※この作品はR-18です。

変態一級魔法使い   作:性癖を開示する魔法

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何時も感想ありがとうございます。色々感想くれるのがインスピレーションにもなるし、ありがたい!!!

※この話で少しはヴィクサーの人間性がわかるかも?(男視点の)
※拙い戦闘シーンを許して貰うため、序盤にえっち入れてます。どうかお許しを……


最初の一級魔法使い

 

 

 太陽が山脈の陰に沈み、西の空が朱に染まる頃。

 

「本当に……本当にやるのか」

 

「おいおい今更かよ?」

 

 壁際で腰を抜かした後、ヴィクサーに介抱されたゼンゼは彼の家に連れ込まれていた。

 寂れていても元は名のある貴族の住まいだったというこの家は、どこか歴史の重みを感じさせる雰囲気があった。

 

 古い木の香りを感じつつ……ヴィクサーの腕の中にすっぽりと収まっていたゼンゼ。

 片腕で背中を支えられ、もう片方の腕で膝の裏を持ち上げられている……いわゆる恋人抱き、お姫様抱っこの状態だ。

 

 頬を赤く染めながらも澄ました表情であったが……彼の寝室であろう部屋に連れ込まれた事で、太腿を擦り合わせながらか細い声で抗議する。

 

「こんな場所で──」

 

「自分から欲しいって言ったんだろ?」

 

 数人分の広さがある、微かに甘い香りのするベッド。

 しかし所々に手枷や首輪等、あからさまにそういうこと(・・・・・・)。に使われそうな道具の数々。

 乱雑に散らばっているこれらを見て、恐れから出た躊躇いの言葉をあっさりと切り捨てられる。

 

「これを」

 

 ぽふん、とベッドに横たえたゼンゼの下腹部側面──淫紋が刻まれた箇所を、人差し指で服越しに突つかれる。

 ゼンゼは思わず小さな悲鳴を上げた。

 

 ──きゅぅっ

 

「──ぁっ」

 

「外して欲しいって散々言ってきただろうが」

 

 ヴィクサーはそう言って、怯えるように小さくなるゼンゼの手足を枷で拘束して行った。

 反射的に暴れる暇もないほどの手際の良さ、日常的に使っているのだと思わせる手腕であった。

 ゼンゼが気付いた時には手首と足首を鎖に繋がれた状態で……身体をクロス状に伸ばされていたのだから。

 

 そのまま衣服にまで手を掛けられた事で流石にゼンゼも看過できなくなった。

 

「は──外せ! 何をするっ」

 

「必要な処置なんだって……それにほら」

 

 ガチャガチャと手足を引こうとするゼンゼを他所に、ヴィクサーの手はゆっくりと布地を捲り上げた。

 胸元までたくし上げられた所で、ピンセットのような小道具で固定される。

 下腹部は露呈したが、そこまで。

 

「ぇ──」

 

「全部脱がすと思った?」

 

「…………」

 

「だんまりですか、はぁ、取り敢えず説明はしておくぞ」

 

 白い肌の上に、弱々しい魔力を発した紋章がある。淫紋、ヴィクサーがそう名付けた呪印の、紋を象るラインに合わせて指を滑らせた。

 

 直後──ゼンゼは胎が裏返ったと錯覚するほどの性的衝撃に襲われる。

 

 ───ジッ、ジジッ、ジジジッ

 

「はあ゛あ゛あ゛ッ!? ぉおお?!」

 

「おおい暴れるな! 大人しくしろって……」

 

「無理゛ッッ! 止めて゛!」

 

 今すぐにでも身体を丸めて胎を抑えたいという衝動に駆られてゼンゼの手足がギチギチと鎖と拮抗する。

 華奢な彼女の何処にそんな力があるのか驚く程に。

 膣内も波打ち、脈動し、肝心の子宮は側面から灼かれ続け、今にも溶けんばかりに熱を持つ。

 

 瞬く間にゼンゼは果てた。そして絶え間なく、終わりがない連続絶頂が始まる。

 隠されてる秘部が激しく痙攣し、熱い蜜が溢れ出す。

 

 ── ビクンッ! ビクビクン! びくびくっ……

 

「ひゃあ゛ぁぁっ!! あ゛っ、あっ、あ゛ぁぁぁ───っ!!」

 

 まるで胎の中にもうひとつの心臓があるかのようだ。関節が白くなるほどに力を込めながら、ゼンゼは腰を振り立てた。

 半狂乱でジタバタと暴れるゼンゼの細身を押さえ込み、ヴィクサーは説明を続ける。

 

 ──ぎゅううう

 

「解除は簡単だ。このラインに沿って魔力で術式をかき消しながら、全部消せばいい」

 

「淫紋と互いの魔力が消しあっている間に身体が反応しちまうが……そこは気合いで乗り越えれば大丈夫だ」

 

 ──そ、んなの無理だ。頭を真っ白に染められながらゼンゼは思う。全然……まっったく大丈夫ではない。

 現にゼンゼは強烈な快楽に炙られるお腹を押さえたくて、疼く奥底を潰したくて、触りたくて触りたくて何とかしたくて堪らないということしか考えられない。

 

「まぁそれが無理な弱い子は、今みたいに他の人に協力して貰って頑張ればいい」

 

「ただ、一個だけ気をつけることがあってなァ──あっやべ」

 

 この無様な姿を他人に見せろというのか。

 無理だろう、それは。

 ゼンゼでなくとも、女の子なら誰もが拒絶する筈だ。

 こんな、ふしだらな姿を晒して、情けない雌声を零しながら……

 

 ならばヴィクサーに晒すのは良いのかという話になるが、ゼンゼの中でそのことは何故か例外であった。

 

 涙を溢れさせながらゼンゼは蕩けていた。その間も身体は意志と無関係にのたうち回る。

 

 ヴィクサーはゼンゼの淫紋周りに片手を添えて固定し、もう片方の指先で打ち消していたのだが──あまりにもゼンゼが激しく震えるものだから、淫紋から指が逸れてしまった。

 

 だから。

 

「あ〜、すまんゼンゼ」

 

「───はぇ?」

 

 ───キュィィイイイインッ

 

 一時の快楽拷問に沈められていた身体が解放され、余韻に頭が回らない様子で疑問符を浮かべるゼンゼ。

 終わったのか……? そう考えていたが、実態は逆。

 

 それを目にしたゼンゼの頬が引き攣る。

 

「な、なんで……」

 

 じわりと……金貨程度のサイズだった淫紋が蜘蛛が巣を広げるように根を張って、赤子の握り拳程の大きさまで拡大したのだから。

 

「解除に失敗すると罰則(ペナルティ)が発生するんだよ。大きくなって、最初からやり直し」

 

 拡大化は消した範囲と込めた魔力に比例するという。

 

「うそ、嘘だ……」

 

「あ〜ゼンゼが暴れなきゃなあ。大人しくしろって言ったのにさ?」

 

 小さく痙攣する肌に手が添えられる。

 指先に魔力が灯る。意味を悟ったゼンゼは制止の声を上げようとして──

 

「やり直しだ。もう時間も遅いから、今度こそ終わらせような……」

 

 ──ジジッ

 

「ぉ───」

 

 淫靡な鳴き声を上げ、灼き尽くされた。

 今度は逃げられなかった。吸い付くような指先はゼンゼの心の中まで沈めるように深く突きつけられる。

 抵抗は無意味で……華奢な肢体をただ甘く、淫らに震え続けさせることしか出来なかった。

 

(ぁ──溶ける……溶けてなく、なる)

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 数分後、

 

「はい、お疲れ様」

 

「はぁ♡ ぁ♡ ん──ぁっ」

 

 ぴっ──と魔力の残滓を拭うように指が切られる。弓なりに背中を反らせたゼンゼから……淫紋は、消えていた。

 

(ぁ♡ 終わった? 終わったのか♡♡)

 

 とろとろと秘奥から蜜を垂らしつつも、ゼンゼはゆっくりと呼吸を整えている。その間にヴィクサーはたくし上げていたピンセットを外し、拘束具へ手を掛ける──とゼンゼは勘違いした。

 

「じゃ、続き……しようか」

 

 ヴィクサーはゼンゼから衣服を剥ぎ取っていた。

 

 自身も腰帯を取り外し──剛直した逸物を出す。硬く反り立つ男の象徴。真っ黒に淫水焼けした肉棒が、新たな獲物に狙いを定める。

 

(はっ──おっき……入るわけ……?!)

 

 ゼンゼは何をされるか悟りながらも、枯れた喉からは声が出ない。ただ慄くしかない。

 

「もう準備は万端だろ?」

 

 ふるふると小さく首を横に振るだけだ。身体は拘束具に固定されたまま……抵抗できない。

 

「何もされないって思ってたのか? あれだけ言ったのに」

 

 ゆっくりとゼンゼの下腹部に添えられる。くちゅりと、女陰と肉棒の先端が合わさった。

 こくりと息を呑むゼンゼ。拒絶の言葉も出せず、身体に力も入らない。

 その目は繋がろうとしている瞬間に釘付け。

 

 二人の身体が重なり、ゼンゼの耳へヴィクサーが囁く。

 

「孕むまで犯すって言っただろう、忘れたのか?」

 

「ぁっ」

 

 ピクリと細身が硬直した。重なった裏で、ヴィクサーの右手がグリグリとゼンゼの臍の上を親指で押す。ちょうど子宮の中心部。

 

 肉裂を少しだけ掻き分けて亀頭が食い込んだ。怯えるようにゼンゼが身を捩る。

 

「ここから──」

 

 再度、臍の上を親指が圧す。子宮が悦びに震えた。

 

「ここまで挿入(はい)る」

 

 きゅぅううう……

 

 胎が鳴く。ぬぷり……と挿入の感触。

 とてもゆっくりとした侵入で、ゼンゼに無力感を刻み込む。

 少しずつ小さな膣穴を拡げられながら、焦らされながら……段々とゼンゼは子宮にソレが近づいてくるのを自覚する。

 

 もう、来る。奥深くまで挿入って──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そこで夢から覚めた。

 

「あ」

 

 知っている天井が見える。

 自宅の寝室、寝巻き姿で横たわる自分。

 夢、だったのか──?

 

 ふとゼンゼは手足を見た。

 拘束はない、但し……秘部が酷く濡れていた。

 

「嘘だろう、最悪だ……」

 

 まさか夢で果てていたなどと、ゼンゼは悶絶する。凄く恥ずかしい。しかも相手が試験で戦った魔法使いで、あの倒錯的な情景(シュチュエーション)。

 

 よく知らぬ男と体を交えていた夢の中のゼンゼ。というか魔法で抵抗しろ、何故無防備だった。

 これではまるで自分が淫乱のようではないか。変態、変態め。数日後は二次試験なのに、どの面下げて顔合わせするのだ。

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

 枕に頭を埋めてゴロゴロと転がってしまう。

 暫何も考えなくなかった。なのに、無意識で右手が淫紋の場所へと吸い込まれていた。

 うつ伏せのまま、動きが止まる。

 

「…………」

 

『──三流魔法使いでも解ける』

『──気合いで大丈夫』

 

 ──チチチッ

 

 慎重に……ほんの少しだけ魔力を流してみた。最初は温かく、しかし魔力を強めるほどに快感を覚えて──1mmほど紋章を消した瞬間。

 

 ビクンッ!

 

「───ぁっ!?」

 

 胎の奥が引き攣ってゼンゼは手を離してしまう。そして慌てて服を捲って見ると。

 

「……変わっていない、か?」

 

 大きくなっているのか、どうなのか。

 少なくとも目視では淫紋の変化は分からなった。

 瞳の奥が判断に揺れる。

 解除出来るかもしれないと。

 

(やってみるか)

 

 ゼンゼは淫紋を取り除くことを判断した。

 時間はまだ数日ある。これを付けていることでどんな不利益があるかも分からないからと。

 自分に言い聞かせるように再び魔力を指に灯した。

 

 その夜、彼女の寝室の窓からは断続的な桃色の光と、甘い声が漏れていたとか。

 

 淫紋が解除出来たのかは──翌朝に頭を抱えていた姿から推察して欲しい。

 

 

 ──淫らな夢に堕とす魔法(リュスターナー)。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 

 それから特筆すべき事もなく日々が流れて、第二次試験(・・・・・)が終わり、遂に第三次試験が始まる時まで来た。何一つ描写されることがない。

 まるで二次試験という時間がくり抜かれたかのようだ……。

 

「──あら、時空干渉……?」

 

 遠い北の何処かで、そんな事を呟く女の魔族がいたとか居ないとか。

 

 

 

 それはさておき。

 二次試験では五級魔法使いと二級のうち一人を除く三名が突破し、ゼンゼもヴィクサーも受かった。

 彼は擦り寄ってくるくせに妙によそよそしいゼンゼをあしらった後、自宅で魔族を抱きながら数日後に控えていた。

 

(決闘式の試験、ねぇ)

 

 告げられた試験内容は──試験官との1対1による対人戦。そこで一級魔法使いに相応しい能力を示すことで、合格だという。

 試験は一人一日の計四日間に分かれて、くじ引きの結果、ヴィクサーは最終日だ。

 

 これまでの人生を振り返れば、ヴィクサーはまともな対魔法使いの戦いなど経験していなかった。

 不死身の身体によるノーガード戦法で触手の手数を増やして圧殺する、実にシンプルなやり方で、まともではない。

 それだけで相手は勝手に敗北感を抱くし、コレ以外を必要とされる相手に会ったことがないから。

 

 もっとスムーズに戦いを終わらせる手段がありながらも、触手で済むならそれだけでやる。 

 悪癖にも似た癖があった。

 

(いや──一人だけいたわ)

 

 そういえば、思い出す。

 今よりも拠点が充実しており、ストックも万全だった頃に戦った魔法使いのことを。

 相手が女ゆえに相性差で勝ったが、こちらは社会的に死にそうになった忌々しい記憶を。

 

 ヴィクサーが慣れない魔導書作りをやるようになったのも元を辿ればそのせいだ。

 約束を破れば彼の醜態が未来永劫語り継がれるという。

 

「うごご……!」

 

 思い出したくもない。

 ヴィクサーはふて寝した。

 試験対策なんてらしくないことを考えるのもやめた。

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 

 試験当日。

 受付から案内されたヴィクサーは郊外にある拓けた広場に来ていた。

 ここは大陸魔法協会の所有する土地のひとつで、様々な魔法で補強されており、魔法使い同士の全力戦闘にも耐えうる闘技場。

 

 かなり広い、ちょっとした街ひとつ分はあろうかという規模だ。様々な障害物も用意されている。

 

「こちらです」

 

 石畳の一角へとヴィクサーは連れられた。

 対岸側には既に相手が待ち構えている。

 

 第三次試験、試験担当。

 一級魔法使いレルネンが。

 

「宜しくお願いします」

 

 物腰柔らかに壮年の魔法使いが頭を下げる。ヴィクサーも流れに従って一応の挨拶は返した。

 

 相手の魔力の流れを見ながらヴィクサーは考える。

 

(あー、分かる。滅茶苦茶強えなこの人)

 

 気を張り詰めている、という感じではない。

 レルネンは自然体ながらも隙がなかった。

 常在戦場、老練した魔力の流れ。長年の戦いを生き延びた魔法使いの所作にヴィクサーは凄く面倒くさそうになる。

 

「準備は宜しいですかな?」

 

 問題なければ監督役の魔法使いが空に炸裂弾の魔法を放つという。それが合図だと。

 あー、あれか、と遠くに感じる大きな魔力をヴィクサーは察する。

 

 試験合格の条件とか、他の人は合格してるのかとか、そういえば試験官を殺すのってセーフなの? と、色々聞いてみたいことはあったが──

 

「いいぜ、やろう」

 

 割と興味がなかった(どうでもいい)ので、即諾。

 

「では──」

 

 シュゥゥウ──

 

 晴天に星が流れる。

 試験の始まりを示す、曲線を描いた炸裂魔法。それはレルネンとヴィクサーの間……中央の真上に到達し、

 

 ──ボンッ!

 

 弾けた。

 ぞわりとヴィクサーの周りの空気が歪む。

 

「触手を(テンタケルフィ)──」

 

 空間を剥がすかのように構成される触手。その暴威が解放されようとした時。

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)。

 

 ヴィクサーの鼻から上が消滅した。

 一般攻撃魔法、それもより洗練された速射性の高いモノ。

 ヴィクサーの十八番の展開(触手魔法)を置き去りにした速度は、何の防御も、魔力による防護すら掛けられていない人体を容易く滅する。

 

 ぐらりと、ヴィクサーの身体が揺れて──

 

「──操る魔法(ック)」

 

 ──一歩、踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

(やはり……反応はしている)

 

 試験開始後、即座に攻勢に出たレルネンは考察する。速射性に秀でた一般攻撃魔法、レルネンの放ったそれをヴィクサーは目で追っていた。

 反応していながらも、避けなかった。

 本人の能力以前に、生物としての必要な機能(条件反射)が欠けているとしか考えられない。

 

 今も被弾しながら魔法の発動を続行している……全ての生物の思考の鍵となる、脳を破壊されてもだ。

 

 有り得ないことだ。そしてそう考えてしまった時点で、レルネンは想像力(イメージ)の段階において、あの再生魔法を打破する手段がないことを自覚する。

 

 だが、

 

(ゼーリエ様は「働く概念が違う」と仰られていましたが、魔力を消費していることには変わりはない)

 

 彼我の距離は五十メートルほど。

 的確に一般攻撃魔法による足止めでヴィクサーの接近を止めながら、戦いのための道筋を少しずつ構築する。

 

 三級魔法使いヴィクサー。一次試験で彼の戦い方と、その才覚をレルネンは見た。

 恐ろしい戦い方だと、初めは思った。

 自身の魔法に対する強い確信がなければ、あんな身を捨てた戦法など取れない。普通は防御なりする。

 

 人の精神で出来る代物ではない。

 

 一部の魔法はヴィクサーも防御しているが、あれは理由が違う。

 ただ手間を省いているだけだと察した。

 魔法を受けて足を止めるよりも、手っ取り早い方を選んでいる。

 

 だからこそ。

 

(そこに彼の矛盾がある)

 

 解せない。

 拙速の為に守りを選ぶ能がありながら、一般攻撃魔法(ゾルトラーク)は防がない矛盾。

 一般防御魔法は今では殆どの人類が使えるほどに発展した汎用魔法だ、そもそも……使えないはずが無い(・・・・・・・・・)のだ。

 

 その破綻した人間性を掴みたい。

 ゼーリエは「研鑽する余地」として捨て置いていたその部分を、レルネンは彼の人格形成に関わる一角ではないかと考えていたのだ。

 

 魔法使いとしての才能は自分より上だろう。

 ゼーリエ様の様子から見るに……期待の大きさは大魔法使いフランメ以来ではないか。

 

 それほどの才をもつ者の人間性を、本質を……善性か、悪人か。

 この戦いで測る──そのために本気で追い詰めると。

 

「──チィ!」

 

 魔法の速射のあられに撃たれ、遂にヴィクサーが完全に足を止めた。当然か、踏み出す前に足が破壊されては文字通り手も足も出ない。

 

 睨むような赤い目とレルネンの視線が交差する──そしてレルネンが瞬き(・・)をした瞬間。

 

 ヴィクサーの姿が消えた。

 

(これは──魔力すらッ)

 

 死角を作る魔法(ブリントシュポット)。

 

 相手の視界(・・)から消えることを条件とした単体完全ステルスの魔法。

 それをヴィクサーは相手が目を閉じた一瞬の隙に発動するという神業を以て反撃に出る。

 

 体を触手に変える魔法(メタモルテンタクーア)。

 右腕を無数の触肢へ。

 

 擬態する魔法(ミミクリー)

 それぞれが鋭い刃の凶器と化す。

 

 既に身体は治っている。

 この魔法(ブリントシュポット)は自分以外をステルス化することは出来ない。

 

 遠距離攻撃魔法などでは魔法だけが察知されるという弱点がある。

 周りに新しく触手を出せば、それもまた。

 よって本人で直接叩く──

 

 破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)。

 

 レルネンの周囲で多数の稲妻が空を灼いた。

 龍のようにうねる雷の渦へ、ヴィクサーはなんら躊躇いなく突っ込んだ。

 

 問題ない、縦え防御魔法が破られたとしても、気付くことは出来ない。

 

 この魔法の嫌らしいところはそこにあった。

 1対1(・・・)である限り……絶対にその位置を捕捉出来ないのだから。

 

 雷の網を超えたヴィクサーが、レルネンの側面を取った。

 鞭のようにしなる触手が、杖を握る右腕を狙う。

 

 ──まずは右手ッ!

 

 ドスッ──と、右腕が刎ねられた。

 

 ヴィクサーの(・・・・・・)、右腕が。

 

「そこですか」

 

 一般攻撃魔法(・・・・・・)、連射。

 全身に風穴が生まれる。ふわりとレルネンの身体が浮かび、距離を離そうとする。

 

「ハハハッ──メンドクセェ!!」

 

 吼える。

 再生を差し置いてヴィクサーは駆けた。

 レルネンは反応が一瞬遅れる。

 これは強化魔法ではない、純粋な肉体の能力……戦士の走法だ。

 

 再び間合いを詰めたヴィクサーは周囲に触手を展開しながら、自身は両腕を凶器に変えて猛打を繰り出した。

 しかし、届かない。単純にレルネンの防御魔法の守りが硬いことと──

 

 ──ギィイイイイイン!

 

 守りの隙間を埋める、ゴーレムの存在だ。

 腕だけを顕現したゴーレム魔法、自律的な行動の特性故に、ヴィクサーの位置を看破した存在。奇しくも死角破りの手腕が同じだ。

 

 鋼同士が打ち合うような音を立て、硬質化した触手との応酬を繰り広げる。

 

 八、十六、三十二、六十四、百二十八──驚いた、まだ凌ぐ。

 

「だがよッ……もう魔力がキツイんじゃないか──オッサン!」

 

「貴方は、まだ本気ではありませんね?」

 

 魔力消費が激しいはずだ。だが守りの合間に一般攻撃魔法を撃つ余裕すらレルネンにはあった。触手対策に作成した特化ゴーレムは、レルネンの想像以上の性能を発揮していた。

 

 ヴィクサーの身体が淡々と削られていく。

 再生、減る度に補給……彼の魔力は衰えを知らない。不利なのは向こうのはずだが。

 

(涼しい顔して凌いでやがる……!)

 

 自然、獣のような笑みが出た。

 この距離において(戦士の間合い)、ここまで戦える魔法使いが存在したのかと。

 相手が男で、彼が一般防御魔法を使えないが故に生じている膠着なのだが……そんなことはどうでも良かった。

 

(あんたは俺の最高(触手)で倒すッ)

 

 戦いというものに作業以外の感慨を持たなかったヴィクサー……彼に初めて闘志(・・)が灯る。

 他の魔法など、いらない。

 不死身と触手を以て、何時ものように勝つ。

 

 束ねる、束ねる、巻き付ける。

 背後で無数の触手が像を重ねる。

 この鉄壁の守りを破るため、らしくもなく考えた。その結果が超質量による脳筋攻撃。

 

 ヴィクサー自身は触手と共にレルネンが逃げられないように、嵐の猛攻を続行。

 周囲の触手すら足場にして跳躍し、三次元の闘法による全方位攻撃。人の戦いからかけ離れていく。

 

 ──触手は完成した。

 動く……まるで象が蟻を踏み潰す光景。

 ヴィクサー諸共に、巨大な腕と化した触手が振り下ろされる。

 

「いくぜェ──! 避けろよ?」

 

 触手を操る魔法(テンタケルフィック)、最大出力──

 

 ──ズゥゥウウウンッ!!

 

 破砕、轟音。

 

 数多の魔法で補強された大地に巨大な亀裂が入った。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ──傷を完全に治す魔法(ヴントハイルング)。

 

 ……ぐじゅ、ずじゅりゅるぁ。

 

「えぇ……どうやって避けたん?」

 

 むくりと、未だに土煙を上げる大地からヴィクサーは立ち上がった。

 その先には左肩を損傷しているものの、五体満足のレルネンが。

 

「貴方が避けろと言ったんでしょうに……そちらこそ、それで生きてるんですか」

 

 レルネンも少々呆れながら……ヴィクサーの性質を測っていた。

 

(一次試験で躊躇いなく参加者を殺していた彼が、ここでは殺意に欠ける)

 

 ゼンゼという例外は置いておき……一次試験参加者とレルネンとの違いはなにか。

 

(規則、か?)

 

 一級魔法使い試験では、基本的に参加者同士の殺害を始めとした行為は罪に問われない。

 対して、試験官に対するものは……実は特に明記されていなかった。

 

 レルネンはヴィクサーの人間性を、殺人を厭わない性質と考え……死ぬ可能性も鑑みてここへ立っていた。

 だが、触手以外の未知の魔法の不使用。

 警告の瞬間に僅かに緩んだ攻勢。

 

 ヴィクサーは最悪死んでもしょうがないと考えて攻撃してきたのだろう。

 実際戦っている最中に段々と覇気が増していた。しかし、レルネンの死を「最悪」と考える程度には常に保身を考えている。

 

 最後の攻撃など、彼の警告と緩みがなければ大怪我は確実だった。

 

(人殺しを忌避するというより、秩序から大きく外れることを避けているのですか)

 

 一次試験という特殊な場でしか彼を見ていなかったから、思い違いをしていたのかもしれないとレルネンは自省する。

 恐らく場所さえ選べば彼は善性の部類だと。

 

 だが……人の本性は死線でこそ顕となるもの。

 

「なぁ、もう終わりか?」

 

 ひらひらと異形になった右手を振ってヴィクサーが問う。戦いが楽しいと思ったがそれはそれ、別に優先順位は高くない(エッチの方がいい)。

 合格ならはよ終われと思うし……男相手は触手が萎える。要するにもう飽きた。

 

 早く一級魔法使いになって、ガールズバーで自慢しながら酒を注がれたい。

 彼は一級魔法使いになった後の己をイメージ出来ていた。馬鹿だ。

 

「……そうですね、為人は少しわかったかもしれません」

 

「おっ、なら合格?」

 

「いえ、もう少しだけ付き合って頂きますよ……」

 

「えぇ、その魔力でまだやる……隠してる方も使うのか?」

 

 一度間が空いたからか、ダルそうにファイティングポーズを取るヴィクサー。心無しか周りの触手も垂れている。

 だが当たり前のように隠蔽していた虎の子の魔力を看破してくる。

 レルネンは杖を構えて言った。

 

「流石ですね……因みにですが、ここで私を殺しても特に罪には問われません。安心してください」

 

 そして彼の殺意を咎める枷を、躊躇いもなく外した。同時に──レルネンとヴィクサーの周りにここまでの戦いで準備した結界を貼る。

 

「あ……おいおいこれは──」

 

 ヴィクサーの表情が消えた。

 霞むような速度で地を蹴る──その先に撃たれた一般攻撃魔法(ゾルトラーク)が彼の身体を穿つ。

 

 ──傷を完全に治す魔法(ヴントハイルング)。

 

 当然のように復活。しかしヴィクサーの雰囲気は先と異なり、殺伐としている。

 底なしと思われたヴィクサーの魔力が減っていた。

 

「魔力を遮断する結界、その改良版です──」

 

 至近距離でヴィクサーと戦った際、レルネンは見た。

 彼が大きな負傷を負って、回復する瞬間。魔力を大きく消耗するときのみ──身体から極細い糸のような魔力が、何処か遠くと繋がっていると。

 

 想定はしていた。外部からの魔力の供給。幾つか考えた手段のうち、一時的に断つのは意味がない。糸を切っても直ぐに繋がる。

 よって彼を解析しながら構築した結界の展開──結果はあの表情から明らかだろう。

 

 膨大な魔力なのは変わらない。しかし、限りは出来た。不死身にタイムリミットが生まれる。

 触手魔法も、再生魔法も消費が激しいのは明白。

 

(使うか、防御魔法を──!)

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)の速射を再開しながらレルネンは観察した。

 実際、この結界を維持したままに攻撃魔法を使うのは隠蔽していた魔力を合わせても一分と持たないだろう。殺し切ることは出来ない。

 何度も通じる手立てでもない。

 

 しかしヴィクサーはそうは思わないかもしれない。

 窮地に陥った彼がどうなるのか、四肢を奪った魔法か? 遠隔で握り潰すか? それとも精神魔法を出すか? 

 精神魔法以外の対策はしている。そして一番危険なそれも、接触限定と見た。

 死地に立った時の手立てを見極めたい。

 

 さあ、どう出る──ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいや」

 

 ── 時間を止める魔法(アウスシャルテン)。

 

 世界が、灰色に染まった。

 鋭い目で油断なく立つレルネンも、その彼が放った一般攻撃魔法(ゾルトラーク)も、激戦の余波によって森で蠢く動植物すら。

 

 モノクロの世界で、ヴィクサーだけが自由だった。

 

 時間を止める魔法(アウスシャルテン)……実際にヴィクサーはこの魔法のことを、名前と違って時間そのものを止めるとは思っていない。

 止まるのは、意志だ。心と言ってもいい。

 万物には魂が宿る。アウスシャルテンはその意志に干渉して静止する、最強の精神魔法。

 

 魔法は意志で働き発動する。よって魔法すらもこの中では止まっていた。当然、魔法使い本人が停めているのだから。

 半径五百メートル。犬以外には作用する究極催眠という……レルネンの想定を超えた手札でヴィクサーは危機を逃れる。

 

「どうすっかなあ……」

 

 ゆっくりとレルネンに歩み寄りながらヴィクサーは悩んでいた。

 彼が殺害を避けていた理由を、レルネンは試験規則に明記がないことからと考えていた。

 

 それもある、しかしヴィクサーは単純に貴族っぽいレルネンを殺すのは後がやばいのではないかと思っていたのだ。

 あと一級魔法使いには師匠である大魔法使い──大陸魔法協会というスーパー権力の持ち主が居ると言うではないか。

 

 えっちなこと以外は考えるのが苦手な男は……悩んだ末に阿呆な結論に至った。

 

「殺すのやばいよな……? でも本人はOKって言ってたし、もしかしてこれ殺さないと合格になれないんじゃねぇか」

 

 ならええか? いいやよくない。

 この都市に来てからのガールズバーで、酔っ払ったヴィクサーは自分が一級魔法使いであると嘘をついている。二日前の事だ。

 今度証明書持ってくるよ〜と女の子と話していたが、ここで落ちれば三年後まで屈辱に塗れるのだ。

 

 頭の中で二人の悪魔が争う。

 ……決断した。

 

「すまんなオッサン……嘘は良くないと思うんだ」

 

 嘘を真にするため、覚悟を決めたヴィクサーが凶刃を振り下ろす時──

 

 

「──いいや、お前はもう合格だ」

 

 もう一人(・・・・)、静止の世界に入門してきた者が彼を阻んだ。

 

 耀く黄金の髪、素足で大地に立つ少女。

 只者では無いことが魔力でわかる、そして種族特有の長耳──不敵な笑みを浮かべた美少女が。

 

「この魔法はエルフにも効くはず……何方?」

 

「大魔法使い、ゼーリエだ」

 

「大陸魔法協会のボス?」

 

「まぁ、そうだ……」

 

 ヴィクサーは我が身を振り返った。

 目の前には一声かければ自分を社会的に滅殺できる権力者。

 

「お前、なんだその目は……」

 

 そしてヴィクサーは今まさにその関係者を殺そうとしている。

 自分ならどう思うだろうか? 本人が死んでもOKと言っても、一級魔法使いは数が少ないと聞く。

 考える、自分に権力があったら……意趣返しに追放しているかもしれない。

 

 何故か変な顔になったゼーリエの前にヴィクサーは踏み込んだ。

 一瞬互いの魔力が蠢く。

 

 そして、

 

「──すいませんでしたあァッ!!」

 

 ヴィクサーは土下座した。

 




【魔法紹介】
淫らな夢に堕とす魔法(リュスターナー)
・えっちな夢を見るようになる魔法。放っておいても調教が進むとか……最高やな!

時間を止める魔法(アウスシャルテン)
・遂にお披露目となる時間停止魔法。本人曰く時間そのものじゃなくて意志の働きを止めているとか屁理屈を言ってる。でも魔法は屁理屈を押し通すものですからね……何故か犬やそれに似た生物には効かない。


男相手に戦うとバトル漫画の主人公みたいになってくれるヴィクサーくん、彼はプロレスが大好きです……なお飽きると()
女相手と男相手で態度が変わるので、レルネンさんが若い女性だったら不合格にしていたかも。彼はゼンゼちゃんの現状を知りません。ゼーリエさんだけしか知らない。
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