※この作品はR-18です。

変態一級魔法使い   作:性癖を開示する魔法

6 / 20
週間1位とかマジですか……?ちょっと信じられない。
原作の人気と、読んでくれている皆様に感謝しかありません。感想くれるのがほんとに嬉しくてたまらないです!

そしてエロがないエロ二次は稲荷のない寿司と同じなので、今回は宣言通りにえっちな描写を入れております。次回はもっと増える予定。

今回のMVPは南の傭兵兄弟です。


メダリオン争奪戦 後編(ゼンゼ)

 

 

 参加者の内、実に半数近くが脱落してから一夜が過ぎた。

 この中で開幕に打って出た者は意外と少ない。

 隠密性に自信のある者、序盤から徒党を組み、数の利を得ている者、そしてシンプルに己の実力を信じる者。頭のおかしい男。

 

 誰よりも早く試験の構造に気付き、着々と徽章を集め続けていた狩人は地雷を踏ん(狂人に絡ん)で散る。

 

 加えて短時間で大規模な破壊行為を齎したヴィクサーにより、周辺地域の魔物の動きが刺激されて活性化。

 参加者達は徽章を集めるよりも先に結界内部の魔物の対処に駆り立てられた。

 

 ──ギィィアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アッッッ!!!

 

地獄竜(じごくりゅう)!? 何処の馬鹿が起こしたッ」「っふざけんなぁ!?」「何よこれぇ〜!」「これが試験だって……? 冗談じゃないって」「死ぬって死ぬ死ぬ死ぬ!!」「喋る暇があんなら殺せ! 攻撃魔法を撃ちまくれ!」「飛ぶな! 屍誘鳥(ガイゼル)もいるんだぞッ」

 

 とてもじゃないが対人戦どころじゃないと、争奪戦そのものが一時停滞したのだ。

 

 特に個人で行動する魔法使いは大勢死んだ。

 やがて共通の敵を前に四、五級の魔法使い達は殆どが一時的な協力状態に入り、背中を気にしながら魔物と戦う羽目になる。

 

 初日の脱落原因の殆どが魔物戦での戦死という、対人戦を想定していた魔法使いにとっては思わぬトラブルの連続。

 この騒動が一因となり……当初バラけていた魔法使いが三〜四名程で仮の結束を計り、睨み合いの形となった。

 手数が増えると不意打ちも難しくなる弊害が生じる。

 

 七日の期間も魔法使い達に魔力の浪費を抑えるという行動指針に陥らせ、試験は停滞する。

 試験官の意図から外れ、既に個人戦の入り乱れる試験では無い。

 

 本格的な生存競争(サバイバル)へ変化する──

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 魔物戦の余波によって試験が停滞し、三日目(・・・)

 

 ザッ、ザッ、ザッ──

 

「あの人何してるの?」

 

「さぁ?」

 

「なんで穴掘ってんだ」

 

 三人組の魔法使いが周囲を散策しているところ、妙な挙動をしている男を見掛ける。

 

 男は──ヴィクサーは無言で穴を掘っていた。穴を掘って、埋めている。

 

 ザッ、ザッ、ザッ───

 

「……撃つ?」

 

「いや、待った」

 

 直ぐに攻撃を仕掛けなかったのは……本当に何をしているのか分からなかったというのと、あの奇行が囮であるという万が一の可能性を鑑みての事。

 四級魔法使いの中で他の参加者の情報をこまめに集めていた男は、先駆けんとした少女を制止して観察する。

 

 視界を引き寄せる魔法(テレスコープ)

 

 遠視の民間魔法により、遠目に眺めるだけだった姿が細部まで拡大される。

 

「あれは、ヴィクサー三級魔法使いだ」

 

「ヴィクサー三級魔法使い?」

 

「ああ──徽章を九つ持っている……魔族狩りで名が通っていたのは伊達じゃないな」

 

 それにしては未熟な魔力だと訝しみながらも、確かな実力の証(九つの徽章)を目にして冷や汗を流す四級の男。

 

「そんなに有名なんだ?」

 

「キミは北の出身だったか……ここ数年だけど中央じゃちょっとした有名人だったよ。

 貴族殺しの魔族集団の捕獲に、伝説の魔導書、噂レベルの話じゃエルフに勝ったってのも聞いたことがある……本当か分からないけどね。

 一番名の知れた話は魔族狩りか伝説の魔導書かも」

 

「へ〜、聞いた事ないや。伝説の魔導書ってどんなの? 凄いの?」

 

「あぁ、読んだことがある。あれは素晴らしいよ……あ゛」

 

 軽快な語り口で話す彼へ、五級の少女が前のめりで話をせがむ。もう一人の五級の男も無言ながらも先が気になるように目線を向ける。

 彼等の様子に気を良くした様子の事情通の男。意気揚々と話を続けんとして……

 

「………………ぃや」

 

「……どうした?」

 

「ねえ、伝説の魔導書ってなんなのよ」

 

「──ぃいや、僕の記憶違いだった。そんなものはない」

 

「「は?」」

 

 いきなり手のひらを返した。

 

「いやいや、魔族狩りで有名だったのは知ってるよ。でも魔導書はなぁ〜あったっけ、そんなの? あはは……寝不足で頭が回ってないみたいだ」

 

「え、でも見事だったって、読んだことあるっ「ごめんそんなこと言ってたかなあ!? 別の話と混じってたんだと思う!」

 

「……もうこの話はいいだろ」

 

 混迷してきた話を呆れたように五級の男がぶった斬る。そう、魔導書がとか、魔族がどうのという話をしに来たのではない。

 

 今考えるべきは戦って徽章を奪うか否かだ。

 最もすぎる男の意見に、言い争いになりかけていた二人も襟を正して思案した。

 

「私はやってもいいと思うけど」

 

「拙速に過ぎないか? 相手は既に徽章を九つも持っている。3対1でも確実に勝てるか分からない。ましてや僕たちは昨日の戦いで魔力が万全じゃない」

 

「消耗してるのはアッチも同じでしょ。見てよ、あの弱々しい魔力! あの変な行動も誰かに相打ちで精神魔法でも受けたんじゃないの?」

 

「いや、それでも──「ならなんであんな事してるのか分かる?」……くっ確かに分からないけど」

 

「決まり、だな」

 

 話し合いの結果、奇襲を行なう方向で作戦は固まった。

 妙な行動は目立つが脅威には感じない。しかし油断は出来ないため脅しで徽章を得る案は却下とする。

 

「展開して同時に攻撃魔法を撃つ! いくぞ──はぐァッ!?」

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 貫通性の高い殺傷魔法が二発(・・)撃ち放たれ、男達を背後から穿いた。

 腹を撃ち抜かれた所で続いて三発、男二人は頭を抉られて即死する。

 

「──えっ!? なんでっ」

 

 少女は戦慄する。

 運良く初撃を免れ次弾の防御が間に合ったが、背後から撃たれるまで全く気が付かなかったからだ。

 今は隠すこともなく二人分の魔力が近づいてくる。

 

 反射的に彼女は拓けた方向──即ちヴィクサーがいる方へと退避した。

 危機回避の為の無意識行動だった。一瞬で仲間二人が殺られたことに動揺しながら、即座に防御魔法を貼りつつヴィクサーへ杖を向けると、

 

「畑を作ろう……故郷に帰って魔族をいっぱい集めるんだ……一級魔法使いがなんだ、ならなくてもいいだろ…特権なんて、頑張って自分で作ればこんな試験……帰りたいなぁ俺何しに来たん? わかんね、ふへへ、くそがら見てんじゃねえ、穴掘ったら魔族出てこねーかな、居ないか。ここはどうだろうか? 居なーい。 こっちは──」

 

「な、なんなのよお! この人怖い……っ」

 

 ブツブツと呟きながら素手で土を掘っている姿に震えた。ちなみに結界外からここまでの一部始終を見ていたレルネンは「私も老いたか……?」と内心嘆いていたとか何とか。

 

 ともかく……前門の殺人鬼と後門の狂人に挟まれた少女は涙目になっている。

 

「──あ?」

 

 そこで漸くヴィクサーも魔法使いがいる事を察知した。四人分(・・・・)の反応。近くには、女の魔法使いが一人──女?

 

 ズルリ───ッ

 

 触手を操る魔法(テンタケルフィック)

 

「なっ、なによ……何よこれ」

 

 いつもの如く触手を編み上げ──しかし少女の目には本来の生々しくも生理的嫌悪感で萎縮させるような凶悪な姿には、映らない。

 

 描写を操る魔法(モザイキーレン)

 

 触手と認識するには少々、いやかなり存在としてのテクスチャ(外観)が狂っていた。

 まるで三次元の世界に二次元の存在がそのままペーストされたような違和感の塊。

 

 見た目の改善──自身の趣味嗜好によって触手そのものを変質させることは出来なかった。

 こうして認識阻害のヴェールを重ねることにより触手の見た目だけはファンシーに変えることへ成功した代物。

 

 触手はヴィクサーと少女を囲んで蠢くが、彼女を襲う様子は無い。

 

 ヴィクサーの名誉の為に云うと……自暴自棄になり掛けていただけで、あの奇行は半ば目的があってやっていたこと。

 まだ彼の理性は蒸発していない。

 割と瀬戸際くらいか。

 

 一瞬、そう一瞬。目の前の少女の衣服を引き裂き四肢を奪って確保し、穴という穴を触手で抜き差ししながら廃人になるまで抱き枕にして犯すのを考えなかったかといえば嘘になる。

 

「や、やる気なの……っ」

 

 だから彼の瞳に浮かんだ劣情を察した少女が、極限状態で殺意と受け取ったのも仕方がない。健気に杖を構えて脚を震わせるのを見てグッと来たのは内緒である。

 洗脳くらい(ルストヒュプノーゼ)はアリか……? 割とグラついてきた。

 

 けども触手を展開した理由は違うのだ。

 

「私だって──ッ」

 

「おい、来るぞ」

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 空を切って白い光線が迸る。

 少女はヴィクサーの警告により防御魔法で難を逃れた。

 

 いよいよ痺れを切らした襲撃者達は本来のやり方で仕留めるべく姿を現し、ヴィクサーは触手毎一般攻撃魔法(ゾルトラーク)に全身を貫かれて地に伏した。

 

「「「───えっ」」」

 

 ヴィクサーは、間違いなく死に体で倒れた。

 一瞬周囲が呆けるも、襲撃者は即座に意識を切り替える。

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 再度防御魔法を展開する少女だが……もう魔力が。

 

「っ! 待って、降参する! 徽章は渡すからッ!」

 

「ハァ? 信用出来ねーなッ! そんな命乞いが通じると思ってンのかあ?」

 

「さっさと死んでくれよ」

 

「な─んでッ、あ゛っ……」

 

 襲撃者は巧みだった。欠けた防御を縫うように光線が少女の身体を穿ち、血飛沫と共に肉を段々と削っていく。

 降参の言葉も受け入れる余地を持たず……少女が息絶えたのはヴィクサーが倒れてから数十秒も掛からなかった。

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 倒れた後も油断無く頭を消し飛ばす。

 

「よし──死んだな?」

 

「一気に四人やれるたぁ俺たちツイてるな兄貴!」

 

 三級魔法使い、南の傭兵兄弟。魔族の脅威を忘れて人同士で戦火を広げている南側諸国出身の戦争経験者達。

 練達した対魔法使いの戦術と、即席のパーティでは持ちえない連携能力の高さで次々と参加者を撃破している手練れだ。

 

 兄弟は周辺の魔力感知を怠らずに二人の亡骸から徽章を見つけ出す。

 

「こっちの女はひとつしか持ってねぇ……使えねえ!」

 

「安心しろ、この男だが九つも持っている。大当たりだな」

 

「──ヒュウッ! そいつは最高だな!」

 

 徽章の種類が判別できないという最悪の試験だが、先程の二人で二個、女と男の分を合わせれば十三個の獲得。

 手持ちと合わせれば二人で分けても合格のラインが見えてくる。

 潮時だろう、と傭兵兄は考えた。初日に魔物の暴走を切り抜け、消耗した魔法使いを積極的に撃破してきた。

 

 しかしこれだけの徽章があるならば……残り四日は攻めではなく守りの時間だ。

 

「直ぐに離脱する。徽章はお前に預ける」

 

「おう分かった──にしても気持ち悪いなあこれ、魔物でも操ってんのか?」

 

 ふと、傭兵弟が辺りを見渡した。

 彼が足蹴にしているのは、先の魔法戦でヴィクサーが展開していた触手。

 通常、魔法使いが魔力で創造した物質は本人の死とともに構成が解けて消える。

 今も元気よく跳ねている(・・・・・・・・・・・)謎物体を見て、弟の方は魔物を操るタイプの魔法使いかと首を傾げていた。

 

「何言ってる。お前もあの男が虚空からコレを魔力で創ったのを見ただろう、遊んでいる暇があったら早……く…」

 

「兄貴? どうし……た…」

 

 

 ───ぞわり。

 

 

 魔法とは理不尽なものだ。

 

 傭兵として戦地を駆け回った二人はそのことをよぉく頭に刻んでいる。味方が大地毎呑まれたことも、周囲の樹木がそのまま凶器となって襲いかかってきた経験も。

 川を腐らせて無辜の人間諸共殺そうとしてきた屑もいた。

 

 戦場では様々な悪意が魔法という形で行使される。

 

 魔法は理不尽なものだと承知していた。

 いたが──

 

「よォ゛、や゛ってくれたな」

 

 ──死体が起き上がってくる経験はこれが初めてだった。

 顔の半分が欠けた、全身穴だらけの男が立ち上がる姿に空気が凍る。

 

「あ゛ぁ──おはよう」

 

 気を保つ魔法(エアヴァッヘン)

 痛みを快楽に変える魔法(ライデンスズフト)

 傷を完全に治す魔法(ヴントハイルング)

 

 目の前で半死半生の姿が巻き戻るように治っていく。

 

「んで──男は死ね」

 

 触手を操る魔法(テンタケルフィック)

 

「う──オォオオッ!」

 

 鉄壁の盾を構える魔法(シルトトレーガー)

 

 咄嗟に一般防御魔法では凌ぎ切れないと判断した兄が使ったのは……戦地で大規模の魔法から身を守るために編み出され、嘗ては人を殺す魔法(ゾルトラーク)の台頭により廃れた戦争用の防御魔法。

 

 一般攻撃魔法には無力、しかし唸りを上げる触手の殴打を容易く弾き逸らした。

 

 生まれた隙に弟の首を掴んで即座に距離を取る。反撃を入れる暇は無かった……見れば次々と触手が増えてる様子、あの手数を相手に接近戦は自殺行為に等しい。

 それに、反撃で殺せる確信(イメージ)が湧かない。

 

(なんだあれは……!? 回復魔法? 有り得ん、あんな速度で治るなら聖典なんぞ要らないだろう!! 頭を撃ったんだぞ? 死んでいたはずだ、死んでいるべきなんだ、人として!)

 

「あ、兄貴……」

 

「落ち着け、冷静に考えろ。……そうだ、あれは恐らく分身か何かだろう、よく見れば服も(・・)直っている。回復魔法では有り得ない」

 

 明らかにビビっている弟を窘めながら、自らに言い聞かせるように考えを巡らせた。そう、普通に考えれば回復魔法で服まで治るなんて所作も、あの速度もありえない……。

 分身ならわざわざ相手にする必要はない。ここは目くらましを利用して逃げるべきだと。

 

 徽章はある、無為に戦う必要はない。

 傭兵兄は逃走の算段を立てていた。

 

 全身を魔力に包まれるまでは。

 

(か──この魔力は!? こいつッ隠して)

 

 目の前の男から立ち上る魔力。頼りげなかった筈のそれが一変して大魔族に匹敵する魔力量になっていた。絶望して動けなくなる。

 これは勝てない。逃げることすら困難だと悟ったが故に。

 

 魔力を解放したヴィクサーは直ぐに追撃はしなかった。

 

「なあ……なんで殺した?」

 

 傍らで死んでいた女の魔法使いを見て問い掛ける。

 それは自身の価値観(可愛い女は殺さない)故に出る言葉であり──よく言えば善性のもので、しかしこの場(殺し合い)にはそぐわない言葉は短気な弟に火をつける。

 

「あぁ? 何言ってんだお前! 殺しも何でもありの試験だぞ……女が犯されようが(・・・・・・)殺されようが文句を言うなら来る場所じゃねェ! バカなのか!?」

 

「おいっ、よせ──」

 

 格上への恐れを紛らわすように弟は過激な言動でヴィクサーを罵った。

 同時に兄の制止も振り切って魔法を乱射する。

 

 一般攻撃魔法(ゾルトラーク)一般攻撃魔法(ゾルトラーク)一般攻撃魔法(ゾルトラーク)一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

 ──気を保つ魔法(エアヴァッヘン)痛みを快楽に変える魔法(ライデンスズフト)傷を完全に治す魔法(ヴントハイルング)──

 

 ぐぢゅり、じゅる、ぐちゃあ……

 

 攻撃魔法が身体を穿つ──再生する。脚を千切る──再生し立ち上がる。頭を飛ばす──再生する、笑いかけて来る。歩みを止められない。

 常軌を逸した回復力を前に、不死身という言葉が浮かんでくる。

 

「──お前いい事言うじゃないか。確かに、俺は馬鹿だな」

 

「死ね! 死ね! 死ィ、ぃい!? どうなって、どうなってんだ、何で倒れねえ!? 何故死なねぇ!? バケモノか、こいつ!」

 

「もういい! もう撃つなッ」

 

 半狂乱で魔法を使う弟の頬を兄は殴った。

 正気に戻した弟へ兄は立て直した作戦を話す。小声で共有された内容に弟は目を剥きながらも…渋々同意した。

 

 内容とは防御と攪乱に長けた兄が囮として時間を稼ぎ、徽章を持たせた弟を離脱させること。二人共は難しいが、一人なら逃がせると。

 

 俺達は遊ばれている(・・・・・・)。あの理解の届かない魔法の使い手はこちらを逃がすつもりはない。が、即座に殺しに来る様子もない。彼はそう判断を下した。

 

「さん、に、いち──今だッ!」

 

 閃光を放つ魔法(ブレンドグラナーテ)

 

 放つは目眩しの魔法。手で覆った程度では防ぎきれない光の暴力。

 

(最善はこの一手が奴に刺さり切ること、そうなれば俺も残る必要はないっ!)

 

 背後で弟の魔力が遠ざかっていくのを感じながら……防護魔法で眼を守る兄は光に呑まれた先を注視する。

 視界は一瞬遮られるが、周囲に防御魔法を同時展開してカウンターにも備えた。

 

 閃光が消える。

 

 問題ない、相手の魔力もまだ感じ……ない。

 感じない……? 居ない。

 

「消えた!? 一体何処に──

 

 ──斬。

 

 視界が廻る(・・・・・)

 断頭された。気がついた頃には自らの防御魔法の内側で、目の前で、ヴィクサーが剣を振り抜いていた。

 防御魔法を壊されていることにすら気づけなかった。

 真正面から切り捨てられた事実。首だけとなった男はその仕組みを見抜く間もなく、息絶える。

 

 これは、例え正面からでも(・・・・・・)相手を暗殺できる魔法。

 既に照準は終えている。

 

「悪くはないな」

 

 死角を作る魔法(ブリントシュポット)

 

 次なる指定対象:傭兵弟。

 一人目を始末したヴィクサーは追撃を開始した。

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 

 駆ける。

 全力で退避する。

 

 弟は呼吸も忘れて死に物狂いで逃げていた。慕う兄を置き去りにしたことへの罪悪感はない。

 数々の戦地で育んだ冷徹さと、先の魔法使いに折られた心……それでも俺の兄貴なら、いつものように帰ってきてくれると信じているから。

 

 だから自分が生き残ることだけを第一に考える。それ以外は考えるな──兄の言葉だ。

 

 だから──

 

「くそっ、この漁夫野郎がよおッ!!」

 

 木陰からの不意打ちに脚をやられ、悪態をつきながら傭兵弟は現れた少女を睨み付けた。

 

「──私は女だ」

 

 ゼンゼ二級魔法使い。

 

 森の中で蜘蛛の巣のように広げられた栗色の長髪。幾重もの防護魔法を織り込んだ姿に傭兵は敗北のイメージを焼き付けられる。

 

「徽章を全て差し出すなら殺しはしない」

 

「信じられるかぁッ──!」

 

 不殺を謳う少女に疑心に染まった傭兵は痛みを噛み締めながら応戦する。

 

 しかし脚を最初にやられたのが不味かった。

 負傷した状態では四方八方から襲い来る髪の応酬を捌き切れず──懐に隠していた徽章を奪われてしまう。

 

「老婆心で忠告してあげるが──早く逃げた方がいい」

 

「なッ、俺の──返っ、ごぁ…がっ!?」

 

「……もう追いついてきたのか、早いな」

 

 メキメキと人体から立ててはいけない音と共に、傭兵の身体は捻れるように折り畳まれる(・・・・・・)

 

「こっ──ヒュッ──」

 

 遠くから触る魔法(ペグラプシェン)

 

 潰れた果実のように傭兵の肉体が四散した。

 そして森の奥から溢れてくる魔力──刺すような視線がゼンゼを捉えて離さない。

 

(むご)いことをする。これは安眠できなくなりそうだ」

 

「──ならお兄さんと一緒に寝るか? 盗み見のお嬢ちゃん」

 

 ──触手を操る魔法(テンタケルフィック)

 ──自身の髪の毛を自在に操る魔法。

 

 ぎゅるりと伸ばされた触肢が無数の髪と交差した。一瞬で数万本の髪が鋼の硬度を帯び、鋭い槍へと変貌する。

 髪の一本一本が別々の意志を持っているかのように軌道を描き、触手を迎撃する。

 

 髪が舞う度に触手が裂ける。ゼンゼは次々と迫り来る魔の手を捌いた。

 

 一見して優位。しかし次々と増殖して差し向けられる触手の群れは衰えを見せず、かつそれほどの魔法を絶え間なく行使するヴィクサーは涼しい顔でゼンゼを見詰めている。

 対して防御は出来ていても攻勢に回る隙がない現状。

 

「良い魔法だなァ、この距離なら(触手)の手数に匹敵するのか」

 

「私も驚いている。どんなカラクリだ…? 貴方の魔力は減っていない(・・・・・・)

 

 無から物質を創り出す系統の魔法は魔力の消費が激しい、尚且つそれの具現化を継続したまま操るとなれば尚更。術式の効率や、本人の魔力量があっても限界は存在する。

 

 なのに──男から立ち上る魔力の微塵も衰えない。

 

「いいや? 減っているさ。減った分を補給(・・)しているだけだよ」

 

 二人分で、一ヶ月の貯蓄だがな。

 ヴィクサーの語る事はゼンゼには分かりえない理屈の話だ。

 説明しても無理だろう……離れた新居で魔族二人から魔力を啜り貯める触手空間と、ヴィクサーの魔力が共有されていることなど。

 

 理解は出来ない。しかし、このまま打ち合いを続ければ先に干上がるのは間違いなく自分──そうゼンゼは悟った。不安要素はそれだけではない。

 

(あの戦いは隠れて見ていた。この魔法以外にも……もはや死からの再生と言っていい回復魔法に、あの男(傭兵弟)を触れずに潰した未知の魔法)

 

 そして無尽蔵の手数を見せるこの(触手)魔法。突つけばまだまだ手札がありそうな底知れない余裕の所作。

 一言で言って化け物だ。襲われたから抵抗してはいるが、戦いになった時点で負けになる類いの理不尽。

 

 正直に言って降参するのが賢い手段。しかし傭兵兄弟の辿った末路を見ればヴィクサーが白旗を受け入れてくれる手合いには到底思えなかった。

 

 この上ない逆境。ゼンゼが死力を尽くす覚悟を決めようとした時、

 

 衣服を透かして見る魔法。

 

 遠くのものを触る魔法(ペグラプシェン)

 

 感度を昂らせる魔法(ゼンジーベル)

 

 しゅりっ、しゅり……

 

「──ふっ──く!?」

 

 衣服の裏に見えない指が滑り込む。

 温かな指先がゆっくりと腰周りの素肌を撫でていく感覚にゼンゼの呼吸が小さく乱れた。

 とくんと動悸が強まり、魔法のコントロールに精彩が欠ける。

 

(今、何をされた?)

 

 つつ、つぅうう──すりすりすり……すりすり……かり♡ すりすり……かり♡

 

「ひ……ィ…ッ──」

 

 彼女の薄い鎖骨の下がくすぐるように撫でられる。控えめな膨らみへと渦を巻きながら迫る。

 反射的に身体が振い落すように動いても、磁石のようにぴったりと吸い付いてくる。

 

 指先は薄紅色の蕾の周りを焦らすように回り続けながら……時折掠めるように摘んでいく。

 まるで花弁を一枚一枚剥がすかのような執拗でねちっこい愛撫。

 

 見れば触手の束に紛れるヴィクサーがこれみよがしに指先を動かしている。彼の指の動きに連動して、ゼンゼの身体が徐々に赤らみを増してゆく……。

 

「何をっ、す、る……っ!」

 

「さっき死んだ男がいい事を教えてくれた。此処じゃ死んでも、犯されても文句言えないってよ」

 

 その言葉に絶句する。

 ヴィクサーの言うことは……つまり、そういうことをするのだという宣言に他ならない。

 あまりにもストレートな言い分にゼンゼの身体が硬直するも、未だに素肌を這ういやらしい手つきは止まらない。

 

 さわ……つぅー、とん、とん

 

「くっ、い、きっ……んぁ♡──正気かっ」

 

「楽しいよ?」

 

 女の反応を調べるように、あるいは楽しむような一方的な愛撫。

 だというのにゼンゼの身体は信じられないくらいに跳ね、翻弄され、掠れた甘い声が漏れる。誤魔化すような反論も意に介されない。

 問答無用。徐々に"準備"を整えられているのだと自覚させられた。

 

 魔法への集中が弱くなる。髪の操作が乱れ、木々に張り巡らせている力が落ちた。

 明らかな失態……触手は絶大な隙を見逃さずに殺到する。

 

 かくんっ──と崩れそうになる身体をゼンゼは気力で支え、触手を迎撃し続けた。

 不味い……魔力切れによる決着よりも集中力が乱れる。魔法に集中出来ない、と。

 

 彼女の焦燥を他所に、ヴィクサーは目を細めて指先に伝わる柔肌を堪能する。華奢で細やかな肢体、ゼンゼの儚げな風貌と相まって美しい人形のようだ。

 全体的に薄い(・・)ので、挿入るか心配だ……なんて考えながら指を繰る。

 

「取り敢えず一回イッておこうか」

 

 指の腹が薄い肌をなぞるようにすりすりと滑り、細い肋骨の輪郭を確かめるようにつぅーっと這い上がった。

 胸の下の敏感な窪みを軽く押すようにくちゅ、くちゅと愛撫する。

 

「ぁあ──」

 

 まるで壊れ物を扱うかのような繊細で慎重な指使いに、ゼンゼから甘く溶け落ちるような声が零れ落ちる。

 

 しかし執拗に責め立てられても未だにゼンゼの抵抗は止まない。

 片目は蕩けつつも、もう片方の瞳は強い意志を持ってヴィクサーを睨みつけている。

 

 彼女の反骨心を表すように無数の髪は鋭く変形し、次々と触手を破壊する。

 それでもゼンゼは細い腕で自分を抱き締めるかのように抑えて、震えていた。

 

 頭では無意味だとわかっていても段々と上り詰められる。堕とされる。

 まともな性経験を知らないゼンゼの身体では、ヴィクサーの指使いに抗えない……。

 

「頑張るねえ……これならどうだ?」

 

 ヴィクサーはあまりにも唆る彼女の仕草に感激(興奮)し……新たな魔法を切った。

 

 四肢を奪う魔法(アクロメリー)

 

 直後、ゼンゼの『両腕』が消失した。

 それは単純な抵抗能力の大幅減に留まらず、今ゼンゼが最も必要としていた快楽を抑えんとする手段を丸々取り上げることになる。

 今彼女の胸は無防備になった。

 

 同時に、可愛らしい蕾を一摘み……

 

 きゅうううう♡♡♡

 

「ッッッ!! ッ! っあ♡♡あっ♡」

 

 ぷしゅっ

 胸の奥から迸る絶頂。痺れるような快楽に肢体が震え、ぴんと脚が伸びた。つんと勃った乳首をこりこりと転がされる度に胎の奥から愛液が滲みだし、じゅんと濡れた。

 

「──待てっ、いや待ってくれ! これもう無理ッ……ぃい♡ やぁ♡」

 

「待たないよ」

 

 いやいやと頭を振るう間もリズミカルに摘まれ続け、時折爪で弾かれる。その全てを抵抗できずに受け入れるしかない。

 そして魔法の操作も手放してしまう。

 やっとかと這い寄る触手が呑み込むように彼女を頭から覆い尽くした。

 

「──ふぅ、随分可愛らしい反応だったな……残り四日が楽しみだね?」

 

 トロフィーを掲げるように持ち上げた触手の表皮を撫で、中にいる少女を想う。

 傭兵の言葉により倫理観の枷がひとつ外れたヴィクサー。彼はゼンゼを残りの日数のうちに隅々までしゃぶり尽くすと決めた。

 

 本当ならもう一人確保できたかもしれないことを惜しくも思いながら。

 懸念のひとつであった鬱陶しく見られている感覚は遮断済みだ。準備は整った。

 触手と共にヴィクサーは森の奥へ消える。

 

 

 ゼンゼは、触手に捕まってしまった──

 




【魔法紹介】
視界を引き寄せる魔法(テレスコープ)
・オリ民間魔法。遠くのものが近くに見える。

描写を操る魔法(モザイキーレン)
・触手の描写を優しくする魔法。これなら女の子から嫌われないと思っているそうです、彼は。

鉄壁の盾を構える魔法(シルトトレーガー)
・オリジナル民間魔法。ゾルトラークが出てきてからはてんで使う人がいない。

閃光を放つ魔法(ブレンドグラナーテ)
・オリジナル民間魔法。目眩し用。まぶしい。

死角を作る魔法(ブリントシュポット)
・某オリ魔族ちゃんの魔法。使えそうだからという理由でヴィクサーにラーニング(意味深)された。暗殺よりもストーカーとかに使えそう。なお照準されたら防御魔法を壊されても気付けないという何気に恐ろしい性能をしている。

勇者の剣を騙る魔法(プルンクシュヴェルト)
・傭兵兄の首を切り落とした剣。切れ味はイマイチだけど見た目だけは豪奢な剣を出すだけの魔法。格好付ける時に使っている。名前は出してないけど一応記載。

遠くから触る魔法(ペグラプシェン)
・念力のように遠隔で触る魔法。触る用に作ったのでパワーは本人の握力まで。自認触手の変質者が使えば触手パワーで遠隔から握り殺せる。普段はリモート痴漢に使う。

四肢を奪う魔法(アクロメリー)
・スタイリッシュ四肢転送魔法。奪われた体は何処かにあるらしい。出し戻し可。

【魔法情報更新】
気を保つ魔法(エアヴァッヘン)
・どんな状態でも意識を保てる魔法。例え頭を消し飛ばされても。心というのは肉体ではなく魂に宿るというのが欠陥転生者ヴィクサーの自論。

痛みを快楽に変える魔法(ライデンズスフト)
・調整によって痛みと快楽の比率をニアイコールにできる。

傷を完全に治す魔法(ヴントハイルング)
・回復?魔法。生きていれば塵からでも再生できる。
 服や装備まで一緒に直すいい加減な魔法。テロメアへの作用に特化した派生魔法がある。

 上記の魔法三つを組み合わせて運用することで真人みたいな不死性を発揮するのがヴィクサーくん。殺すなら彼と触手を跡形もなく消し飛ばすのがオススメです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。