オリジナル設定てんこ盛り。
【R-15】後日談:血の夜 https://syosetu.org/novel/408095/51.html の続き
・原作終了後のif字空で、五条と七海が生き残ってます。
・主人公と五条は本編終了後の、結婚してる時間軸です。
・激しい妄想と設定とネタまみれです
・微妙に因習チック
・珍しくずっと五条がなんか語ってます
・性描写あり(R-18)
【R-18】後日談:血の夜のあと
ぐったりとした身体が、ベッドに沈む。
何度も絶頂と気絶を繰り返した躰は、もうまともに動かない。
ただ、熱だけが──まだ内側でくすぶっていた。
五条の痕跡を、子宮の奥で、喉の奥で、皮膚の裏で……まだ、感じている。
──夕食の準備をしていたはずだった。
それが、どうしてこうなった?
帰宅した五条に抱きしめられ、熱を帯びた口づけを落とされた。
舌が触れ合い、歯の裏まで舐められて、思考がとろける寸前に、五条が囁いた。
「『血の夜』って言葉、聞いたことある?」
その声は静かで、どこまでも優しかった。
まるで愛を告げるような囁きだった。
「五条家の当主と
「何度も精を受けた女の胎は、当主の呪力に浸されて変わって──そして、馴染みきったある日に、当主がこう思うんだって。
『今、この女を抱けば、確実に孕ませられる』……って」
どこのエロゲーだよ、と内心でツッコんだ。
けれど、その瞳には一切の冗談がなかった。
「呪いだからじゃない。運命だからでもない。──僕は、『僕の意思で』、これからオマエを孕ませる」
「逃げんなよ? オマエはこれから、僕に犯され尽くして、子を孕んで……
もう、僕から離れられないって──今日、もう一度、ちゃんと教えてあげる」
そうしてベッドに運ばれ、着衣を剥がされて、
気づけば、肌の温度すら識別できないほどに溶け合っていた。
五条の手は執拗で、何度も、何度も、何度も──
中を抉るほどの突き上げと、名前を呼ぶ声と、
理性が焼き切れるほどの快楽。
「潔乃の中、すごくあたたかい」
「全部受け入れてくれたね。……可愛い」
熱く、甘く囁かれながら、何度も繰り返し注がれる五条の熱。
何度も、何回も中を満たされるたびに、奥が震え、蕩けて、
そのたびに──子宮がゆっくりと、確かに、五条を呑み込んでいく感覚に溺れていった。
「これでもう逃げられないね」
そんな、ちょっと危ない言葉すら、
甘くて、嬉しくて──快楽の中でしか息ができなかった。
指先から、足のつま先まで。
すべてが五条の呪力に絡め取られていた。
身体の奥、最奥、そのまた芯の奥まで──
精と呪力で、何度も満たされ、染め上げられていく。
意識が飛んでは戻り、戻ってはまた熱に溺れる。
水を口に含ませてくれる五条の指先は驚くほど優しくて、
「ちゃんと飲んでね」「大丈夫?」
囁かれるその声が、あまりにも優しくて、
心がじわじわと、音もなく溶けていった。
──これは、呪いなんかじゃない。
五条がくれるのは、愛だった。
狂おしいほど深く、激しく、甘く、真っすぐな、愛。
そして、すべてが終わった今──
ぐったりとした身体が、ベッドに沈む。
何度も快楽による絶頂と気絶を繰り返した躰は、もうまともに動かない。
腕すら、持ち上がらない。
お互いに、盛り上がりすぎた。
全身、五条のつけたキスマークだらけ。
そして、汗と、行為の残り香でベタベタ。
シーツなんてもう、お互いの体液でぐしゃぐしゃ。
どこに寝ていいのかすらわからない。
……ひどい有様だ。
ふと、横目で時計を見て──絶句する。
……嘘だろ。
現在、14時すぎ。
五条が帰ってきたのは、確か21時前だったはず。
ってことは……え、何時間盛ってたの?
……血の夜怖すぎる。
そう思って呆然としていると、
隣で仰向けになっていた五条も、ゆっくりと顔を傾けて時計を見た。
そして、沈黙。
「……マジか」
ぽつりと呟いたその声には、さすがの五条もやりすぎた自覚があったらしい。
気まずそうに笑ったかと思えば──
そのまま私の方へ体を傾け、ベタベタな身体で、ためらいもなく抱き寄せてきた。
正直、気持ち悪い。
肌同士がぴったりとくっついて、汗も、熱も、残り香も全部混ざっている。
それでも、すごく落ち着く。
五条は、そっと私の髪に顔を埋めて、くぐもった声で囁いた。
「……潔乃、ごめん。やりすぎた。けど、僕──今、最高に幸せな気分」
その声は、どこまでも甘くて、
満たされきった、柔らかい幸福に包まれていた。
ため息をつきながら、私は目を閉じながら口をひらく。
「ちゃんと、説明してください」
出した声はカスカスだった。
最悪だ……これ今日は休みだけだいいけど、明日は任務あるしそれまでに治さないと。
それに小さく笑って、五条は「ごめんね」と囁きながら、額にそっとキスを落としてきた。
そして、まるで授業でも始めるかのような落ち着いた口調で、丁寧に話し始める。
「昨日説明したけど、もう一度ちゃんと話すね」
私の髪を優しく撫でながら、ちゅっと髪に口付け話を続ける。
「五条家の当主にだけ発現する、“呪い”の一種なんだ」
その声は優しいのに、話している内容はなんか生々しい。
「当主の精を受けた女の胎は、時間をかけて、少しずつ──確実に呪力に染まっていく。
そして、いつしかその身体は“孕みやすい身体”に変化していくんだ」
髪を撫でるその指は優しくて温かいのに、口から出てくる言葉はとにかくエグい。
行動と話の内容が一致していなくて、なんか、脳がバグる。
「やがて、ある日突然、理由もなく“それ”が来る。
──『今、この女を抱けば、確実に孕ませられる』って……当主の本能が告げてくる」
その声はあくまで静かで、どこか厳かですらあるの不思議だ。
私の背筋には、うっすらと冷たいものが走る。
「その夜に交われば──子は宿る。確実にね。
高い呪力と、濃密な血統を受け継いだ……五条の子が」
そこまで言って、五条はふっと笑った。
「“そのために設計された夜”みたいだろ。
それが、“血の夜”っていう、呪いの正体だよ」
さらりと語る五条の声に、私はしばらく言葉を返せなかった。
呪い、と言いながら。
それは、どこまでも目的が明確すぎる。
“繁殖と継承”のために組まれた、あまりにも冷静で、あまりにも生々しいプログラム。
「……悪質ですよ、それ。
もっと早く言ってください」
嫌な顔をしつつ、やっとのことで絞り出したその一言。
それに、五条はまた「ごめんね」と微笑んで、唇をそっと重ねてくる。
そして、気まずそうな表情で、言い訳のように話を続ける。
「……というか、昨日思い出したんだ。京都の実家に行って…
僕も昔この話、聞いたことはあったけど、正直、与太話だと思ってた。
だってどこかのエロゲーの設定みたいじゃん?」
五条もそう思ってたのか。私もそう思う。
というかエロゲーっぽいっていう認識は持っていたのか。
「少なくとも、ここ数代の当主──
僕が知ってる限りだけど、血の夜なんてなく子供作ってるみたいだし。
そもそも、当主は元服したら女を当てがわれるから、普通は早く子供産まれてるんだよね」
とんでもない内容を軽く笑って、あっけらかんという。
恐ろしいな五条家。
「たぶんさ──」
五条はまた私の髪を撫でながら、ぽつりと続ける。
「呪力が高すぎて子供を作りづらい当主。あるいは、子作りから逃げてた当主。
……まあ、今回どっちも僕が該当するんだけどね。
きっとそういう当主に、“狙い撃ち”で発動する呪いだったんだろうね」
少しだけ、肩をすくめて自嘲するように笑う。
そのあと、キラキラした六眼を柔らかく細め、真っ直ぐに私を見つめてきた。
「……今回、こういうことになったけど──
昨日も言った通り──僕は、呪いだからじゃなくて。“僕の意思”で、潔乃を抱いたんだよ」
そう言って、そっと私の頬に手を添え、優しく微笑む。
「僕の意思で、潔乃を孕ませたいって思った。潔乃との子供が欲しいと思った。
……子供ができにくい体質だしさ。
だからもう、いっそ呪いを利用してやれって、そう思ったんだ」
真剣な目。
まっすぐに向けられる言葉。
それはまるで、呪いも、血の宿命も、全部吹き飛ばすような──
ただひとりの男の、真っ直ぐで、強引で、でも紛れもない“愛”だった。
「だから……怒らないで、受け入れてくれる?
僕──潔乃との子供が、欲しいんだ」
その言葉に、しばし沈黙した後。
私は静かに、少しだけ低い声で尋ねた。
「──五条家の当主って、育児参加するんですか?」
五条が一瞬きょとんとする。
「え?……いや、まぁ、だいたい乳母がついて面倒見ると思うけど……」
その言葉を聞いた瞬間、頭にきた。
「……はぁ?」
乾いた声が漏れる。
「育児くらい参加してくださいよ。自分の子でしょ」
「えっ、あ、うん……するする!やるやる!ぼくがオムツ替えも沐浴もぜんぶやるから!」
「口先だけじゃなくて、本当にやってくださいよ!」
「はい!」
返事が妙に素直なのが、逆に怪しい。
その顔が、ちょっとだけムカついたので。
ぺちん、と額を軽く叩くと、
五条は一瞬目を見開いたあと、楽しそうに笑った。
「潔乃、いたいよ」
その笑顔があまりに幸せそうで、なんだかんだで力が抜けた私は、
「……まぁ、いいか」って思ってしまった。
──この時点で許してるあたり、私も大概ちょろいな。
それから──
ちょうど1ヶ月後には、本当に妊娠していることがわかった。
血の夜、マジで怖い。
そう思いつつも、やっぱり嬉しかった。
お腹の中に、確かに五条との子供がいるんだと思うと、じんわりとあたたかい気持ちになる。
そして、当然のように、五条家のフィーバーが始まった。
何しろ、当主の正妻の懐妊である。
五条家の長老筋から分家筋から五条派閥の家から、祝電と報告と確認の嵐。
何もしてない私がいちばん混乱していた。
特に、京都での出産を熱望された時には、さすがにげんなりした。
──が、そこにストップをかけたのは、五条だった。
「出産場所は、潔乃が選ぶ」
一般家庭出身で、格式の重圧にあまり耐性のない私のメンタルを気遣ってくれたらしい。
護衛の面でも、東京の五条家のマンションであれば問題ないと、
当主権限を全力で振りかざして、長老たちを押し切ってくれた。
……正直、柄にもなく、ちょっと惚れ直した。
やるじゃん、五条。
と、妊婦としての幸せを噛み締めた──ちょうど1ヶ月後のことだった。
私と五条は、そろって頭を抱える羽目になる。
つわりは始まったが、幸いにも軽めの症状で済んでいた。
「これは運がいいな」なんて思っていた、ある日のこと。
五条は祓除任務から帰宅したばかり。
私はすでに外勤を外されていて、今は自宅でのデスクワーク中心に切り替えられている。
──五条家当主の子を妊娠している女を現場に出すなんて、さすがに五条が許さなかった。
外出する時も、信頼のおける人間と一緒の時しか許されない。
正直息苦しいと思うが、こればっかりはしょうがない。
五条と結婚した時点で私もビンゴブックに載っている。覚悟していたことだ。
話が逸れたが、私が外に出れなくなったため、五条もここ最近は、私以外の補助監督と仕事をしている。
……とはいえ、毎日うざったく「潔乃がいい〜」と甘えてくるのを宥めるのが、今や私の日課だ。
その日もいつも通りだった。
玄関を開けて、勢いよく帰ってきた五条が──
「潔乃、疲れた〜〜!お父さん帰ってきたよ〜!」
手洗いやうがいを済ませたあと、まるで大型犬のように私に抱きつき、
そのまま当然のようにお腹を撫でて、にっこにこしていた。
──が、次の瞬間、ぴたりと動きを止めた。
無言になり、そっとアイマスクを外す。
そして、じっと──まるで獲物でも見るような鋭さで、私のお腹を凝視しはじめた。
「……どうしました?」
不安になって声をかけても、五条はなかなか返事をしない。
あの五条悟が、珍しく口を閉ざしたまま、ただ黙ってお腹を見つめている。
──なにこれ。
こわい。
不穏。
「……ちょっと、マジでどうしたんですか?」
そう重ねた私の声にも反応せず、
五条は、眉間に皺を寄せたまま──ほんの少しだけ、震える声で言った。
「……これ……多くない……?」
ぽつりと落とされた言葉。
その顔には明らかな動揺が浮かんでいて、
いつもの調子ではなく──珍しく、真面目に焦っていた。
「多いって……何がですか?」
私は思わず、自分のお腹を見る。
もちろん、見た目はまったく大きくなっていない。
妊娠初期なんて、そもそも変化が出る時期でもない。
なのに。
「……呪力が複数、見えるんだけど」
「は?」
一瞬、脳がバグった。
いやいやいやいや、待て待て待て。
それって──
「ちょ、ちょっと待ってください、どういう──」
五条は真顔のまま、さらに私のお腹に顔を近づけて、じーっと見つめてくる。
「……うん、間違いない。呪力が複数ある。胎盤も……これ、双子どころじゃない」
ぐるぐるぐるぐる、思考が回る。
つわりは軽かった。身体もさほど重くなかった。
安定期にも入っていない。なのに──
「たぶん、三人いる……うん、三つ子だ」
──え?
そして今、私は。
五条悟と二人並んで、
ソファの上で無言で頭を抱えている。
「血の夜、怖すぎるだろ……」
と、呟いた五条の声にだけは、
共感しかなかった。大当たりしすぎだろ!!!
しばらく、二人して黙り込んでいた。
頭を抱えたまま、沈黙が続く。
──が、やがて五条が、ゆっくりと顔を上げた。
私はそれを、横目でぼーっと見つめる。
「……ごめん。潔乃」
静かに、けれど真剣な声音で、五条が口を開いた。
「──京都の五条家本家に行ってほしい」
「本当は、ひとりだけなら……東京のこのマンションで暮らして、都内の五条家ゆかりの病院で出産できると思ってたんだ。
護衛も医療体制も揃ってるし、潔乃の気持ちもあるし……できるだけ、負担にならないようにって考えてた」
私の頬に手を添えながら、真剣な表情で言葉を紡ぐ。
「でも、さすがに──三人は無理だ」
五条の声は穏やかだけど、その奥には、確かに焦りが混じっていた。
「呪術の世界では、双子や三つ子って、“忌子”として扱われてきた歴史がある。
……でもそれは、一卵性の場合だけ」
「呪術上では一卵性双生児が同一人物と見做され、術式や呪力などの能力が2人の間で分散される。
だから、呪術師の家系では嫌われた。けれど──」
五条はアイマスクを外したまま、私のお腹をもう一度じっと見つめる。
「潔乃のお腹にいるのは、多卵性の三つ子だ。
六眼で見ればわかる。胎盤も、呪力の核も、完全に分かれてる」
そう言って、そっと私の腹部を優しく撫でながら、目を細めた。
「つまり──五条家の当主、僕の血を引いた“術師の器”が、一気に三人、生まれるってことだ」
腹部を撫でるてを浮かせ、私をふわりと柔らかく抱きしめた。
「……すごく嬉しい。一気に三人も、僕の子どもが生まれるんだよ。
こんなに幸せなことはない。でも、だからこそ……」
互いの額を合わせ、柔らかく鼻先を擦り合わせる。
「さすがに、東京のこの環境じゃ足りない。
護衛も医療も、僕やこっちにいる五条の人間だけじゃ限界がある」
たぶん五条は、頭を抱えていたあの数分間で、何十通りもの選択肢を洗ったのだろう。
長い付き合いだからわかる。
──そして「私と子どもを守る」という答えを、最優先で選んだ。
「だから──京都の本家に行こう。
五条家の全力を使って、君と子どもを守る。これは、当主としての判断でもある」
煌めく六眼を真剣な色に染め、私を見つめる五条。
私は小さくため息をつき、静かに、微笑む。
「……承知しました。あなたの判断に従います」
五条が「判断」として言ったなら、私は、それを信じて素直に従える。
学生や、補助監督の時代から一貫してそれは変わらない。
それくらいの信頼と、愛情を持っている。
──筈だったんだけどねぇ。
今の私は。
腹ははち切れんばかりに膨れあがり、靴下もまともに履けず、
寝返りを打つたび「ぐぉっ」と呻くような、超・後期妊婦だ。
そんな身体で──京都から東京に、家出してきた。
冥冥に連絡をとり、憂憂の術式を借りて。高額なギャランティも、もちろん支払ってある。
腰に冷えピタ、腹には抱き枕。鬼の形相で降臨してやった。
五条悟なんぞ、クソ喰らえだ!!!!
糖尿病になって禿げろ!!!!!!
……理由? あいつが、妙な呪具を持って帰ってきたことが発端だよ、クソが。
三つ子と判明したあの日から、強制的に五条本家に連行されたわけだが……
意外にも、生活自体はかなり快適だった。
五条が睨みを効かせ、私を見下すような輩は徹底的に排除されていたのもある。
しかも、以前聞いていた話よりも──私に対する評価は、爆上がりしていた。
子供を作りにくいと判明していた五条悟の
その時点で私は、五条家で、もはや神のように崇められていた。
そして教育の行き届いた使用人たち。
必要以上に干渉せず必要なタイミングで上げ膳据え膳。
私の私室もまた完璧だった。
五条が用意してくれた部屋は、昔からの趣味が詰まった“私だけの空間”。
流石に胎教に悪いとソウルゲーのプレイは禁止されているが、その他ゲームなどは禁止されていない。
五条はゲームに詳しくないので、バイオハザードやBloodborneなどのグロゲーもやり放題だ。
え?ブラボはソウルゲー?システムもシリーズも違うから問題なし!
バレたら怒られるので、あまりやらないようにはしてるけど。たまに血が騒ぐ。ストレスは敵だからいいよね!
健康に気を遣いながら、ゲームしたり、呪具に呪力を流して品質チェックしたり、
特に体調のいい日は書類を片付けて、五条の仕事を少し手伝ったり。
それだけで、みんなから感謝される。
褒められる。
崇められる。
……うん。天国だよね。
外に出られないことを除けば、ここまで快適な妊婦生活は他にないと思う。
──だった。
だったのに、だ。
何をトチ狂ったか、五条がやらかした。
あの日。
久しぶりに検診を終えて、部屋で一息ついていた私の元に、
ニコニコと上機嫌の五条がやってきた。
「ねぇ見て見て潔乃!面白い呪具手に入れたんだよ!」
そう言って、箱の中からひとつの指輪を取り出した。
その中には、光沢のない古びた指輪のようなものがひとつ。
「若返りの呪いだって!効果は1週間てところかな」
また変なの持ってきて……と私は苦笑した。
妊娠してからは、検診や五条の付き添い以外は外出も許されず、
私は本家での妊婦生活を余儀なくされていた。
自由に外出できない私を気遣って、こうして五条は“お土産”を持って帰ってくる。
最初は、私の将来の進学を気遣って赤本や論文などを集めてくれていたのに──
いつの間にか、“面白そうだから”のノリで呪具を持ち帰るようになった。
延々と姑の文句を言うだけの木彫りの置物。
味覚を惑わせる呪符。
触れたら全力でくすぐってくる呪われた傘。
誰得なんだと思う、ちょっとしたイタズラレベル呪いの数々。
まぁ、五条も楽しそうだしと放置してたのが不味かった。
そして今回はこれ。
「若返りの呪い」──とかいう、完全に怪しいブツだった。
「というわけで!試してみるね。若返りなら問題ないだろうから」
「あ、ちょっとやめたほうが」
私の制止なんて聞く耳持たず、五条はその指輪をパッとはめてしまった。
瞬間、ビリッと呪力が弾け、部屋中が光に包まれる。
思わず目を閉じた私の耳に、風を巻くような音と、呪具特有の歪な気配が走った。
急いで目を開けると、そこには──
「……あ?」
目の前に立っていたのは、さっきまでの五条じゃなかった。
白髪は短く、身長も少し低くなって、顔立ちもまだあどけなさが残る。
何より、目元にあの狂気じみた余裕がない。
「お前……誰だよ?」
……おそらく高専時代の五条悟だった。
服装も高専時代のものに変わっている。
自信満々で、やかましくて、生意気で──全盛期のクソガキ時代。
容姿からして、おそらく私と出会う前、高専入りたてくらいか?
夏油や家入、夜蛾に矯正される前の、純粋培養のあの頃。
私は、天を仰いで思った。
……これはマズい。
っていうか、めちゃくちゃやっかいなやつ来た。
控えていた使用人が悲鳴を上げて駆け出す。
……おそらく、ばあやを呼びに行ったのだろう。五条の若い頃を知る、あの乳母を。
目の前のクソガキ五条は、じろじろと私を見て、眉をしかめた。
「アンタ誰?やっぱり、お前みたいなオバさん、知らねーけど?」
……やっぱり私と出会う前の五条だ。記憶までその頃に戻ってるらしい。
最悪だ。
「現・五条家当主の妻ですけど?」
ぴしゃりと告げると、五条はふーん、と鼻を鳴らした。
「新しい女作って正妻にしたのか。
まあ……腹の中の呪力は、確かに五条家のもんだな」
まじまじと、お腹を見つめてくる。
遠慮がない。いや、思い出してきた。こんなんだった。
でも──私が知ってる“あの頃の五条”より、さらに酷い。
……夏油と家入、よく耐えてたな……と心の中で頭を下げる。
そこへ、ばあやが走り込んできた。
助かる。ほんと助かる。なんとかしてこのクソガキ。
我が旦那ながらキツすぎる。
「悟様!!」
「──あれ? ばあや? ……老けた?」
私が何か言うより、顔見知りのばあやの方が早いだろう。
目だけでそれを伝えると、ばあやは即座に悟って、静かに状況を説明し始めた。
──しばし沈黙。
そして五条が、叫ぶ。
「えっ!? 俺、結婚してんの!? しかも、そこのオバさんが奥さん!!?」
うん、知ってた。このノンデリ。
私が出会った頃の五条もこの調子で、どうしようもないやつだった。
風呂上がりに下着姿を見られて「鶏ガラ」言われたのは一生忘れない。
だからこの展開は正直、想定済みですらあった……
私はイラッとしつつも、にこやかな笑みを貼り付ける。
「すみません。でも──あなた、本来は私より年上なんですよ?」
にっこり。極上の微笑み。柔らかい、かつての猫被り。
伊地知モードで宥めるように説明する。
……が。
「はー?しんじらんねぇ。地味だし、胸も尻もねーし。
腹だけでっかくなってて、気持ち悪っ」
「…………………………」
ばあや、使用人が息を呑むのを感じた。
私はうっすらと笑顔を貼り付けたまま、徐に右の手のひらを天井に向け呪力を練る。
術式を発動せ、かつて模擬戦で使った、“五条の呪力操作を乱すハンコ”を具現化させる。
「お、それお前の術式?えーっと記憶?」
六眼をキラキラさせて私の術式を読み解こうとするが、遅い。
それをバシンっとクソガキの額に叩きつける!
「ってぇな!なにすんだ!!って、あ???呪力が…??」
高専時代、まだ“最強”じゃない五条なんて敵じゃない。
呪力が練れず戸惑うその隙に、考える時間すら与えない。
文句を言う五条の顔面に右フックを叩き込む。
拳と呪力が重なり、黒い火花が空気を裂いた。
──黒閃。
さらに左ストレートをボディに叩き込む。
──黒閃。
襟首を掴み、そのまま豪快に中庭へ投げ飛ばす。
障子をぶち抜き中庭に転がり込む五条。食らった黒閃のダメージでうめいてるところで、股間を踏み抜く。
──黒閃。
完璧な三連撃のあと、悶絶する五条の頭を何度も踏みつける。
「ガシッ、ガシッ」と足元で響く鈍い音に、ばあやと使用人たちが真っ青な顔でこちらを見ていたが──知ったことか。
バカには教育的指導が必要なのだ。
足袋越しに伝わる感触を無視しながら、五条の頭を庭の砂利にぐいと押しつける。
見下ろした視線は氷のようにキンキンに冷えていたと思う。
私は低く言い放った。
「………クソガキが」
そのまま踵を返し、部屋に戻ると、簡単に荷造り。
引き留める五条家の人間たちを冷ややかに振り払う。
そして──術式を発動。
気配を断ち、姿を消して──私は、五条家を去った。
「久しぶりに見ましたよ、クソガキ時代の五条さん。遠慮なく、気持ちよく殴れましたね」
「それで黒閃決めたんでしょ?五条相手に、いったい何回目よそれ。しかも股間にとか!!!」
大笑いしているのは家入だ。
私が管理入院している病院にお見舞いに来てくれたので、先日の顛末を説明したのだが──
彼女はもう、ずっと笑い袋のようになっている。笑いの発作が止まらない。
冥冥と憂憂に高いギャラを払い、私は東京へと移動してきた。
まずやるべきは、補助監督時代のスキルとコネを存分に使って、
ビンゴブックに載っているので迅速に処理。
その後、居住地を偽名で確保した後に、三つ子を安全に分娩できる信頼のおける病院の確保。
……正確には、確保したというより、最初からひっそりと押さえておいた病院だ。
妊娠後期の妊婦を捩じ込むなんて、急患でもない限り普通は無理。
だから私は、万が一に備えて、東京の病院に枠をひとつだけ、ずっと前に押さえておいた。
本来は、災害時や、五条家に呪詛師が現れた際などの緊急用だった。
……まさか、こんな理由で使うことになるとは。
そして、その病院は、『五条家関連』。
つまり、五条家の上層部は、私の行き先を知っている。……五条本人以外は。
今回の家出は、盛大にやらかした五条へのお仕置きだ。
だから五条家の上層部は私に協力し、しれっとダンマリを決め込んでいるわけだ。
……念のため言っておくけど、私が脅したわけじゃないからね?
子供を盾にとかしてないよ?
笑いの発作をようやく抑え、人間に戻った家入が、目尻に滲んだ涙を指で拭いながら言った。
「で、五条には連絡するの?」
「うーん……自力でここに辿り着けないほどのバカな父親、いらなくないですか?」
苦笑しながら答えたが、五条なら流石に辿り着くだろう。
これで辿り着けないようなら本当に将来を考え直すぞ。
「辛辣でウケる。でもさ、たどり着いたら優しくしてあげなよ?たぶん大泣きするよ」
「190センチ越えの大男の泣き顔なんて……それもう事案なんですけど」
「ほんと辛辣だな、あんた」
家入が苦笑する。
そんな他愛ない会話を交わしたあと、家入は満足げに笑って、病室を後にした。
──さて、五条はいつ来るかな。
一応こっちは三つ子。場合によっては緊急分娩もあるわけで、あんまりのんびりしてる時間はないんだけど……。
「……あー、もう。ほんと、こういうときに限ってポンコツなんだよなぁ五条さん……」
お腹をドコドコ蹴ってくる子供たちを片手で宥めながら、私は深く息を吐いた。
「……まあ、いっか」
考えるのをやめて、ベッドに身を預けた。
主人公
血の夜のあと妊娠。しかも三つ子で色々状況が変わった人。
まぁ、意外と五条家で上手くやってたけど、五条のやらかしでブちぎれた。
それでも冷静に抑えていた病院に移動し、五条家の上層部にはひっそり連絡。
あのバカの記憶が戻るまでは東京にいますー場合によっては東京で出産しますーと。
数日後、記憶が戻った五条の襲来を受ける。
が、病室で土下座する五条を、丸一日無視する。
五条悟
血の夜をへて、やっと子供ができて人生の春。
三つ子だったのは予想外だけど、主人公が上手く五条家と馴染んでてよかったほっっとして調子にのった。
若返った時の記憶はある。
ちなみに黒閃決められ後、「あれ俺の奥さん?やべぇ惚れる!」となったアホ。
記憶が戻った後、頭をかかえる。大パニック。
なんとか主人公の居場所を見つけ、大泣き、土下座マシーンと化す。
なお主人公には、丸1日無視され続けた。
家入硝子
五条の五条に黒閃きめたって?ウケる。
R-15か18か微妙なラインですが、前作より露骨な描写が多かったので念のため。