※この作品はR-18です。

アルテミスの傘   作:カイト__

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第二章

# 第二章 調教の日常化 ――尊厳の解体

 

## 2-1 乳房という名の容器(Day 3)

 

二十四時間は、二度同じ速度で過ぎない。

 

寄港三日目の朝、アークエンジェルの艦長室で目覚めたマリュー・ラミアスは、天井を見上げたまま、そのことを考えていた。

 

昨夜、司令官室から艦長私室に戻ったのは、午前一時を過ぎてからだった。公務として書類の一式を持たされ、アルテミスの共同作戦案と称した厚い束を抱えて歩いた廊下は、帰り道だけ、異常に長く感じた。歩くたびに、太腿の内側を、冷えきった他人の白濁が、ごく僅かに流れ落ちる感触があった。シャワーで何度洗い流しても、奥の方にまだ、熱が残っている気がした。

 

朝の定例ブリーフィングを、彼女は艦長として定刻通りにこなした。

 

声の調子も、姿勢も、視線も、昨日までと一ミリも変わらなかった。ナタル・バジルール副長が、報告の途中、何度かこちらを見たことには気づいていた。気づいていて、マリューはそれを視線で拒んだ。艦長としての仮面の下で、二十四歳の女は、かろうじて歯を食いしばっていた。

 

ブリーフィングが終わり、キラ・ヤマトが「艦長、お疲れさまです」と頭を下げて去っていった。少年の屈託のない笑顔を見た瞬間――

 

(――守らなきゃ)

 

頭の奥で、細い声が、そう呟いた。クルーの命。未成年、四名。その呟きだけが、マリューをかろうじて昨日の続きに繋ぎとめていた。

 

午後、通信端末に、指定された時刻で呼び出しが入った。

 

『アルテミス司令部より、アークエンジェル艦長へ。本日二十時、前夜と同様の機密協議を、司令官室にて。先方のご用意によりお一人で』

 

ナタルがブリッジの片隅で、背筋をこわばらせた。

 

マリューは、静かに了承の返事を入れた。艦長としての声は、昨夜と同じく、冷たく整っていた。

 

---

 

二十時、司令官室。

 

扉が内側で施錠された瞬間、昨夜と同じ、カチという乾いたクリックの音が、マリューの耳の奥で反響した。条件反射のように、胸の谷間で、銀の誓いの環が、静かに熱を帯びはじめた。

 

ガルシアは机の奥から、昨夜と同じように、シガーに火を点けた。部屋の空気は、昨夜と同じ匂いをしていた。シガーの煙、乾燥、そして――今夜は、それに加えて、濃い匂いがあった。

 

マリューは、それが何の匂いかに気づいて、喉を硬くした。

 

自分の、匂いだった。

 

昨夜、このベッドに染みた自分自身の体液と、ガルシアの体液と、涙と、汗とが、一晩かけてシーツに沈み、シガーの煙と混ざって、部屋の壁に染みついていた。シャワーで洗い流したはずのその匂いを、マリューは部屋の中で、外の空気のように吸い込んだ。身体の奥の方で、記憶の神経が、既にその匂いを「知っている」と、彼女に告げた。

 

「よく来た、ラミアス少佐」

 

ガルシアの声は、やはり、医師のように落ち着いていた。

 

「昨夜のことで、貴官の体調に変化があれば、申告しなさい」

 

「……特に、ございません」

 

「よろしい。しかし、その顔では、いささか疲労が見える。では、今宵は、昨夜よりも少しばかり、軽くやろう」

 

軽く。その単語の嘘に、マリューは唇の裏で、小さく血の味を覚えた。

 

「昨夜、私は気づいたのだよ、ラミアス少佐」

 

ガルシアは、煙を吐きながら、静かに続けた。

 

「貴官のその見事な胸。軍服の下で、ただ重みを抱え込ませているだけでは、勿体ない」

 

マリューの両手が、反射的に、制服の胸元の上で交差しそうになった。昨夜の「隠すな」の一言が、三日経って、早くも彼女の神経に、条件反射を刻みはじめている。

 

「脱ぎなさい」

 

昨夜と同じ命令。しかし今夜、マリューは昨夜のような「議論」に入らなかった。議論が無意味であることを、身体が既に、頭より先に知っていた。

 

彼女は、無言で、軍服のボタンに、自分の指をかけた。

 

自分の指で、自分の階級と誇りを、一つずつ外していく。その行為の方が、ガルシアに外されるより、はるかに、深く、静かに、彼女を削った。

 

カチ、カチ、カチ。

 

やがて、ブラウスと、タイトスカートと、下着が、絨毯の上に順に重なった。

 

ガルシアが、椅子から立ち上がらずに、次の命令を出した。

 

「胸で、奉仕しなさい」

 

---

 

ベッドの縁に腰を下ろしたガルシアの前に、マリューは、膝をついた。

 

胸の谷間で、銀の環が、今夜は特に熱を帯びていた。ムウの声が、遠く、遠く、耳の奥で、水底から呼ぶように聞こえた気がした。

 

(――ごめんなさい、ムウ)

 

心の中で、昨夜と同じ謝罪を、また一度繰り返す。

 

ガルシアの下半身は、すでに準備を終えていた。昨夜と同じ濁った色の怒張が、マリューの顔の前に、無遠慮に屹立している。

 

「両手で、自分の胸を、寄せなさい。そして、その谷間に、私を挟め」

 

命令の言葉そのものが、屈辱的な設計図だった。

 

他人に胸を揉まれるのではない。**自分の両手で、自分のたわわな果実を寄せ集め、他人の雄を奉仕するための「容器」に仕立て直す**――その作業を、命じられたのは、彼女自身だった。

 

マリューは、震える両手を、自分の乳房の下から、左右に添えた。

 

ずしり、と、自分の重みが、自分の手のひらに載った。Gカップの乳白の果実が、指の間から僅かに溢れた。呼吸で、先端の桜色の突起が、軽く上下した。自分の身体を、自分で「道具」として扱うその行為は、昨夜ガルシアに全裸にされた瞬間よりも、内側の何かを、確実に、ひと皮削り取った。

 

両手で白い果実を、体の中央に寄せた。押しつけた。

 

深い谷が、作られた。

 

その谷の底に、ガルシアが、彼の怒張を、ゆっくりと、差し込んだ。

 

「――っ」

 

マリューの唇から、歯で噛み殺した息が、漏れた。

 

柔らかな肉に、熱く、硬く、他人の血管の脈動が、直接、挟み込まれる感覚。指の腹では感じない、胸の肉そのもので感じる、雄の質量。

 

「締めろ」

 

ガルシアが、低く命じた。

 

マリューは、両手で、自分の双丘を、内側に押しつけ続けた。白磁の肉が、強く挟むほど、指と指の間から、わずかに歪んで溢れ出す。その歪みの真ん中で、ガルシアの雄が、ゆっくりと、上下に動きはじめた。

 

ぐちゅ、ぐち、と、柔らかな摩擦音。

 

マリューの鼻先で、他人の先端が、周期的に、現れては、沈んだ。シガーの匂いと、栗の花の匂いと、脂汗の匂いが、鼻孔の奥を占拠した。

 

そして――彼は、もう一つ、悪辣な動きを加えてきた。

 

右手を、マリューの右胸の、突起に添えた。

 

「ひ……っ」

 

親指と人差し指で、桜色の先端を、軽く、転がす。

 

昨夜、噛み跡をつけられ、朱を帯びはじめた乳首が、その刺激で、一気に硬く尖った。

 

「奉仕しながら、自分の先端も、俺に触らせる。難しい仕事だな、艦長殿」

 

ガルシアの声が、初めて、愉悦の色を隠さなかった。

 

マリューの意識が、二箇所に割れた。胸の谷で動く雄と、指先で転がされる先端。どちらも、「屈辱」という一語で片付けられるはずの刺激なのに、その二箇所からの刺激が、神経の奥で、危うく、別の何かに変わりそうになる――その怖さを、彼女は下唇を強く噛むことで、必死に堪えた。

 

「ん……っ、んっ……」

 

そして、ガルシアの動きが、最後の速度に入った。

 

彼は、マリューの胸の谷間で、荒く腰を動かした。雄が、谷の底から出たり入ったりを繰り返した。乳首への指の動きが、それに合わせて、速くなった。マリューは、息だけで声を堪え、目尻にうっすら涙を浮かべながら、自分の胸を、相手の雄の容器として、差し出し続けた。

 

「受けなさい、少佐」

 

雄が、谷の中で、最後に大きく脈打った。

 

どくん――。

 

白い飛沫が、谷の底から、マリューの顎へ、頬へ、鼻筋へ、一筋、二筋、三筋。

 

「……!」

 

閉じた瞼の上にも、熱い液体が、ひたりと落ちた。

 

濃い栗の花の匂いが、鼻孔の奥に、直接、入ってきた。

 

マリューは、目を開けることができなかった。開ければ、見えてしまう。自分の豊かな双丘の上に、顎に、頬に、まぶたに、他人の体液が、のった自分の顔を。軍人としての冷徹な顔が、白い精液の仮面で、半分覆われていることを。

 

そして、決定的に――

 

胸の谷間の底で、ムウから贈られた小さな銀の輪もまた、二筋の白濁を浴びて、ぬるりと光っていた。

 

金属というものは、体液を、弾かない。吸わない。ただ、表面に、張り付かせる。ムウから贈られた指輪は、その金属の性質のとおりに、今夜、ガルシアの白濁を、自分の表面に、張り付かせていた。

 

誓いの印は、もはや、一滴などという単位ではない、覆い隠すような量の、他人の体液に、濡らされていた。

 

「綺麗だ」

 

ガルシアの手のひらが、マリューの頬に、優しげに添えられた。

 

「貴官の顔は、私の色がのった方が、美しい」

 

閉じた瞼の奥で、マリューは、声にならず、ただ、唇の端を震わせた。

 

その震えを、ガルシアは、「快楽」と読んだ。そう彼が読んだことが、マリューを、さらに、深く、削った。

 

---

 

## 2-2 艦長の髪、奉仕の位置(Day 5)

 

二日、挟んだ。

 

その二日間、マリューは昼間、艦長として正しく機能した。ナタルは彼女を見る目に、日に日に険しい色を濃くしていったが、マリューは艦長の仮面を、より精巧に、より冷たく、磨き上げることで、副長の視線を退けた。内側でどれほど削られようと、外側の輪郭を一切崩さないことが、彼女が自分に課した、最後の規律だった。

 

そして、五日目の夜。

 

「跪きなさい」

 

その一言が、今夜の始まりだった。

 

マリューは、昨夜までは「立つ」か「ベッドに押し倒される」かの、どちらかだった。「跪く」という姿勢を、命令されたのは、初めてだった。

 

彼女は、全裸のまま、厚い絨毯の上に、両膝をついた。二十四歳の女艦長が、軍人として、敵将の前に跪いた――その姿勢そのものが、既に、一つの意味を持った。

 

ガルシアは、ベッドの縁に腰を下ろした王のように、マリューを見下ろした。

 

そして、彼は、マリューの栗色の長い髪に、指を差し入れた。

 

「貴官のこの髪は、綺麗だな」

 

指が、髪の根元を、ゆっくりと掬い上げた。

 

「艦長職のご婦人は、みな、これを後ろでまとめる。貴官も、艦内ではそうしている。もったいない。――今宵は、解いてもらおうか」

 

マリューの手が、ゆっくりと、後頭部のヘアクリップにかかった。

 

カチリ、と音を立てて、クリップが外れた。

 

ストレートの栗色が、肩から、胸の、たわわな双丘の上へ、さらりと流れ落ちた。一部は、先程までガルシアが精を放った胸の谷間に、ふわりと落ちて、ムウの誓いの印を半ば隠した。

 

「結構」

 

ガルシアの指が、下ろされた髪の、ひと房を、指にくるりと絡めた。

 

「その髪は、今宵、貴官の意思とは無関係に、私の手綱になる」

 

手綱。

 

マリューの胸の奥で、その単語の意味が、ぞわりと、形を取った。

 

ガルシアの指が、髪の根元を、しっかりと掴んだ。

 

「開けなさい、少佐」

 

マリューの口が、昨夜までの記憶で、条件反射のように、薄く、ひらいた。

 

「もっと大きく。喉の奥まで、よく見せろ」

 

命じられるままに、口が、大きく開いた。

 

ガルシアの、すでに硬くなった雄が、唇の間に、無造作に、押し込まれた。

 

熱く、濡れ、血管の脈打つ、他人の器官が、ゆっくりと、口の奥へ進んだ。

 

「ん、ぐ……」

 

先端が、喉の奥、硬口蓋の向こうに当たった。反射的に、吐き気に近い痙攣が、喉の奥から、込み上げた。マリューは、咄嗟に、頭を引こうとした。

 

――その瞬間。

 

ガルシアの指が、彼女の髪の根元を、ぐい、と掴んで、逆に、彼の体の方へ、頭を引き寄せた。

 

「逃げるな」

 

艦長の、髪が、掴まれた。

 

マリュー・ラミアス少佐という指揮官の、物理的な主体性の象徴が、敵将の指に、鷲掴みにされた、最初の瞬間だった。

 

艦長とは、命令を下す者である。指揮官は、他者の行動を、自分の言葉で支配する者である。

 

その指揮官の、頭そのものが――他人の手で、動かされている。

 

彼女の頭の位置、彼女の顔の向き、彼女の唇の開く深さ、彼女の喉の開閉、そのすべてが、今、マリュー・ラミアスではなく、ジェラード・ガルシアの、指の力によって、決定されていた。

 

艦長としての彼女の存在は、この髪一束分、確実に、彼の掌中に、落ちた。

 

ガルシアの雄が、マリューの喉の奥の、さらに向こうへ、押し込まれた。

 

「うっ、ぐぇっ……!」

 

喉を直接塞がれる感覚。生理的な涙が、マリューの両目から、押し出されるように、次々と溢れた。鼻孔が、ガルシアの下腹の雄臭を、強制的に、深く吸わされた。

 

ガルシアが、髪を掴んだまま、腰を、動かしはじめた。

 

抜くのでは、ない。彼は、マリューの頭を、自分の手で、前後に動かした。彼女の顔を、自分の雄に、押しつけた。押し戻した。また、押しつけた。

 

彼女の意志は、そこになかった。髪を掴む指の力だけが、彼女の顔の動きを、作っていた。

 

「んぐっ、ぐ、ぐ……んぐぅ……!」

 

マリューの唇から、決まった長さの音が、規則的に漏れた。その規則性を作っているのは、自分ではない、と、彼女はぼんやりと認識した。

 

数分間、その動きが続いた。涙と唾液が、彼女の双丘の曲線を、幾筋も伝って、床に、ぽたり、ぽたり、と落ちた。胸の谷間では、ムウから贈られた小さな誓いの輪が、頭の前後の動きに合わせて、細かく揺れた。

 

ガルシアが、最後の速度に入った。

 

「飲め」

 

一言だけ、低く命じた。

 

どくん、と、雄が、マリューの口腔の最奥で、脈打った。

 

ごくっ、と、マリューの喉が、本人の意思とは無関係に、動いた。

 

熱い液体が、喉の奥に、直接、注ぎ込まれた。濃い、粘り気のある、それ。吐き出すことは、許されなかった。ガルシアの指が、髪を掴んだまま、彼女の顔を、彼の股間に、固定し続けた。

 

マリューの喉が、こくり、こくり、と、三度、動いた。

 

他人の体液が、彼女の食道を、下っていった。

 

ガルシアが、ゆっくりと、髪を離した。

 

マリューは、口から雄を引き抜かれた後も、しばらく、その位置から動けなかった。唇の端から、飲みきれなかったひと筋の白濁が、糸を引いて、顎へ、首筋へ、そして谷間の銀の環へと、流れていった。

 

「――んっ、けほ、けほ……!」

 

ようやく、彼女は、激しく咳き込んだ。膝の上で、双丘が、大きく波打った。銀の環が、白濁を纏ったまま、細かく震えた。

 

口の中の、いたるところに、ガルシアの味が、残っていた。舌の裏、頬の内側、喉の奥、そして鼻腔の奥の、副鼻腔のあたりまで、他人の体液の、粘った残滓が、ねっとりと、こびりついていた。口をゆすぐことは、許されなかった。ガルシアが、そう命じた。「そのまま、自分の口に、私を記憶させなさい」と。

 

マリューの意志とは無関係に、舌の表面は、自分の唾液で、喉から戻ってきた栗の花の味と混ざり合い、それが自分の一部のように、じわりと、馴染みはじめていた。

 

ガルシアの味を、口の中で、覚えている。――その認識そのものが、マリューの、内側の何かを、静かに、また、削った。

 

咳き込むたびに、口の中と、鼻の奥に、栗の花の匂いが、直接、突き上がった。胃の方からも、同じ匂いが、僅かに、戻ってきた。

 

もう、どこからも、昨日までの自分の匂いは、していなかった。

 

マリューの膝の上に、大粒の涙が、ぽとり、ぽとりと、墜ちた。それが、屈辱の涙だったのか、呼吸を奪われた身体の生理的な涙だったのか、あるいは他人の匂いに内側まで塗り替えられていく自分自身への弔いの涙だったのか――彼女自身にも、もう、分からなかった。

 

ガルシアが、手を伸ばして、マリューの顎を、優しく持ち上げた。

 

「よくやった、ラミアス少佐。――明日は、もう一段階、進む」

 

マリューは、何も答えなかった。

 

答える言葉を、持ち合わせていなかった。

 

---

 

## 2-3 剃毛、個の消去(Day 8)

 

三日、挟んだ。

 

その間、マリューは艦長として、アークエンジェルのクルー編制を確認し、補給書類に印を押し、ナタルとの定例会議を粛々と続けた。夜、司令官室で行われる「協議」の内容について、彼女はどのクルーにも、一言も漏らさなかった。

 

漏らせば、この奇妙な均衡が、崩れる。

 

漏らさなければ、毎夜、自分一人で、削り続けられる。

 

彼女は、後者を選んでいた。選び続けていた。

 

---

 

八日目の夜、司令官室の部屋の一角が、様子を変えていた。

 

絨毯の上に、今夜は、一台の椅子が、置かれていた。革張り。両肘の位置と、両足首の位置に、白い拘束帯。そして、両足の延長線上に、長い金属のアームが、二本、左右へ可動する仕様で、取り付けられていた。

 

マリューは、一瞥で、それが何の椅子かを、理解した。

 

産婦人科で、検査に使われるものに、酷似していた。

 

「掛けなさい、少佐」

 

ガルシアの声は、今夜も、医師のように落ち着いていた。

 

マリューは、全裸で、その椅子に、腰を下ろした。

 

背もたれに、上半身を預けた瞬間、金属の冷たさが、背中と、双丘の下側に、直接伝わった。両肘が、それぞれ肘掛けの白い革帯に、固定された。両足首も、金属アームの先端の帯で、締められた。

 

そして、金属アームが、左右に、ゆっくりと、開いていった。

 

マリューの両足が、強制的に、大きく、広げられた。

 

太腿と太腿の間の角度が、百二十度、百四十度、百六十度――そして、股関節の限界に近い、百七十度で、アームが、停止した。

 

その姿勢は、M字とも、開脚とも違う、完全な「検査台」の形だった。彼女の秘部は、電子照明のスポットライトに、真下から、照らされていた。

 

「貴官の身体を、今宵、少し、整えさせてもらう」

 

ガルシアの指が、小さなボウルの中で、温かい泡を、立てはじめた。石鹸の、優しい香りが、部屋の空気に混ざった。

 

彼は、刃を、取り出した。

 

使い捨ての、安全剃刀――ではない。銀色に磨かれた、柄の長い、職人用の、直剃り用の刃。

 

マリューの喉の奥が、静かに、ひゅっと鳴った。

 

「怖がる必要はない。手は、慣れている」

 

ガルシアは、椅子の足の間に、自分の椅子を、引き寄せて、座った。

 

そして、温かい泡を、マリューの恥丘に、丁寧に、塗りはじめた。

 

整えられた栗色の下生えが、白い泡の下に、埋もれた。

 

「動くな、少佐」

 

サリ。

 

銀の刃が、泡の上を、滑りはじめた。

 

サリ。サリ。

 

音が、規則的に、続いた。

 

マリューは、天井を見つめた。天井の、つるりとした白い塗装を、見つめ続けた。目線を下に落とすと、自分の恥丘から、自分の栗色が、一本ずつ、消えていくのが、見えてしまう。

 

それを、見るのは――無理だった。

 

しかし、手の感覚は、別だった。刃の冷たさ、泡の温かさ、そしてガルシアの太い指の、微かな動きは、全て、皮膚を通して、はっきりと、伝わってきた。

 

「……」

 

マリューは、声を出さなかった。声を、出すだけの、何かを、持ち合わせていなかった。

 

サリ、サリ、サリ。

 

規則的な音だけが、部屋を満たした。シガーの煙は、今夜は、消えていた。ガルシアは、この作業の間だけは、自分の好む匂いさえも、切っていた。医師としての、作業の集中を、自分に課していた。その集中の仕方が、マリューの中で、また、何かを、静かに、削った。

 

十分、経った。

 

サリ。サリ。サリ。

 

ガルシアの刃は、急がなかった。むしろ、ゆっくりと、丁寧に、彼は一本、また一本と、マリューの女としての記号を、除去していった。丁寧であればあるほど、それが儀式であることが、はっきりした。単なる脱毛ではなく、人格の除去の、儀式。

 

その儀式の途中で、マリューの頭の奥に、ふと、別の記憶が、ひらめいた。

 

十七歳の、入隊検査の朝。母が、彼女の栗色の長い髪を、食卓の前で、最後にひと撫でし、そっと言った。「軍人になっても、女の部分だけは、誰にも預けちゃだめよ、マリュー」。――母の指の、温かさ。

 

サリ。

 

刃が、また一本、毛を、落とした。

 

(……ごめんなさい、お母さん)

 

マリューは、天井を見上げたまま、心の中で、その五文字を、呟いた。

 

刃の音が、そのまま、呟きの返事になった。

 

サリ。サリ。サリ。

 

ガルシアの指が、温かいタオルで、泡を、丁寧に拭い取った。

 

そして――マリューの股間のすぐ横の太腿に、鏡を、掲げた。

 

「見なさい、少佐」

 

マリューの視線が、下に、落ちた。

 

鏡の中に、映っていたのは――

 

成熟した二十四歳の、大人の女の身体の、真ん中に、幼子のように、つるりとした、白い恥丘だった。

 

栗色の下生えも、女の陰影も、そこにはなかった。下生えに覆われて、見えなかった、白い恥丘の皮膚そのものが、剥き出しの、むき出しの、無防備な形で、ある。

 

「お前は、もはや、マリュー・ラミアスではない」

 

ガルシアの声が、今夜、初めて、儀式の祭司のように、低く、静かに、響いた。

 

「艦長の階級も、二十四歳の大人の女の記号も、今宵、貴官から剥ぎ取った。――貴官は、ここから先、ただの『雌の器』だ」

 

マリューの視線が、鏡の中の、自分の、つるりとした恥丘に、釘付けになった。

 

体の他の部分は、二十四歳の、完熟した、豊満な女の肉体。そのくびれも、たわわな双丘も、豊かな骨盤も、変わらずに、そこにある。

 

しかし、中央の、下生えを失った恥丘だけが――妙に、若く、妙に、無防備で、妙に、「未満」だった。身体が、一箇所だけ、「成熟」から、「未満」へ、引き戻されていた。

 

その不均衡さが、マリューの、自分自身に対する認識を、決定的に、壊した。

 

彼女は、鏡の中の、自分の身体を、見た。

 

胸の谷間で揺れる、ムウから贈られた、銀の環。その、環の下の、くびれ。その下の、豊かに広がる骨盤。その真ん中の、幼子のような、つるりとした、恥丘。

 

それは、マリュー・ラミアスの、身体だろうか?

 

違う。

 

マリュー・ラミアスは、栗色の下生えに覆われた、二十四歳の、成熟した女だった。ムウの前で、恥じらい、微笑み、身を委ねた女だった。ヘリオポリスのバーで、酔いつぶれた戦闘機乗りに、肩を貸した技術士官だった。

 

――この身体は、その女の、身体ではない。

 

この身体は、**ガルシア・ジェラードが、四日間かけて、作り直した、「別人」の身体**だ。

 

マリューの、唇が、微かに、動いた。音のない、言葉。

 

彼女の頭の奥に、もう一つの記憶が、ひらめいた。ムウが、初めて、指輪を彼女の左手の薬指に嵌めてくれた、あの夜。ヘリオポリスの、ドックの陰の、小さなカフェ。「マリュー、正式な婚約は戦争が終わってから。これは、俺が必ず帰ってくる印だ」。――あの夜の、ムウの指の、温かさ。

 

あの指は、この身体の、栗色の下生えに、触れた。

 

しかし、今、この身体には、もう、下生えが、ない。

 

ムウが、触れた、その女は、もう、ここに、いない。

 

マリューの喉の奥で、何かが、小さな音を立てて、崩れた。

 

(――マリュー・ラミアスは)

 

心の中で、声が、動いた。

 

(この部屋で、死にました)

 

それは、明確な、文法として、成立していた。

 

成立した瞬間、マリューの両目から、今夜、初めて、声の漏れない涙が、すっと、左右同時に、落ちた。

 

泣いた、のではない。ただ、目から、塩水が、流れただけだった。

 

ガルシアは、その涙を、医師の冷静さで、観察した。

 

そして、彼は、つるりとした恥丘の、すぐ横の、白い皮膚に、唇を、そっと、押し当てた。

 

口づけは、愛撫ではない。それは、彼が、「この身体は、もはや、自分の作品である」と宣言する、作者の、署名の、口づけだった。

 

「美しい。これが、本当の貴官の身体だ、少佐」

 

ガルシアの口づけは、次に、つるりとした恥丘の、中央に、移った。

 

白く、無毛の皮膚に、他人の唇の、温かい湿度が、直接、押し当てられた。マリューの、身体の、一番、無防備な場所に。

 

「――っ」

 

拘束された両足首の、アームの固定が、解かれた。

 

しかし、マリューは、もう、足を閉じようとは、しなかった。

 

閉じても、無駄だということを、身体が、既に、覚えていた。

閉じる、という動作の主体が、もう、彼女の中に、存在しなかった。

 

ガルシアの舌が、無毛の恥丘の、皮膚を、ひと舐めした。

 

「……」

 

マリューの唇が、また、声のない言葉を、動かした。

 

今度の言葉は、もう少し、長かった。

 

(――わたし、は、この夜、死にました)

 

「私」が、「わたし」に、変わった、第二の瞬間だった。

 

マリューの両目から、二筋目の涙が、流れた。

 

その涙が、ストッパーの切れたあとの、雨のように、止まらなくなった。

 

---

 

## 2-4 禁断の場所(Day 10)

 

二日、挟んだ。

 

その間、マリューは、アークエンジェルの艦長として、機能した。

 

しかし、彼女の内側では、何かが、静かに、変わっていた。鏡の前で制服を着るとき、彼女は自分の下腹部に、下生えが一本も残っていないことを、無意識に、確認した。確認して、肩が、少し、楽になった。自分が「マリュー・ラミアス」ではなく、「ただの雌の器」であると、認めた身体は、皮肉にも、日々の業務の重圧から、ひと呼吸分、解放されていた。

 

その解放の仕方そのものが、ガルシアの、本当の、目的だった。

 

マリューは、まだ、それに気づいていなかった。

 

---

 

十日目の夜。

 

司令官室。

 

ガルシアは、いつも座っている椅子の位置を、今夜だけは、変えていた。彼は、ベッドの上で、こちらに背中を向けて、うつ伏せに、寝そべっていた。

 

全裸の、五十代の、中年肥満気味の、男の背中。肩甲骨、腰、そして――大きな尻の、丸みの中央に、影のような、暗い線が、一本、縦に走っている。

 

マリューは、ベッドの縁に、立たされていた。こちらも、全裸。つるりとした恥丘が、ガルシアの尻に、明るく照らされた照明の下で、まるで鏡のように、対になっていた。

 

「今宵は、貴官の番だ、少佐」

 

ガルシアの声が、枕の上で、低く、くぐもった。

 

「貴官の舌で、私の背中の、その一番奥の場所を、舐めてもらう」

 

マリューの、呼吸が、止まった。

 

「……」

 

「聞こえたか」

 

「――ガルシア、中将……」

 

声が、震えた。昨夜まで、彼女が口にしてきた、たくさんの拒絶の言葉は、すべて、形式的なものだった。どの拒絶も、ガルシアに、軽く、崩された。どれも、本気の拒絶ではなかった。

 

しかし、今夜の、この要求だけは、違った。

 

マリューの喉の奥から、初めて、本気の声が、絞り出された。

 

「お願いします。どうか、それだけは」

 

「なぜだ」

 

「……人間としての、最後の、境界、です」

 

「ほう」

 

ガルシアは、枕に顔を埋めたまま、言った。

 

「境界、か。――昨日まで、君に境界があったのなら、なぜ、昨日までの全てが、あのように成立したのかな?」

 

マリューの喉が、詰まった。

 

「昨日までは、穴と穴だけだった、と?今夜は、別の穴だから、駄目だと?その区分は、誰が、作ったのだ、少佐?」

 

理屈ではなかった。ただの屁理屈だった。しかし、今のマリューには、その屁理屈を、反論する言葉が、見つからなかった。

 

反論の言葉を作るためには、「私」という一人称が、自分の中に、しっかりと、ひとつのものとして、立ち上がっていなければならない。そして、その「私」は――この九日間で、何度も削られ、今夜のマリューの中では、固い形を、結べずにいた。

 

誰が、作ったのか。その問いに、答えるための「わたし」が、既に、不明瞭だった。

 

ガルシアが、長い沈黙の後、低く、付け加えた。

 

「――貴艦のクルー、百名。未成年、四名。補給と、『光の盾』の庇護。それらと、貴官の『境界』と。――どちらが、重いと、申告するかね、艦長殿」

 

マリューの、両の膝が、音もなく、絨毯の上に、折れた。

 

頭の中で、細い声が、もう一度、聞こえた。――守らなきゃ。

 

(……わたし、は)

 

心の中の、自称の、その揺らぎを、マリューは、自分自身でも、はっきりと感じた。「私」が、「わたし」に、ひらがな化した、最初の瞬間だった。

 

彼女は、両手を、ベッドの縁に、ついた。

 

ゆっくりと、ベッドの上に、四つん這いに、乗った。

 

重量感のある乳白の果実が、重力に従って、シルクのシーツの、すぐ上で、たわわに、ぶら下がった。首から下げた銀の環が、谷の底から、ふたつの丸みの間に、ぶら下がるように、揺れた。

 

マリューの顔が、ガルシアの、大きな、中年男の、白い尻の、上空に、近づいた。

 

濃い、獣のような、臭気が、鼻腔を、撃った。

 

(これが、人間の――男の、匂い)

 

頭の奥で、声が、呟いた。

 

マリューの舌が、口の中で、震えた。

 

出せ、と、命令は、なかった。しかし、ここまで来た以上、次の動作は、ひとつしかなかった。

 

彼女は、震える舌の先を、そろそろと、唇の外へ、伸ばした。

 

そして、ガルシアの尻の中央の、暗い線の、さらに奥の、その場所に――

 

触れた。

 

「……!」

 

声は、出なかった。出なかったのは、マリューの、何かが、その瞬間、静かに、壊れたからだった。

 

生温かい。湿っている。獣のような、直接的な、匂い。

 

その感覚が、舌の先から、神経を、脳の、奥へ、瞬間的に、伝播した。

 

マリューの、頭の中で――

 

何か、大きな、堅い、扉のようなものが、音もなく、ぱたんと、倒れた。

 

その倒れた音を、マリューは、しかし、聞き取ることができなかった。聞き取るための「自分」が、もう、十分に、残っていなかったからだった。

 

彼女は、命じられていないのに、二度、三度、舌を、動かした。

 

ガルシアが、枕に顔を埋めたまま、小さく、息を、吐いた。

 

「よろしい。続けろ、少佐」

 

マリューの舌は、続けた。続け続けた。数分、という時間が、部屋の中を、静かに、通り過ぎた。シガーの匂いも、栗の花の匂いも、今夜は、消えていた。ただ、獣の、直接的な、匂いだけが、マリューの鼻腔を、支配していた。

 

ようやく、ガルシアが、「よろしい」と、短く、告げた。

 

マリューは、舌を、引いた。

 

しばらく、動けなかった。

 

吐き気は、湧かなかった。怒りも、湧かなかった。恥も、湧かなかった。

 

ただ――何も、湧かなかった。

 

内側の、感情を生成する神経そのものが、一時的に、止まっている感覚があった。

 

人間は、一日に一定の量の感情しか、生成できない。九日間、毎夜、削り続けられてきたマリューの感情生成装置は、今夜の一件で、その日のぶんを、完全に使い切っていた。だから、吐き気も、怒りも、恥も、湧かない。

 

湧かないこと自体が、最大の破壊だった。しかし、それに気づくための感情さえ、もう残っていなかった。

 

彼女は、四つん這いのまま、ベッドの縁に、額を、そっと、つけた。重量感のあるふたつの丸みが、シルクのシーツの上で、柔らかく、潰れた。首から下がった銀の環が、シーツの上に、ひたり、と当たった。

 

その姿勢のまま、どれほどの時間、動かずにいただろうか。マリューには、それが、十秒だったのか、十分だったのか、測れなかった。

 

ガルシアは、ゆっくりと、起き上がった。そして、四つん這いの、石像のように固まっているマリューの、頬に、手の甲で、優しく、ひと撫でした。

 

「よくやった、少佐。――これで、貴官は、もう、艦長でも、女でも、ない」

 

マリューの、両目から、もう、涙すら、出なかった。

 

出すための、水分さえ、どこかへ、退いていた。

 

---

 

*

 

翌日。

 

アークエンジェル、格納庫裏の通気ダクト前。

 

ナタル・バジルール副長は、点検用の小さなランプを、手に持っていた。肩越しに、彼女は、キラ・ヤマトを、ちらりと振り返った。

 

「少尉。この件は、極秘で進めます。――艦長が、何かに囚われている、というのが、私の観測結果です」

 

「艦長が……? でも、ナタルさん、艦長は毎朝、普通にブリッジに立って――」

 

「少尉」

 

ナタルが、若いパイロットの言葉を、途中で、遮った。

 

「目の光を、見ましたか、艦長の」

 

キラは、一瞬、息を、呑んだ。

 

「寄港三日目から、毎日、一段ずつ、違います。本日の、今朝のブリーフィングの艦長の目の光は、――寄港初日の、それの、六割程度でした」

 

ナタルは、拳を、握った。

 

「何が、起きているのか。私は、この目で、確認しなければなりません。補給完了予定まで、あと十一日。それまでに、艦長を、この艦に、取り戻します」

 

彼女は、ダクトの蓋を、静かに、外した。

 

小柄なナタルの身体なら、ぎりぎり、通過できる幅だった。

 

「少尉は、艦内で、平時の様子を維持してください。艦長の異変は、他のクルーには、気取らせない。特に、フレイ・アルスター嬢のことで、焦って動かないこと」

 

「――はい」

 

キラの声に、初めて、少年の無邪気さではない、重い覚悟が、にじんだ。

 

ナタルは、ダクトの中に、身体を、滑り込ませた。

 

内部の暗闇の、その先に、彼女の眼差しは、まっすぐ、伸びていた。希望の光――というには、あまりに硬い、しかし、確かに、消えていない、何かが、そこにあった。

 

---

 

## 2-5 尾のある艦長(Day 13)

 

十三日目の夜。

 

マリューは、司令官室の、更衣室と化した一角に、立たされていた。

 

「今宵は、衣裳を、着てもらう」

 

ガルシアの声が、扉の向こうから、聞こえた。

 

マリューの目の前の、ハンガーに、黒光りするエナメル生地の、衣裳が、掛かっていた。

 

それは、地球時代の、古い娯楽施設で使われていた形式の――バニー・ガール・コスチュームだった。

 

コルセット状の、ストラップレスのボディスーツ。胸の前面に、ハート形のカットがあり、そこから、内部の双丘を、むしろ、強調する設計。股間のハイレグ。首には、白い襟と、黒の蝶ネクタイ。頭には、頭頂部から、長く立ち上がった、黒いウサギの耳。

 

そして、背中の、腰のすぐ上に、丸い、白い毛玉の――尻尾。

 

それだけではなかった。

 

ハンガーの横のトレイに、アナル用の、銀色のプラグが、置かれていた。先端が、ウサギの尻尾の毛玉と、金属のコネクタで、繋がる仕様だった。

 

マリューの喉が、ひゅっと鳴った。

 

「着ろ、少佐。一人で、着替えなさい」

 

ガルシアの声が、一段、低く、命じた。

 

マリューは、震える手で、まず、プラグを、手に取った。

 

昨夜までに――ガルシアの指は、既に、彼女のその箇所を、数本の指が入るまで、段階的に、開発していた。その開発の過程で、マリューは、恥辱と、内臓の圧迫感と、そして、内側の粘膜の、予想外の感度を、少しずつ、知らされていた。

 

彼女は、プラグに、ガルシアが置いた、透明なジェルを、塗った。

 

そして、背を向けて、腰を、軽く、屈めた。

 

自分の、白い尻肉の、中央に、自分の手で、銀色の異物を、差し入れていった。

 

ぐ、ぐ、と、先端が、内側の括約筋を、押し広げた。

 

「……ん……っ」

 

自分の手で、自分の、一番恥ずかしい部分を、「使用のために整える」という行為。それは、初夜の、自分で下着を脱ぐ行為の、さらに、一段、内側の領域に、彼女を、引き摺り込んだ。

 

プラグが、根元まで、収まった。

 

ぐ、と、内臓の奥が、圧迫された。十日以上かけて、ガルシアが、彼女の括約筋に、少しずつ教え込んだ「異物の形」が、今夜、定位置に、納まった。

 

その瞬間、マリューは、自分の内側から、奇妙なことに気づいた。

 

プラグが、収まると――少し、楽になった。

 

「無ければ、落ち着かない」という身体の感覚が、既に、彼女の中に、根付きかけていた。その認識に、彼女自身が、背筋を、一瞬、震わせた。

 

続いて、彼女は、エナメルのボディスーツを、身に、着けはじめた。

 

足を、一本ずつ、通す。スーツを、身体の上に、引き上げていく。

 

――入らなかった。

 

彼女の重量感のある双丘の下までは、スーツは、引き上がった。しかし、そこから、胸の、たわわな膨らみを、スーツの中に、収めようとすると――

 

あまりに窮屈だった。

 

スーツの前面のハート形のカットが、乳房の下半分を、まっすぐに、押し上げる形になっていた。残りの上半分は、上縁から、あふれるように、こぼれ落ちた。

 

マリューの、Gカップの膨らみは、スーツの内側に、半分しか、収まらなかった。

 

上半分の、白磁の肉が、スーツのエッジから、「ぼろん」とこぼれ、室内の空気に、無防備に、晒された。先端の、朱色に染まりはじめた桜色の突起は、スーツの生地のエッジで、ごくわずかに、擦られていた。

 

彼女は、スーツの、背中のファスナーを、なんとか、閉じた。

 

背面から、銀色のコネクタが、カチリ、と、アナルプラグの先端に、はまった。

 

これで、彼女は、背中に、白い尻尾を、連結された。

 

歩くと、尻尾と、プラグが、連動した。尾が揺れれば、プラグが、内部で、微かに、動いた。

 

マリューは、鏡の前に、立った。

 

鏡の中に、いたのは――

 

胸の上半分が、スーツから溢れ出た、豊満な肉体の、バニー・ガール。

 

地球の古い娯楽時代には、このような衣裳を纏う女たちは、カジノのフロアで、男たちに酒を運ぶ役目を担っていたという。その時代の、その役割の、その装いに――アークエンジェルの、地球連合の誇る新型艦の艦長が、今夜、鏡の中で、収まっていた。

 

栗色の長い髪。その上に、馬鹿馬鹿しい、しかし、容赦のないデザインの、黒いウサギ耳。くびれた腰、豊かな骨盤、そして、つるりと剃られた恥丘を、辛うじて隠すハイレグ。背中からは、白い尻尾。その奥には、内臓まで貫く銀の異物。

 

その中心で――

 

両目だけが、まだ、軍人だった。

 

憎悪、怒り、拒絶。その三つが、まだ、二十四歳の女の、瞳の奥に、しっかりと、燃えていた。

 

「見事だな、少佐」

 

扉が、開いて、ガルシアが、入ってきた。

 

彼は、葉巻を吸いながら、マリューの全身を、頭のウサギ耳の先から、ヒールのつま先まで、ゆっくりと、値踏みした。

 

「その目の光は、結構。そのままでいい。――歩いてもらおう」

 

マリューは、歩いた。

 

ハイヒールのタップの音が、絨毯の上で、鈍く鳴った。

 

一歩、進むごとに、背中の尻尾が、小さく、揺れた。尻尾が揺れるたびに、彼女の内側で、プラグが、微かに、動いた。

 

「……っ」

 

歯を、噛みしめる。

 

しかし、内側の粘膜の、想定外の感度は、止まらなかった。歩くごとに、太腿の内側を、透明な蜜が、ごく僅かに、伝いはじめた。

 

ガルシアは、椅子に腰かけ、シガーを吸いながら、マリューの歩行を、見ていた。

 

「もう一周」

 

マリューは、歩いた。

 

二周目。

 

「もう一周」

 

三周目。

 

歩くごとに、溢れる蜜が、少しずつ、量を、増した。歩行のたびに、Gカップのたわわな白い双丘が、スーツの上縁から、上下に、ぼろん、ぼろんと、揺れた。先端の朱色の突起が、生地のエッジに擦られ、痛いほど硬く、尖った。

 

四周目、ガルシアが、手を、伸ばした。

 

白い尻尾の毛玉を、彼の指が、つまんだ。

 

そして、くい、と、軽く、引き上げた。

 

尻尾が、引かれた。プラグが、内部で、ぐりりと、動いた。

 

「――ひぅっ!」

 

マリューの、喉から、甘い、声が、漏れた。

 

彼女の、膝が、かくん、と、震えた。

 

両目の、憎悪の光は、まだ、消えていなかった。――しかし、股間と、胸の先端からの、身体の裏切りは、もう、止めようが、なかった。

 

彼女の瞳は、軍人のまま。

しかし、彼女の身体は、ガルシアに、完全に、調教されていた。

 

その乖離が、第一部の、最終的な、均衡だった。

 

その均衡こそが、ガルシアの、真の狙いだった。

 

人格を破壊したければ、瞳の光を奪えばいい。しかし、彼は、瞳の光を、あえて、残した。なぜなら――**瞳に憎悪を燃やしたまま、身体だけが濡れている**その状態こそが、一番、屈辱的だからだ。

 

瞳の光が消えた女は、ただの廃人である。

瞳の光が残ったまま、身体が反応する女だけが、「堕ちていく」という過程の、全てを、自分で、自覚する。

 

そして、自覚したまま、抗えずに、濡れ続ける。

 

それが、ガルシアの設計した、この九日間の、到達点だった。

 

「美しい乖離だ、ラミアス少佐」

 

ガルシアの声が、愉悦に、満ちていた。

 

「貴官のその、憎しみの瞳のまま、私の前で、雌として、濡れる。これ以上、甘い見世物は、ない」

 

「……っ」

 

マリューは、歯を、食いしばった。

 

食いしばった歯の奥から、熱い涙が、頬を、一筋、流れた。

 

その涙の軌跡を、ガルシアは、シガーの煙の向こうで、じっと、見つめていた。

 

そして、彼は、低く、呟いた。

 

「――来週、もう一人、大事なお客を、この部屋に、招こう。貴官に、見てもらう。楽しみに、していなさい」

 

マリューの、憎悪の瞳が、その言葉の、意味を、即座には、咀嚼しなかった。

 

しかし、胸の谷間の、銀の環は――

 

遠い、何か、悪い、予感で、細く、細く、震えはじめていた。

 

窓の向こう、要塞の外殻の遥か先、無機質な宇宙光の中で、アークエンジェルの艦影が、相変わらず、静かに、浮かんでいた。

 

あの艦の、通気ダクトの奥では、今、ナタル・バジルール副長が、暗闇の中を、音もなく、前進していた。

 

彼女の指先が、冷たい金属のダクトの壁を、一センチ、一センチと、探っていた。その先の、要塞の最奥では、かつての艦長が、バニー・ガールの衣裳を纏い、憎悪の瞳で、しかし蜜に濡れた秘部で、ガルシアの前に立っていることを――副長は、まだ、知らなかった。

 

知らないまま、彼女は、進み続けた。

 

補給完了まで、残り、十日。

 

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