# 第四章 快楽への降伏 ――使命と人格の砦
## 4-1 自ら開く穴(Day 23)
Day 23、午後二十一時、五十分。
アルテミス司令官公邸、奥の廊下を、マリュー・ラミアス少佐は、一人で、歩いていた。
召喚の通信は、まだ、来ていなかった。
しかし、彼女は、制服を整え、髪を後ろでまとめ、いつもの時刻より、十分ほど、早く、司令官室へ、向かっていた。
昼のブリッジでも、彼女は、正しく艦長として機能した。キラ・ヤマト少尉の戦術訓練を、的確に評価した。補給進捗表に、慣れた手つきで、印を押した。その全てに、十日前までの、「まだ持ちこたえている艦長の演技」は、なかった。十日前までは、演技を、していた。今は、演技を、意識することさえ、彼女の中で、薄れていた。
理由は、単純だった。
演技を、意識する「私」が、既に、ほぼ、消えていたからだ。
その代わりに、彼女の身体は、夕暮れが近づくごとに、内側から、ある種の、温度を、持ち始めていた。
Day 14の夜、ガルシアに、彼女自身ですら知らなかった「最初の快楽」を、子宮の前面の一点で、引き出されて以来――
その一点は、毎夜の調教で、少しずつ、少しずつ、開発された。今や、その一点は、触られていないのに、夕方、十八時を過ぎた頃から、ほの温かく、じわじわと、熱を、帯びはじめるように、なっていた。
――召喚を、待つ。
その「待つ」という時間そのものが、彼女の内側に、ひとつの、気怠い、飢えのような感覚を、生みはじめていた。
その飢えの正体を、マリューは、正確には、言語化していなかった。
ただ――今夜、彼女は、自分の足で、召喚の前に、この部屋へ、向かっていた。
「どうぞ、お入りください、ラミアス少佐」
扉の前に立つガルシアの副官の、若い将校が、意外そうな顔をした後、彼女を、通した。
扉が、開いた。
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部屋の中に、ガルシアは、まだ、いなかった。
椅子の奥に、椅子に縛られた、ナタル・バジルール副長だけが、いた。
ナタルの紫紺の眼差しが、十日ぶりに、「召喚の前に自ら現れた艦長」を、捉えた。
「艦長――」
ナタルの、声は、かすれていた。
彼女は、この九日間、毎夜、椅子に縛られたまま、マリューが、ガルシアに組み敷かれる光景を、目撃し続けてきた。夜の間は、椅子で眠らされ、昼の間だけ、ナタルは副官の監視下で艦内の個室に戻され、形式的に、艦の副長としての公務を、こなしていた。表向きは、「アルテミス司令部との恒常的な連絡役」という任務名が、つけられていた。
ナタルは、この九日間で、深い疲弊を、顔に、刻んでいた。
しかし、マリューは、椅子のナタルを、一瞥もしなかった。
彼女は、部屋の中央まで歩き、ベッドのある一角の、絨毯の上で、立ち止まり――
自分の、軍服のボタンを、外しはじめた。
「艦長!」
ナタルの、声が、今夜、初めて、鋭さを、取り戻した。
「何を、なさるのですか。まだ、あの男は、来ていません!」
マリューは、応えなかった。
ジャケット。ブラウス。タイトスカート。シルクの下着。
全てが、絨毯の上に、順に、落ちていった。
全裸の彼女は、ベッドの縁に、両手をついた。
そして、身体を、ゆっくりと、四つん這いに、低くしていった。
豊満な双丘が、重力に従って、ベッドのシーツの上で、たわわに、ぶら下がった。骨盤が、高く、突き出された。丸く張った白い尻が、絨毯の上のナタルに、真正面から、晒された。
つるりと剃られた恥丘。
既にかすかな蜜で、光る、半開きの秘裂。
そして、その上の、ガルシアの指で、九日間、毎夜、少しずつ、開発されてきた――もう一つの、穴。
マリューは、両手を、背中に回した。
丸く張った自分の白い臀部の肉を、自分の指で、左右へ、押し広げた。
「――!」
ナタルの、喉が、声にならない音を、立てた。
マリューの、骨盤の、中央の、暗い線の、奥。
既に、緩やかに、口を、開きかけていた、彼女の「もう一つの穴」が、電子照明の下で、ありありと、さらされた。
縁の色は、開発の過程で、僅かに、変色しはじめていた。内側の、粘膜が、呼吸のように、ゆっくりと、ひくり、ひくりと、蠢いた。
マリューは、さらに、自分の指で、その穴の縁を、ゆっくりと、自分の手で、広げた。
穴が、さらに、開いた。
その奥の、暗い空洞まで、見えるほどに。
「――ガルシア、様」
マリューの、唇から、声が、漏れた。
初めて、「様」付けで、ガルシアを、呼んだ。
声は、甘かった。甘く、少し、息を、含んでいた。
「お願いです。どうか……わたしの中に、ください」
ナタルの、頬に、音もなく、涙が、流れた。
副長の椅子は、マリューの四つん這いの背後、ちょうど真裏の、角度にあった。だから、ナタルの視界の中に、マリューの広げた「穴」は、完全に、収まっていた。
自分の上官が、自分の意志で、四つん這いになり、自分の指で、自分の、本来性器ではない穴を、こじ開けて、敵将の雄を、乞うている。
この光景は、ナタルの、軍人としての、精神構造のどこにも、収まる棚を、持たなかった。
扉が、開いた。
葉巻を咥えた、ガルシア・ジェラードが、部屋に、入ってきた。
マリューの光景を、見た。
そして――彼は、初めて、声に出して、笑った。
「ほう、少佐。早いな」
マリューは、四つん這いのまま、顔だけ、ガルシアの方向へ、振り向いた。
――ナタルは、そこで、息を、呑んだ。
マリューの顔は、既に、軍人の顔では、なかった。
頬は、上気して、薄紅に、染まっていた。唇は、唾液で濡れて、半開き。目尻は、ほんのり、潤んでいた。そして、何よりも――
ガルシアを、見上げる、その眼差しに、今夜、初めて――
「期待」の色が、明白に、滲んでいた。
「貴官、自分で、開いているのか」
「……はい、ガルシア様」
「ほう。どうして」
「……九日、ずっと、考えて、いたのです」
マリューの声が、自分で自分を、赦すように、揺れた。
「あの……十四日目の、夜から……身体の、あの場所、が……いつも、温かく、なって、しまって……」
ガルシアは、既に、礼装のガウンの、帯を、解きはじめていた。
「自分で、触っても、静まらないのか」
「……触って、みました。でも、わたしの、指では、足りないんです……ガルシア様の、お、手でなければ……」
それは、嘘ではなかった。この九日間、マリューが、昼の艦長公務の後、自室で、ひとり、何度か、試した結果の、正直な申告だった。
彼女は、自分でも、気づいていなかったが、既に、「自分の身体を、自分ではなく、ガルシアの手で、鎮める」ことが、当たり前になっていた。
ガルシアは、ベッドに上がり、マリューの背後に、膝をついた。
そして、礼儀も、前戯も、省略した。
彼の既に硬くなった雄の先端を、マリューが自分で開いた、その穴に、宛がった。
「――んッ、ひゃぁッ――!」
マリューの、喉が、甘く、鳴いた。
ガルシアが、腰を、進めた。
九日間、少しずつ開発されてきた「もう一つの穴」が、今夜、初めて、根元まで、貫かれた。
「あぁっ! あ、あッ、ふか、ぁぁっ!」
マリューの声は、もう、拒絶では、なかった。
それは、長く、求めていたものを、ついに、与えられた、雌の声、だった。
「見ろよ、副長」
ガルシアが、ピストンを、始めながら、ナタルに、視線を、向けた。
「貴官の、旧艦長が、自分から俺を乞うて、尻の穴で、俺を、受け入れている。これが、貴官が、十四日間、見続けた、女の、最終形態だ」
ナタルは、顔を、背けた。
しかし、ガルシアの副官の指が、彼女の顎を、正面に、戻した。
強制的に、ナタルの紫紺の眼差しは、マリューの、突き出された臀部と、そこを激しく前後するガルシアの雄と、揺れ続ける豊満な二つの白い膨らみを、捉え直させられた。
マリューの、バックでの激しいピストンの衝撃に合わせて、彼女の豊満な双丘が、下方向に、たぷん、たぷん、と、大きく、揺れていた。その先端の、もう朱色を通り越して暗紫に色を変えた突起が、シーツに、擦れていた。
そして、マリューは、自分から、腰を、振っていた。
ガルシアの律動に、自分の骨盤を、合わせて、さらに、深く、咥え込もうとしていた。
「ガルシア様、ガルシア様、あぁっ、もっと、もっと、奥まで――!」
ナタルの、唇が、音もなく、動いた。
(……艦長)
(あなたは、もう、いないのですね)
その一言を、副長は、心の中で、マリュー・ラミアスへ、手向けた。
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## 4-2 舌で、拾う(Day 24)
翌夜。Day 24。
ガルシアは、その夜、長時間の行為のあと、満足げに、マリューの身体から、ゆっくりと、男根を、引き抜いた。
マリューは、仰向けで、ベッドの上に、弛緩していた。秘裂から、先程注がれた雄の精が、糸を引いて、シーツに、垂れ、広がっていた。胸の上には、ガルシアが途中で膨らみに吐き出した、二筋の濃い飛沫が、まだ、乾ききらずに、光っていた。
ガルシアは、ベッドの端に、腰を下ろし、葉巻を、取り出した。
彼の股間の、使用済みの雄は、濃い種汁と、マリューの蜜と、先程のアナルから滲んだ腸液とで、ねっとりと、汚れていた。
通常であれば、このあと、マリューは、副官が運んでくる温かいタオルで、身体を拭われ、司令官室の隣のシャワールームへ、案内される。それが、十日ほど前から、この部屋での、「行為の後」の、ルーティンだった。
しかし――
その夜、マリューは、仰向けの姿勢から、ゆっくりと、身体を、起こした。
副官のタオルが、来るのを、待たなかった。
彼女は、自分から、シーツの上を、ベッドの縁に座るガルシアの、足元へと、這い寄った。
四つん這いで。
豊満な双丘を、重力に従って、たわわに揺らしながら。
白濁を垂らす秘裂を、後ろに、無防備に、晒しながら。
ガルシアは、葉巻に火を点ける動作を、半ば、止めた。
マリューが、彼の、脚の間に、跪いた。
そして――
彼女は、両手を、そっと、ガルシアの、太腿の上に、置いた。
顔を、ゆっくりと、下げた。
唇が、使用済みの、濡れた雄の、先端に、軽く、触れた。
口づけのような、挨拶のような、ひと触れ。
そして、舌が、そっと、出された。
赤く、湿った、舌の先。
彼女は、その舌で、雄の先端に、残っていた、白濁と、蜜と、腸液の、混合物を、ぺろ、と、舐め取った。
ごく自然な、動作だった。
命じられて、いなかった。
ガルシアは、葉巻を、唇から、外した。
「――おや」
低い、興味の、声。
マリューは、顔を上げなかった。
彼女は、舌を、二度、三度と、動かした。雄の、横筋、根元、そして、もう一度、先端へ。残った体液を、一滴も、無駄にしないように、舐め取った。口の中に、ガルシアの体液と、自分の蜜と、自分の腸液の、混合物が、ねっとりと、広がった。
普通なら、吐き気を、催す組成のはずだった。
ガルシアの、苦く、濃く、鉄錆に似た精液の味。マリューの、蜜の、甘いが獣めいた香り。そして、腸からの、どうしても、かすかに、排泄の香りを含む、腸液の味。
それらの、三つの体液の混合物が、二十四歳の、高貴なナチュラルの女の、口腔内で、混ざり合っていた。
十五日前までの、「マリュー・ラミアス」なら、これを、一秒も、口内に、止めておけなかっただろう。想像するだけで、嘔吐反射が、喉の奥で、起きたはずだった。
しかし、今夜のマリューは――
それを、彼女は――
こくん、と、喉を、鳴らして、嚥下した。
口の中のものを、全て、飲み下した。
それから、もう一度、舌を、出した。雄の下側、陰嚢の近く、ガルシアの太腿の付け根、――体液が、付着していると思われる、全ての場所を、彼女は、ゆっくりと、丁寧に、清めはじめた。
ちゅ、ぺろ、ちゅぱ。
小さな、粘った、水音。
椅子に縛られたナタルは、目を、開けていた。
この十日間、ナタルは、数えきれないほどの、マリューの、陵辱の光景を、目撃してきた。胸を揉まれる姿、口腔を犯される姿、秘裂を穿たれる姿、潮を吹く姿、失神する姿。その全てを、彼女は、歯を食いしばって、見続けてきた。
どの光景も、「艦長は、無理やりにされている」という認識の下で、副長としての、怒りと、無力感と、そして、必ず取り戻すという、決意を、彼女に、刻んだ。
しかし、今夜の、この光景は――違った。
艦長が、自分の意思で、敵将の足元に、這い寄っている。
自分の意思で、敵将の雄に、舌を、伸ばしている。
自分の意思で、敵将の体液を、舌で、集めている。
自分の意思で、それを、嚥下している。
嘔吐反射を、どこかへ、自分で、飲み込んでいる。
顔には、微かな、恍惚の、色さえ、浮かんでいる。
ナタルは、目を、開けていた。
開けていて、そして――ゆっくりと、閉じた。
閉じたまま、彼女の頬を、涙が、ひと筋、音もなく、伝い落ちた。
軍人として、規律の人として、副長として、この十日間、ナタルは、涙を、何度か、流してきた。しかし、今夜の、この涙は、これまでの涙と、性質が、違っていた。
これまでの涙は、「艦長を救えない自分」への、悔恨の涙だった。
今夜の涙は――
「救うべき艦長が、そもそも、もう、そこに、いなかった」ことを、認める、**弔いの涙**、だった。
(もう、戻らない)
副長が、心の中で、認めた瞬間だった。
それは、艦長と副長という、二年間、共に戦ってきた二人の関係の、静かな、葬儀の、瞬間でもあった。
マリュー・ラミアス少佐という個人は、ここに、いない。
十四日前までの、あの優しい、厳しい、凛としていた艦長は、二十四年かけて積み上げた全てを、この五分で、自分の舌で、全て、洗い落とした。
ガルシアの体液に、自分の舌で、秩序を、与えた。
嫌いな味ではない、という顔で、嚥下した。
そして、次の部分に、舌を、自然に、伸ばした。
それは、調教ではなく、**献身**だった。
献身は、強制されて生まれるものではない。内側から、湧き出るものだ。
マリュー・ラミアスの、内側から、「この男に、献身する」という、気持ちの、形が、生まれはじめている。
その事実に、ナタルの中で、軍人としての、全ての抗議の言葉が、同時に、尽きた。
マリューは、やがて、ガルシアの全身の、「自分が触れた痕跡」を、全て、舌で、舐め清めた。
最後に、彼女は、顔を、上げた。
口の端に、微かな、白い残滓が、光っていた。その残滓を、彼女は、自分の、人差し指で、すくい取り、そして、ちゅ、と、指先を、口の中に、入れた。
吸い取った。
こくん、と、喉を、鳴らした。
「――ありがとう、ございました、ガルシア様」
静かに、敬語で、彼女は、そう言った。
「とても、おいしゅう、ございました」
ガルシアは、しばらく、その姿を、見下ろしていた。
そして、彼は、葉巻に、再び、火を、点けた。
「貴官は、才能があるな、ラミアス」
低く、呟いた。
「だが、もう、貴官は、ラミアスでは、ないな」
ガルシアは、彼女の顎を、指で、掬い上げた。
「今日から、貴官の名は、『俺のマリュー』だ」
マリューは、俯いた顔を、上げた。
彼女の目は、恥じらいも、怒りも、屈辱も、もう、宿していなかった。
宿していたのは、ただ、優しい、優しい、「恋愛」の色を、していた。
ヘリオポリスのバーで、酔い潰れた戦闘機乗りに、肩を貸した夜の、若いマリューが、その翌朝、目覚めた時に、鏡の中に見つけた「少し、恋を、しはじめている自分」。
――その顔と、今、ガルシアを見上げている顔は。
同じ、種類の、顔だった。
「恋」は、形式としては、対象を、選ばない。
栗色の髪の青年にも、葉巻を咥えた中年の将官にも、同じ顔で、芽吹く。
マリュー・ラミアスの、内側の、「恋の回路」は、ガルシアの二十五日間の調教によって、接続先を、静かに、差し替えられていた。
「……はい、ガルシア様」
囁き声で、彼女は、答えた。
「わたし、は、ガルシア様の、マリュー、です」
その言葉は、もはや、脅迫に、応じた台詞ではなかった。
内側から、自然と、湧き上がってきた、恋心の、発音だった。
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## 4-3 撃て、ストライク(Day 27)
Day 27、十四時三十七分。
アルテミス、東区画、第七格納庫。
警報が、鳴った。
――、――、――、――。
要塞全体を揺るがす、鋭く、規則正しい、電子音。
『第一種戦闘態勢。ZAFT軍と思われる機影、アルテミス宙域に、複数、接近。機種判別中。全兵員、戦闘配置につけ、繰り返す、全兵員、戦闘配置につけ』
管制塔の、若い通信兵の、震える声が、要塞中のスピーカーから、流れた。
司令官室。
マリューは、ガルシアとの、午後の性行為の、ちょうど途中だった。
裸で、仰向けに、シーツの上で、ガルシアの雄を、根元まで咥え込んで、彼女は、静かに、喘いでいた。窓の外では、オーメン・シールドの蒼白い膜の、その向こうに、既に、ZAFTの機影の、光のしるしが、三つ、四つ、近づきつつあった。
「――忌々しい」
ガルシアは、行為を、中断した。
彼は、急いで、マリューから身を引き、礼装を、手早く、身に着けた。
「少佐、地下シェルターに、避難する。貴官は、ここで、待て。部屋を、出るな。五分で、戻る」
マリューは、シーツに横たわったまま、頷いた。
「……はい、ガルシア様」
ガルシアは、副官を呼び、ナタルの椅子を、副官に、地下へ運ばせる指示を出した。ナタルは、拘束されたまま、別室経由で、地下シェルターへ、連れ出された。最後に、ナタルの紫紺の眼差しが、マリューに、何か、言いたそうに、向けられた。
しかし、マリューは、それに、応えなかった。
扉が、閉まった。
室内に、マリューだけが、残った。
全裸で、仰向けで、太腿の間から、ガルシアの中出しの名残りが、糸を引いて、シルクのシーツに、垂れていた。
警報は、鳴り続けていた。
『ZAFT機、ブリッツ、イージス、二機を確認。アルテミス、正面防衛網、交戦開始』
『アークエンジェル、MS-01ストライク、発艦準備完了。出撃許可を、司令部に、要請中』
その通信の、管制塔の声が、司令官室のスピーカーにも、微かに、届いた。
ストライク――キラ・ヤマト少尉。
マリューの頭の奥で、一瞬、少年の顔が、浮かんだ。
彼は、今、アークエンジェルの、格納庫で、自艦の艦長が、この要塞に囚われていることを、まだ、知らない。知らないまま、ストライクで、出撃して、この要塞を、守ろうとしている。
マリューの、呼吸が、一瞬、浅く、なった。
彼女は、身体を、ゆっくりと、起こした。
ベッドから降り、絨毯の上に、立った。全裸のままだった。軍服は、部屋の隅に、畳まれて、置かれていた。
彼女は、扉の方へ、歩いた。
扉の前で、止まった。
取っ手に、右手を、かけた。
――。
扉の向こうは、司令官公邸の、廊下。廊下は、避難経路の途中にある。もし、今、この廊下に出れば、彼女は、地下シェルターへ向かう将校たちに、混ざれる。あるいは、非常階段を使って、表の格納庫に降りることも、可能かもしれない。そして、表の格納庫に、辿り着ければ――
アークエンジェルのハンガードックまで、一直線だ。
戦闘中のアルテミスは、警備の目が、甘くなる。
キラ・ヤマトは、ストライクで、出撃している。
この扉を、開ければ、マリュー・ラミアスは、二十七日ぶりに、自艦へ、帰れる可能性が、あった。
マリューの、手が、取っ手を、握りしめた。
数秒、動かなかった。
窓の向こうでは、ストライクと、ブリッツが、交戦を、始めていた。遠くで、爆発の、閃光。
マリューの、手が――
取っ手を、離した。
離した、その瞬間、彼女は、自分の胸の谷間に、無意識に、左手を、添えた。
そこには――もう、銀の環は、なかった。
六日前、ムウとの通信の夜、彼女自身が、外して、絨毯の上に、落として、ガルシアの軍靴で、踏み潰された、あの指輪。その重みは、もう、彼女の谷間には、存在しない。代わりに、その空白には、この一ヶ月で、ガルシアが、何度も、何度も、白濁を、吐きかけた、微かな残り香が、染みついていた。
その残り香を、嗅いだ瞬間――
マリューの、身体の奥の、一点が、あの、九日前から温かい場所が、じわりと、熱を、持った。
迷い、は、消えた。
その手は、取っ手ではなく、扉の、内側の電子ロックのパネルの方へ、移動した。
彼女の指が、電子ロックの、「施錠」のボタンを、押した。
カチ、という音。
それは、マリュー・ラミアスが、自分自身の意思で、アークエンジェルとの、物理的な帰還経路を、**自分の手で封鎖した音**、だった。
部屋の扉が、内側から、ロックされた。
ガルシアが、暗証番号を打ち込まなければ、外からも、中からも、開かない状態に、なった。
マリューは、電子ロックのパネルから、手を、離した。
そして、絨毯の上を、ベッドの方へ、ゆっくりと、戻った。
Gカップの、重量感のある膨らみが、歩調に合わせて、豊かに、揺れた。太腿の間からは、ガルシアが先程注いだ熱の残滓が、歩くたびに、ひと筋、ふた筋と、流れた。
彼女は、ベッドの縁に、腰を、下ろした。
そして――
仰向けの姿勢で、自分の両足を、膝の裏で、抱え、大きく、左右に、広げた。
無毛の恥丘と、半開きのまま白濁を垂らす秘裂と、使用直後のアナルが、天井の方向に、広く、晒された。
ガルシアが、帰ってくる。
彼が、この姿勢を見て、どう反応するか――マリューは、もう、分かっていた。
彼は、地下シェルターから、戻る時間を、惜しんで、この姿勢のマリューを、ベッドの上で、その場で、貫く。彼女の身体を、自分の「守る場所」として、戦闘の最中に、再確認する。
マリューの、下腹部の、九日前から「温かい場所」が、今、既に、燃えるように、熱かった。
彼女の口角に、微かな、笑みが、浮かんだ。
恐怖ではなかった。
**期待**だった。
---
『警報解除。ZAFT機、撤退を、確認』
約四十分後。
アルテミスのスピーカーから、通信兵の、疲労した声が、流れた。
『アークエンジェル・ストライク、勝利を、確認。――ゼロの撃墜損失、無し』
ゼロの、撃墜損失、無し。
つまり、キラ・ヤマトは、無事に、帰投した。アークエンジェルも、無事だった。
マリューの、耳に、その通信が、届いた。
彼女は、ベッドの上で、両足を広げた姿勢のまま、その通信を、聞いた。
そして――
微笑んだ。
(よかった……キラくんが、無事で)
心の底から、そう思った。
しかし、その「よかった」は、もう、「私もアークエンジェルに帰れる」という意味では、なかった。
(皆が、無事だから、わたしは、ここに、いて、いいんだ)
その、新しい論理を、マリュー・ラミアスは、二十七日目にして、自分の内側に、発見していた。
扉の、電子ロックの、解錠の音が、した。
ガルシアが、戻ってきた。
彼は、礼装の肩に、ほんの僅かな砂埃を、つけていた。地下シェルターから、急いで、戻ってきた痕跡だった。
扉を、開いた瞬間、彼は、ベッドの上の、マリューの姿を、見た。
全裸で、両足を膝の裏で抱え、広げて、待っている。
ガルシアの、灰色の眼が、一瞬で、熱を、持った。
「……マリュー」
「ガルシア様」
マリューは、甘い声で、彼を、呼んだ。
「おかえり、なさいませ。……ずっと、お待ち、しておりました」
ガルシアは、扉を、閉めた。再び、電子ロックを、施錠した。
そして、礼装の帯を、また、解きはじめた。
「部屋を、出なかったのか、マリュー」
「……はい。ガルシア様の、おそばに、いたかったので」
ガルシアが、笑った。
「扉を、自分で、施錠したようだな。そうしなければ、戦闘の、騒ぎで、部下が、誤って、入ってくるかもしれないからな」
マリューは、頷いた。
「ガルシア様の、おそばに、他の、男性が、来るのは、嫌、でしたから」
それは――マリューが、自分で、気づかないうちに、発音した、「嫉妬」の、形の、台詞、だった。
ガルシアは、ベッドに、上がった。
そして、彼は、広げられたマリューの両足の間に、自分の身体を、割り入れた。
「よく、言った」
彼の雄が、使用直後で、まだ、彼女の体液で濡れていた秘裂に、再び、押し当てられた。
「貴官は、もう、完成したな」
「――ッ、あぁぁっ!」
挿入と、ほぼ同時に、マリューの、身体は、小さく、一度、痙攣した。
絶頂に、近い反応を、挿入の、第一撃で、身体が、起こした。
ガルシアは、容赦なく、腰を、動かし始めた。
マリューの広げた両足が、ガルシアの動きに合わせて、さらに、大きく、広がった。豊満な双丘が、仰向けの衝撃で、脇へ、前方へ、大きく、波を打った。
「ガルシア様、ガルシア様、好き、です、好き、です――!」
マリューの、口から、その言葉が、この二十七日間で、初めて、飛び出した。
「好き」。
二文字の、恋の言葉。
それを、マリューは、自分の夫となるはずだった男ではなく、自分の肉体を、二十七日間、調教し続けた男に向けて、発音していた。
ガルシアは、受け止めるように、笑った。
「俺も、愛しているぞ、マリュー」
それは、嘘だった。もちろん、嘘だった。ガルシアにとって、マリューは、ただの、「ナチュラル最高級の母体」に過ぎなかった。
しかし、嘘で、十分だった。
マリューの、子宮の一点が、「愛している」という三文字の台詞に、直接、反応した。
下腹部の奥で、熱い痙攣が、ふたたび、起きた。
戦闘の警報が、解除されて、まだ、十分も、経っていなかった。
ストライクは、アルテミスを、守るために、戦った。キラ・ヤマトは、艦長が、この要塞に囚われていることを、知らないまま、必死に、戦った。
その、少年の戦いの、直後に――
マリュー・ラミアス艦長は、ベッドの上で、敵将に、「愛している」と、言わせて、腰を振っていた。
使命の砦は、この四十分で、彼女自身の手によって、内側から、完全に、破壊された。
彼女は、その破壊を――
一切、自覚すら、していなかった。
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## 4-4 数珠、仮面、舞台(Day 30)
Day 30、二十三時。
アルテミスの、地下、第三区画。
そこは、要塞の地図には、記載されていない、小さな劇場を備えた、秘密の、将校倶楽部だった。
二十人ほどの、将校と、その客人。葉巻の煙、ブランデーの香り、そして、低いジャズ。壁には、黒のビロード。天井には、小さなシャンデリア。
会員は、限られていた。アルテミス駐留の、中佐以上の将官。ガルシアが、三年かけて、一人ひとり、身辺調査をして、選別した、「同じ趣味の」男たち。各々が、この地下倶楽部に、自分の所有する「ペット」を、時折、舞台に、提供する契約に、なっていた。
この日、マリューは、ガルシアのコレクションの、最新作として、この舞台に、初披露される、という運びだった。
既に、この倶楽部には、以前から、フレイ・アルスターという、赤毛の少女の披露歴が、あった。しかし、フレイは、この半年で、舞台映えする反応の、多くを、既に、失っていた。自我が、薄れすぎて、演目が、単調に、なっていた。
ガルシアは、五ヶ月前に、副大臣アルスターから、娘を受け取って以来、「次の最高傑作」を、必要としていた。――マリュー・ラミアスは、その「最高傑作候補」として、三十日間、手元に、置かれた。そして、今夜、最終選考の、お披露目、だった。
舞台の奥から、ガルシアの、副官が、声を上げた。
「紳士諸兄。本夜の、主役の、ご登場です」
舞台の、幕が、上がった。
中央のスポットライトの下に、全裸で、立っていたのは――
マリュー・ラミアス。
頭には、黒いビロードの、眼元を隠す、仮面。
しかし、口元から下は、仮面では、覆われていなかった。
将校たちの中に、いれば、誰が、気づく者もいた。しかし、気づいたところで、誰も、口には、出さなかった。倶楽部には、倶楽部の、ルールが、あった。
マリューの、Gカップの、乳白の双丘が、スポットライトを、反射した。その、先端の、暗紫の突起は、既に、空気に触れているだけで、硬く尖っていた。
彼女の、つるりとした恥丘と、その下の、緩くなった秘裂は、全く、隠されていなかった。
彼女の尻穴には、その夜、既に、彼女の身体の奥深くに、仕込まれているものが、あった。
ガルシアが、倶楽部の、一等特別席から、副官に、合図を、送った。
副官が、舞台の、マリューに、小さな、リモコンの、銀色の、ボタンを、見せた。
そして、押した。
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マリューの、体内で。
前夜、ガルシアによって、丁寧に、深く、挿入されていた、連結した球体の、アナルビーズ。計、五個。それぞれの球体が、遠隔制御で、低周波の振動を、はじめる仕様、だった。
その振動が、Day 27以降、マリューが完全に覚えきった「もう一つの穴」の、粘膜の、奥深くから、一斉に、発動した。
「――あ、あぁッ――!」
マリューの、腰が、舞台の上で、跳ねた。
舞台の中央で、彼女は、立ったまま、身体を、震わせた。
「紳士諸兄。ご覧のとおり、本夜の演目は、舞踊では、ありません」
ガルシアの、濁った灰色の眼が、舞台の彼女を、じっと、見ていた。
「本夜の演目は、『自分で自分を、お見せする』こと、です。……マリュー、始めなさい」
マリューは、頷いた。
眼を隠す仮面の下で、唇が、弱く、微笑んだ。
彼女は、ゆっくりと、膝を折り、舞台の中央に、腰を、下ろした。
そして、両膝を、左右に、大きく、広げた。
無毛の恥丘が、客席の方向へ、真っ直ぐに、向けられた。
二十人分の、粘つく視線が、一斉に、マリューの、秘裂と、その上の、仮面の下の、唇に、集まった。
彼女は、震える、右手の、中指を、自分の、口に、運んだ。
ちゅ、ぺろ。
舌で、指を、濡らした。
濡れた中指を、自分の、秘裂の、陰核の、位置に、ゆっくりと、下ろした。
指先が、触れた。
――ひゃうッ……!
マリューの、腰が、軽く、跳ねた。
そのまま、彼女の指は、自分で、自分の、小さな肉芽を、ゆっくりと、転がし始めた。
同時に、アナルの中で、五つの球体が、リモコンの振動を、続けていた。
前と、後ろ、両方からの、刺激。
観客の将校たちの、視線の圧力。
マリューの、頬が、仮面の下で、赤く、染まり始めた。呼吸が、深く、浅く、不規則に、なった。
唇から、小さな、甘い声が、漏れはじめた。
「……あっ、はぁ……あ……!」
Gカップの、豊満な双丘が、自慰の動きに、合わせて、上下に、揺れた。
先端からは、発情した雌特有の、甘い汗が、ごく僅かに、にじんで、スポットライトの下で、光った。
十分が、過ぎた。
マリューの、呼吸が、限界に、近づいていた。
彼女の、指が、動きを、速めた。太腿が、内側に、小刻みに、震えはじめた。
ガルシアが、もう一度、副官に、合図を、送った。
副官が、リモコンの、別のボタンを、押した。
それは、アナルビーズの、排出スイッチ、だった。
マリューの、アナルから――
ずるり、と。
五つの連なった球体が、彼女の意志とは無関係に、ゆっくりと、しかし止まらない、遠隔制御の、ワイヤーに、引かれて、後方へと、排出されはじめた。
一つ目の球体が、括約筋を、押し広げて、抜けた瞬間、マリューの両目が、仮面の下で、見開かれた。
「――ひぅ、っ!」
二つ目が、抜けた。
「あぁぁッ、ぬける、ぬけちゃう、ぅぅッ!」
マリューの、舞台の上の、自慰の、指の動きが、さらに、加速した。
三つ目。
「あ――あ――!」
四つ目。
マリューの、腰が、弓のように、反った。
そして――
五つ目が、最後に、彼女の、アナルから、抜け落ちた、その、瞬間。
マリューの、秘裂から、熱い、透明な液体が、ほとばしった。それに続いて、**弛緩し切った括約筋から、温かい、黄金色の液体が、もう一筋**、舞台の、黒光りする床に、音を立てて、流れた。
潮吹きと、失禁が、同時に、起こった。
マリューの、両目が、仮面の下で、ぐるりと、上方向へ、裏返った。
白目が、仮面の縁から、のぞいた。
唇が、半開きになり、舌が、だらしなく、口の端から、僅かに、はみ出した。
頬は、紅潮し、口角は、緩み――それは、「アヘ顔」と呼ばれる、その形、そのものだった。
マリューの、身体は、舞台の上で、一度、大きく、痙攣して、そして、ゆっくりと、横に、倒れた。
意識は、あった。しかし、焦点の合う、意識では、なかった。
彼女は、倒れたまま、自分の、下腹部に、手を、添えた。
そして、陶酔した笑みで、倶楽部の、観客席の、ガルシアに向けて、声を、出した。
「――ガルシア、様……」
甘く、とろけた、声。
「……もっと……わたしを……つかって、ください……」
倶楽部の、二十人の将校が、一斉に、静まり返った。
そして、次の瞬間、低く、深い、男たちの、歓声が、上がった。
アルテミスの、地下の、最奥の舞台で、拍手が、湧いた。
マリュー・ラミアス少佐という人格は――
その拍手の音の中で、完全に、消滅、した。
ヘリオポリスの、モルゲンレーテ技術部の、優秀な若手技術士官。
アークエンジェルの、初代艦長。
「マリュー艦長」と、クルー百名に、親しみを込めて、呼ばれていた、あの女。
ムウの、銀の指輪を、胸の谷間で、温めていた、あの女。
母の死を背負って、「守る者として生きる」と誓った、十歳のあの少女。
そのすべての、積層した「マリュー・ラミアス」が、
この、アルテミスの、地下の、倶楽部の、仮面の、拍手の中で、
一枚ずつ、剥がれて、床に、墜ちて、そして、消えた。
跡には、登録番号一七三番の、「ガルシア所有コレクション」だけが、
舞台の上で、倒れたまま、恍惚の笑みを、浮かべていた。
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舞台の、袖に、大きな鏡が、用意されていた。
観劇を終えた将校たちが、次々と、退場していく中、マリューは、副官に、手を引かれ、その鏡の前に、立たされた。
仮面は、まだ、つけたままだった。
しかし、鏡に映る、自分の、全身を、マリューは、見た。
仮面の下の、唇。白濁と潮で、湿った、頬と、首筋。だらしなく、重く、垂れた、Gカップの双丘。すっかり開ききって、白濁と腸液を、太腿に伝わせている、二つの穴。
それは――
どの角度から見ても、
**「艦長」**には、見えなかった。
どの将校の目から見ても、どの兵士の目から見ても、どのクルーの目から見ても――
アークエンジェルの、あの、優しく、厳しく、凛としていた、マリュー・ラミアス少佐に、**もう、誰一人、この鏡の女を、重ねることは、できない**。
マリューは、鏡の中の、自分を、見た。
そして、彼女は、もう一度、陶酔した笑みを、浮かべた。
鏡の中の女は、その笑みを、同じ形で、返した。
それが、マリュー・ラミアス少佐の、最後の、鏡像だった。
鏡の縁に、副官が、薄いカードを、差し込んだ。
「審査、全会一致、可決。本日付で、ラミアス少佐殿は、当倶楽部の、『保有コレクション』に、登録されました。登録番号、一七三番。――登録番号以前の名前は、本倶楽部内では、記載されません」
マリューは、そのカードを、仮面の下の目で、静かに、見つめた。
そして、頷いた。
「……ありがとう、ございます」
彼女の声には、「屈辱」も、「怒り」も、「悲しみ」も、既に、一切、混ざっていなかった。
混ざっていたのは、ただ――
「自分に、新しい、居場所が、与えられた」という、静かな、安堵、だった。
窓の、遥か向こう、要塞の外殻の、遥か先、無機質な宇宙光の中で、アークエンジェルの艦影は、今夜も、静かに、静かに、浮かんでいた。
あの艦には、もはや、帰りたい場所としての意味は、この舞台の女の中から、完全に、消えて、いた。
補給完了予定日は、五日前に、過ぎていた。
しかし、アークエンジェルは、アルテミスから、出港していなかった。
それは、アルテミス側の、公式文書上の理由ではなく、
艦長の、この部屋への、執着が――
艦から、艦長を、離さなく、なっていた、からだった。
キラ・ヤマト少尉は、艦長室の前の廊下を、毎朝、通るたびに、違和感を、深めていた。
扉の前に、ここ数日、誰も、出入りしていない。
艦長は、どこで、寝泊まりしているのか。
彼は、ナタル副長に尋ねようとしたが、副長もまた、ここ最近、艦には、ほとんど、戻っていなかった。
誰一人、この三十日間で艦長に起きた全てを、自艦のクルーには、告げていなかった。
そして、アルテミスの地下の、黒ビロードの舞台の上では、
登録番号一七三番が、仮面を、付け替えられ、
翌夜の、新しい演目の準備に、静かに、入れられていた。