆は来ない。ロックオン状態を継続して精神的圧力を掛けてくる戦術らしい。この日本人達は陰険で性悪だ。
『まず高高度を飛ぶ蠅を叩き落とす。地上の鼠二匹はそれからだ』
ダニエルの見解にアルベールが疑問を呈す。
『でも、どうやって落とす? 相手は高度20000メートル上空に居て、しかもECMでこちらのFCSを阻害してる。命中精度が出ないぞ』
『マニュアル照準で弾幕を張れば良い。ディバステイターのビーム砲で充分届く。高度を下げてくればミサイルで狙う。お前達は鼠の狙撃と奇襲を防げ。良いな?』
『『了解』』
反論を許さないと言いたげなダニエルへ、パブロとアルベールは了承した。どのみち、彼ら二人には高高度に留まり続ける敵の対策はない。それならば、狙撃手と襲撃者を相手取る方が良い。
『反撃開始だ!』
『『おう!!』』
へんなの(パブロ機)はビームキャノンを狙撃手が潜むコロニーへ発射。
へんなの(アルベール機)はビームガトリングを構えて周辺警戒に入り、それからディバステイターは巨大な両腕を高々と掲げ、空に向けて大火力ビーム砲をぶっ放した。
〇
10条の高威力ビームがダブリンを覆う煤煙を貫き、成層圏まで届く。
前進翼に改造されたデルタプラスはひらりひらりと地上から放たれるビームを避けながら、通信を入れた。
「現在、対空攻撃を受けています。敵大型機は私の撃墜を優先するようです」
『私もへんなのから砲撃を受けてます! まだ位置はバレてませんけど、こっちの反撃を誘ってる感じです!』
フミナの声は少々大きい。焦りではなく戦意に逸っているようだ。
『同型機が二機いて紛らわしいな。ビームキャノン搭載型をへんなのA、ビームガトリング装備をへんなのBと仮称する』
対照的にスミオの声はいつも通り冷たいほど落ち着いていた。
『へんなのAはホシノさんの反撃を誘い、位置を把握しようとしてる。攻撃は少し待て』
『ぅ~……我慢ですね』フミナは唇を尖らせつつ『エリ先輩。爆弾の残りはいくつですか?』
エリはデルタプラスを回避運動させながら素早くサブディスプレイの兵装をチェック。
『サーモバリックは残り1発、あとは2000ポンドのスネークアイが4発です。ロックオン中でいつでも投弾可能』
『スネークアイを1発配達してください』フミナは続けて『その後は一旦、コロニーの陰に退避。もしもエリ先輩のECMが失われるとキツいですから。部長は判断に任せます』
『ぼくだけ指示出しが雑じゃないか?』
エリは不服そうなスミオにくすくすと喉を鳴らす。良い状況だ。対空砲火に晒されながら笑う余裕がある。
『了解。爆撃後、コロニー後方へ退避します』
デルタプラスは地上から打ち上げられるビーム砲火を避け、下方インメルマンターンを行い、機首を地上へ向けた。ホログラムディスプレイには街を覆う煤煙と対空砲火しか見えない。が、その無味な戦場情景の中には、索敵系が捕捉し続けている高熱源目標のターゲットボックスがしっかり浮かんでいる。
『スネークアイ、投下』
主翼根のインジェクター・ラックから2000ポンドの大型滑空爆弾が投下された。
弾頭の自律識別装置が認識するロックオン標的へ向け、誘導翼が降下角度を自動修正。真っ逆さまに落ちていく。
爆弾投下後に再び高度を上げ、エリはビーム砲火を避けながら弾着までの残り時間を読み上げる。
『あと10秒…………3。2。1。弾着、今!』
ホログラムディスプレイ上に浮かぶ対地映像―――煤煙と対空砲火しか映っていない映像に1トン弱の炸薬が爆ぜる閃光が走った。
『弾着確認。コロニー後方へ退避します』
爆撃完了を確認し、エリはデルタプラスをひらりと翻させ、そびえ立つコロニーの陰へ飛び去っていく。
〇
『ちきしょう、酷い目に遭った』
操縦ブース内はいまだロックオン警報が鳴りやまず、ディスプレイを煤煙と粉塵が覆い尽くして何も見えない。
パブロが毒づき、半ば以上埋まった体躯を引き出そうともがく。被っていた瓦礫や建材片がガラガラと落ちていくが、単眼胴体と両腕しかない特異な機体は中々抜け出せない。
数秒前。空爆を避けるため、パブロとアルベールは一次的にディバステイターから離れたところ、爆弾はわずかに軌道を変えてパブロに向かって落ちてきた。なんとか直撃こそ避けたものの、パブロは爆撃で倒壊した廃ビルの瓦礫に埋まってしまっていた。
『だめだ、出られないっ!
パブロがアルベールへ助けを求めるも、
『無理だっ! 今、狙われてるっ!!』
アルベールは廃ビルを盾にしながら機体上部に担いだビームガトリングガンを短連射、直後にその場から飛び退く。刹那、煤煙の闇の中からビームが迫り、廃ビルの上層部が爆散した。お返しに背部に積んだミサイルポッドから散弾ミサイルを発射。街区の一角が散弾を浴びて泡立つように粉塵を昇らせる。
しかし、赤黒ジェガンは無傷で現れ、ビームライフルで狙い撃ってくる。ビームが左腕をかすめ、アルベールは悲鳴を上げた。
『ダニエルッ! 助けてくれっ!!』
泣きついてきたアルベールに、巨神が背に担ぐ左右二基の巨大ミサイルポッドが発射口を開き、コンテナボックスを上空に打ち上げる。
宙に放られたコンテナボックスは収めていたマイクロミサイルの群れを発射。小型ミサイルの群れが怒れる蜂群のように赤黒ジェガンを追って煤煙内へ飛び込んでいく。
連続する爆発の炎と閃光。連なり重なる炸裂と破壊の音色。両腕のビーム砲でジェガンを追い立てながら、ダニエルは苛立たしげに言った。
『今だ。そこに埋まってる
『あ、ああ! 待ってろ、パブロ。今出してやるからな!』
アルベールはいそいそと瓦礫に埋まるパブロの許へ向かい、その体躯を掘り出し始める。
『ピカピカの新車がボロクソだぞ、
『お前も似たようなもんだろーが』とパブロも軽口を返す。
両機は既に傷だらけで塗装は焦げたり剥げたりしていて、全身余すところなく煤塗れの塵塗れ。それでも機体そのものに損害はなかった。
『機体の状態は?』
アルベールがパブロの機体を掘り出しながら問う。
『戦闘に問題はない。チェーンガンがダメだ。砲身か機関部が瓦礫に潰されて―――』
パブロが機体状態を報告していた最中。
コロニーから放たれたレールガンの砲弾が廃ビルを貫通し、アルベール機をぶち抜いた。
極超音速弾に機体のど真ん中を貫かれ、激甚な着弾衝撃に破損した単眼がフレームから飛び出し、胴体を支える左右巨腕が基部からもげた。破砕したアルベール機は爆散せず、パブロの傍らに崩れ落ちた。
『え』
親友の唐突な撃破に、パブロは思考が止まる。
『くそったれめ!!』
ダニエルが罵倒を吐きながら、コロニーへ二度目のハイメガ粒子砲を撃ち込む。砲撃の高熱圧衝撃波にアルベール機の残骸が吹き飛ばされ、体勢を立て直す巨神の巨大な足に踏み潰された。
我に返ったパブロは半狂乱になって叫ぶ。
『ふざけやがって、日本人めっ! ぶっ潰してやる!!』
『喚いてないでさっさと機体を起こせっ!』
『お前のせいだ、お前のせいだぞダニエル!! お前が敵を一機も潰せないせいでアルベールがやられたんだっ!』
食ってかかるパブロに、ダニエルは困惑を禁じ得ない。
『何をキレてんだ!? 本人が死んだわけでもない、ただの玩具遊びだぞ!』
『玩具遊びだぁっ!? ふざけんなバカ野』
パブロは最後まで言えない。
なぜならいつの間にか傍に来ていた赤黒ジェガンが、まるで処刑するようにビームライフルを撃ちこんだから。
パブロ機を無言で始末し、赤黒ジェガンは言った。
『後はお前だけだ。デカブツ』
ダニエルのこめかみに青筋を浮かぶ。
Tips
本編で触れない裏設定。
パブロ・リンチ
へんなのAを駆る南米チームの一員。
ガンプラバトルガチ勢。貧困家庭の子で努力してモデラーズクラブの奨学生になった。ガンプラバトルのプロになって成功し、金持ちになりたいと思っている。
裕福な家の子で遊び気分の強いダニエルに対する反感や嫌悪感が根深い。
アルベール・カンポ
へんなのBを駆る南米チームの一員。
ガンプラバトルガチ勢。母子家庭の子。父親は不明。努力してモデラーズクラブの奨学生になった。ガンプラバトルのプロになって成功し、自分と母を捨てた父を見返したいと思っている。
裕福な家の子で遊び気分の強いダニエルに対し、不満を抱いている。
ダニエル・ナカソネ
ディバステイターガンダムを操る南米チームのリーダー。
ガンプラバトルはお遊び。しかし皮肉なことに上述の2人よりもガンプラバトルの才能に恵まれている。
日系移民の成功した富裕層の家の子。甘やかされて育ち、プライドが高くエゴイスト気味。
コスプレ娘。
ダニエルの恋人。
ダイナマイトボディ(死語)のヒスパニック系美人。将来の夢はインフルエンサー。
実はガンダムにまったく興味がなく、コスプレはあくまで注目を集めるための衣装。
ダニエルと付き合っている理由は、お金持ちだから。