※この作品はR-18です。

対魔忍世界の転生者   作:TNKエース

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魔界騎士

俺はぶっ飛ばしたマフィア共を一番下の倉庫——多分人間を荷物扱いするための部屋だ——に押し込み、赤血操術で扉を補強するように内側から固めた。外見は何も変わっていないが、中から出ようとする者には鉄壁となるだろう。

 

「さてと……」

 

スマホを取り出し、アサギ先生の番号を表示させる。通話ボタンを押すと数コール後に女性の声が応答した。

 

「どうしたのかしら修司くん」

 

「標的マフィア幹部三名と薬物を確保しました。しかし……」

 

「問題があったようね?」

 

「はい。敵の船が自動操縦システムを起動させていました。現地点から解除しようと試みましたが—」

 

「時間がないのね」

 

アサギ先生は察しが良い。彼女の声には常に冷静さがある。

 

「そうなんです。解除まで少なくとも三十分以上かかります」

 

風が甲板を吹き抜ける音がマイク越しにも伝わったらしい。アサギ先生の息遣いが一瞬止まった。

 

「そこで提案があります。この船を近隣の一般港へ着岸させたいと思います。そこなら—」

 

「了解したわ。場所と予定時刻を送信して」

 

「ありがとうございます」

 

通話を終えようとした瞬間、アサギ先生の声が追いかけてきた。

 

「あと一つだけ」

 

風の音が激しくなる甲板の上で耳を澄ませる。すると彼女の声が低く響いた。

 

「……無茶はしないでね」

 

「わかっています」

 

短い会話だったが、彼女の心配が伝わってくる。対魔忍の任務は常に危険と隣り合わせだからこそ、同僚たちの安全を気にかけるのが彼女の常だった。

 

「あぁそれと—」

 

突然通話口から流れてきた声のトーンが変わる。先ほどまでの厳格な指導者のものではなく、どこか甘美な響きが混じっていた。

 

「明日の夜、貴方を予約するわ♡」

 

ブツッ。通信が切れた。

 

思わず口角が上がる。明日は久しぶりに彼女からの"特別任務"が待っているらしい。

 

「まったく……そんな言い方するなよな」

 

苦笑しながらスマホをしまい、再び港の方向へ舵を切りながら呟いた。明日は忙しくなりそうだ。

 

自動操縦システムへの介入作業が完了し、船が安定して進み始めたときだった。ゴトン、という鈍い音が階下から響いてきた。

 

「また何か面倒ごとか……」

 

溜息をつきながら階段を降りていくと、船内でも特に重厚な装飾が施された一室から光が漏れている。ドアを開け放つと、そこは間違ういなくボスの私室だった。贅沢な調度品に囲まれた空間の中央—アンティークな椅子に鎖で縛られた少女が座っていた。

 

「まさか真衣以外にも捕まってた奴がいるなんて……」

 

近づいて顔を確認すると、思わず声が漏れた。

 

「お前……リーナじゃないか」

 

艶やかな茶髪を一つに結んだその姿は紛れもなく《魔界騎士》の称号を持つリーナだった。彼女の剣であるサクラブロッサムが壁に立てかけられている。

 

「おい、起きろ!」

 

肩を揺すってみると、リーナはゆっくり目を開けた。虚ろな瞳が焦点を取り戻していく。

 

「ん……ここは……?」

 

「チャイニーズマフィアの船だよ。お前も捕まってたのか」

 

「お前……大丈夫か?」

 

呼びかけても反応が鈍い。立ち上がろうとするリーナの目が明らかにおかしい。瞳孔が開き、呼吸が荒くなっている。

 

「誰かに何か飲まされたか?」

 

一歩後ずさろうとした瞬間、バサッ!

 

「うっ!」

 

信じられないほどの速さで飛びかかられ、床に押し倒された。魔界騎士として鍛え上げられた体は想像以上の力を持ち、腕を振り払おうとしても万力のように固定されている。

 

「す⋯すまない♡もう我慢が出来ないんだ♡」

 

吐息混じりの声が耳元で囁かれ、背筋が凍る。リーナの指が素早く動き、俺の対魔忍スーツが脱がされていく。

 

「おい!やめろって!正気に戻れ!」

 

必死の叫びも届かない。次の瞬間、下半身を剥き出しにされ、リーナの熱い唇が触れた。

 

ジュポッ!ジュプッ!ジュルルッ!!

 

下品な音が部屋に響き渡る。喉奥まで深く飲み込むような口技に、意識が飛びそうになる。

 

「だめだ……こいつ完全に薬物にやられてる……」

 

リーナの頭を掴んで引き離そうとしても、彼女の力の方が圧倒的に強い。それでも歯を食いしばって抵抗を続ける。

 

「辞めろ!正気を戻せ」

 

問いかけに対して返ってきたのは、

 

「ぁん……あなたのソレ……凄く……美味しいのぉ♡」

 

蕩けた瞳で見上げてくる。薬の影響なのか、自分の言葉さえ理解していないようだ。

 

 

「くそっ……こんな時に……!」

 

赤血操術を使おうとした矢先、ぎゅっと握られた感触に思わず「うおっ!」と呻き声をあげてしまう。反射的に身を引こうとするが、魔界騎士の力は予想以上に強い。

 

「これ以上はダメだ!」

 

額と頬に浮かび上がる紅の紋様と共に、体内の魔力が沸騰するように渦巻いた。これしかない。

 

「いいかげんにしろ!」

 

理性が砕け散る前に決断した。頭を両手でしっかりと掴み、強引に奥まで押し込む。普通ならば窒息寸前の行為だが—

 

「おごぉっ♡」

 

苦痛ではなく喜びの声。それどころか目尻に涙を浮かべながらも、口元からは涎を垂らしてなお吸い付いてくる姿に、俺の背筋が震えた。

 

「何が起こってる……」

 

リーナの舌が裏筋を這い上がり、雁首を器用になぞっていく。通常なら絶対にありえないテクニックだ。明らかに薬物によって感覚が増幅され、理性が吹き飛んでいる。

 

「魔の力で無理やり抑え込むか……だが—」

 

魔力解放の紋様がさらに鮮明になりながらも躊躇う。もし強制的に気絶させれば副作用が出る可能性がある。一方で今のままでは……

 

「許せよ……」

 

イラマチオを続けながら、リーナの目を見据える。彼女の瞳の奥底に潜む恐怖と混乱を感じ取った瞬間、決意が固まった。短期決戦しかない。

 

「すぐ楽にしてやる!」

腰を強く打ち付け、一気に放出した—すべてを委ねるように。

 

リーナの喉がゴクリと上下し、口内の白濁を一滴残らず飲み干していく。同時に股間から勢いよく液体が噴き出した。潮を吹きながら全身を痙攣させる彼女の姿に、正直なところ俺自身も混乱していた。

 

「少しは……落ち着いたか?」

 

問いかけに頷くリーナ。だがまだ焦点が合っていない。ふらつく身体を支えながら水を差し出すと、震える手で受け取り一気に飲み干した。

 

「すまない……本当に……」

 

「謝るのは後だ。一体何があった?」

 

リーナは虚ろな表情のまま話し始めた。

「私ともう一人の子供は……新型の媚薬を盛られた……」

 

話によれば彼女はヨミハラでパトロールをしていると。浮遊感に襲われて、気がつくとマフィアの取引現場にいた。そして黄櫨に敗れてしまい禪院真衣と共に捕らえられた。

 

「私は組織のボスの……慰み者に……もう一人は重要取引の品として運ばれるはずだった……」

 

思い出したように体を抱きしめるリーナ。その姿を見て、初めて彼女の腕に注射痕があることに気づいた。

 

「?」

 

「ああ……あの爆弾使い……油断した……」

 

リーナの話は断片的だったが全体像は理解できた。異常な欲情状態も薬物によるものだと確信できた。

 

「具体的にどんな薬を打たれたんだ?」

 

俺の質問にリーナは目を伏せた。顔を赤らめながら小さな声で答える。

 

「私が……打たれたのは……快感増加と……一定時間精液を摂取しないと……強烈な飢餓感が襲ってくるものだ……」

 

最後の言葉を言い終える前に、リーナの手が俺の股間に伸びてきた。

 

「すまない……もう我慢が利かなさそうだ……」

 

震える指が既に萎えていたものを再び刺激し始める。薬の影響なのか、彼女の指先は妙に冷たく感じた。

 

「おい!もうやめろ!」

 

「ごめんなさい……でも体が勝手に……」

 

リーナの呼吸が再び荒くなる。目の奥に狂気が宿り始めている。これは単なる性的欲求ではない。文字通り生存本能に近い飢餓感なのだろう。

 

「このままだと死ぬかもしれないのか?」

 

「わからない……ただ……苦しい……」

 

彼女の瞳から涙が溢れ落ちる。魔界騎士として鍛え上げられた精神力が薬に屈している姿は痛々しい。

 

「クソッタレ……」

 

中途半端に脱がされたズボンを乱暴に蹴り捨てる。床に転がる靴の音が虚しく響いた。

 

「本当はこういうのは趣味じゃないんだがな……ヤるぞ」

 

俺の声には怒りと諦めが混ざっていた。リーナの顔を見ると、そこには奇妙な表情が浮かんでいる。嬉しさと恥辱と罪悪感が入り混じった複雑な顔だ。

 

「……申し訳ない」

 

小さく呟いて彼女は自ら股を開く。その仕草に普段の魔界騎士としての威厳は微塵も残っていない。

 

「こんな事態になって本当にすまない……」

 

言葉とは裏腹に、彼女の身体は既に準備ができていることを示していた。薬物の効果なのか膣口から透明な愛液が太腿を伝って床に染みを作っている。

 

「……仕方ねえな」

 

時間の猶予はない。この密室内での出来事に浸る余裕などなかった。欲望より義務感が勝る。

 

「早く済ませるぞ」

 

宣言とともに腰を押し進めた。抵抗はほとんどなかった。薬物によって十分すぎるほど潤滑された秘裂が俺を受け入れる。

 

「んんっ♡」

リーナの嬌声が部屋に響く。魔界騎士の鎧の下で震える肉体は思いのほか柔らかい。普段は鋼のような意志で抑圧されていたものが薬で開放されているのだ。

 

# 予期せぬ反応

 

優しさと激しさが同居する律動。汗と蜜が交じり合い、部屋に充満する淫靡な香りの中、不意に湧き上がった好奇心が手を伸ばした。

 

「ちょっとだけ……いいか?」

 

尋ねる間もなく豊かな乳房へと指を這わせる。しかしリーナの眉が僅かに寄せられた。

 

「いや……お願い……そこは……」

 

弱々しい拒絶の声。しかしイタズラ心に火がついた。制止を無視して指先に力を込めた瞬間―

 

「だめぇ……やめてって……言ったのに……ぃ♡」

 

悲鳴とも嬌声ともつかぬ声が漏れた刹那、予想外の現象が起きた。

 

ピュッ!

 

薄桃色の乳首から白い液体が勢いよく飛び散る。驚愕で動きが止まる。

 

「なっ……!?」

 

困惑と興奮が入り混じる中、リーナは息を切らせながら弁解した。

 

「これは……体質なんだ……妊娠とかじゃなくて……」

 

言い訳めいた説明の隙に唇を寄せてみる。

 

「ちょっと味見……してもいいか?」

 

緊張した沈黙。次いで観念したように首肯するリーナ。

 

「と……特別……だからな♡」

 

期待混じりの応答に従って啜ると―

 

「……甘い」

 

予想以上に濃厚なミルクの味わい。それは官能的な錯覚を呼んだのか、リーナが再び悶え始める。

 

「も……もっとぉ♡」

 

無意識の求めに陶酔した表情が浮かぶ。しかし正気に戻った瞬間、慌てて自分の手で口を覆った。そんな姿に劣情が高まり、授乳姿勢のまま律動を再開する。

 

ジュプッ……グチュ……!

 

興奮が昂まり理性が溶ける。限界に達した肉棒が無許可で最奥へ射精を開始した。

 

「くっ……すまん……!」

 

ドクンドクンと脈打つ度にリーナの身体が跳ねる。大量の熱を注ぎ込まれた衝撃で、彼女は絶叫と共に絶頂を迎えた。

 

「やぁぁぁぁぁあぁぁっっ♡♡♡!!!!!」

 

弓なりに仰け反った後、糸が切れたように意識を失った。

 

 

 

 

 

汚れた体を清めながら考えた。チャイニーズマフィア共に対する憤懣や憎悪が胃の底で煮え滾る。

 

「魚の餌にしてやるのも悪くねぇかもな……」

 

だが拳を握りしめるだけで踏みとどまった。単なる暴力衝動では意味がない。

 

「リーナ……」

 

安らかな寝顔を見下ろすと胸が締めつけられる。"イングリッド様ぁ……"と寝言を呟いた姿に思わず微笑が零れた。柔らかな栗毛を優しく撫でながら嘆息する。

 

「もし反転術式のアウトプットが使えたら……」

 

 

「できない事を言っても仕方ないな……」

 

呟きと共に踵を返す。足音が硬い床を叩く音だけが船内に響いた。窓の外では東京湾の波が穏やかに揺れている。操縦席に戻り最終調整を終えると、ちょうど公安の特殊艇が接近してきた。

 

 

 

 

 

### 港での引き継ぎ

 

「全員確保済みです」

 

公安の担当者に書類を渡すと、彼らはマフィア幹部と船内薬物を迅速に移送し始めた。最後に残ったのは—

 

「この娘はどうします?」

 

医療スタッフが困ったように指差した先には……

 

「リーナ……」

 

涎を垂らしただらしない寝顔。夢の中でイングリッド様と戯れているのだろう。

 

「五車学園へ搬送してくれ。似たような人が居る」

 

 

 

 

 

 

五車学園の駐車場でリーナの乗ったストレッチャーが滑るように消えていく。公安の車から降り立つ修司の前で、医療チームが慌ただしく診察棟へと走り去った。

 

「……イングリッド様ぁ♡……エヘヘ……」

 

遠ざかる寝言に思わず苦笑が漏れる。あんな姿でも医療班にとっては深刻な患者なのだが。

 

「さて……」

 

報告のために学園長室へ向かう廊下の途中、中庭に見覚えのある姿が目に入った。

 

「七海さん……?」

 

ベンチに深く腰掛けた金髪の男。いつもは鋭い眼光を湛えた眼鏡の奥が今は暗く沈んでいる。膝の上に置かれた拳が小刻みに震えていた。

 

「な……七海さん。一体どうしたんですか?」

 

恐る恐る声を掛けると、ゆっくりと顔を上げた。

 

「公賀くんですか……」

 

声は掠れ、生気が無い。しばらくの沈黙の後、絞り出すように告げられた一言に息を呑んだ。

 

「私は……最低な人間です」

 

俺はコーヒーを二つ買い一つを七海さんに渡す。

 

「一体何が?」

 

何かを忘れている様な?ポグポクポクチーン

 

『私は組織のボスの……慰み者に……もう一人は重要取引の品として運ばれるはずだった……』

 

 

 

修司の脳裏を稲妻のように記憶が貫いた。

 

『チャイニーズマフィアの薬……?』

 

全て繋がった瞬間だった。真衣とリーナの異常な反応—それは単なる媚薬ではなかった。思考回路が駆け巡る。

 

「七海さん。薬です。全てはチャイニーズマフィアの使った薬のせいです!」

 

必死の声は冷たい石壁に吸い込まれていく。七海は俯いたまま首を横に振った。

 

「それは分かっています」重い沈黙が続いた後、「ですが……」

 

彼の声が途切れた。眼鏡の奥に浮かぶ後悔の色があまりにも痛々しい。

 

「守るべき子供に……手を出したなどと」声が震える。「人として最低な行為を私はしてしまった」

 

その言葉に修司は凍りついた。七海の言わんとする残酷な事実に気づいた瞬間だった。

 

「まさか……あの状況で」

 

 

「逆……レイプ?」

 

言葉にするのも忌まわしい響き。

 

「でもそれは薬のせいで……」

 

「違います」

 

七海は拳を握りしめた。爪が掌に食い込む音が聞こえた。

「止められたはずです。なのに私は……」

 

彼の瞳が虚ろに宙を彷徨う。そこには自己嫌悪の嵐が渦巻いていた。

 

「灰原が居たら、私を侮蔑していたでしょう⋯⋯」

 

寧ろ苦笑していそう⋯⋯

 

「もう少しだけ……」

 

立ち上がった七海の背中が驚くほど細く見える。陽光を浴びているはずなのに、周囲に影が濃くまとわりついていた。

 

「一人にしてください……」

 

その声は掠れ、風に乗って消えかけていた。修司が返事をする間もなく、彼は一歩ずつ歩き始める。背筋はわずかに丸まり、かつての鋭さを失った姿に胸が締め付けられた。

これは七海さんの問題だ。俺には何も出来ない⋯⋯

 

「報告をしにきました」

 

重い空気を纏ったまま学園長室に入ると、アサギ先生は書類から目を上げずに聞いてきた。

 

「どうだった?」

 

簡潔な問いに任務の成果と七海の状態を淡々と伝える。話の最後に「かなり精神的に参ってます」と付け加えると、ペンが紙を滑る音が止まった。

 

「この世界ではよくある事よ」

 

アサギ先生の声は氷のように冷たかったが、窓の外に向けられた横顔には微かな翳りが見えた。その一瞬の表情こそが本心なのだろう。

 

「報告ありがとう」アサギ先生が立ち上がる。「今日はもう帰って休みなさい」

 

彼女の言葉には珍しく温かみがあった。だが修司にはそれが逆に辛く感じられた。

 

「お先に失礼します」

 

振り返らずに部屋を出る背中に、かすかなため息が聞こえた気がした。

 

その夜、アサギとの行為は優しかった⋯⋯

 

翌朝、学校に向かうと……

 

校門前にたどり着くと異様な光景が広がっていた。

 

「七三ブタ野郎ぉ〜!!出てこいやぁ〜〜!!」

 

白衣を翻しながら狂乱する桐生佐馬斗。腕から生やした触手を振りかざす姿に呆然とする俺。

 

何やってんだこの馬鹿は?

 

他の生徒たちはすでに避難済みで、校舎の窓から覗く顔が不安げに揺れていた。

 

その時だ。

 

「此処は学園です。部外者は直ちに立ち去ってください」

 

冷徹な声と共に現れた七海さん。だが昨日の憔悴した姿は跡形もなく、背筋は針金のごとく伸びていた。

 

「死ねぇ〜〜!!」

 

桐生の触手が空気を切り裂く刹那──

 

 

「警告はしました……」

 

七海さんは冷静にネクタイを右手に巻き、

 

七海の右腕が銀色の弧を描いた。拳と触手が交差する瞬間……

 

パァァァン!!

 

黒い電光が炸裂し、衝撃波が校門を揺るがした。

 

「黒閃……!?」

 

桐生は衝撃にたたらを踏むが持ち前のタフさで体勢を立て直し、

 

「こんの七三がぁぁ!!」

 

再度触手を繰り出そうとするが──

 

パァン! パァン! パァン! パァン!

 

連続する黒い閃光。七海さんの拳が風を斬るたびに爆ぜる衝撃波。

 

「5回⋯⋯新記録⋯だな」

 

俺が呆然と呟く目の前で、桐生は全身から煙を上げて崩れ落ちた。ボロ雑巾のように地面に伏した科学者を前に七海さんは悠然と立っていた。

 

「公賀くん」

 

振り返った七海さんの瞳には昨日の曇りがない。

 

「ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です」

 

会釈ひとつ残し、彼は颯爽と校舎へ消えていった。

 

残された俺は考える。

あの豹変ぶりは一体……?

七海さんを見ると、紫先生?

紫先生と七海さんの距離が近い⋯⋯

 

「シュージ!どうしたの急に立ち止まって?」

 

ゆきかぜが突然後ろから抱きついてきた。振り返ると、白い制服の裾がひらりと舞う。

 

「あ〜……愛の力は偉大だって思ってただけ」

 

俺が曖昧に答えると、彼女はキョトンとした顔で首を傾げた。

 

「何それ?意味不明よ」

 

彼女の視線が七海さんが消えた廊下の先へ泳ぐ。察しがいい奴だ。

 

「まさか七海先生のこと?」

 

図星を刺されて思わず咳き込む。ゆきかぜの目がキラリと輝いた。

 

「やっぱり!紫先生とデキてるって噂本当なの?教えて!」

 

廊下中が聞き耳を立てている気配に俺は顔をしかめた。

 

「知るかよ。本人に聞けって」

 

歩き出してもゆきかぜはぴったりと後ろにくっついてくる。

 

「だって怖いじゃない!それに……」

 

彼女の声が急に小さくなった。

 

「紫先生って昔の任務で一緒になった時……すごく怖かったのよ」

 

過去のトラウマを語るゆきかぜの背中をポンと叩く。

 

「あの人、実は優しいんだぜ?お前みたいな生意気な奴が一番苦手なタイプだけどな」

 

教室のドアに手をかけながら振り返る。

 

「とにかく深入りすんな。教師のプライベートは詮索禁止だ」

 

「え〜っ!そんなのズルい!」

 

抗議するゆきかぜを置いて教室へ飛び込んだ瞬間、担任の木崎先生が教卓でこっちを睨んでいた。

 

「遅刻寸前だぞ、公賀、水城」

 

「すいません。ちょっとトラブルがありまして」

 

 

木崎先生の苦笑いが教卓の向こうから覗く。さっきの騒動を一部始終見ていたのだろう。

 

「まあいい、席につけ」

 

優しい声音だが目は笑っていない。ゆきかぜと並んで席につくと、窓の外から青空が視界に飛び込んできた。雲ひとつない空。

 

 

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