さくらとのセックスをした翌日。赤血操術の力を見たいと言うアサギ、訓練室の中ではアサギやさくら達教師やゆきかぜや凛子の様な学生達も見に来ていた。
俺の服装は暫定として五車学園の制服に血液パックの入ったポーチを装着している。
『試験開始!』
仮想敵が現れる。俺は呪力による強化と赤燐躍動を使い素早く移動しながら血液パックの血を使いナイフサイズの血の刃を形成。赤血操術の血刃だ。この技は血で輪郭を定め、血を高速で廻すことでチェーンソーの様に相手を容易く切裂いていく。
仮想敵を切り裂いた後、残る敵を血刃を解除して血を百蘞で掌に圧縮して、穿血で撃ち放つ。その威力にそれなりに驚く(おお~と言った感じ)が俺は威力に不満を感じずにはいられない。腸相や加茂憲俊の様にするにはどうすれば良いのだろうか?
「なかなかいいじゃない」
突然背後から声が聞こえ、振り返るとアサギが腕を組んで立っていた。彼女の紫の瞳が俺の動きを一連追っていたようで、分析的な目つきで俺を観察している。
「特に最初の一撃の正確性と速さは評価できるわ。血刃の切れ味も悪くない」
「ありがとうございます」
俺は汗を拭いながら答える。確かに訓練とはいえ緊張していた。
「でも」
とアサギは少し厳しい表情になる。
「攻撃力は素晴らしいけど、血液パック頼りの弱点があるわね。長期戦になった場合、補給がない状況だと苦しくなるわ」
その言葉に頷くしかない。俺も自覚していた問題点だ。
「次に赤燐躍動だけど」
アサギは続けた。
「身体能力の向上効果は絶大よ。でも今のあなたでは使いこなせていないわ」
彼女は手招きして訓練場の端へ歩き始めた。俺も後に続く。
「わかるでしょう? 赤燐躍動で身体能力が上がっても、あなたの動きはまだ素人の域を出ていない。せっかくのスピードがあっても無駄になっている場面が多いわ」
「……はい」
認めざるを得なかった。確かに体が軽くなった瞬間、どう動けばいいのかわからなくなることが何度かあった。
「それに血刃も。切れ味はいいけれど、狙いが甘いわ。もっと素早く的確に切り込む必要がある」
アサギの指摘はすべて的確だった。自分で考えていた問題点と同じだ。
「わかりました。改善すべき点ですね」
「そうね」
アサギは微笑んだ。
「それでも初日にしては上出来よ」
だがその時、彼女の表情が真剣になった。
「ただ一つ気になるのは……」
「なんですか?」
「あなたは今後どんな戦い方を目指すつもりなの?」
その質問に答えられなかった。確かに赤血操術の威力はあるが、自分がどこに向かうべきなのかはっきりとは見えない。
「……具体的にはまだ」
「そう」
アサギは頷いた。
「それで思い出したんだけど、遠距離攻撃はどうするつもり? 穿血の様な技ばかりじゃ限界があるし、血液の消費量も気になるでしょう?」
「確かに……」
その瞬間、不意に頭に浮かんだのは糸目の男——加茂憲倫の姿だった。彼が弓矢を使っていた記憶が鮮明によみがえる。あの時は意識朦朧としていたのに、なぜか妙に鮮明だった。
「弓……か」
思わず口に出してしまう。アサギの眉が上がる。
「弓?」
「あ、いえ……」
言いかけた言葉を飲み込むが遅かった。アサギは興味深そうに首を傾げる。
「呪術廻戦に出てくる赤血操術の使い手の一人に、加茂憲俊というのがいるんです」
と俺は説明した。
「そいつは弓を使っていて—」
「へぇ」
アサギの目が細くなる。興味を持ったようだ。すぐに彼女は携帯を取り出し短い指示を出した。数分後、訓練場の隅から弓と矢筒が運ばれてきた。
「使ってみなさい」
言われるままに弓を受け取る。正直なところ、中学時代の体育の授業で少し触れた程度だ。まともに扱える自信はない。
「大丈夫よ」
アサギが言う。
「まずは基本的な形から」
弓を構え、弦を引く。思ったより重い。そして不安定だ。両手の震えを抑えつつ、矢先を仮想標的に向ける。
「違うわ」
アサギが近づいてきて腕の位置を修正する。
「こうよ」
彼女の柔らかな指先が俺の手首に触れ、正しい角度に戻してくれる。その時ふと気づいた。アサギは弓道の心得があるらしい。動きに無駄がない。
「もう一度やってみて」
息を整え、再び弓を構える。今度は先ほどよりも安定している。指先に集中し、微量の血を矢に滴らせた。血液が矢先に吸収されていく。
「放て」
アサギの声に合わせて弦を離した。
矢が空気を切り裂き飛んでいく。途中で奇妙な変化が起きた。普通なら直線的に飛ぶはずの矢が、途中でカーブを描き、まるで意志を持つように標的へと向かっていく。最終的には小さな金属製の標的の中心に命中した。
「おぉ……」
俺は思わず声を漏らす。
「これは面白いわね」
アサギも感心した様子だ。
「通常の弓ではありえない軌道だわ⋯⋯けど」
だが喜びも束の間だった。標的には確かに命中したが、貫通するほどの威力はない。表面にわずかな凹みを作っただけだ。
「威力不足ね」
アサギが冷静に分析する。
「精度は向上したけど、破壊力はまだ課題よ」
「やはり練習が必要ですね」
「そうね」
アサギは頷く。
「これから毎日の訓練メニューに加えましょう」
片付けをしている最中、先に戻ったアサギからの呼び出しがあり。校舎に戻り、豪華な装飾が施されたドアの前に立つ。
「入りなさい」
という声が内部から聞こえた。
ドアを開けると、大きな窓から差し込む夕日に照らされた部屋の中で、二人の女性が待っていた。一人はアサギその人であり、もう一人はさくらだった。
「待ってたわよ、修司くん!」
さくらが明るく迎える。
「さぁ座って」
アサギがソファを指さす。
対面に座った三人はしばらく沈黙した後、アサギが口を開いた。
「単刀直入に言うわ」
「あなたにはここで学生兼対魔忍として活動してもらいたいの」
予想通りの展開だ。異世界から来た人間が特殊な力を手に入れたら、そうなることは必然だろう。
「わかりました」
俺は簡潔に答える。
「ただし条件があります」
「話してごらんなさい」
アサギが促す。
「まず戸籍です。正式なものがあれば様々な手続きが楽になります」
「もちろんだわ」
アサギが即答する。
「君の存在を隠しておくこともできるけど、それじゃ不便よね」
「次にスマートフォンとある程度の資金が必要です」
「日常生活や緊急時の連絡手段として」
「承知したわ」
アサギも同意する。
「最後に……」
俺は少し躊躇った後、言った。
「対魔忍スーツを自分好みにカスタマイズさせてもらえませんか?」
一瞬の沈黙。
「え?」
さくらが首を傾げる。
「普通の対魔忍スーツじゃダメなの?」
「いや、それが……」
言葉を選びながら説明する。
「以前プレイしたゲームで男性対魔忍を見たことがあるんですけど……」
苦笑いしながら続ける。
「個人的にあれはちょっと抵抗があって……」
特に二車の槍使いとか⋯⋯
沈黙が流れる。
「まぁ良いわ。」
「皆それぞれ独自のカスタマイズをしてるもんね〜」
アサギが言う。
「好きなデザインにしても構わないわ」
「あと住まいは?」
アサギが尋ねる。
「学園の男子寮があいているわ」
「助かります」
これで必要なものは揃った。新しい生活の準備が始まる。
次回は初任務