貴族転生で俺は好きにする(予定) 作:ノープ
入学式はつつがなく執り行われた。
貴族と特待生の平民が同じ場に立っているとは思えないほどの、緊張した空気。
そして、壇上に立った校長らしき人物の演説は、長かった。
とにかく、長かった。
異世界転生してまで、入学式の偉い人の話の長さは前世と変わらないということを、改めて思い知らされる。
お決まりの「諸君らは王国の未来を担う若き才能であり」とか「学園の伝統と誇りを胸に」とか、そういう類の話が延々と続く。
そして、新入生の代表として壇上に上がって挨拶していたのが見るからに王族らしい青年。
彼を取り巻くように、学園の警護の騎士達が周囲に控えている。
あれが確かこの国の第二か第三王子だったはずだ。
父上の話では今年の新入生に王族が入っていると聞いていたが、まさか同学年とは。
入学式が終わり、新入生として教室に向かうと、まあ予想通り色んな人がいた。
貴族の子弟もいれば、特待生らしき平民の子もいる。
学年共通の必修クラスだけあって、結構な混合具合だ。
「身分に関係なく、学び舎においては皆平等」──というのが王立学園の表向きの理念ではあるが、まあ、実際の教室の空気を見てみれば、派閥や序列が水面下で機能しているのは一目瞭然だった。
教室の奥の方では、明らかに家格が下らしい令嬢が、上位貴族の令嬢に媚びを売っているのが見える。
「お姉様、本日もお美しくて」みたいな調子で、背筋を伸ばして必死にお追従している姿がなかなかに見ていて痛々しい。
まあ、貴族社会では下から上へのご機嫌取りは生存戦略の基本だ。
学園に入った瞬間からあれをやれるのは、ある意味では教育の賜物なのかもしれない。
平民らしい子もちらほら混じっていた。
全体としては、各派閥や階層の人間が、いい感じに散らされたクラス編成。
まあ、これは当然と言えば当然か。
もしクラスに上下の格付けがあって、公爵家嫡男や侯爵家嫡男が「下位クラス」みたいなところに振り分けられてしまったら、それこそ家ぐるみの大問題に発展する。
だから、各クラスにはある程度均等に上位貴族・中位貴族・平民を配置して、表向きの平等を維持する仕組みになっているのだろう。
ちなみに、今さらだけれど寮の部屋を一人部屋にしてもらったことについて。
これはこれで変に特別扱いだと陰口を叩かれる可能性は、確かにある。
ただまあ、うちの侯爵家は良くも悪くもそれなりに有名な家だ。
父上のスケベ家風の噂も含めて、王都の貴族界隈では「あの家ならまあ、そういうこともあるか」程度に流される程度の格はあると思っている。
たぶん大丈夫。たぶん。
もし誰かに突っ込まれたら、いっそ開き直って「ええ、うちの父はそういう家風なので、息子の私もそれに準じた配慮を求めてしまいまして」と笑顔で押し切るしかない。
スケベ家風を逆手に取った社交テクニックである。
それから寮の俺の専用居室──父上の権力で確保してもらった広めの個室──に戻ると、すでに色々と入学準備の片付けや家具の配置を済ませてくれていた、専属従者のメイドが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、坊っちゃま」
「ただいま、ヴィオラ」
ヴィオラ。
この王立学園を卒業した経歴を持つメイドである。
色々ここを知り尽くしているであろうまさに俺の学園生活専属の最強サポーター。
漆黒のショートヘアに冷たい印象の切れ長の瞳。
表情筋が常時ほぼ動かない、徹底した無表情系のクール美人だ。
研ぎ澄まされた刃物のような佇まいの女である。
俺は荷物を椅子に置くなり、振り返って彼女に手招きした。
「ヴィオラ、ちょっと来て。キスしたい」
「かしこまりました」
即答。
ヴィオラはためらうことなくすっと俺に近付き、すらりと長身の彼女が少しだけ屈むようにして、すっと顔を寄せてきた。
「ん……ちゅっ……」
「ふぅ……」
ちゅっ、んちゅぅ、ちゅるるっ。
彼女の唇は、彼女の表情と同様、ひんやりとしっとりしていて、けれど舌を絡めるとちゃんと温かい。
淡い唾液の交換と、舌先の繊細な絡まり、適度な吸引。
数十秒ほどで、俺は名残惜しく唇を離した。
「ふぅ……やっぱキスは落ち着くね〜。なんかさ、今日は初日ってこともあって疲れちゃってさ」
「ご苦労様でございました。ところで、許嫁の公爵令嬢様の方はよろしいのでしょうか? 専属従者の口を借りて寛がれることに関して」
「それはそれ、これはこれだよ。セレスティアには俺の方からまた折を見て会いに行くし、ヴィオラとはこういう関係でしょ? 屋敷で取り決めた通り」
「左様でございますね。失礼いたしました」
ヴィオラはわずかに頭を下げた。
表情は相変わらずの無表情。
この淡々とした受け答えが、なんというか、たまらなくいたずら心をくすぐるのだ。
屋敷の他のメイドたちは、俺の発言に対して「あらあら♡」「もぅ坊っちゃまったら」「変態すぎますよ〜」と感情豊かに返してくれる。
けれどヴィオラは違う。
何を言っても、何をしても、彼女の表情はほぼ変わらない。
きっちりと業務として処理してくれる。
その鉄壁の無表情を、いつかはどうにかして崩してみたい。
俺の中の悪戯心と征服欲が、彼女の前ではいつも以上にうずく。
「いやあ、しかし、王立学園ってすごいところだね。校長は話長いし、王子はいるし、平民もいるし、それから派閥はゴリゴリにあるしさ。初日から濃い一日だったよ」
「はい、王立学園は様々なことを学べる場でございます。学術や魔法のみならず、貴族同士の派閥力学、王家との距離感、平民との折り合い方、社交界の縮図としての立ち回り──そういった一切合切を、学生のうちに身につけるべき場と位置付けられております。坊っちゃまにおかれましても、特に派閥の動向には十分にお気をつけください」
「うん、それはもちろん肝に銘じてるよ」
「それから──」
ヴィオラはふと、淡々とした口調のままで言った。
「他家のご令嬢に手を出されることは、何卒お控えくださいませ。学園内でのご令嬢方とのご関係は、その背後にある家の利害が直接絡んでまいります。一夜の戯れが、家ごとの政治的事案に発展することも珍しくはございません」
「うん、それは母上にも釘を刺されたよ」
「ご賢明な母上様でいらっしゃいます。しかしながら、坊っちゃまの性欲がそれをきっちり守れるとは、私め個人の見解としては、正直に申し上げて思っておりません」
「うっ……」
「ですので、もしも坊っちゃまが勃起してしまわれた際には、必ずまず私めにお申し付けくださいませ。私のお口でも、おまんこでも、お尻の谷間でも、お手でも、坊っちゃまのお望みのままにお使いいただけます。お口の場合は、根元までしっかりお咥えして喉奥まで突かれても粗相はいたしませんし、最後の一滴まで精液を吸い取り、お掃除も舌で隅々まで舐め回した後にきっちりとお清めの白湯までご用意いたしますので」
俺は思わず咽せた。
「う、うん、すごい言い方だね……ヴィオラ、本当にすごい言い方……」
「……坊っちゃまがそうしろと、屋敷を出る前にご自身で取り決められたのですよ」
「あ、そういえばそうだった」
そういえばそんな事を伝えていた気がする。
あの時の俺は調子に乗りすぎたかもしれないが、結果としては最高の専属従者を手に入れたことになる。
俺はそのまま、ヴィオラの腰の方に手を回し、メイド服越しに、きゅっと引き締まった彼女のお尻を両手で揉み込んだ
ぐにっ、ぐにっ。
彼女の尻肉は、ロザリンデのような熟れた柔らかさとは違って、しっかりと鍛え上げられた引き締まった肉感だった。
シルヴィアに近い……まあ、シルヴィアのお尻は揉んだことがないので想像だけれど、それよりもさらにスレンダーで、無駄な脂肪が削ぎ落とされている感じ。
「失礼ながら坊っちゃま、揉み方が雑でいらっしゃいます。もう少し、下から持ち上げるようにして、指の腹で均等に圧をかけていただけますと、メイドの臀部の触り心地を最大限ご堪能いただけるかと存じます」
「え? そんな細かい指導いる?」
「お屋敷の他のメイドの皆様方の臀部と、私めのものとでは、肉質も筋肉量も異なりますゆえ。最適な揉み方も個別に異なるかと」
「なるほど……勉強になります」
淡々と揉み方の指導まで業務報告口調で投げてくる女である。
最高すぎる。
俺は彼女の指導通りに揉み方を調整しながら、ふと思いついた。
「ヴィオラ、明日からTバック履いてきてよ。メイド服の下に」
「かしこまりました。明朝からの着用に切り替えます」
「即答だね」
「業務上必要であれば、下着の選定は使用人の責任範囲内でございますので」
ヴィオラはやっぱり最高の専属従者だ。
学園内で他の女に手を出すリスクを抑えながら、こうして毎日彼女に処理してもらえるなら、それで充分だ。
慣れていない環境での疲労も、ヴィオラの淡々とした奉仕の前ではすっと溶けていく。
「しつこいようですが、もう一度申し上げますよ、坊っちゃま。くれぐれもご令嬢に手を出されることと──ハニートラップにはお気をつけくださいませ」
「うん、それは肝に銘じてるよ。そういえば、ヴィオラの家って、確か……」
俺がふと言いかけると、彼女は一瞬だけ視線を伏せ、それからまた淡々と顔を上げた。
「はい。私の実家も、それでやられました」
「あ……」
「なにぶん男爵家でしたので、家格的にも対抗策に乏しく……父が他家からの色仕掛けに引っかかったことを発端に、商談の弱みを握られて、家ごと傾きました。私自身も路頭に迷いかけましたところを、坊っちゃまのお父上に拾っていただき、こうして使用人としての職を頂戴したのでございます。あの時侯爵家の懐に入れていただかなければ、今頃私はどこの娼館で働いていたか分かりませんね」
「うっ……重い……」
「ですので、坊っちゃま──」
ヴィオラは片手でわっかを作り、舌をちろっと出してフェラチオの素振りをしてみせた。
「もしも欲求が溜まりましたら、迷わず私めにお申し付けくださいませ。お手でも、お口でも、おまんこでも、ご所望とあらばセックスでも、お好きにお使いいただいて構いません。私を使い倒していただく方が、よほど安全でございます」
「説得力やばいね……」
事情が事情なだけに本当に説得力が桁違いだった。
彼女にとってこれは、ハニートラップから侯爵家を、ひいては自分の身を守るための、極めて切実な業務上の提案なのだ。
「うん、ありがとうヴィオラ。本当に気をつけるよ。困った時はちゃんとヴィオラを頼るから」
「はい。お気をつけくださいませ」
ヴィオラはぺこりと一礼して、それから手早く部屋の片付けの続きに戻っていった。
俺はベッドの縁に腰掛けて、ふぅ、と一つ深く息を吐いた。
学園生活、本当に色々ありそうだな。
でも、こうして頼れる従者が居てくれるなら、たぶん──なんとかやっていける、はずだ。