※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

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The thorns of toxicity

 

「死ね……死ねやぁっ!!」

 

 半狂乱になった中年の男が刃物を振り回して絶叫していた。

 商店街の店主たちは腰を抜かし、買い物客はパニックになり逃げ惑っている。

 自分の地位の低さを「自分以外の誰かのせい」にした奴の末路だ。

「ヒィッ、獅子神さん……何アレ……警察、警察呼ばなきゃ……山吹刑事……」

 愛美ちゃんが震えながらスマホを操作し始めたので、肩を掴んで男の視線から隠れる物陰に誘導する。

「ボロ、お前も隠れろ……って、またか。」

 ボロはスタスタと男に近づいた、

「バ、化け物め……それ以上近づいたら殺すぞ……」

 まあボロはツギハギである以前に化け物だからな。

「どういうことだ?お前は人を殺しに来たんだろ?」

 そう言って距離を詰める。

 アイツの体躯じゃ、包丁を奪うのはちと厳しいだろう。

「こ、殺す……殺して死刑になるんだよ!!」

 その言葉を聞くと、ボロは両手を広げた。

「なら、今自分の首を切って死ねよ。」

 男は絶句して、包丁を握る力を強めた。

「……殺してやる。」

 そろそろ止めに入らないとマズイな。

「それ、刺身包丁……ふぐ引だな。スーパーの鮮魚コーナーでも担当してたのか?なあ、おい。」

 ボロの指先が刃先に触れ、血が滴った。

「キャアアアア!!」

「血だ!!」

 逃げ惑う客の悲鳴に男は混乱した隙に、ボロは刃を握った。

「こうやって?……あと3cm刺せば内臓に到達し、私は死ぬだろう。」

 血まみれの刃をパーカーの腹部に押し当て、布地がじんわりと血で滲んでいく。

「ヒィッ……化け物がっ……」

 男は包丁から手を離し、腰を抜かして尻もちをついた。

「私を殺せよ。殺してみせろ。」

 そうこうしているうちに、警備員が到着してボロの方が確保された。

 忘れていたが、ボロもワンヘッドクラスに繰り上げされる可能性があるギャンブラーだったな。

「ハァ……愛美ちゃん、オレは事情を説明しにいくからさ……待っててくれるか?」

「ううん!私も説明しにいく!!ボロさんは重症な厨二病患者なんだって教えてあげないと警察に捕っちゃう!!」

 

 結局、ボロはパトカーで最寄りの署まで移送された。

 

、、、

 

「またあなたですか。正義のパーカーの人とお連れの方。」

 

 乱雑に巻かれて血が滲む包帯が痛々しい。

 婦警はボロが何度も現場で会っているので、嫌味を言いたくなる気持ちもわかる。

「あはは……。」

 オレと愛美ちゃん、商店街の店主の人たちが状況を説明したので「ボロが刃物を振り回したのではない」ことは証明できたが、異常行動には説明が出来ずに一次的に拘置所に入れられている。

 まさか拘置所に入った友達を拝むことになるとは。

 

 その後直ぐに天堂と村雨が現れた。

「ふふ、困った人ですね。」

 愛美ちゃんは初めて会った天堂に腰を抜かした。

「ぼ、牧師さん!?コスプレ!?」

「私は神です。」

 ポカーンと口を開けている愛美ちゃんに村雨が詰め寄った。

「小娘、ボロの手当ては誰がしたか答えろ。このような不適切な手当てでは傷が残るではないか……。」

 それを高校生に聞くなって。

「署の人だ。村雨、それよりもだな、ボロの異常行動を……」

「医療班を呼べ、このお粗末な手当ての説明をさせる。あなたたちの医療機器を貸せ、私が治療する。」

 本当に話を聞かないな。

「ボロ大先生、死にたいなら私が殺してやる。二度と愚かな過ちを犯すな。」

 警察署内で殺人宣言をするなって。

「ふふ、過ちを犯したら神が導いて差し上げます。」

 危ないことを言うな、愛美ちゃんがいるんだぞ。

「お前らなぁ……ボロ、反省しろ。やり過ぎだ。」

 ボロは下を剥いて、「すまない」とだけ零した。

「もう!!ボロさんが死んじゃったら……私、悲しいよ。だから自分を大切にして!!」

 愛美ちゃんがボロの両肩を掴んで目線を合わせると、ボロは視線を外した。

「……うん。ありがとう。」

 

 しばらく経って、漆原弁護士と牙頭が現れた。

「彼女は心神耗弱状態にありました。」

 漆原が署員に説明する間、牙頭はただ腕を組んで拘置所を背にして立っていた。

 ボロにとって『責められないこと』が一番堪えると分かっているらしい。

 

「め……迷惑を、迷惑をおかけして……申し訳ありませんでした。」

 

 二人の背に向けて、ボロは弱々しく涙を零しながら頭を垂れた。

 


 

「ボロ、オレはそんなに頼りねえか?」

 

 帰り道、獅子神に腕を引かれた。

 頼りない、ではなく「彼女持ちを頼りたくない」だ。

「いや……。」

 何を話せばいいか分からない。

 獅子神は私を強姦事件後にラブホに入る異常者、更には自殺願望で他人を巻き込む異常者だと理解している。

「……最近オレのこと避けてないか?」

 なぜそうなる?

 お前が私を「見損なった」としたんじゃないか。

「……いや、私は……。」

 どうすればいいのか、最早見当もつかない。

「流石に傷つくから。」

 ……。

 私の気持ちは?

 私が一番マトモだと思っていた獅子神に見放されたと思って絶望した気持ちは?

 私が傷ついていないとでも……。

 ……そうだな。

 私はツギハギのフランケンシュタイン博士の怪物。

 傷つく心も無い。

「……お前にとってオレは友達じゃなくなったってことだろ?」

 ……苦しい。

 何も答えられない。

 

「……オレは……まだ友達だと思ってるから。」

 

、、、

 

「真経津……今日くらいはやめてほしい。」

 

 包帯で巻かれた両手を見せると、ギュッと抱きしめられた。

「ボロさんは自分が誰のものか分かってないから、おイタをしちゃうんだね。」

 ……。

「なあ、なんでそんなに私とセックスをしたがるんだ?したいならソープにでも行けばいいだろ。」

 耳たぶを噛まれた。痛い。

「……そっか、そうだよね。ボロさんじゃなくてもいいなら愛美ちゃんでも誘おうかな、愛美ちゃんはボクのこと優しいお兄さんって言ってたし。」

 ……なんで

「なんでそんなことを言うんだよ……。」

 真経津は耳穴に舌をねじ込みながら、パーカーの中に手を入れてブラジャーの下に手を入れた。

「ボロさんは愛美ちゃんに嫉妬してるんだね。若くて可愛い子にボクを取られたくないから。」

 キュッと先端をつけられて身震いしてしまう。

 ……書かれたシナリオに従えというなら、従わないなら彼女を巻き込むというのなら。

「真経津……私だけを見て……若い子にまけないくらい頑張るから……」

 キスを交わすと、ニコッとほほ笑んだ。

「ボロさんったらボクのこと本当に大好きだよね、かわいい。」

 

、、、

 

「ねえボロさん、頑張らないの?頑張らないなら……」

 何が不満なんだ、セックスしてるだろ。

「頑張るから……見捨てないで。」

 フェラチオをしろということか?

 相変わらずなかなか萎えないモノを口に含んで舐めて回す。

「愛が感じられないな。」

 ……愛?

 証明のしようがないものを盾に取られると、どうしようもない。

 胸で挟んでパイズリのようにしてものを吸い取る。

「ボクに捨てられたくないんだね、必死でかわいい。」

 頼むから、捨ててくれ。

「私だけを見て、真経津……。若い子に浮気しないで。」

 その言葉でも不満なのか、正常位で何度も突かれる。

「どうしようかな……ボロさんはボクのこと、どう思ってるの?」

 ……それを言わせたいなら、最初からそう……。

 回りくどいんだよ。

「真経津、大好き、愛してる。」

 

「うん、ボロさんはボクのものだよ。」

 

、、、

 

 またボロがボーッとテレビの砂嵐を見ている。

「おいボロ!!ジョイキッチンが休みだからってあんまりダラダラするなよ!!」

 注意すると、ボロはこちらを向いた。

「ああ、獅子神……すまない。」

 頬に一筋の涙が伝っている。

「……すこし真経津や村雨にいじめられたくらいで泣くなよ。」

 ボロはよくちょっかいを出されては直ぐ泣いた。

「他の奴らはすぐボロを甘やかすからな。オレくらいは厳しくしないと。わかったか?ボロ。」

 女だからって特別扱いをしたら、友達じゃなくてサークルの姫ポジションになっちまう。

「ああ……。」

 ボロは体育座りのまま砂嵐を見ていた。

 

「あんまりアイツらに深入りするな。嫁にいけなくなるぞ。」

 


 

「叶、損な役回りをさせてすまなかった。……獅子神から私ごときを抱いたと誤解されていないか?」

 

 ボロはラブホに籠城してから、オレに対して当たりが柔らかくなった。

「申し訳ないと思ってんなら、オレのお願いを聞けよ。」

 

、、、

 

 ボロをラブホに連れ込んで舌キスすると、また口を手で隠した。

 その好きに首筋を舐めると複数のキスマークが目についた。

 晨くんか、礼二くんか。

「映画、観ていいか?」

 快感でビクビクと身体が跳ねているのに、感じていないフリをするのが下手くそ。

「ああ?オレのお願いを聞くんだろ?」

 ボロは身体を離して深呼吸をした。

「……願いとはなんだ。」

 覚悟が決まったか。

「オレが選んだ下着を着ろ。」

 紙袋から下着を出してみると、ボロはため息をついたあと笑い出した。

「ふ、ははは、あはは、これでは下着の意味がないな!透けてるし布地がない!あはは、あはは」

 下手くそなんだよ、お前。

「叶、その願いを聞き入れよう。……その前に私も一つお願いをしていいか?」

 どうせ「セックスはしない」とでも言うんだろ。

 

「……私の写真を撮ってくれ。」

 

 ボロはシャワーを浴びたあと、裸のまま出てきて壁に背をつけた。

「私の前後左右を1枚ずつ、全身図を撮影してほしい。」

 ……なんでお前はオレのものなのに、視界から消えようとするんだ?

 スマホを掲げて全身が映るように写真を撮る。

「すまない、叶。」

 すまないと思ってるなら、なんでオレに頼むんだよ。

 

 撮った写真を確認するため、裸のままオレのスマホを覗き込んだ。

「これが私……フランケンシュタイン博士の怪物か。」

 ボロの瞳には……怪物が映っている。

 ……オレを見ろ。

 

 ボロをベッドに押し倒して首筋を舐めた。

「叶……下着は……」

 この期に及んで、負けを認めろ。

「ブスババアが巨乳とか宝の持ち腐れだな。」

 柔らかい胸を揉みしだくと、ボロは唇を噛んだ。

「下着……着なくて……いいのか」

 乳輪をなぞって乳首をツンツンとつついて舌先で押すとシーツを握りしめて藻掻いた。

「声、我慢しなくていいから。」

 乳首をコロコロと転がしながら吸っては喰むを繰り返し、指を太ももに滑らせると喘ぎ声を漏らし始めた。

「叶……ブスババアに欲情するとは……男として……情けないぞ……ッぅ、はぁっ」

 舌をヘソから鼠径部に移動して、秘部を舐めるとカクカクと腰を動かした。

「か、叶っ……お前ッ……色男としてぇっ……名が廃るぅ」

 指で割れ目を開いて舌を腟内に入れてクリを弄ると絶頂して腰を突きだした。

 ……晨くんと礼二くんも、ボロの喘ぎ声を聞いたんだ。

 オレより先に、聞いた。

 ボロはオレのものなのに。

「……ボロ、昇天させてやるよ。」

 恋人繋ぎをして、狭い腟内に挿入していくとブチブチというヒダの悲鳴が聞こえる。

「ああっ……痛い、痛い痛いっ……叶、まって」

 ……ミミズ千匹、……めちゃくちゃ気持ちいいじゃん。

「ブスババアのくせに名器とか……ハァ……お前さぁ……」

 狭くて全部入るか心配になる。

「叶、叶……」

 舌キスすると、緩んで少しずつ侵入できた。

「っうぁ、あっ、いたい、いたいからぁ、叶、やめて」

 指がギュッと握られる。

「やめるわけ無いだろ、ボロは馬鹿だな。」

 全部入らないか……入るところまででいい。

「あっあっ、や、や、叶、かの……かのうっ……かのっ」

 泣いてんのか?

 

「ハァ……動くぞ。」

 


 

オリジナルデスギャンブル『眠り姫と毒の棘』

 

『The thorns of toxicity』

 

 プレイヤーはそれぞれ、王子となって先に茨の城の眠り姫の唇を奪うことを目的とする。

 これは両者失格もあり得るゲーム。

 敗者は死亡する可能性がある。4スロット〜ハーフライフ相当。

 ペナルティは有刺鉄線による締付(失血死)。

 

 プレイヤーは同時進行

 始めにカエル(13人目の魔女)から「眠り姫は15歳(ターン)で永遠の眠りにつく」と説明を受ける。

 

【ターンの流れ】

『眠り姫』

眠り姫は『目覚める』『糸車に触る』『眠る』を繰り返す

5回目(15ターン目)の『眠る』でゲームオーバー、両者失格

王子は目覚めている15レーンで眠り姫に会い、誓いの絹糸を渡さねばならない(目覚めるだけではクリアにならない)

糸車に触っている時、王子は姫に何もできない

誓いの絹糸は3回で完成する

 

『茨』

茨は7段階あり、1→2になるにつれて毒の棘が王子に刺さる(プレイヤーに有刺鉄線が締まる)

15レーンのうち奇数に設置してある

茨があるときは①誓いの絹糸を減らすか②魔女を減らすか③次ターンまで待つかで進める

(①〜③以外では進行不能)

王子は『先に進む』で1レーン進む

 

ターン毎に『12人の魔女の一人からの祝福を受ける』『先に進む』『誓いの絹糸を編む』を選択する

『12人の魔女の祝福』

1、『強靭』次のターンでノーリスクで『先に進む』

2、『人徳』次のターンで選択した『魔女の祝福』が2倍

3、『美貌』眠り姫が誓いの絹糸が2回目(未完成)でも目覚めていれば勝利

4、『富』相手の魔女を一人買収(使用不可)

5、『献身』誓いの絹糸が+1編める

6、『慈愛』次のターンで姫を眠らせる

7、『剥奪』次のターンで相手の誓いの絹糸を-1減らす

8、『妨害』次のターンで相手レーンに追加の茨を配置

9、『籠絡』次ターンから3ターン姫を『糸車に触る』(姫に会ってもなにもできない)

10、『延命』15ターンから17ターンにする

11、『剪定』棘を1つ減らす

12、『キス』次ターンに姫が眠り状態で絹糸が完成していたなら勝利

 


 

「クソ……ボロの奴、次ターンを待つな……『延命』……これは3ターン延命……『17ターン以上にも延命できる』だろ。」

 

 ボロのやつ、なぜ攻めない?

 攻めなきゃ負ける……お前は死ぬぞ?

「延命成功……ボロ、強靭を使え、棘を受けるな……。」

 またボロの身体に巻き付いた有刺鉄線が締まる。

「馬鹿だな……剪定をする。」

 絹糸なんか後でいい、ボロに食い込んだ有刺鉄線を除去しないと、身体が裂かれてしまう。

「……もう一度延命……。」

 すると何処からともなくカエルが現れた。

 

「おっと!時間切れだよ!ケロケロ!それに見てごらん?姫はもうボロボロだ!」

 ボロに目をやると裸体に有刺鉄線が絡みつき、食い込んだ棘が肉に刺さり血まみれになって息をしていない。

「残念。姫は永遠の眠りにつくよ!ケロケロ!君は勝負に勝って姫を見殺したんだ!ケロケロ!!」

 何言ってんだよ。

 オレが?

「は……? 待て、棘は全部切り払った……あとは絹糸を渡すだけ……絹糸は?」

 オレの手元には血まみれの鋏、ボロに駆け寄る間もなくサラサラと砂になって消えた。

「待て、待てよ……オレは見ていた……愛してた。」

 

「愛してる?君は嘘つきだね!ケロケロ!!」

 

。。。

 

「大丈夫か?叶。」

 

 ボロが心配そうに顔をのぞき込んできた。

 なんでオレが悪夢をみてんだ。

「うお!どうしたいきなりハグなど……。」

 ボロはまだ生きてる。オレがイかした。

 ただ、強く抱きしめたくなった。

 離したくない。

「……よかったか?またイきたいか?」

 背中をポンポンと擦られる。

「叶は絶倫というやつだな、お前は女性を満足させられる男だ。」

 他人事みたいに言うな。

 たった今、セックスしたんだ。

「なあボロ……礼二くんや晨くんとセックスしたくないなら……オレと付き合うか?」

 

 ボロの体温が急激に冷えた。

「……悪趣味だぞ、お前。」

 目つきが変わった。

 敬一くんが放つような冷酷な目。

 ……ゾクゾクする。

「……オレと付き合えば……他の男がお前に指一本触れさせないように守るから。」

 瞳にはオレが映っている。

 光が消えた漆黒の瞳。

 オレを見ろ、もっと、もっと。

 ……絶望しろ。

「別に『可哀想だから』と捨て犬を飼う必要はない。」

 機械のように冷たい声色。

 凍てつき刺すような視線。

 お前はオレをよく見て、よく理解してる。

「叶、キャラ崩壊も大概にしろ。お前らしくない……お前は『叶黎明』だろう?……ゲームでもしないか?」

 

、、、

 

「ゲーム、お前の負けだぞ、叶。」

 

 叶の選んだ下着という名の何かを着てボードゲームをしているが、叶は上の空だ。

「あ?ああ……ボロに勝たせてやったんだよ。」

 こうなるなら、いっそのこと殺してくれたほうが良かったな。

「ならば、好きな映画みていいか?」 

 叶は私を後ろから抱きしめる姿勢になり、リモコンを操作した。

「bロンと入力してくれ。」

 言われた通りにリモコンで器用に入力をする。

「古い映画ばっかだなボロは。ババアだからな。」

 

、、、

 

「……で、何がいいの?イカれたオッサンの話だろ。」

 

 叶は私の太ももを枕にしながら文句を垂れた。

「バロンは救いの象徴だ。」

 バロンは空想で理想であり、現状に打ち勝つ力である。

 仲間たちも、虚言や幻想ではなく、内なる力なのだ。

 

「相変わらずわけがわからないな。」

 


 

「私一人暮らしだし、家事と家賃入れてくれるなら住まわせるよ!」

 

 ボロさんが珍しく私を頼ってきた。

「ありがたい……ただ一日泊まらせて欲しい。直ぐに出ていくからね。」

 私の部屋はボロさんと同じくらいのボロ賃貸だけど、人一人くらいは泊まらせてあげられる。

 部屋には入るなりボロさんは「何かできることはないか?」と仕事を要求してきた。

「ならお風呂掃除お願い!!」

 

 夕方には一緒に夕飯の買い物をして、一緒に台所に立った。

「ボロさんがお風呂沸かしたんだし、先に入りなよ!!」

 一瞬戸惑った感じだったけど、頷いてお風呂に入ってくれた。

「ボロさん、背中ながそうか?」

 ガラス扉から声をかける。

「いや、ツギハギだから見せたくない。」

 ……そっか、ボロさんはツギハギがコンプレックスなんだ。

「ツギハギはもう慣れたよ!一緒にお風呂入っていい?」

「来るな!!」

 ガラッと扉に手をかけると大声で怒鳴られた。

「……そんなに怒鳴らなくてもいいじゃん……。」

 

、、、

 

 その後は急によそよそしくなった。

 

「いっしょに寝よ?」

 布団は一枚しかないけど、女の子二人で入る分には問題ないはず。

 めくって呼びかけても、ボロさんは小さいソファにうずくまって動こうとしなかった。

「ソファのほうが落ち着く。隅っこ族だからな。」

 またよくわかんないことを言ってはぐらかす。

 ボロさん、私のこと嫌いなのかな……。

 

、、、

 

「ボロさん、最近会ってくれないけど……私なんかした?」

 

 ボロさんは何かに悩んでいる。

 多分……獅子神さんと喧嘩してること……あとはお金とか、真経津さんに関することだ。

 ……本当に私のことが嫌いになったのかな。

「いや、パートが忙しくて……愛美ちゃんはどうしてた?」

 パート……たしかファミレスで働いてるんだったよね。

 今度行ってみようかな。

「私の話より、ボロさんの話!」

 ボロさんは布団を干しながらベランダの柵にもたれ掛かった。

「……特にはないな。」

 また強がりを言って!

「私だって一人前の女性だよ!?もうすぐ18歳なんだから!相談してよ!頼ってよ!」

 ボロさんは両手を広げて、ヤレヤレといったポーズをした。

「……小娘ごときにに何がわかる、知ったような口を聞くと痛い目みせるぞ。」

 そう言って台所に立ってお茶を汲み始めた。

「もう!すぐ殻にこもるんだから……恋バナ?真経津さんとうまくいってないとか?」

 もしかしたら、別れ話とか……真経津さんに他に好きな人が出来ちゃって……とか……あったのかもしれない。

「……うまくいってるよ。」

 おぼんにお茶碗を乗せてテーブルに運び、私の分と自分の分をコトっと置いた。

「7歳年下のワンコ系彼氏だもんね!ボロさんって案外モテるのかもよ?」

 流石にモテモテにはならないと思うけど。

「……愛美ちゃん、進路はどうするの?」

 ぐ……今それを聞かれると痛い。

「大学は記念受験かな……お金ないし借金返さないといけないから……高校を卒業したら働くよ!……もちろんギャンブラーになって一発逆転するけどね!」

 ボロさんはお茶を啜ってベランダの方を向いた。

「そう……大学は一番行きたいところを受験しな。まずはお金を考えず、お金がある前提で動きなさい。」

 ベランダの柵にスズメが留まり、またスズメが留まってお団子みたいになって、最初にいたスズメが押しくらまんじゅうみたいによろけて飛んでいった。

 

「わかってるって!」

 


 

「やだ、やだ医者やめろ、……たすけて、申しわけぇっ……かのっ……かのさっ……」

 

 人けのない診察室の引き違い戸が30cm開いている。

 礼二くんも悪い奴だな。

「あなたは叶とまぐわったな?……一方的な片思いか?私に対する当てつけか?」

 隙間から覗き込むと半裸のボロに白衣姿の礼二くんが覆いかぶさっていた。

「かのっ……にぃっ……申し訳ないからぁ……やだぁっ」

 ボロがオレに助けを求めている。

 ボロはオレが好きだから。

 オレ以外に抱かれるのが苦痛なんだ。

 オレ以外に犯されて鳴いているボロ。

 オレを求めている。

「……ハァ……ボロ……」

 ボロの喘ぎ声を聞きながらモノを扱いた。

 もう少しだけ聞いていたい……オレを求める切実な声。

「あっ……たすけ……おねが……もう……やめ……ぅっ」

 

、、、

 

「ハァ……礼二くん、敬一くんが呼んでた。」

 

 扉を開けると、礼二くんはことを済ませて何食わぬ顔でこちらを見た。

「フッ……随分と遅い到着だな、王子様。」

 ボロを見ると虚空をボーッと眺めていた。

「……ふう、ボロ、何かあったらオレに言えよ?」

 診察台に腰を下ろして頭を撫でようとすると、手をはたき落とされた。

「……ボロ、縊り殺すぞ。」

 顎を掴むと、瞳にオレが映らない。

 瞳が濁っている。

「部屋の外にいただろ?犯されている私で抜いたな?……呼吸が荒いぞ。」

「分かりきったことをいちいち聞くなよ。」

 

、、、

 

 ボロをラブホに連れ込んでスッキリした後、ピロートークに「スパイス」を入れてやることにした。

 

「可乃ちゃんがお前を殺したいってさ。」

 

 ボロがオレを見た。

 瞳にはオレが映っている。

「他には?」

 他か……。

「クソアバズレ……『私だけの村雨先生を奪った泥棒猫』を絶対に許さないって。」

 ボロは顎に手を当ててブツブツと呟き始めた。

「それはそうなんだよな、後はどう濁さないかであって……」

 頭を撫でるとはたき落とされた。

「若い嫁さんから旦那を寝取るのって気持ちいか?」

 ボロは質問には反応せず、ブツブツと独り言を言っていた。

 

、、、

 

 しばらくすると、また映画を見始めた。

「観てもいい、でも愛撫されながら観ろよ。」

 ボロはビクビクと身体を跳ねさせながら画面を目で追っていた。

「dン・キホーテを殺した男?またこういうやつか。好きだなお前。」

 足の指を舐めると身体を反らせた。

 

「ジジイ死んでんな。」

 首筋に新しい噛み痕を残す。

 晨くんに、礼二くんに……誰の歯型だ?

「新しいサンチョ、新しいドン・キホーテに引き継がれた。」

 まさか敬一くん?は流石にない。

 ……ユミピコ?

「……概念は引き継がれる、救い、栄光、すべて。」

 

、、、

 

「叶、どうした?ボーっとして。」

 

 敬一くんに肩を叩かれる。

「別に。」

 ……ユミピコとセックスしたなら、ボロがユミピコに懐いている理由がない。

 敬一くんでも同じ事だ。

 ……職場、ジョイキッチンか?

 店員?……まさか牙頭か?

「恋の病でしょうか。丁度、お医者様がいらっしゃっいますよ。」

 ユミピコがニコッと笑って礼二くんに目配せをする。

 

「違う。」

 

 

 

 

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