※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

14 / 48
The Shameless Iron Maiden

 

「本当によろしいのですか?」

 

 ああ。

 

 今日はシスターではなく、天堂にウェディングドレスを着付けてもらっている。

「もう少しキツくしてもらって構わない。」

 そう言っているのに、なかなかコルセットは締まらない。

 最初に着たあの日から、ずいぶんと見窄らしさが増した私の体躯ならば、多少の余裕ができているはずなのに。

「なあ天堂、私のエンバーミングを頼めるか?」

 手の動きが止まった。

「断る。神は愚か者の頼みは聞かない。」

 ……。

「……天堂……最後のお願いなんだ……聞いてよ。」

 天堂に初めて拒絶された。

 胸が苦しい。

「なら懺悔し、今直ぐに断りの」

「その提案は断る。……今までありがとうございました。天堂さん。」

 

 建屋から出るとスマホの着信があった。

 ジョイキッチンからの通知音で慌てて出る。

「はい、ボロです。」

「馬鹿野郎!!退職届を郵送するんじゃねえ!!今から迎えに行くから待ってろ!!」

「牙頭オーナー、短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました。漆原弁護士にもそうお伝えください。」

「直接言え!!待っ」

 通話を切った。

 

 しばらく路地で隠れていると黒塗りの高級車が迎えに来た。

 

「ボロ、今からでも主任に直談判して中止しよう?な?なあ。」

 土屋田は担当ギャンブラーに情をかけ過ぎだ。

「私はワンヘッド。『フランケンシュタインの花嫁』の『ボロ大先生』だ。私は行く。」

 腕で静止された。

「ボロ、考え直せ。お前はまだ死ぬべきじゃない。」

 迎えに来たんだろ?

「私は死なないさ。私が勝つのだから。」

 私は死なない。

 必ず勝って永遠になる。

 

 車窓から外を見ていると、走馬灯のように出来事がフラッシュバックする。

「頭の悪いブス」「歯がボロボロ」「気持ち悪い」「臭いから近づくな」「醜い」「双極性障害」「ゴミ」「目つきが悪い」「空気を読め」「態度が悪い」「貧乏人」「病人」「キチガイ」

 

 「ねえボロさん、遊ぼうよ。」

 


 

 会場までの長い廊下が無限に感じた。

 履きなれないハイヒールが痛い。

 ウェディングドレスも最早汚れとほつれでボロボロ。

 

 最高に私らしいじゃないか。

 私はワンヘッド『フランケンシュタインの花嫁』のボロ大先生。

 このツギハギで、今にも朽ちて滅び灰になりそうな姿こそが、私だ。

 

 会場の扉が土屋田によって開けられた。

 

「ボロ、お前と組めて……よかった。」

 

 何だよ、いかにも私が負けるみたいじゃないか。

 

 対戦相手が決まったと知らせがあった時から、もう私の勝ちは確実になった。

 私はこの勝負に、必ず勝つ。

 

「なあ、医者。お前、ワンヘッドに上がらないんじゃなかったか?私ならば勝てると仕組んだか?」

 

 冠婚葬祭に使う上等なスーツを着てくるとは。

 やはり、私が出ると聞いて仕組んだな。

 

 医者の表情がライトに反射して読み取れない。

 「……あなたを見届けたら直ぐにハーフライフに落ちる。」

 ……。

「随分と甘く見られたものだな。……ワンヘッドはどちらかが必ず死ぬ。……まさかフランケンシュタイン博士と怪物のように北極海に飛び込む気か?」

 私の描いたファンフィクションでは、博士は死なない。

「私とあなたはフランケンシュタイン博士と怪物のように永遠に離れられない。」

 ……。

 違う。

 博士は生きながらえ、怪物が焼身自殺を図るのだ。

「お前……なんで私……俺に勝てる気でいるんだ?対峙しているのはワンヘッド『フランケンシュタインの花嫁』のボロ大先生だぞ?侮るな。」

 医者は本当に感情を出さないな。

 ……いいや、出ている。

 怒り、呆れ、諦め、侮蔑のありとあらゆる全ての負の感情が漏れ出ている。

 私には分かる。

 

「……あなたは、あの日のウェディングドレスをボロボロにしてまで……この舞台に立つ必要はない。」

 今日この日こそに意味がある。

 この舞台だからこそ、私に相応しい。

 「俺はこの舞台で主役になる。」

 

「あなたは……俺などという一人称ではなかったはずだ。強がりはよせ。」

 ……。

「医者のくせに『誤診』したな?俺は『性同一性障害』だ。」

「……。そうか。」

 やけに物わかりがいいな。

 ……。

「お前のワンヘッド戦の初敗北……バージン、そして心臓を奪ってやるよ。」 

 必ず。

「私はあなたを何処までも追い続ける。フランケンシュタイン博士のように。」

 その必要などない。

 医者、患者に寄り添うのはもうやめにしろ。

「そうかい。ただな、私……俺は怪物である以前に『人間』だ。俺は自分の意思で北極で焼け死ぬか、……お前を殺すかを選択できる。」

 私という負の成果物から解放してやる。

 

「……そうだな。」

 


 

__本日のゲームは古きから伝わるカードゲームであり、新鮮さ……つまり清き処女性を求める王女の最高傑作アイアン・メイデンを融合した……その名も『厚かましい鉄の処女』でございます。

 

 プレイヤーの両名はこれより、専用の透明なドーム内に入って頂き、ベルトコンベアの上に固定された椅子にて対面となり拘束され、背後より迫るアイアン・メイデン……『鉄の処女』に抱かれる死と、隣で処女に付き従う『ユニコーン』に貫かれる恐怖に耐えながら、『トランプ』を使ったシンプルな『オールドメイド』……ババ抜きに興じていただきます。

 

【舞台装置】

 

『ベルトコンベア』

 プレイヤーが鎮座する椅子の下に1〜12の段階で前進後退する『ベルトコンベア』がございます。

 もちろん、椅子とテーブルは固定されております。

 プレイヤーの椅子は丁度『1』に当たる場所に設置されております。

 

『鉄の処女』

 プレイヤーの背後には、無数の鉄針を備えた『鉄の処女』がベルトコンベアの上に佇み控えております。

 『鉄の処女』の初期位置は 『7』。

 『ベルトコンベア』は 『全12段階』で構成されており、位置が 『1』……つまりプレイヤーの椅子の位置に達した瞬間、処女は皆様をその腕の中に永遠に閉じ込めます。

 すなわち、処女に血を渡す……死の敗北です。

 

『ユニコーン』

 プレイヤーの隣には、拷問器具ファラリスの雄牛を模した『ユニコーン像』が鎮座しております。

 これは火をくべられるたびに、内部の空気が震えて5秒間、鼓膜を破壊するほどの絶叫……『雄叫び』をプレイヤーの耳元で上げます。

 至近距離での轟音は、概ね7回で人の聴覚を恒久的に奪うでしょう。

 

 また、『雄叫び』にはタイミングの揺らぎが御座いますので、手で覆うのに間に合うかどうか……。

 

 『ユニコーン』は『鉄の処女』を愛する騎士、彼女の忠実な下僕です。

 『鉄の処女』に無礼を働く者には制裁を加えます。

 

『ヘッドセット』

 流石に対面していますから、相手に叫んだユニコーンの『雄叫び』を聴いてしまう可能性がございます。

 ご安心ください。

 特殊なヘッドセットを着用し、『雄叫び』される者のみが耳当て部が開いたままで、聞かなくても良いものは『雄叫び』の際に塞ぐように設計しております。 

 

 尚、勝敗が決まるまで『ヘッドセット』を外さないでください。

 勝手に外したり逃げ出した者には直ぐさま『鉄の処女』が襲いかかります。  

 

『トランプ』

 トランプは最初に運営がシャッフルさせていただき、秘匿された箱にしまいます。

 それをテーブルに置くとあら不思議、テーブルの中央が開いて箱が回収されてシャッフルされます。

 再び現れた箱を後攻の方がお選ください。

 

 流石にテーブル越しとはいえ手でカードを選んでいただくわけには参りません。

 プレイヤーの両名は点滴の針と管が刺さっているのですから。

 カードの指定は指と「自分からみて左から2枚目」と言った形でご指定ください。

 指定されたプレイヤーは指定されたカードを『交換場』に配置してください。

 自動で相手の交換場にカードが渡されます。

 

 また、観客の皆様にはプレイヤーたちの手元がわかるようにモニターしておりますのでご安心ください。

 

 尚、故意か過失かを問わず、カードを汚損、破壊したものは『ユニコーン』により角で『串刺し』にさせて頂きます。

 

【七つの大罪】

 

 そしてプレイヤーの腕には、未だ注入されていない点滴針を刺させて頂きます。

 頭上のラックには、1番から7番までの番号が振られた七つの点滴袋があなたの罪を流し込みます。

 

 パックの色、及び管は見えない黒に塗りつぶされた特殊なものを使用しているため、相手の番号を当てるのはいささか困難かと。

 

 中身はプレイヤーごとにランダムですが、プレイヤーにお渡しするヘッドセットにのみ、薬品名が記載されております。

 

 ラインナップは以下の通り。

 ①虚栄:生理食塩水

 ②嫉妬:本人の血液型の輸血

 ③憤怒:バルビツール酸誘導体

 ④怠惰:ソルデム

 ⑤強欲:高濃度ビタミンC

 ⑥暴食:ビーフリード

 ⑦色欲:アルファリポ酸

 

 皆様ならお気づきでしょう。

 一つだけ、「安楽死」に用いられる劇薬が含まれております。

 それ以外にも、体調に異変をきたすものが混ざっている……かもしれません。

 

【ゲーム進行】

 

 行うゲームは『オールドメイド』つまりババ抜きです。

 配られたカードを互いに引き合い、手札を減らしていく。

 至極単純な遊戯です。

 

【ターンの流れ】

 

 山場から1枚、『トランプ』を引きます。

 ここでスート(柄)が揃った場合、後述のトランプの効果が発動します。

 これを『一撃目』と言います。

 『一撃目』が発動したら、あなたのターンは終了です。

 

 揃わなかった場合、相手のトランプから1枚引く……つまりカードを指定して『交換場』にて受け取ります。

 ここでスート(柄)が揃った場合、トランプの効が果発動します。

 『二撃目』と言います。

 『二撃目』が発動したら、あなたのターンは終了です。

 

 相手にカードがなければ、あなたのターンは終了です。

 揃わなくても、あなたのターンは終了です。

 

 ターンが終了したら、先攻後攻を交代します。

 

【厚かましい老婆】

 

 しかし、『鉄の処女』は若き生血を欲しております。

 売れ残りの『老婆、オールドメイド』など、彼女は抱きしめるはずもありません。

 

 ゆえに、このゲームでは 「カードの効果」 と 「ジョーカーの滞留」 が、皆様の背中に佇む『鉄の処女』の距離を支配します。

 

【スートの効果】

 

 ペアが揃い、カードを捨てる際、そのスート(柄)によって以下の効果が発動します。

 

 ♥ ハート:慈愛の廃棄

 自身のベルトコンベアが動き、『鉄の処女』が 1段階後退します。

 唯一の延命措置となります。

 『鉄の処女』からの愛を捨て、距離を置くことができます。

 

 ♦ ダイヤ:富の放棄、点滴への注入

 攻撃の要です。

 相手の点滴番号(1〜7)を一つ指定し、一定量を強制注入します。

 致死量には至りませんが、バ……劇薬であれば意識を刈り取るには十分でしょう。

 何が入ってくるか、震えてお待ちください。

 

 尚、勝手に引き抜くと『ユニコーン』による制裁が待っています。

 

 ♣ クラブ:知識の放棄、点滴の除外

 情報戦の要です。

 

 以下のどちらかを選択できます。

 A:相手の点滴を一つ指定し、ゲームから除外する。

 B:自分の点滴を、中身を隠したまま相手に選ばせ除外する。

 

 相手と自分の勘次第になりますが、態度や話術で誘導する戦略なども一興です。

 

♠ スペード:忠誠心の放棄

 『鉄の処女』の忠誠心を放棄したと見做します。

 拷問の要です。

 

 以下のどちらかを選択できます。

 『雄叫び』:相手の『ユニコーン』(ファラリスの雄牛)に火をくべる(1回鳴かせる)。

 『沈黙』:自分のユニコーン』(ファラリスの雄牛)を消火する(次の鳴かれるタイミングで1回鳴かせない)。

 

 ただし、『ユニコーン』は『沈黙』を同じ対象に3回連続されると『フラストレーション』であなたに対象を変えて『雄叫び』の咆哮をします。

 

 つまりあなたは2体の『ユニコーン』に「相手の側にいるものに命令し『雄叫び』させる」または『自分の側にいるものに命令し次に自分が対象になったときに『沈黙』させ、相手から命令されても聞くな」という命令ができることになります。

 

 ユニコーンの『雄叫び』は5秒間でも衝撃が残ります。

 聴覚を奪えば、相手の思考は著しく鈍ることでしょう。

 

【 ジョーカー:老婆の呪い】

 

 このゲームにおいて、ジョーカー(ババ、老婆)は死神の招待状です。

 

 ジョーカーが手元に来てから『3ターン』が経過するごとに、

あなたの『鉄の処女』は 無条件で『1段階前進(接近)』します。

 例として、1〜3ターン保持で4ターン目に前進、4〜6ターン保持で7ターン目に前進、となります。

 

 尚、一度ジョーカーが手元から離れればターン数はリセットされます。

 

 ジョーカーを抱え込めば抱え込むほど、背後の『鉄の処女』の針はあなたの背中に食い込む距離まで迫ります。

 

【ユニコーンの制裁】

 『ユニコーン』は場にスート(柄)が無くなった場合、すなわちジョーカーのみとなった場合、ジョーカー保持者を『串刺し』して制裁します。

 

 また、『鉄の処女』に無礼を働く輩にも制裁を行います。

 

【決着】

 

 勝敗が決するのは以下の時。

 

1. 『鉄の処女』による抱擁

位置が「1」に達した者の負けです。

2. 薬物による機能停止

点滴、あるいはその他の要因により、ゲームの続行が不可能となった者は、その場で敗北となります。

3.『ユニコーン』による制裁

 『雄叫び』か『串刺し』か。

 

 己の血肉を守り、相手に毒を流し込み、厚かましくも生き残るのはどちらか。

 

 反則行為は通信、暴力、「3分以上の遅延行為」反則者には『鉄の処女』の血肉になって頂きます。

 

 以上、『厚かましい鉄の処女』ゲームを開始します。__

 


 

 医者が「レディーファースト」と吐き捨てて、私が先攻となった。

 

【ゲーム開始】

 

 先攻:ボロ 後攻:村雨

 

■ボロ点滴番号

 1:アルファリポ酸

 2:高濃度ビタミンC

 3:ビーフリード

 4:本人の血液型の輸血

 5:生理食塩水 

 6:ソルデム 「1ターン」

 7:バルビツール酸誘導体☠️ 

 

■村雨点滴番号

 1:アルファリポ酸

 2:バルビツール酸誘導体☠️

 3:ソルデム

 4:ビーフリード

 5:高濃度ビタミンC

 6:生理食塩水

 7:本人の血液型の輸血

 

■ボロ手札

♥6

♦

♣

♠2

 

■村雨手札

♥

♦1

♣13

♠

 

【1ターン目】

 

「まずは俺が山札から引かせてもらう。……不発か。」

 ♣10か……。

「医者、お前の手札は何だ?」

 まったく反応が無い。

 呼吸、眉、唇、手の動きに反応を見つけられない。

「私から見て、右のトランプを寄越せ。」

 交換場から来たのは♣13。

「『二撃目』で♣の効果発動、点滴番号1番を除外する。」

 ……医者を傷つけるわけには行かない。

 どうか、中身が想定のものであって。

 

「私の『一撃目』♦の効果を発動する。彼女に点滴番号6番を注入する。」

 ……私の点滴番号6はソルデム。

 まさか、黒い容器でも中身が分かるわけないよな。

 

■廃棄場

♥

♦1、8

♣10、13

♠

 

■ボロ手札

♥6

♦

♣

♠2

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

「どうやら俺はヤブ医者に引っかかったようだ。……お前は俺の本質を見ていない。さあて、何を注入されたんだかなぁ。」

 まずい……あまり大声で話すと薬品特有の臭いが微かに口臭に乗るかもしれん。

「私はあなたを正しく見ていたつもりだ。」

 ……つもりってなんだよ、医者らしくない。

 

。。。

「あなた、私を避けていないか?」

 医者が腕を組んできた。

 ……。

 そういうところだ。

 そうやってスキンシップを図ると単純接触効果……ザイアンス効果によって愛着が湧く。

 ペットに情が移るオキシトシンが流れるように。

「いや、別に。……奥さんは元気か?」

 医者が強く腕を引いた。

「あなたも嫉妬という感情があるのだな。」

 ……。

「近接性の法則だ……。医者、いつか私以外の誰かに刺されるぞ。」

 医者からは薬品の臭いがした。

。。。

 

【2ターン目】

 

「私が山札から引こう。不発だ。」

 流石に山札を見抜くことはできないか。

「あなたからみて右から二枚目のトランプを渡せ。」

 ……♠2を渡した。

 『二撃目』宣言が無い。

 

「次は俺が山札……ハッ、運命の女神様は俺を選んだな!」

 ♥13

「『一撃目』で♥の効果発動。処女はお引き取り願う。」

 自分の背後の『鉄の処女』が一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 7→8

 

「あはは、ザマアないな医者。俺は安全を取った。お前、このままだと処女に食い殺されるそ。」

 私は勝てる。

「あなたは、自分を偽りすぎた。……最後の機会だ。互いに正直になるべきではないか。」

 ……。

「……わかった口聞いてんじゃねえよ、テメエ、ブチ殺すぞ。」

 

■廃棄場

♥6、13

♦1、8

♣10、13

♠

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦3

♣

♠2

 

【3ターン目】

 

「俺が山札から引く。不発だ。」

 ♥1、やはり天は味方している。

「お前の手札を見せろ。あなたが持っているのは♥♦♣♠どれですか?」

 ……反応がない。

「あなたは、私がどのような思いでこの場にいるか、理解できているか?」

 ……。

 医者のメガネのレンズにスート(柄)が映り込み見えるような加工にはなっていない。

 プライバシー保護シートのような特殊処理がトランプに施されているようだ。

「私から見て右のトランプを寄越せ。」

 来たのは♠2か。

 

「私が山札から選ぶ。……『一撃目』♦の効果を発動する。彼女に点滴番号7番を注入する。」

 

 点滴番号7番はバルビツール酸誘導体……。

 ……まずい、眠気が出たら……意識が混濁してしまえば誤って村雨を傷つけてしまうかもしれない。

 

■廃棄場

♥6、13

♦1、2、3、8

♣10、13

♠

 

■ボロ手札

♥1

♦

♣

♠2

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

「彼らは、あなたを友人として扱っていた。それなのになぜ、なぜ拒んだ。」

 ……。

「友人?嘘をつくなよ。ただの珍獣、ペット扱いだっただろうが。」

 


 

【4ターン目】

 

「私が山札を選ぶ。……不発か。」

 どうか、私のスート(柄)を持たないでくれ。

「あなたは、欲をかきすぎた。」

 ……。

 ああ、そうだ。だから天罰が下る。

 

「あなたからみて左のカードを渡せ。」

 ♠2を交換場に置いた。

 「『二撃目』♠の効果を発動する。『沈黙』を選ぶ。」

 

「お?『雄叫び』しないで『沈黙』か?とんだ臆病者だな。」

 まさか雄叫びを上げないつもりじゃないだろうな。

「臆病者はあなただ。自分が受け入れられる。という事実から逃げた。『自分には価値がない』という呪いに怯えた。」

 ……。

「あ?受け入れられる?いい加減にしとけよ。……俺はまた安全に近づいた。勝利のファンファーレが聞こえるぜ?」

 

「山札から……はは、あはは、女神様!『一撃目』♥の効果発動!!ご安全に!」

 自分の背後の『鉄の処女』がまた一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 8→9

 

「あなたは、我儘だ。」

 ああ、我儘で一番醜い獣だ。

 

■廃棄場

♥1、2、6、13

♦1、2、3、8

♣10、13

♠2、3

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

。。。

「ボロ、流石に引っ越せ。女一人じゃ危ない。」

 獅子神は真面目で愚直で世話焼きだ。

 化け物の私が危険に晒されることなど、あったとて。

「問題ない。それより彼女に媚薬を盛ったそうじゃないか。」

 みるみるうちに顔が赤らんでいく。

「違、盛られたんだよ。」

 幸せそうだな、もっと幸せになれ。

「お?医者を使って媚薬の瓶を渡したのでは?医者が言っていたぞ?」

 虚偽だ。

 彼女から「村雨さんは意地悪」という仲が良い惚気を聞いた。

「アイツ……あくまできっかけだ!!む……無理やりじゃない。」

 それくらい分かるさ。

「媚薬の瓶ってまだあるか?結局何が入っていたんだ?」

 獅子神に詰め寄ると「ジムに行く、帰りは遅くなる」とだけ言って部屋を出ていった。

「……底抜けに良い奴だな。獅子神。」

。。。

 


 

【5ターン目】

 

「俺が山札から引く……また不発か。」

 ♠5。

 医者には手札がない。

 繰り越しか。

 

「私が山札から……。不発だ。」

 医者がこちらを見ている。

 感情を持たないような冷徹な眼差し。

 落ち着け、落ち着け、最後まで、静まれ。

「そう怯えるな。そのカードを渡せ。」

 ♠5を交換場に渡した。

 

■廃棄場

♥1、2、6、13

♦1、2、3、8

♣10、13

♠2、3

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥8

♦

♣

♠5

 

。。。

 また医者と二人きりになった。

 獅子神は家政夫さんと真経津と食材を買いに出かける事が多く、留守番組になっていた。

 ……私が醜い化け物だから。

 好奇の目に晒したくないのだろう。

「あなたは、また余計なことを考えているな。」

 医者が顎を引いてきた。

 顎を引かれると怒りが……流石にもう慣れた。

 医者は観察眼が鋭い。

 私は感情を隠すポーカーフェイスと嘘には自信がある。

 平静を装うなど容易いことだ。

「あなたは、私に好意を持ち始めている。」

 ……。

「厳密には、私たちに、好意を持ち始めている。」

 ……。

「極めて危険だ。あなたは破滅願望が強すぎる。」

 ……。

「頭が沸いたか?お前たちを同時に?尻軽だと?」

 喧嘩、ではない。挑発、でもない。

「あなたは自己卑下のしすぎで、他者から認められたと感じれば『忠誠心』として『報いなければならない』というロジックになっている。」

 ……。

「医者、私はそこまで愚かではない。だが、お前を弟のように思っているのは事実だ。」

 

 そういえば、もう縁がないが……弟がいたな。

 弟は長男だったから新品のランドセル、学習机、筆記用具、洋服、靴を買い与えられていた。

 祖父母からお土産や小遣い、プレゼントをたくさん渡された。

 かわいい一人息子だからな。

 もちろん、不用な女の私にはない。

 私の誕生日ケーキも甘い物が食べられない私を見越して弟に与えられた。

 誕生日プレゼントも安いチープなもので、それを「ズルい」といった弟には高価なプレゼントを私の誕生日当日に渡した。

 通信制高校卒で辛うじて通った専門学校載学費と一人暮らしの生活費も自分のバイト代で賄ったが、弟は学費交通費生活費……全て両親が払った。

 返却?返済?そんな義務はない。

 長男だから。当然だ。

「姉ちゃんさ、せっかく入り込めた大手グループ会社を辞めたんだって?しっかりしろよ。親の脛をかじるなよみっともない。」

 そうだな。私は家に金を入れている、寄生虫。

 産む必要のなかった、不出来な女。

 吐き気がする。

 

「あなたは、私にとって重要な……女性だ。」

 もういい。

 聞きたくない。

。。。

 

【6ターン目】

 

「私が山札から引く。『一撃目』♠の効果を発動する。『沈黙』を選ぶ。」

 

 ……『雄叫び』しないつもりだ。

 2回の沈黙の次は確実に『フラストレーション』になる。

 そうなったら『フラストレーション』で医者にダメージが入る。

 いや、その前にスート(柄)を取らないと。

 

「俺が山札から……不発だ。」

 ♥5だ。

 まずい、もし仮に手札に持たれていたら一刻も早く回収せねば。

 どうすれば……。

 落ち着け、落ち着け、静まれ、静かに怒りを燃やせ。

 

「医者、お前と結婚したかった。」

 ……動かない。

 医者に心理戦でハッタリを利かせるには無理があるな。

「……お互いに、出会う時期が悪かった。」

 ……。

 怒りを燃やせ。

 

「医者から見て右のカードを寄越せ。」

 交換場から来たのは♥8。

『二撃目』で♥の効果発動。あはは、私に勝機あり!」

 自分の背後の『鉄の処女』が一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 9→10

 

 まずい……眠気だ……想定より回りが早い。

 

「あはたは傲慢だ。」

 そうだ、私は傲慢だ。だからここにいる。

 

■廃棄場

♥1、2、5、6、8、13

♦1、2、3、8

♣10、13

♠2、3、5、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 


 

【7ターン目】

 

「俺が山札を……不発だ、どうしようもないな。」

 ♦11。

 医者に手札がない。

 まあ手札にあっても山札にあっても「運ゲー」になるがな。

 

「私が山札から引こう。……不発、その1枚を渡せ。」

 はいはい。♦11を交換場に渡した。

 

「あなたは、大きな間違いを犯した。」

 間違い?私の人生間違いだらけだ。

「あ?なんだ?ギャンブラーになったことか?フランケンシュタイン博士の怪物になって見世物になったことか?」

 

「我々を裏切った。」

 

「……裏切った……?……裏切る以前に元から情など無かっただろうが!!」

 意識を保て、怒りを燃やせ。

 

■廃棄場

♥1、2、5、6、8、13

♦1、2、3、8

♣10、13

♠2、3、5、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦11

♣

♠1

 

【8ターン目】 

 

「私が山札から引く。不発だ。」

 良かった。

 私には手札がない。

 

「俺が山札から引く。……不発だ。」

 ♦4。

 医者と対面して話すのは、初めてで、最後だ。

 いつも、隣にいたから。

 ……。

「私から見て右のカードを渡せ。」

 交換場から渡されたのは♦11。

 ♦……嫌だ、嫌だ。

「『二撃目』♦の効果発動。医者に点滴番号5番を注入する。猛毒かなあ?。」

 どうか、7番がバルビツール酸誘導体か血液以外であって。

「ああ。猛毒だ。」

 

■廃棄場

♥1、2、5、6、8、13

♦1、2、3、4、8、11

♣10、13

♠2、3、5、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣6

♠1

 

【9ターン目】

 

「俺が山札から……不発続きだな。」

 ♠6。

 どうか、どうか。

「俺はお前といるときが一番気を張ったよ。」

 ……。

「そうか……。」

 ……感情が見えない。

「右のカードを渡せ。」

 交換場から渡されたのは♠1。

「『二撃目』♠の効果発動。俺は『沈黙』する。」

 

「私が山札から引こう。不発だ。」

 お願い、♥を引かないで。

 目と目が合う。

 私には手札がない。繰り越し。

 

■廃棄場

♥1、2、5、6、8、13

♦1、2、3、4、8、11

♣10、13

♠1、2、3、5、6、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥11

♦

♣

♠ 

 

。。。

「どんだけ逃げ回るんだお前。」

 なぜ転々としているホテルがバレるのか。

 GPSか?

「ボロちゃんつかまえた。セックスするぞ。」

 叶に後ろからハグされた。

「昇天させてやる。オレに夢中になって他のことがどうでも良くなるくらい。」

 手が胸と太ももを弄る。

「叶さん。」

 叶の動きがピタッと止まった。

「いつも気にかけてくれて、感謝しています。」

 返答はなかった。

 ……。

「今までありがとうございました。」

。。。

 

【10ターン目】

 

「私が山札から引こう。不発だ。」

 私には手札がない。

 

「俺が山札から引く。不発だ。」

 ♣2。

「医者、お前って美男子だよな。」

 ……。

 少しは動揺や謙遜しろ。

「あなたは、お世辞にも美人とは言えないな。」

 当たり前だが。

「私から見て右のカードを渡せ。」

 交換場から来たのは……♥11。

 

 私は勝つ、勝って、解放する。

 

■廃棄場

♥1、2、5、6、8、13

♦1、2、3、4、8、11

♣10、13

♠1、2、3、5、6、13

 

■ボロ手札

♥11

♦

♣2

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

【11ターン目】

 

「俺が山札から引く。『一撃目』♥の効果発動。……あはは、俺は安全だ、ハートをたくさん受け取った。」

 ♥3。

 自分の背後の『鉄の処女』がまた一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 10→11

 

「私が山札から引こう。不発だ。」

 医者と目が合う。

 渡さない。このスート(柄)だけは。

「あなたから見て左のカードを渡せ。」

 ♣2を交換場に置いた。 

「『一撃目』♣の効果を発動する。彼女の点滴番号7番を除外する。」

 ……。

 まさか、雫の落ちるスピード、絞りから分かっていた?

 いや、ならバルビツール酸誘導体を入れたままのはず。

 

■廃棄場

♥1、2、3、5、6、8、11、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、8、10、13

♠1、2、3、5、6、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 


 

「ところでだ、あの挙式ごっこの写真、燃やしたほうがいいぜ?俺が末代まで祟ってやるから。」

 

 あんな黒歴史、消してしまって。

 

「あなたは『勝つ』のではなかったか?」

 ……。

「……ああ、万が一にも負けることはない。」

 

【12ターン目】

 

「私が山札から引こう。不発だ。」

 そして繰り越し。

 

「俺が山札から引く。」

 ♥4。

 女神様……。

「その1枚を寄越せ。」

 交換場から来たのは♣5。

 

「あなたは、我々と共に過ごした時間を、無にするつもりか?」

 ……。

 ああ、無に帰そう。

「医者、お前がペットを家族とするタイプだとはな。」

 ペット、愛玩動物、玩具、見世物。

 怪物。

「あなたは、人間ではなかったのか?」

 ……。

 

■廃棄場

♥1、2、3、5、6、8、11、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、8、10、13

♠1、2、3、5、6、13

 

■ボロ手札

♥4

♦

♣5

♠

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

 まずいな、そろそろ……。

 

「心が痛いか?」

 

 ……。

 痛いさ。

 長年の不快感、不安で、今にも張り裂けそうだ。

「ああ?舐めてんのかテメエ……俺はお前を殺したあとに高笑いすることしか頭にないぜ?」

 みんな、仲良しのままで。

「私たちに『嫌われたら』という恐怖で一杯だったか?」

 ……。

 

。。。

「ねえボロさん、エッチしよ?」

 よくツギハギに欲情するな。

 ……違うな、劣情でも性欲でもない。

 これは同情だ。

 愛されない者に対する、施しであり、情け。

「……真経津、神林さんのところのお嬢さん……ミカさんがお前に気があるようだ。」

 何回かパンを買いに行ったが、看板娘らしく愛らしく愛嬌があり気立ての良い娘さんだった。

 若く美しく、そして彼女には将来がある。

「……それが本当だとして、今話すことじゃないよね。」

 珍しく怒ったな。

 ……。

「……ボロさんからキスされたの……初めて。」

 頭を撫でてやる。

「真経津はいい子だな。」

 手を払いのけられた。

「……ボクはいい子じゃないよ。」

 そうだな。

「ズルい男だな。」

 手首を掴まれた。

「ボロさん、他の人たちと遊ぶの……もうやめて?ボクたちと遊ぶだけじゃ不満なの?欲求不満?」

 ああ。

「そうだ。欲求不満だ。だから私は歩みを止めない。」

 私は欲をかいている。

 お前たちの思い出になりたい。

「ボロさんはボクのものだよ?ボクから離れたらダメ。」

 私はお前のものではないよ。

「真経津、くすぐったい……。」

 ……。

。。。

 

【13ターン目】

 

「俺が山札から引く。しけてんなぁ。」

 ♠7 

 医者に手札はない。

 

「私が山札から引こう。不発。」

 やめて、私のハートを取らないで。

「あなたから見て……左を渡せ。」

 ……。

 ♥4を交換場に置いた。

 

■廃棄場

♥1、2、3、5、6、8、11、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、8、10、13

♠1、2、3、5、6、13

 

■ボロ手札

♥

♦

♣5

♠6

 

■村雨手札

♥4

♦

♣

♠7

 

。。。

「……そこまでしても尚、あなたは命を落としたいのか。」

 医者がいつになく真剣に怒っている。

「ああ、私は死ぬからこそ値がつくタイプの」

 そう言いかけて、首筋に冷たい刃物の感触があった。

 メスの背を当てられている。

「……死にたければ、私が殺してやろうか。」

 声が三段階低い。

 一言一言が怒りを帯びている。

 ……。

 妻帯者の医者に殺されるわけにはいかない。

「死に場所は私が選ぶ。」

 医者に手首を掴まれた。

 刺され

「あなたは私の『最高傑作』だと、そう定義したのはあなただ。」

 手の甲に接吻された。

 唇が上に上がっ

 ……。

「……医者、やめろ。」

 ……。

「……やめてくれ。」

 ……。

「村雨、頼むから、やめて。」

 ……。

「これ以上……私を惨めにさせないで。お願い。」

 ……。

「……お願いだから。」

。。。

 


 

【14ターン目】

 

「私が山札から引こう。……『一撃目』♣の効果を発動する。『沈黙』だ。」

 やめて、3回目の沈黙は……。

 

「村雨氏には『フラストレーション』による『ユニコーン』の『雄叫び』の咆哮をお見舞いします。」

 

 医者の顔が苦痛で歪んだ。

 見たくない、どうして、私のせいだ。

 私はいつも、人に迷惑をかける。

 私のせいで、大切な人を傷つけている。

 

「……山札から引く。不発。」

 ジョーカーがついに来た。

 ジョーカー……ババはババアの私が持ち続けよう。

 上がりはお前たちだ、ババアなど切り捨てろ。

 

 医者、ハートを返してもらう。

「そのカードを。」

 交換場にきたのは、♥4。

 もう絶対に渡さない。

 

■廃棄場

♥1、2、3、5、6、8、11、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、8、10、13

♠1、2、3、5、6、7、11、13

 

■ボロ手札

♥4

♦

♣5

♠

 

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

【15ターン目】

 

「……。不発。」

 医者の手札はない。

 

「私が引く。……不発。」

 私は絶対に渡さない。

「あなたから見て……右を渡せ。」

 ♣5を交換場に置いた。

 

「あなたは、私たちの特別になりたかったのだな?」

 ……。

「勘違いも大概にしろ!!俺は……は…俺は自分の意思でこの舞台に立っている!!」

 そろそろ、きびしい。

 

■廃棄場

♥1、2、3、5、6、8、11、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、8、10、13

♠1、2、3、5、6、7、11、13

 

■ボロ手札

♥4

♦

♣

♠

 

 

■村雨手札

♥

♦

♣5

♠

 

「気分はどうだ?」

 医者もサウンド・オブ・サイレンスで鼓膜をやったんだろう?  

 真経津から聞いた。

 

「あなたこそ、どうなんだ。……優れているはずがない。目の前で友人が傷ついているのだから。」

 ……。

 ごめんなさい。

 私のせいで……。

 

 憎くてたまらないよな。

 自身が作り出した怪物に傷をつけられた。

 ごめんなさい。

 

 恨んで欲しかったのかな、もう、分からない。

 

【16ターン目】

 

「私が山札から引く。『一撃目』彼女の点滴番号6番を除外する。」

 ソルデムが外れた。

 

「……『一撃目』♥の効果発動。」

 ♥12。

 私が必ず全てのハートを奪う。

 

 自分の背後の『鉄の処女』がまた一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 11→12

 

 どうやら『ジョーカーによる接近』より『ハートの後退』が勝るようだ。

 ルールに記述のいないものは穴としろ……か。

 ジョーカー、ババ、オールドメイドは仲間外れ。

 

 『鉄の処女』からオールドメイドは愛されない。

 最初からそう言っていたな。

 

 相殺によりターンが0。

 リセットされたと、そう解釈するぞ。

 

■廃棄場

♥1、2、3、4、5、6、8、11、12、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、5、6、8、10、13

♠1、2、3、5、6、7、11、13

 

■ボロ手札

♥4

♦

♣

♠

 

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 

【17ターン目】

 

「……。不発。」

 ♦13。

 彼の手札はない。

 

「私が山札から引こう。不発。」

 私は渡さない。ババも、ハートも。

「あなたから見て……左を渡せ。」

 ♦13を交換場に置いた。

「『二撃目』♦の効果を発動する。彼女に点滴番号1を。」

 ……はは。

 最後にアルファリポ酸か。

 アンチエイジング……皮肉な話だ。

 

■廃棄場

♥1、2、3、4、5、6、8、11、12、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、5、6、8、10、13

♠1、2、3、5、6、7、11、13

 

■ボロ手札

♥4

♦

♣

♠

 

 

■村雨手札

♥

♦

♣

♠

 


 

【18ターン目】

 

「私が山札を引こう。不発。」

 

 私は渡さない。

「あなたから見て、左を渡せ。」

 ……。

 ジョーカーを交換場に置いた。

 

「……不発。」

 ♦12。

「1枚、。」

 ジョーカーは直ぐ手に戻った。

 

■廃棄場

♥1、2、3、4、5、6、8、11、12、13

♦1、2、3、4、8、11

♣2、5、6、8、10、13

♠1、2、3、5、6、7、11、13

 

■ボロ手札

♥4

♦12

♣

♠

 

 

■村雨手札

♥9

♦

♣

♠

 

【19ターン目】

 

「不発。」

 ♦13。 

 

「……最初にあった時、不躾な態度を取って悪かったと思っていた。」

 医者が初めて反応を示した。

「……な、今何と」

 耳、治りますように。

 身勝手で、ごめんなさい。

「彼のカードをこちらに。ハートの効果発動。ハートを解放します。」

 

 自分の背後の『鉄の処女』がまた一段階下がった音がした。

 

■ボロの鉄の処女

 12→13

 

 『鉄の処女』は『ベルトコンベア』から落下した。

 彼女に無礼を働いた者には『ユニコーン』の制裁が待っている。

 

「バイバイ、村雨礼二さん。」

 

 爆音を間近で浴びて脳が揺れた。

 全身が振動した。 

 耳や口から血が出ている。

 血の味がする。

 

「まて、あなたは私の

 

 ああ……最後まで怪物のままだ。 

 彼が怒っている。

 ごめんなさい。

 

 白い。真っ白。しろ。

 

 痛くない。

 村雨先生から安らかなおくすり、貰ったから。

 優しい先生。大好き。

 

 甘い香り。いい匂い。

 ソルデムはブドウ糖だから?

 臭いしないって。違う。

 最後に残るのは『嗅覚』だった。

 ケトン、違うよ。

 フジバカマ。ちょうちょ。

 

 甘いのは嫌い。

 

 みんな大好き。

 みんなどこ?

 置いていかないで。

 

 独りは寂しい。

 冷たい、あったかい。  

 温かい。

 生きてるから。 

 

 独りぼっち。

 

 あ、うさぎ。

 大好き。

 

 愛してる。 

 

 

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