貴族転生で俺は好きにする(予定) 作:ノープ
ちょうどいいというか、何というか。
俺は今、公爵家の屋敷を訪れていた。
目的は、家同士の定例的な交流訪問──ということになっている。
俺と公爵令嬢の婚約が取り交わされてから、両家の行き来は格段に増えた。
婚約成立前は年に一、二度の社交シーズンの大きな夜会で顔を合わせる程度だったのが、婚約成立以降は月に一度ほどのペースで、こうして互いの屋敷を行き来するようになっている。
家格に応じた礼儀の一環であり、また両家の親交を深めるための実務的な機会でもある。
そして本日の訪問の表向きの目的が、もう一つ──
「例年のごとく、我が領地の白ワインが今年もちょうど飲み頃を迎えましたので、ぜひに、と思いましてお届けに上がりました次第で。今年の出来は特に良い、と私の方でも自信を持って申し上げられる仕上がりでして」
公爵閣下にそう恭しく告げながら、我が父はニヤリと意味ありげに口角を上げた。
うん、まあ──父である。
はっきり言ってしまうと、我が父・侯爵閣下の容姿はいわゆる「種付けおじさん」によく似ている。
……いや、誤解のないように言っておくが、実際にそういう人物だという話ではない(断言はできないけれど)。
あくまで、見た目が世間でそういう揶揄をされる類型のおじさんとそっくり、という話だ。
ちょい小太りで、丸い肩、福々しい頬、目元は半月形に細くて、笑っているのか細めているのかよく分からない。
微妙に瞳が見えているようで見えていない、独特の陰のある眼差し。
発言の端々にどこか含みがあって、何を考えているか読みづらい。
屋敷で女ばかりを使用人にしているスケベ家風と相まって、初対面で警戒する者は多い。
けれど、領地経営の手腕は本物で、口を開けば理路整然とした商談と政治の話が出てくる。
一癖も二癖もある、有能なおじさん──それが我が父である。
「ふむ、そっちの領地の白ワインは、実に美味いからな。毎年これを楽しみにしておるのだ」
応じる公爵閣下の方は、対照的にがっしりとした体格の壮年男性である。
身長は父より頭一つ高く、肩幅も二回りは広い。
短く刈り込んだ黒髪に、鋭い眼光、真一文字に引き結ばれた口元。
表情筋がほぼ動かないタイプの厳格な顔立ちで、こちらに視線を向けられただけで背筋がピンと伸びてしまうような威圧感がある。
長らく王国軍の要職を務めていたという経歴の通り、軍人然とした佇まい。
父と並ぶと「ぬるっとした狸」と「鋭利な熊」、みたいな取り合わせだ。
そして、そんな公爵閣下の隣にしずしずと控えているのが──
俺の許嫁である、公爵令嬢。
俺とほぼ同い年でめちゃくちゃ可愛い。
お淑やかな空気を全身からふんわりと漂わせ、上品に伏せた長いまつ毛に白い頬、小さく結ばれた唇。
腰まで届く滑らかな銀髪が、夕日に照らされて柔らかく光っている。
……銀髪、か。
そういえば、エリーザ先生も銀髪だったな。
もしかしたら父上、こういう許嫁を息子に迎えたくて、俺の家庭教師にも似た髪色の女騎士を選んだのかもしれない──いや、それはないか。流石にそれは深読みしすぎだろう。
……いや待て、父上ならやりかねん。
何にせよ、エリーザ先生に色々言ったらセクハラ注意案件として返ってくる気がするので、俺の中だけにしまっておくことにした。
そんなこんなで、公爵家での晩餐は無事に進んでいった。
給仕されたローストビーフがもう信じられないほど美味かった。
柔らかくてジューシーで、添えられたソースも絶妙で、屋敷の料理長にレシピを聞いて持ち帰りたいレベル。
そして食後のお茶の時間。
大人組は別室で「腹を割って話したいことがある」と公爵に呼ばれていった父と、応接間で公爵閣下と密談中。
要は政治と領地経営の本題である。
その間──「若い者同士、ゆっくり親睦を深めておきなさい」という大人達の粋な計らいで、俺と許嫁の二人は別の応接間に通されたのだった。
はい、つまり今、俺とこのお淑やかな銀髪美人さんは、二人きりというわけだ。
調度品の整った広い部屋だ。
窓の外には公爵家の広大な庭園。
部屋の真ん中の小さなテーブルを挟んで、俺と彼女は向かい合って座っていた。
彼女は両手を膝の上に揃えて置き、伏し目がちにこちらを見ている。
「──このたびは、わざわざ我が公爵家までお越しくださりまして、まことにありがとう存じます。父も、本日のお父様とのご歓談を、ずっと楽しみにしておりました。私自身も、こうしてお会いする機会をいただけまして、誠に光栄に──」
「いやいやいや、前も言ったけどそんな堅苦しいのはやめようよ! 立場で言ったらそっちの方が上なんだし、俺なんかにそんなにかしこまらないでくれよ。膝枕で寝そべりながら話しても良いくらいの相手だと思ってもらって構わないからさ」
「……失礼いたしました」
彼女はぺこりと小さく頭を下げた。
長い銀髪が前に流れて、白い頬を縁取る。
最初はいつもこんな感じなんだよな。
とは言っても、正直したいことはもう決まっていた。
俺はティーカップを置いて、にこやかに彼女に向き直った。
「ん〜、じゃあ、ちょっと聞くけどさ──最近、オナニーしてる?」
「はい、しております。毎日、欠かさず」
俺の不躾な問いかけに対して、彼女は伏せていた瞳を上げ、まったく動揺の色を見せず、顔色一つ変えずに、まるで天気の話に答えるかのような平坦な調子でこう答えた。
「昨夜も就寝前に3回ほどクリイキしておりました。お風呂場で1回、ベッドに入ってから自分の指でおまんこの中を掻き混ぜて2回、合計で3回でございます。あ、それから今朝、目が覚めてから二度寝の前にもう1回、寝起きクリオナをいたしましたから、丸一日で合計4回ですね」
「なるほど、すごいね」
「はい、お教えいただいたおかげです。今もこうしてあなた様のお顔を拝見しておりますと、わずかながら下腹部の奥が疼いておりまして……正直に申し上げますと、本日のお食事の最中も、あなた様のお声を聞くだけで何度かお股の奥が小さく痙攣しておりました。ローストビーフのお味と、あなた様の存在のお味と、両方を同時に味わうのはなかなか刺激的でございました」
「なるほど」
真面目な顔で、彼女はそう言い添えた。
そう──実は彼女は、見た目のお淑やかさとは裏腹に、割とスケベだったのである。
初めて二人きりで会わされた時に、俺がちょっとした出来心で「ねぇ、自分で気持ちよくなる方法って知ってる?」と冗談半分で尋ねたところ、彼女は本気で「存じません、ぜひお教えくださいませ」と返してきた。
そこから、貴族令嬢としての教養として一切教わってこなかった彼女に、俺が懇切丁寧に色々と手ほどきをしてしまったのが事の始まりだった。
結果。
吸収が早すぎた。
俺が教えたのは座学だけで、流石に実演や実践指導はしていない。
許嫁とはいえ正式な婚姻前の身にそこまでするのは、流石に俺もリスクを天秤にかけて踏みとどまったのだ。
それなのに彼女は、自力で完璧に習得し毎晩のように研鑽を重ね、今では立派な達人になっていた。
とんでもないことを教えてしまったクズすぎる自覚は、俺にもあった。
けれども、彼女がこうして俺の振りに真面目な顔で乗ってくれる、知的で柔軟性のある人間でいてくれて本当に良かった、とも思っている。
俺たちの年齢で、こういう会話を真剣な顔で交わせる関係って、なかなか得難い変態カップルである。
まあ、若いからかもしれない。
お互いに性欲が暴れる時期だ。
「──ただ、一応念のために言っとくよ? 今みたいな話、絶対に俺以外の前では一言も口にしないでね? お父様の前でも、社交界でも、お屋敷の使用人の前でも、絶対に。我らの関係は秘密厳守でいこう」
「もちろんでございます」
彼女は両手を膝の上で重ねたまま、しっかりと頷いた。
「私も自分の立場と、淑女としての対外的な振る舞いはきっちり弁えておりますのでご安心ください。父の前では今までと変わらず、貞淑で慎ましやかな清純令嬢を演じ続けます。例えば──いつか正式に婚姻を交わした暁には、初夜の一発目をあなた様のモノで子宮口をぐりぐりに潰されながら中出しでイかせていただいた後、おちんぽをまんこから抜かずに繋がったままでなめくじのようにぬめぬめとずっと交尾し続けて、朝になっても繋がったまま、お互いの汗と精液とおまんこの本気汁で泥のように濡れた身体で抱き合いながら朝食をいただきたい、などと考えていることは、決して父には漏らしませんので」
「うん」
「日がな一日、中にあなた様のおちんちんを栓のように刺したまま家事をして、料理の味見をする時などに小さくイっておまんこから本気汁垂らしてしまうところを毎日眺めていただきたい、とか。そういう浅ましいド変態の妄想はお父様の前では絶対に表情にすら出しませんから」
「うん」
「お父様は私のことを清純無垢な何も知らない箱入り娘だと信じきっておられますから、そのご認識を裏切るわけには参りません。父の前では『おちんちん』という単語はおろか、『おまんこ』も『クリ』も『精液』も『中出し』も発したことすら一度もございませんし、これからも一生父の前では発するつもりはございません。あなた様とお二人きりの時だけ、こうして本当の私──下品でいやらしくて、おちんちんのことを毎晩考えながら自分のおまんこを掻き回している浅ましい本性を、解放させていただいておりますので」
うーん、これはスケベだ。
しかもただスケベなだけではないんだよな。
「父の前では清純を貫く」「あなたの前でだけ本性を出す」という、独占感を煽る最高の建前まで自然に組み込んでくる完璧な許嫁仕草。
淑女としての教育が完璧に染み込んでいるからこそ、それを脱ぎ捨てた時の落差がえぐくてエロい。
……結婚生活、楽しみだな。