貴族転生で俺は好きにする(予定) 作:ノープ
王立学園の入学試験は、先週受けたばかりだった。
前日には珍しいことに、エリーザ先生から「明日は頑張れよ」という応援の言葉まで頂戴した。
日頃あれだけ説教ばかりしてくる先生からの励ましは、なかなか効くものがある。
あの瞬間だけは、いつもの軍曹みたいな先生の顔が、ちゃんと教師らしい温かさを帯びて見えた。
そして結果から言うと──合格した。
まあ、普通に行けたな、というのが率直な感想。
試験の内容は、筆記、面接、それから魔法の素養がある者には魔法実技、剣術や身体能力の一部実技も任意で。
総合的に判断する形式で、王立学園の入学試験としては王道のラインナップである。
しかも俺はその中でも割と上位の成績で合格したらしい。
というのも、王立学園では合格者の成績上位陣の名前が、入学発表の際に公開で貼り出される仕組みになっているのだ。
家格に関係なく純粋に成績順で並ぶので、貴族の家にとっては「うちの子は何位だった」というのが、密かに見栄の張りどころになっている。
俺の名前は上位ランキングのそれなりに上の方に書かれていた。
父上はそれを見て、「ぬるっ」といつもの含み笑いを浮かべていた。
あの笑顔、息子の成績を喜んでいるのか、別の何かを企んでいるのか、未だに判別がつかない。
ちなみに、王立学園には特待生制度もある。
家の財力や格に関係なく、純粋に学術や魔法の才能で合格した平民を奨学金つきで受け入れる仕組みだ。
だから合格者の中には平民出身の名前も混じっている。
今年の合格者一覧をざっと眺めてみると──成績トップはどこかの伯爵家のご令嬢だった。
お約束的に平民じゃないんだ、とちょっと意外だったけれど、まあ考えてみれば貴族と平民とでは幼少期からの教育環境が圧倒的に違う。
家庭教師に何年も見てもらえる貴族と、独学や町の学校で勉強する平民とでは筆記や教養面でハンデが大きすぎるのだ。
それでも合格できる平民がいるだけで、十分すごい話である。
ただ、魔法の実技に関してはこれが意外と平民の名前が多く並んでいた。
魔法の才能というのは家系よりも個人の資質に依存する部分が大きいので、教育環境のハンデを跳ね返せる数少ない分野なのだろう。
中には貴族の上位を押しのけて魔法部門で上位を取っている平民の名前もあって、これは学園に入ったら是非お目にかかりたい人材である。
上位の名簿の中には当然のように、セレスティアの名前もしっかり載っていた。
しかも俺より上の順位で。
流石は公爵令嬢。
俺との二人きりの時はあれだけスケベな本性を晒しているくせに、学業の方はちゃんと完璧に仕上げてきている。
あのお淑やかな仮面の下にスケベと優秀さの両方を完璧に同居させているの、本当に凄いと思う。
というわけで、合格通知を手にした翌日。
俺は意気揚々と、エリーザ先生のところに報告に向かった。
「先生! 合格しましたー!」
「ふむ。──まあ、そこまで不安ではなかったがな」
「え? そうですか? 俺、結構ヒヤヒヤしてたんですけど」
「あぁ。お前は性欲こそ底なしのスケベだが、頭の出来そのものは普通に良いからな。私が散々詰め込んだ知識を、ちゃんと吸収していたのは見ていて分かっていた。自惚れではないが、私の家庭教師としての実力にも自信はある。それから、お前の許嫁の公爵令嬢の方も、しっかり上位に名を連ねていたな。流石は、と言ったところか」
「あ、もう確認済みでしたか先生」
「当然だ。お前の動向に関わる人物の情報は、教師として把握しておくべきだ」
エリーザ先生は腕組みをして、淡々と頷いた。
「ですよね、流石セレスティアです! 俺と並んで上位入賞、おちんちんと同じくらい鼻が高いですよ!」
「そこで自分の下半身の話を引き合いに出すのはやめろ……と言いたいところだが、まあ……」
エリーザ先生は珍しく、途中で言葉を呑み込んだ。
眉間に手を当てて、ふぅ、と一つ深く息を吐き、それからゆっくりと顔を上げて──
「──今回ばかりは、よくやったと、一応、褒めておいてやろう」
厳格な切れ長の瞳が、ふっと和らいで、口元に小さな微笑みが浮かんだ。
「えっ……!? 先生が、俺を、褒めた!?」
「珍しいか?」
「珍しいですよ! あの厳しいエリーザ先生が、こんなに素直に褒めてくれるとか、人生で初めてかも!」
「ふっ……私も、教師の端くれとしての矜持はある。生徒を扱きおろしてばかりではないということだ。教え子が成果を出した時くらいは、ちゃんと労ってやる。それくらいの度量はあるのだぞ」
ふっ、と。
彼女はもう一度、口元を緩めて笑ってみせた。
これはイケメン。
いつもの厳しい説教モードのエリーザ先生もカッコいいけれど、こうしてふと笑顔を見せてくれた瞬間の彼女は破壊力が凄まじい。
長身で銀髪の元女騎士がふっと優しく微笑む……一枚絵にして額縁に入れて飾りたいレベルの絶景だ。
俺の頭の中の脳内ギャラリーに、また新しい一枚が永久保存された。
褒めてもらえて気を良くした俺は、ここぞとばかりに調子に乗った。
「先生、おっぱい揉ませてください! どうしても!」
言いながら、自分でも「いやこれは絶対無理だろ」と思った。
いつもの厳しいエリーザ先生なら即座に拳骨を落としてくるか、長々とした説教コースに突入するか、最低でも机を叩いて怒鳴りつけてくるかのどれかだ。
覚悟して身構えた、その瞬間。
「あーーーー……」
エリーザ先生は、唸った。
怒鳴るでも、机を叩くでもなく、腕組みをした体勢のまま、しばらく天井を見上げて、深く長い唸り声をあげた。
眉間に皺を寄せて、口を真一文字に結んで、明らかに葛藤している顔。
いつもなら一秒で却下されるような俺のセクハラ提案を、今日に限ってはなぜか真剣に検討してくれている。
長い、長い、本当に長い逡巡。
俺はその間、じっと先生の顔を見つめていた。
動いたら断られそうな気がして、息を殺して。
そして──
「……一秒だけだぞ?」
ぼそりと、エリーザ先生は言った。
……え?
「マ、マジですか先生!?」
「そう言いながらもう手を伸ばすなッ! ……ええい、勝手にしろ。一秒だけだ。きっかり一秒。それ以上は許さん。手を当てるだけだぞ。揉むのはほんの一瞬だ」
「は、はい!」
俺は震える手で、エリーザ先生の胸にそっと──そっと、両手を当てた。
服越し。
それでも、もうそれだけで、眼前にあったのは長年憧れていた極上のおっぱいである。
ぐにゅっ。
厚い布越しなのに伝わってくる弾力が、もう、尋常じゃない。
しっかりと張りつめた肉の手応えと、その奥にある柔らかさ。
日々の鍛錬で鍛えられているであろう胸筋とその上に乗る乳房の、しっかりと持ち上がった完璧な形。
底なしの柔らかさとも、程よい弾力とも、熟れた柔らかさとも違う、先生ならではの引き締まった胸の感触。
「……一、二」
エリーザ先生はきっちりと数えた。
「終わりだッ! はい終わり! もういいだろう!」
「はぁい……!」
俺は名残惜しく手を離したが、顔は緩みきっていた。
「先生……大好きです!」
「はぁ、まったく、お前は本当に……」
エリーザ先生は溜息をついていたが、怒鳴りつけることなく額に手を当てて苦笑いした。
「まあ、これまで真面目に頑張ってきたのは私も知っているからな。今日のところは、せいぜい良い思い出にしておくことだ」
「はい! 一生の思い出にします! それから今夜のオカズにもしまーす!」
「それは言わんでよろしいッ!」
ポカッ──!
即座に拳骨が降ってきた。
でもそれは、いつものガチの説教の時の一発ではなく、軽い、教師として一応のけじめをつける程度の手加減されたような拳骨だった。
なんというか、本当に良い思い出になったな。
これまでの先生との勉強の日々……厳しい説教、机ドン、勉強のチェック、お小言。
そのすべてが、今のこの瞬間に報われた気がする。
学園に進学する前の、最後の最高の節目だった。
そして、入学に伴う実務的な準備も、色々と進められていた。
まず、従者の件である。
貴族の子弟は学園に従者を連れて行くことが認められている。
寮や別邸での身の回りの世話、課題の補助、買い出し、護衛など、用途は様々だ。
我が侯爵家からは、この王立学園に過去通っていた経歴のあるメイドを一人、俺の専属従者として連れて行くことになった。
学園の慣習や立地、講義の進め方を分かっている経験者がいるのは心強い。
それと、護衛としてシルヴィアにも王都に来てもらうことになった。
ただし、彼女は学園内ではなく、王都に構えてある侯爵家の別邸で待機してもらう形にした。
理由はシンプルで、シルヴィアを学園内まで連れて行くのは流石に目立ちすぎるからだ。
剣聖の弟子で、武芸大会で何度か入賞している有名人。
そんな人物を従者として連れて歩いたら、間違いなく学園中の話題をかっさらう。
というか、そもそも学園内でそこまでの武力は必要ないだろう。
王立学園の警備体制は厳重だし、シルヴィアクラスの実力者を護衛として常駐させるのは明らかにやりすぎということで悪目立ちして派閥工作の的にされかねない。
なので、シルヴィアには王都別邸でいつでも駆けつけられる距離にいてもらいつつ、学園生活そのものは少し距離を置いて過ごしてもらう形に落ち着いた。
何かあった時の最終防衛ライン、という配置である。
寮の部屋に関しては、父の権力をフルに使わせてもらって、一人部屋を確保してもらった。
通常、王立学園の寮は二人部屋がデフォルトで、家格の近い者同士が割り当てられる。
家同士の友好関係を学生時代から育てるための仕組みらしいが──正直、俺は家のしがらみとか派閥工作とか、そういうのが心底苦手なのだ。
毎晩同室の貴族子弟と、家の利害だの社交辞令だのを延々と話さなければならないなんて、想像するだけで気が滅入る。
それに、俺の生活には色々と「同室の人間に見られたくないこと」も多い。
一人部屋でないと、自由に動けない。
なので、駄目元で父に「一人部屋にして欲しい」と相談してみたところ──父は「ふむ、まあ、お前らしいな」とぬるりと笑って、二つ返事で「分かった、なんとかしておこう」と請け合った。
正直、いくらなんでも一介の侯爵家の都合で王立学園の寮の部屋割りが捻じ曲げられるものなのか、と俺は半信半疑だった。
王家直轄の最高学府の運営ルールを、外部の貴族が一声で動かせるとは普通は思えない。
だが──数日後、あっさりと許可の通知が届いた。
そして後日、知ることになる。
我が父・侯爵閣下は、王立学園の運営理事会に、もう何年も前から名を連ねていたのだった。
いや、聞いてないんだけど、そんな話。
だが、考えてみれば腑に落ちる。
だからこそ上位の公爵家とも対等に近い距離で渡り合えていたわけだ。
領経営の腕前だけでなく、王家の最高学府の運営にまで食い込んでいる時点で、父の影響力は俺の想像していた数段上だったということになる。
公爵閣下が我が家の白ワインを毎年楽しみにしていたのも、許嫁の縁談がスムーズに進んだのも、こうした父の人脈の賜物なのだろう。
うちの父、本当に底が知れない。
あのぬるっとした含み笑いの裏に、いったい他にどれだけの隠し玉があるのか──息子の俺ですら把握しきれていない。
恐ろしい男である。
学園入学までの最後の数週間は、長い間お世話になったメイドたちへの「お礼参り」の期間にも費やされた。
文字通り、たくさんの射精という名のお礼を、屋敷中のあちこちでさせてもらった。
もちろん──行為としてのお礼だけでなく、これまで本当に毎日のように尽くしてくれた感謝の気持ちもちゃんと言葉と態度の両方で伝えながら、である。
メイド長のアイリス、レーナ、フィオナ、衣装担当のヘルガ……まあ、たくさん。
数えるのが怖くなるほど、ありとあらゆるメイドたちと最後の濃密な時間を過ごした。
ちなみに最終的に、一番たくさん射精させてもらったのはメイド長のアイリスである。
なんやかんやで、俺がもうちょっと幼かった頃から屋敷の隅々まで世話を焼いてくれていた人だ。
屋敷で初めて女の人にちんぽを握ってもらったのもアイリスだったし、初めてパイズリを覚えたのもアイリスの胸でだった。
長い付き合いゆえに、最後の最後で一番濃い思い出を作ってくれた感じだ。
しかも、彼女はその日「今日は安全日ですから、特別ですよ?」と言って、なんと素股まで許してくれた。
太ももの内側にちんぽを挟まれて、彼女のたっぷり濡れた割れ目に押し付けながら腰を振る、あの感覚──正式な挿入には届かないギリギリのライン、けれど擬似挿入感がたまらない、最高のお別れの儀式だった。
ありがとうアイリス、本当にありがとう。
陥没乳首が今ではすっかり立派に勃起するようになったアイリーン。
お尻の穴擦り付けプレイの開発者となったミナ。
まあその他、色々とお世話になった皆さん方。
さらば、屋敷の極上ハーレムよ。
数年は気軽に会えなくなるけれど、長期休暇には必ず戻ってくるからね。
料理長のロザリンデは、最後の朝、特別に俺の好物を全部詰め込んだ朝食を用意してくれた。
「学園でも体だけは壊さないようにね、坊っちゃま」と、いつもの色っぽい笑みで送り出してくれた。
あの授乳手コキの感触は、たぶん学園の寮で一人寝の夜にも、何度も思い出してオカズにすることになるだろう。
そして、母からも別れ際に重要な助言を受けた。
「あのね、よく聞いて。学園では絶対に──ハニートラップには気をつけなさい」
優しい母が、珍しく真剣な顔で釘を刺してきた。
ハニートラップ。
つまり、敵対派閥や他家から送り込まれてくる、美人な刺客。
色仕掛けで侯爵家の機密や弱みを引き出そうとしてくる手合い。
これは普通にヤバい。
俺の節操のなさは、母も含めて屋敷中の全員が把握している。
なまじスケベが大好きな俺のような男が、敵対派閥の用意した美人スパイにうっかり引っかかってしまった日には──下手をすれば、侯爵家の存続そのものが揺らぐ、本当に取り返しのつかない事態に発展しかねない。
学園内での恋愛沙汰は、ただの色恋では済まないのだ。
背後にある家の利害、派閥の力学、王家との関係、すべてが絡み合った政治的な綱引きの一手として機能する。
軽いノリで誘いに乗ったら、家ごと終わる可能性すらある。
「分かったわね?」
「は、はい母上、ちゃんと心しておきます」
「お父様もね、お若い頃にそういうことで一度大変な目に遭われたから、本当に気をつけて。あなたは、お父様の血を一番濃く引いているのだから」
「お、お父様……過去に何が……」
なんか聞いちゃいけない話を聞いた気がする。
とりあえず母には深く頷いて、肝に銘じておくと約束した。
そんなこんなで、本当に色々あった。
屋敷でのお別れの儀式、家族からの助言、最後の魔法の練習、許嫁への手紙のやり取り、その他諸々の準備──
それらすべてを終えて。
俺は、王立学園に入学したのだった。
新しい生活が今、始まる。