。。。
「この水族館はサメが多いのだ。サメにも種類があって私はジンベエザメが一番好きだ。」
彼らと水族館を訪れた。
年甲斐もなくはしゃいでしまっていた。
「おーボロの好きなサメ教えてくれよ。」
「イタチザメはどれだ?」
「ジョーズのサメは?」
「コバンザメはどれ?」
私がサメ講釈をしようとした時だった。
「ヤバ……特殊メイクじゃなかったんだ……マジでブッサ……キモ……。」
「マジウケる……オタサーの姫ポジ気取ってる年増のババアとか……レイメイはブスに優しいから……」
「少しチヤホヤされたからって調子こいてね……クリーチャーのくせに」
若い女性グループの方から聞こえる正論。
……オタサーの姫だと叶もオタクになるが。
耳が悪い私にも聞こえる音量だ。
……あまり……聞かせたくない、な……。
「あ!クラゲコーナーだ!!実はクラゲが一番好きなのだ!!」
とにかく彼らから離れたかった。
彼らの価値を下げたくない。
施設内で許容されるギリギリの早足でクラゲコーナーへ向かった。
クラゲコーナーでは何組かのカップルが静かに愛をささやき合っていた。
しまった、場違いだ。
水槽に反射した自分の姿を見る。
髪に艶はなく、体型も三十路たるもの、顔はツギハギ。
歯は治療せずボロボロのままにしたから、彼ら以外の前で笑い話すことも……。
いや、笑えないが。
彼らの前で……笑ったりしただろうか、口元を押さえられていただろうか、醜い顔を見せてしまって……。
「綺麗ですね。」
見上げると天堂がいつの間にか隣に立っていた。
「綺麗だな。クラゲはいいな。クラゲになりたい。」
天堂はこちらを見て「なぜ?」という顔をした。
「クラゲは死んだら水に溶ける、他の生物も溶けるが、クラゲが一番……きれいに無くなると思うからだ。」
しばらく二人でクラゲを見つめた。
「ミズクラゲだ……ふわふわしてる。」
天堂は何も言わずにただ立っていた。
。。。
「ご来場の皆様!!お待たせいたしました!!ここからは本日の審査役は昼間が進行致します!!」
男性行員が紹介を始めた。
やかましいタイプだな。
「自称愛の伝道師のチュミケさんと朧気のボロ大先生による女性ギャンブラー同士のハーフライフ対決です!!」
ブロンドに毛先がカラーチャートのように複雑なグラデーションをしている二十代後半に見える女性。
眼帯に黒の小花柄のロングワンピースに頭にバブーシュカ。
シスター風のコスプレか?
「私とは皆様は住むレイヤーが異なります。覚えて頂かなくて結構です。その時が来たらご機嫌よう。愛を知らない方。」
天堂のパチモンかよ。
さっきから……なんだこの臭いは、果物が腐ったような甘ったるい腐臭、吐き気がする。
ドギツい香水を身に付けてはならないと、ルールに書け。
「互いにコンニチワの挨拶を済ませてスタートです!」
__本日のゲームは誰もが知るお伽噺の後日譚であり、現代のギスギス社会の体現『不仲な桃太郎』でございます。
プレイヤーの両名にはガラスパイプの中にて、家来を統率する『桃太郎』になっていただきます。
手持ちの家来は、『犬・猿・雉』がそれぞれ一匹ずつ。
これ以外の戦力はございません。
勝利条件は単純。
初期ライフ49Pを削り合い、相手を0Pにすること。
ただし、貴方の家来たちは非常に陰険で仲が悪く、扱いを間違えれば主……つまりあなたを傷つけることでしょう。
【戦闘フェイズ:出陣】
各ターン、プレイヤーは手持ちの三匹から 「一匹〜三匹」を任意で選び、戦場へ送り出します。
両者が召喚した家来の組み合わせによって、ダメージ判定が行われます。
これは両者同時に召喚します。
『相性』
1.基本相性と「犬猿」の法則
このゲームの核心は 「犬と猿の仲の悪さ」と「雉の無関心さ」です。
【同種対決】
犬vs犬、猿vs猿、雉vs雉
互角の争いです。
両者が1Pダメージを受けます。
【異種対決】
自分:犬vs相手:雉
犬は雉に負け、1Pのダメージを受けます。
自分:雉vs相手:猿
雉は猿に負け、1Pのダメージを受けます。
【犬猿の仲】
自分:犬vs相手:猿
目が合えば殺し合いです。両者が2Pダメージを受けます。
【大乱闘】
自分犬猿vs相手:犬猿
目が合えば殺し合いの大乱闘です。両者が4Pダメージを受けます。
2.「犬猿セット」の特殊判定
自分が「犬と猿を同時に」出陣させた場合、彼らは基本的には内輪揉めを始めます。
しかし、相手の出し方次第でその矛先が変わります。
【大喧嘩】
自分:犬猿vs相手:犬or猿
ここが重要です。
貴方が「犬猿セット」を出し、相手が「犬だけ」または「猿だけ」を出していた場合、二匹の喧嘩の矛先は、相手の孤独な一匹に向かいます。
相手に3Pの大ダメージを与えます。
リンチは怖いですね。
3.雉の狙撃
雉は我関せず、空を飛ぶ孤独な鳥です。
【内輪揉め】
自分:犬猿vs相手:雉
相手が無関係な「雉」だった場合、貴方の犬猿は勝手に喧嘩をして自滅します。
自分だけが2Pダメージを受けます。
雉は高みの見物、無関心ですから。
【雉の奇襲】
自分:雉vs相手:猿犬(雉の不在)
貴方が「雉」を含み、相手に「雉」がいなかった場合、 一方的な空爆が成功し、相手に2Pダメージを与えます。
雉は猿に負けますが、『内輪揉め』を見ています。
自分は『内輪揉め』相手には『雉の奇襲』と呼び方が変わるだけです。
ただし、貴方が犬猿セットに雉を混ぜていた場合(犬猿雉)、犬猿の内輪揉めが優先されます。
自分:雉+犬or相手:猿vs相手:犬猿
雉は犬を攻撃して1Pダメージを与え、自分の犬or猿は『大喧嘩』により3Pのダメージを受けます。
自分:雉+犬vs相手:犬、雉+猿vs相手:犬
雉は犬を攻撃して1Pダメージを与え、自分の犬or猿と相手の犬or猿は『犬猿の仲』により両者に1Pのダメージを受けます。
自分:雉+猿vs相手:猿
雉は猿に負けて1Pダメージを受け、自分の犬or猿と相手の犬or猿は『同種対決』により両者に1Pのダメージを受けます。
自分:雉+犬vs相手:猿
雉は猿に負けて1Pダメージを受け、自分の犬と相手の猿は『犬猿の仲』により両者に2Pのダメージを受けます。
自分:雉+犬or猿vs相手:犬or猿
雉は犬を攻撃して1Pダメージを与え、『犬猿の仲』により自分と相手に2Pダメージを受けます。
自分:犬猿雉vs相手:犬
雉は犬を攻撃して1Pダメージを与え、相手は『大喧嘩』により3Pのダメージを与えます。
自分:犬猿雉vs相手:猿
猿は雉を攻撃して1Pダメージを与え、相手は『大喧嘩』により3Pのダメージを与えます。
自分:犬猿雉vs相手:雉
雉は雉に攻撃して両者に1Pダメージを与え、自分の犬or猿は『内輪揉め』により2Pのダメージを受けます。
自分:犬猿雉vs相手:雉犬
雉は互いの犬に攻撃して両者に1Pダメージを与え、自分の犬猿は『大喧嘩』により相手に3Pのダメージを与えます。
自分:犬猿雉vs相手:雉猿
雉は猿に負けて1Pダメージを受け、自分の犬猿は『大喧嘩』により相手に3Pのダメージを与えます。
4.その他の乱戦
【不協和音】
他の組み合わせセット。
連携は取れません。
両者が1Pダメージを受けます。
【全面戦争】
自分:犬猿雉vs相手:犬猿雉
双方が全戦力を投入した場合、戦線は膠着し『引き分け』(ノーダメージ) となります。
【準備フェイズ:介入】
ターン終了時、桃太郎は家来へ「褒美」や「命令」を与え、次ターンに備えます。
以下の四つから一つを選択してください。
効力を発揮する次ターンまでは秘匿されます。
ただし、同じ介入を二ターン連続で使用することはできません。
また、四ターンのうち一度は必ず『空の鬼ヶ島』を使用ください。
まさか、鬼退治のあとのパトロールをしないおつもりですか?
① きびだんご
家来を強制的に従わせる餌です。
次ターンの効果を変更します。
『内輪揉め』を無効化し、相手への 2P ダメージに変換します。
『大喧嘩』が成立した場合、ダメージを倍の6Pに跳ね上げます。
『大乱闘』が成立した場合、ダメージを8Pに跳ね上げます。
② 桃
傷ついた体を癒やします。
自身のライフを次ターンに3P回復します。
桃太郎は桃を食べると愉快な気分になります。
「ワッハッハ!!」
はい。
パイプ内に笑気ガスが充填されます。
使用するたびに濃度が増し、思考力と判断力を奪います。
③ 鬼の財宝
金銀財宝の力で戦況をねじ曲げます。
次ターン、家来の相性に関係なく、相手に2Pの確定ダメージを与えます。
④ 空の鬼ヶ島
何もしません(パス)。
介入を再使用するためのクールタイムとして利用してください。
【まとめ】
「犬猿」を揃えて相手の単騎を狩るか。
「雉」で安全圏から削るか。
それとも「きびだんご」で一撃必殺(6P)を狙うか。
戦略次第にございます。
ただし、傷を恐れて「桃」を齧りすぎれば笑気ガスで頭が回らなくなり、家来の編成ミスで自爆……。
つまり死ぬことになります。
思考を止めた桃太郎から鬼ではなく身内に喰われる。
それが 『不仲な桃太郎』でございます。
反則行為は通信、暴力、「3分以上の遅延行為」反則者には即水責めで海の藻屑になって頂きます。
以上、『不仲な桃太郎』ゲームを開始します。__
「あなたは愛に飢えている哀れな人だと、すぐに分かりました。」
なるほど、そういうタイプか。
「お前は男に不自由しなさそうだな。」
「ええ、あなたのように醜くありませんから。」
ほう。
【1ターン目】
この女、香水がキツくて笑気ガス……亜酸化窒素に耐性を持ってたりしないか?
チュミケ(この小娘、強気に攻めてくるはず。パーカーにジーンズというラフスタイル。舐めやがって。)
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(49P):犬 vs チュミケ(49P):雉
「おおっと!『異種対決』です!!犬は雉に手が出せない!!ボロさんに-1Pです!!」
チュミケ(空の鬼ヶ島を早めに消費したほうがいいね。)
「ねえ不細工さん、あなた愛されたことがないでしょう?……男性に。」
なるほど、そういう煽りの方向性か。
「ああ、ない。」
■介入
ボロ(48P):空の鬼ヶ島 vs チュミケ(49P):空の鬼ヶ島
「男に愛されることこそ、女の悦びなのに、可哀想。」
こういうことを言うタイプほど、男に飢えている裏返しと取れる。
顔は整形か?
【2ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(48P):犬猿雉 vs チュミケ(49P):猿
「『異種対決』により雉は猿に引っかかれてボロさんに-1P、『大喧嘩』によりチュミケさんに-3P!!」
「お友達も少ないでしょう?女性も、男性も。」
そうだな。
■介入
ボロ(47P):鬼の財宝 vs チュミケ(46P):きびだんご
【3ターン目】
雉が強いが、そう多用すると猿で殴られるな。
チュミケ(犬猿をどう使うかだね。)
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(47P):犬猿 vs チュミケ(46P):犬猿
「おおお!!『大乱闘』です!!互いの犬と猿が取っ組み合いをして両者に-4P!!に加えてチュミケさんは『きびだんご』を使用して効果倍増!!ボロさんは合計-8Pになります!!熱くなってきましたね!!チュミケさんもボロさんの『鬼の財宝』でチュミケさんは合計-6Pです!!」
■介入
ボロ(39P):空の鬼ヶ島 vs チュミケ(40P):桃
女が笑気ガスを吸ったかはライフで分かるが、どれだけ耐性があるかは分からないな。
チュミケ(なぁんだ、大したことないねぇ。)
「至上の快楽を知らないなんて、女に生まれて」
「お前、モテないだろ。」
チュミケ(小娘が、舐めるんじゃないよ。)
。。。
「なあ天堂、フランケンシュタインの怪物はどうしたら幸せになれたと思う?名付けられたら?愛されたら?番を作ってもらったら?美しく作り直されたら?」
天堂は私のくだらない質問に嫌な顔一つせずに答えてくれる。
「自分を認めることです。」
それができれば、怪物は怪物と呼ばれない。
「なぜ怪物はフランケンシュタイン博士の恋人や友人を殺したと思う?いや、質問にならないな、ただの嫉妬だ。」
怪物はフランケンシュタイン博士に認めて欲しかったんだろう。
「自分を見てほしかったからでしょう。」
そうかもな。
「私みたいに醜い者は大変だ。」
私は醜い。
歯も顔も身体も心も頭も。
ありとあらゆる全てが醜くできている。
「何かお困りごとでも?」
天堂は姿勢正しくソファに座ったまま応じてくれる。
「いや、別に……散歩に行かないか?」
珍獣の管理人として。
「ええ、いいですよ。」
。。。
【4ターン目】
チュミケ(犬猿か犬猿雉を打てば勝てるね。)
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(39P):猿 vs チュミケ(40P):犬猿
「『大喧嘩』によるリンチが発生してしまいました!ボロさんは-3P!!そしてリンチを愉悦するチュミケさんは桃でライフが回復します!!」
「あらあ、ごめんなさいね?嬲っちゃったわ。」
ふむ、「喧嘩の際に一番自分が傷つく言葉を無意識に使う」のは本当らしいな。
■介入
ボロ(36P):鬼の財宝 vs チュミケ(43P):空の鬼ヶ島
【5ターン目】
リンチが好きか。
なら孤高を貫く。
チュミケ(次は仕返しに犬猿雉か犬猿でくるね。)
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(36P):雉 vs チュミケ(43P):犬猿雉
「『同種対決』で互いに-1P!!そして『内輪揉め』が発生してしまいました!ボロさんは-1P!!そして内紛を起こしたチュミケさんは-2P!!……に加えてボロさんの『鬼の財宝』によって-2P!!チュミケさんは合計-5Pとなります!!」
■介入
ボロ(35P):空の鬼ヶ島 vs チュミケ(38P):桃
「美しいから、価値があるのです。不細工な方。あなたに価値はありません。」
お、そうだな。
。。。
「なあボロ大先生、お前ならPC改造できるよな?」
叶は勘違いしている。
大先生ではない。蔑称だ。
「はあ……お前のやりたいことを実現するには複数OSを同時に入れるパーティションを区切って、だからLinuxとWindowsをな?まず……というかなんで複数OSを……だから」
私は知識がない。
。。。
チュミケ(この策はどう判断する。小娘。)
【6ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(35P):犬猿雉 vs チュミケ(38P):犬
「おや!?『異種対決』によりチュミケさんの犬は雉に突かれます!!-1P!!更に『大喧嘩』!内戦です!!チュミケさんは-3P!!合計-4P!!をみこしてか『桃』でライフを3P回復!!つまり-1P!!」
■介入
ボロ(35P):きびだんご vs チュミケ(37P):きびだんご
ブラフ。
桃を惜しげもなく使う、やはり耐性持ちか。
。。。
「なあ天堂、虹って龍の一種って考えがあったから虫がついてるん話は知って……あ、見て!虹だ、わー……。」
雨上がりの薄雲りの空にエンジェルラダーと共に虹がかかっている。
「綺麗ですね。」
天堂越しに見ると、本当に神にみえてくる。
「ちょっくら虹の下の宝物を探しに行ってくる!」
虹の下、あそこは河川敷だ。
「お一人では危ないですから、走らない、ほら転んだ。」
道路が雨水で濡れてスリップしてしまった。
大の大人が情けない。
「痛い、うう……。」
ジーンズが破けてしまって、血が滲んでいる。
「消毒のために一度戻りましょう。立てますか?」
ダメだ、左肩に穴が空いたから重心が不安定で
「立てない……。」
天堂が手を差し伸べてくれる。
神対応だ。
「肩を貸します。」
背の高低差があり過ぎてほぼ担がれている状態だ。
「すまん……ありがとう。」
。。。
【7ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(35P):犬猿 vs チュミケ(37P):犬猿
「おおお!!『大乱闘』!!しかも互いに『きびだんご』でダメージ2倍だ!!両者に-8P!!やってくるはますね!!」
■介入
ボロ(27P):鬼の財宝 vs チュミケ(29P):桃
この女、笑気ガスの耐性に自信があるのか、向こう見ずかどっちだ?
桃を多用する、つまり大規模自滅覚悟だ。
【8ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(27P):雉 vs チュミケ(29P):犬猿雉
「『同種対決』で雉達、互いに-1P!!そしてまたまた『内輪揉め』が発生してしまいました!ボロさんは-1P!!そして内戦を繰り返すチュミケさんは-2Pに加えてボロさんの『鬼の財宝』により-2P!!合計-5Pのダメージが入ります!!これは痛い!!」
■介入
ボロ(26P):きびだんご vs チュミケ(27P):空の鬼ヶ島
チュミケ(あたしは世界大戦を生き延びたんだ……ガスくらい大したことないさね。小娘、いきがるのも今のうちだ。)
チュミケ(次も同じ雉でくるね。)
【9ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(26P):犬猿 vs チュミケ(27P):猿
「『大喧嘩』!!リンチがの報復が発生してしまいました!!更にボロさんは『きびだんご』を使用しています!!効果が2倍になりチュミケさんは合計-6Pになります!!」
■介入
ボロ(26P):空の鬼ヶ島 vs チュミケ(21P):きびだんご
「小娘……読み勝ったつもりになるんじゃないよ。」
ああ、私も必死だ。
【10ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(26P):雉 vs チュミケ(21P):犬雉
「『同種対決』で雉はつつきあい両者-1P!!更に『異種対決』!!チュミケさんの犬は雉に突かれ-1P!!ん!?『きびだんご』……?犬猿が揃っておりません!!笑気ガスで判断が鈍ったか!?ラリってないか!?」
■介入
ボロ(25P):鬼の財宝 vs チュミケ(19P):桃
笑気ガス、とは言ったが、『何の成分がどの程度含まれているか』を示さなかった。
つまり、一般的な笑気ガスだけではない可能性がある。
。。。
「天堂あれみて!アサギマダラだ!珍しい!近くにフジバカマが咲いてるはずだ!」
アサギマダラは薄水色、浅葱色で美しい。
ユーパトリウムやフジバカマなどの決まった花の蜜しか吸わない旅する贅沢者だ。
「フジバカマ……。」
フジバカマは秋の七草の一つ。
食べる、ではなく愛でる七草。
「芳香が強く、昔から匂い袋に使われていて野生種は絶滅危惧種なんだ。……探しに行ってもいいか?」
見上げると、目を伏せて微笑んでいた。
「ええ、かまいません。」
嗅覚にはそこそこ自信があるので、犬のようにあたりを嗅ぐと、河川敷に背の高いピンク色の花が咲いていた。
「あった……フジバカマ……ではなくサワヒヨドリだ。でもいい匂いだな。」
天堂も手で香りを掬うように嗅いだ。
「いい香りですね。」
人が死ぬ時に最後に残るのは『嗅覚』という話があったな。
実際に残るのは『聴覚』だともされるが。
「フジバカマ、絶滅しないといいな。アサギマダラも困るから。」
花の種類が一つが減るだけで、環境は激変してしまう。
嫌われ者の蚊やゴキブリにも役割はある。
「ええ、そうですね。」
「何をしている。」
驚いて振り向くと医者がいた。
仕事帰りに河川敷に立ち寄るとは、暇か。
「……道草。」
。。。
【11ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(25P):犬猿 vs チュミケ(19P):犬猿
「またしても『大乱闘』!!殴り合いが発生してしまいました!ボロさんは-4P!!そしてチュミケさんはボロさんの『鬼の財宝』も加わり-6Pダメージ!!……ですが『桃』でライフを3P回復!!」
■介入
ボロ(21P):きびだんご vs チュミケ(16P):空の鬼ヶ島
桃は桃源郷を象徴する。
存在しない場所。たどり着けない場所。
【12ターン目】
チュミケ(雉で逃げ回ればいいのさ。)
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(21P):犬猿 vs チュミケ(16P):雉
「『内輪揉め』!!……ではありません!!『きびだんご』の効果によりチュミケさんへ-2Pのダメージ!!カウンターが決まった!!」
■介入
ボロ(21P):鬼の財宝 vs チュミケ(14P):きびだんご
桃は「女性と美」 の象徴でもある。
。。。
「な、なあ天堂……怒らないか?」
もう口を利いてもらえないかもしれない。
「理由によります。」
……やめよう。
「そうだよな……すまん。」
あまり、人に嫌われたくない。
嫌われ者だとわかっていても、嫌われたくない。
「なんでしょうか。」
言って大丈夫かな。
「か……か、肩車……してくれますか?」
天堂は背が高い、ガタイもいい。
叶のほうが背が高いけど、叶には頼みたくない。
馬鹿にされる。
……怒らせたかな。
「ええ、いいですよ。」
肩車されると、目の前に広がったのは初めてみる景色だった。
初めて見る世界。
「視点が変わるだけで、こんなにも……見えるものは変わるんだな。」
。。。
【13ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(21P):犬猿 vs チュミケ(14P):犬猿
「またしても『大乱闘』!!!チュミケさんの『きびだんご』によりボロさんは合計-8P!!そしてチュミケさんは-4Pに加えてボロさんの『鬼の財宝』により合計-6P!!」
■介入
ボロ(13P):空の鬼ヶ島 vs チュミケ(8P):空の鬼ヶ島
桃は「繁栄と厄除け、不老長寿」をも象徴する。
【14ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(13P):犬猿雉 vs チュミケ(8P):犬
「!?犬!?『大喧嘩』によるリンチが発生してしまいましたが!!!『異種対決』での雉の攻撃-1Pに『大喧嘩』により-3P!!チュミケさんは合計-4P!!大丈夫ですかね!?」
「あらあ、いい男……。かわいいわ……可愛がってあげる。」
ふむ、「笑気ガス」や麻酔の扱いは専門家でなければな。
■介入
ボロ(13P):鬼の財宝 vs チュミケ(4P):空の鬼ヶ島
「ああん…。気持ちいい……。」
ヤバいな。この笑気ガス。
。。。
道路脇に紫陽花が咲いている。
紫陽花は一般的に酸性だと青に近づき、アルカリ性だと赤に近づくとされる。
「これは甘茶紫陽花だ、薬になる。」
そう呟くと天堂は微笑んだ。
「なあ天堂、かたつむりってなめくじに退化してるらしいぞ、だから最近みないんだ……情報ソースは不明確で信憑性無し。進化の分岐と考えるのが妥当だが。」
そのソース、塩で溶けるぞ。
「そうでしたか。」
なめくじはなんで殻がないんだろう。
守る必要がないからか、殻が邪魔なのか。
ソースを見つければ、見つけなくていいか。
「退化なのか、進化なのか、私には分からないな。」
進化が良いのか、退化が悪か、愚かなのか。
「そうですね。」
私には分からない。
「梅雨のイメージでセットになっているが、かたつむりはアジサイにつきにくい。アジサイは基本的に毒があり、かたつむりはカルシウムを食べるからコンクリートブロックにいる。」
アジサイの上にいることもあるけど。
「そうなのですね。」
相変わらずの様子で、静かに隣を歩いている。
「ああっ!!天堂!!みてみて!!」
天堂の袖を引っ張ってコンクリの壁を指差す。
「『ヒダリマキマイマイ』だ!!ヒダリマキマイマイは左右反転してる、左巻きは少数なんだ!!わー……初めて見た。ヒダリマキマイマイは体の構造も反転しているから交尾が上手く出来ないから数が……。一人でも逞しいなお前。」
天堂は目を細めた。
。。。
【15ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(13P):雉 vs チュミケ(4P):犬猿雉
「おおお!!また同じパターンです!!『同種対決』で互いに-1P!!そして『内輪揉め』が発生してしまいました!ボロさんは-1P!!そして内紛を起こしたチュミケさんは-2P!!合計-3P!!もう後がない!!どうする!!チュミケさん!?」
■介入
ボロ(13P):桃 vs チュミケ(1P):桃
【16ターン目】
「両者出陣下さい!!」
■出陣
ボロ(13P):犬猿雉 vs チュミケ(1P):雉
「なんとまあ!!最後はこうきましたか!!『同種対決』で互いに-1P!!そして『内輪揉め』が発生してしまいました!ボロさんは-1P!!内紛を起こしたのでボロさんは合計-3P!!に加えて初めて、そして最後に『桃』を使用しました!!……の前にチュミケさんは0P!!敗北です!!」
「美しいから、価値があるのです。不細工な方。あなたに価値はありません。」
お、そうだな。
桃の花言葉は、「チャーミング」「気立ての良さ」「私はあなたのとりこ」……そして「天下無敵」。
「あはは、勝利に酔いしれるのも悪くないな。」
。。。
「なあなあ天堂、性的意図はないが、抱きついていいか?」
二人きりでソファに座りながら尋ねる。
流石に無理か。
「いいですよ。」
ありがたい。
「生きてる。体温を感じる。天堂は生きてるな。」
神父服……キャソック越しでも温かい。
「神ですから。」
そうか、神だからな。
「昔、うさぎを飼っていたんだ。ソイツは賢くて朝5時にぶうぶうと起こして、夜は寝付くまで側にいてくれたんだ。夜中に起きると跳んできて添い寝してくれた。」
暖かかったな。
「賢かったんですね。」
私よりずっと。
「ああ、洗濯物を干しっぱなしとか、雨が降るとか、来客が近づいているとか、教えてくれた。」
側にいてくれた。
「ボロさんのことを愛していたんですね。」
私も愛していた。
「でもたった13歳で死んじゃった。私がいい飼い主じゃなかったから。幸せに出来なかった。」
天堂は何も言わなかった。
「愛したものを幸福にしてやれないのは辛いな。」
苦しい。後悔しかない。
「辛いですね。」
ああ、死にたいよ。
「天堂は幸せになれよ。長生きしろよ。みんなと仲良しのまま、ずっと……。」
「ええ、あなたも。……寝てしまわれたようですね。」
。。。