※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

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Satan in Karma

 

「卵1パック128円を4パック、白菜88円を2つ、食用油276円を3本だ。」

 

 医者に早口で言われて混乱する。

 クソ……暗算が出来ないからって……。

「待ってくれ。」

 紙とペンを取り出すと、静止された。

「暗算、あなたはさんざん練習したはずだが。」

 ……。

「…………………せん、ごひゃく……」

 私が唸っている間に二人はレジに進んで店から出ていった。

 

、、、

 

「君はべっぴんさんだから一匹おまけね!」

 

「ありがとうございます!」

 ……なぜわざわざこの店を選ぶのか。

 理由は分かるが。

「……らっしゃい。」

 

、、、

 

「ボロさん可哀想……これあげるから元気出して?」

 

 真経津は手のひらに麦チョコを一粒乗せて渡した。

「麦チョコ1つぶしかくれないのか。」

 ……。

「うん!」

 医者の方を見るとこちらを振り向きもせず、スタスタと前を歩いている。

 ……医者が普通のスーパーで会計に並ぶ貴重なシーンを観れただけで……お釣りは来ないが。

「もう2、3つぶくれよ。」

 麦チョコを頬張ると、甘くて鼻がもげそうになる。

「やだよ。」

 そう言うだろうよ。

「真経津はケチだな。」

 すると腰に腕を巻き付けて肩に顎を乗せてきた。

「ケチっていうほうがケチなんだよ?ボロさんは賭場で稼いでるくせに麦チョコをたかるの?」

 ……。

「ああ?麦チョコを3つぶくれればいいんだよ!」

 腕を離そうと力を込めるがびくともしない。

「強欲だ!ボロさんは意地汚いね、ねえ村雨さん?」

 医者は振り向いて指を差した。

「ああ、ボロ大先生は守銭奴だ。」

 

 ……人に向かって指をさすな。

 


 

「誕生日おめでとうボロ!31歳だな。」

 

 獅子神の家に行くとクラッカーの破裂音と共に頭上のくす玉が割れて紙吹雪がヒラヒラと舞った。

「……は?」

 今日は12月5日。

 ……誕生日でもなんでもない。

 頭にパーティー用のフザケたとんがり帽子をつけた彼らが巨大なケーキを背に立っている。

「ケーキを我々で作ったのだ。ありがたく一口一口口にしろ。あなたに相応しい服や靴も買った。」

 テーブルの下には疎い私でさえ名前を見かけたことがある高級ブランドの紙袋と箱が複数置いてあった。

 ……医者、お前は私の保険証やらなんやらで正確な誕生日を知っているはずで、何も知らない獅子神を騙すということは相当な理由があるな。

「なぜ今日だと……。」

 日付に意味はなく、歳を重ねたというトリガーで私を貶める策か?

「お前、前に『誕生日は12月5日、好きな言葉は下剋上』だって教えてくれたろ?」

 ……。

 嘘だろ……。

「またひとつ年をとったね!ボロさん!」

 真経津に腕を組まれた。

 ……知らないのは獅子神だけか。

「……私、私は……。」

 ここで「あれはネットスラングだ」と明かしたら、彼ら……少なくとも責のない獅子神の好意を無駄にしてしまう。

 しかし、真実はいつか必ず露呈する。

 

『下剋上だぜ〜つ〜ぶ〜せ〜』

 

 叶がスマホでネットスラング元の音源を流した。

「ん?なんだそれ。」

 獅子神が叶のスマホを見た。

 駄目だ、限界だ、私は帰る。

 ……羞恥心で……死ぬ。

「へー!ボロさんはこの男の人のセリフを言ったんだね!」

 耳まで赤くなっているのが分かり、顔を上げられない。

「……あ、あれ2.5次元舞台の歌詞か!ボロってちゃんと男に興味あったんだな。」

 違う……私はただの

「原作は中学生だって!ボロさんってこういうツンツンした男の子が好きなの?」

 やめてくれ……傷口に塩を塗り込むのは……。

「あなたは……オタクだったのか。腐女子という輩か?」

 医者……わかっていて……クソ。

「このキャラ中学生か、ボロが男に興味ないのって……」

 叶がニヤニヤしているのが顔を見なくても分かる。

 逃げ出したい。

「さすがに可哀想だよ、ボロさんも二次元と三次元の区別くらいついてるよ……そうだよね?」

 真経津に顔をのぞき込まれる。

 ……。

「うっ……違うからぁっ……。」

 堪えきれずに嗚咽してしまった。

「……若い男でなくてすまない。私では不満だったか。」

 これを達成するためだけに……こんな……馬鹿げたことを……。

「……プレゼントは返品してもらうからぁ……。」

 涙が溢れて止まらない。

「そんな事言うなよ、せっかくお前のために買ったんだぞ?」

 獅子神の善意が痛い。

 ガラス片を投げつけられているようだ。

「では、改めて誕生日は祝うとして、ケーキを食べろ。」

 甘い物が駄目だと知っていながら……。

「……うっ……うぅ、分かった……食べる。」

 フォークに刺さったケーキの欠片を口に詰められる。

「オェ……しい、美味しい……ありがと……う。」

 このサド共が……いつか……絶対に……。

 

「そうか、あなたのワガママな口に合うようで良かった。」

 


 

「ボロ大先生、私が若い少年でなくてすまない。」

 

 そう囁くと彼女は顔を真っ赤にして唇を噛み締めた。

「医者……お前、こんなことをするためだけに獅子神を騙したのか?」

 頬を撫でると目を伏せた。

「騙してなどいない。」

 その言葉に彼女は絶句した。

 獅子神だけは、彼女にとっての聖域だったのだろう。

「……どこまで……お前は……」

 赤くなった耳を撫で、舌を這わせる。

「私を若い……そうだな……獅子神少年だと思え。そうすれば快楽に少しは正直になるだろう?」

 指先を太ももの内側に滑らせると今までになく敏感な反応を見せた。

「っぅ……許さないからなっ……あっあっ……。」

 涙を貯めて睨む目元に口づけをして舐め取る。

 

「愛らしい……。私の怪物……。」

 

。。。

 

「獅子神、以前彼女が言ったのはネットスラングだ。「誕生日は12月5日血液型はAB型好きな言葉は下剋上」で検索してみろ。」

 

 村雨が言う通り、検索すると動画リンクが表示された。

「……あ、なるほど。ボロはパソコンに詳しいみたいだし、スラングを知ってただけか。」

 真経津はニコニコしながらケーキ用のイチゴを摘まみ食いした。

「ボロさんはロジックの大先生でパソコンの大先生だからね。」

 知ってたんならケーキ作りを始める前に言えばいいだろ。

「なあ、ボロって甘い物食べられないんじゃなかったか?」

 それとも体型を気にして虚勢を張ったのか?

 

「荒療治も時には必要だ。」

 

。。。

 

「ボロさん、ごめんね?ボクがショタじゃなくて。」

 

 ボロさんはポロポロと涙を零した。

「真経津……私はちゃんとお前のものだと……そう話をしたろ……これ以上、何を望むんだ……。」

 簡単なことすら分からないんだね。

 ボロさんはお馬鹿さんだから。

「ボロさんがショタコンでも、ボクは大丈夫だよ。……でも、ボロさんは満足できないよね……。」

 ひゃっくりをしながら泣くボロさんの服を無理やり脱がして腰を打ちつける。

「うあっ……あっ、ああっ……うぅ」

 絶望しながら快感に喘ぐボロさんはとってもかわいい。

「ボクをショタだと思って?理想のショタに犯されてると思って?ボロさんは性欲猿の我を忘れたショタに腰をヘコヘコされて気持ちくなってパコパコされてるのを許しているんだよ。」

 ボロさんは泣きながら善がった。

「まふつ……うぅ」

 ボロさんは「自分が異性に興味がある」「性に興味がある」「若さに憧れがある」と認めるのが怖いんだよね。

 かわいい。

 

「おねえさん、優しくして?無邪気なボクを受け止めて?」

 

、、、

 

「……知っていると思うが、違うんだ獅子神。アレはネットスラングなんだ、荒牧スカルチノフやブーンのように、違うんだ。」

 

 ボロは泣き腫らした目を真っ赤にして珍しくオレの腕を引いた。

「そんなに必死になるなって……図星ですって言ってるようなもんだぞ。………まー……性癖は人それぞれだし、未成年に手を出さなさきゃいいんじゃねえか?」

 ハッとした顔をして、また泣きじゃくった。

「うぅ……うぅ違うぅ……。」

 

 ボロは気にしすぎなんだよ。

 


 

 また獅子神さんの家で勉強を見てもらっている。

 

 お陰で結構いい大学の模試判定がA判定なんだよね。

 ボロさんが席を立ったタイミングでおもいきって真経津さんに聞いてみることにした。

「私、ボロさんに嫌われてるのかな。」

 真経津さんはニコニコしながら何度も頷いた。

「ボロさん、愛美ちゃんが若くてかわいいから『ボクたちが愛美ちゃんに取られちゃう』って嫉妬してるみたい。」

 ……そうだったんだ。

 私は山吹刑事が好きだから、取ったりしないのに。

 だから私が邪魔になったの?

 勉強も教えてくれないの?

 学生カバンについているお守りの鈴がチリンと鳴った。

「そうだな、小娘はやたらとやかましいからな。」

 ……隠れて悪口を言う人だったの?

 こぶつさんと三人でお揃いにしたハンカチも、本当はどうでもいいって思っていたのかな。

 また鈴がチリンと鳴った。

 暖房の風が強いのかな……なんだか、暑くて……どろどろした空気になっている気がする。

「心苦しいのですが、見え透いた親切心が迷惑だと……。」

 天堂さんが気の毒といった顔をして目を伏せた。

 鈴が……

「うるさい!!」

 

 自分で叫んで、その声の大きさにビックリして尻もちをつくようにソファにへたり込んでしまった。 

 ……ボロさんは、そんな人じゃない。

 厨二病だけど……私に隠れて噂話をするような卑怯な人じゃない。

「愛美ちゃんはいい子だって、そう言ってたぞ。」

 獅子神さんがこちらを見ずに宿題に目を通しながら呟いた。

「……うん。」

 

、、、

 

「医者……もうやめにしないか?挿入しない以前に不貞には変わらないだろ?」

 

 珍しく弱気になったな。

「……あの小娘の第一志望は確か……。」

「医者、冗談だ。」

 私はまだ何も言っていないが。

「小娘は大学に進学するつもりなのか?」

 彼女は何も答えない。

「なら本題に戻ろう。あなたは私に言うことがあるのではないか?」

 しばらく間があった。

「……医者、愛しています……私を愛してください。」

 彼女は自らの腕に爪を立て、血を流しながら甘言を述べた。

 

「あなたにしては上出来だ。……挿入が無くても満足させられるように努力しよう。」

 

、、、。。。

 

「私は汚い、愛美ちゃんの隣にいる資格がない……。」

 

 ボロさんは私の袖に縋り付いた。

「言いにくいのですが『醜い化け物から解放されたい、早く卒業したい』と……。すみません、伝えるべきではなかったですね。」

 そう啓示を述べると、私の胸に飛び込んできた。

「うぅ……天堂、……私は……幸せになっちゃ駄目なんだな、咎人だから、汚れているから……。」

 よく理解していますね。

 私のうさぎさん。

 

「……側にいて差し上げます。」

 

。。。

 

「真経津、もう疲れた。」

 

 どうしてそんなつまらないことを言うの?

「あ、愛美ちゃんからメッセージだ、『こんど二人っきりでお茶しませんか?』だって、どうしようかな。」

 ボロさんは怯えたように抱きついてくる。

「真経津、だいすきだから……。」

 可哀想なボロさん。

 もう正常な判断もできないんだね。

 

「うん、なら……証明して?」

 


 

オリジナルデスギャンブル『カルマの中のサタン』

 

『Satan in Karma』

 

 2対2のタッグマッチ用。

 敗者は死亡する可能性がある。4スロット〜ハーフライフ相当。

 ペナルティは有刺鉄線による締付(失血死)。

 

 プレイヤーは『人間』になり、ペアで9つの魂の救済を目指す。

 

 プレイヤーは人間に『悪魔』と『天使』が一つ付き(『付き物』)、ターン毎に役職を変更できる。

 人間は『魂』が浄化(救済)されると、次の魂になり、また人1からスタートする。

 

【プレイヤーの道】

 プレイヤーは初期値『人1』から始まり、ターンを経るごとに『人6』に進み、人6のターン終了時に『審判』を受け『天国』または『辺獄』『地獄』に行くかが決まる

 

『天国』

 財産Pが0Pかつ罪Pが0Pでその魂を浄化して救済P+1P

 新しい魂になり人1から再スタート

 祈りP1Pでそのターンの欲+1Pを無効化できる

 ※祈り3Pで財産P+1P、食欲+1P、暴力+1Pを無効化できる

 

『人』

 人6(老年):財産P+3P

 人5(更年):財産P+2P、色欲+1P

 人4(中年):財産P+1P、食欲+1P、色欲+1P

 人3(青年):財産P+1P、食欲+1P、色欲+1P、暴力+1P

 人2(少年):財産P+1P、食欲+1P、暴力+1P

 人1(幼年):食欲+1P

 

『辺獄』

 人1が『罪』を犯さず死亡した場合、または『祈り』をせずに死亡した場合に落ちる

 1ターンを経る度に罪P-1P、財産P-3P

 罪Pが0P、財産Pが0Pになるとそのターン内で『天国』に行く 

 

『煉獄』

 人(1〜6)が『罪』を犯した場合に堕ちる

 2ターンを経る度に罪P-1P、財産P-3P

 罪Pが0P、財産Pが0Pになるとそのターン内で『天国』に行く

 

 他プレイヤーからの『祈り』で罪P-3P、財産P-7P

 自分の『祈り』で罪P-1P、財産P-3P

 

 阿修羅:次の魂に暴力+3Pを付与

 畜生道:次の魂に食欲+3Pを付与

 餓鬼道:次の魂に色欲+3Pを付与

 地獄道:次の魂に暴力+2P、食欲+2P、色欲+2Pを付与

 

【プレイヤーのステータス】

 

 救済P:初期値0、ペア共通、ゲーム中救済

 魂が浄化されると、救済P+1P、救済Pが9Pになったペアの勝利

 

 魂は浄化されるまで同じ魂のまま、新しい魂では全てのPがリセットされる

 

【審判P】

 暴力P:3Pになる度に罪P+1P、このPが一番多い場合『審判』の時に阿修羅に落ちる

 色欲P:3Pになる度に罪P+1P、このPが一番多い場合『審判』の時に畜生に落ちる

 食欲P:3Pになる度に罪P+1P、このPが一番多い場合『審判』の時に餓鬼に落ちる

 Pが高く同じPのものが複数ある場合、『審判』の時に地獄に落ちる

 

【ステータス】

 財産P:初期値0P

 幸運P:初期値3P、0Pになると死亡する

 祈りP:初期値0P、祈るたび+1P

 罪P:初期値0P、罪を犯すたび+1P

 

【審判】

 人6を経過した時に『天国』『辺獄』『地獄』に行くか決める

 または人1〜5の時に死亡した時にも行われる

 

【付き物】

 相手プレイヤーが人(1〜6)だった場合に、特定プレイヤーに向けて設定した『悪魔』および『天使』の効果を発動できる

 発動するかどうかは自由

 ターン毎に設定した役職の効果しか使用出来ない

 

『悪魔』

 貪り:相手プレイヤーに食欲+1P

 淫ら:相手プレイヤーに色欲+1P

 金銭:相手プレイヤーが3ターン以内に『浄化』される時、相手プレイヤーの次の魂に相手プレイヤーの財産を付与する

 嘆き:相手プレイヤーに強制的に特定プレイヤーへの『祈り』をさせる

 怒り:相手プレイヤーに暴力+1P

 嫌気:自分の幸運Pを-2P

 自惚れ:相手の天使の効果を1ターン無効化

 驕り:相手プレイヤーの幸運-1P

 

『天使』

 謙虚:自分の財産Pを-1P

 慈悲:『地獄』にいる特定プレイヤーへ『祈り』をする、祈りP+3P、自分への祈りまたは対象が居ない祈りは祈りP+1P

 忍耐:人(3〜5)の場合、3ターン以内に死亡せずその場に留まる(ターンが過ぎると死亡する)

 勤勉:相手の悪魔の効果を1ターン無効化

 節制:自分の食欲Pを-1P

 寛容:自分の暴力Pを-1P

 純潔:自分の色欲Pを-1P

 愛:相手の幸運Pを+1P ←省いても良い

 


 

 ソファで寝ているボロに毛布をかけると「ギャァァ」と悲鳴を上げて飛び起きた。

 

「……な、どうしたんだよ。」

 脂汗をかいて目の焦点が合ってない。

「白い……シーツみたいな毛布は捨ててくれないか。」

 な……いきなり何だよ。

「その前にソファで寝るな!風邪引くだろ!」

 呆れて毛布を折りたたんだ。

「……そうだな、客間……客室……もう医者と真経津は帰ったか?居るなら帰る。」

 帰るって……もう深夜だぞ。

「怖い夢でもみましたか?私がそばにいましょうか。」

 振り向くと天堂が立っていて、ボロは天堂に駆け寄った。

 

「すまない、天堂。」

 

。。。

 

 2回目にタッグマッチをしたペアが天堂だった。

 

 天堂、頼む……『Satan in Karma』で地獄にいるんだから自分に『祈り』で天国に早く行かせてくれ、魂を早く救済しないと。

「彼に忍耐を。」

 ……な、ペアの私を祈れよ。

 意思疎通ができない……。

 ……コイツは私を救済する気がないな?

 自力で這い上がれということか……。

 

 私達のペアが勝ったが……。

 

。。。

 

「天堂……眠るまで手を握っててくれ、寝たら帰っていいから、お願いします。」

 

 昨晩、一昨日と激しい情事をされてましたから。

「ええ。」

 ボロさんは手を握ると、ハッと思いついたように起き上がった。

「ねえねえ天堂。」

 言いなさい。

「『シーツの中の幽霊』をしないか?叶と獅子神ともやったが何もなかった、だから大丈夫だよな?大丈夫だからしよう?」

 ようやく言質を取れました。

 なんと淫らで可愛い誘い方でしょうか。

 あの夜の愛欲に塗れた情事が忘れられなかったのですね。

 いいでしょう、今夜はたっぷりと可愛がって差し上げます。

 

「……構いませんよ、ボロさんが望むのなら。」

 

、、、

 

「……天堂?……なんで……手の甲にキスしてるんだ?」

 

 怯えた瞳、実に可愛らしい。

「私が猫でKissを選んだからですよ?」

 震えていますね、うさぎさん。

「あ……あ……」

 パニックになっているようですね。

「次はボロさんが猫ですよ。キス、噛みつき、舐め……何をして下さるのですか?」

 死後硬直したかのように動かなくなる。

「……してくださらないなら、私が猫を継続します。」

 唖然としている彼女のパーカーを捲りあげて脱がせると、豊満な胸部が現れた。

「ひ……や……め」

 ブラジャーのフロント部分に指をかけて離すとプルンと白い乳房がむき出しになる。

「乳首が勃っていますが、私に今からされることを待ち望んでいたのですね。憐れな仔羊……いえ、淫靡なうさぎさん。」

 乳首を指でスリスリと撫でると仰け反り、ベッドに背中から倒れた。

「天堂……あの日……もしかして……送り狼したのか?う、嘘だよな?冗談だよな?ふ、服を着る、着るからっ……」

 彼女はジタバタとシーツの上で藻掻いた。

「はい、嘘ですよ。」

 ピタッと動きが止まる。

「送り狼とはニュアンスが異なります。あなたが私を激しく求め、愛してくれと強請って私を誘惑したのです。」

 震える唇から反論を絞り出した。

「私を騙して……酔い潰れた私を犯したのか?」

 

「いいえ、二人で求め合い、愛し合ったのです。」

 


 

「天堂!やめる!ゲームは終わり!ゲームやめるから!」

 

 駄々っ子のようにジタバタと藻掻くが、天堂の体躯に抵抗できるわけがない。

 なんでだ?

 ……天堂は私の味方じゃ……。

「そうですか、ならシンプルに性交渉をしましょうね。」

 ……。

 馬鹿だな、私は。

 最初から天堂は私の味方でも何でもない。

 天堂は神なのだから。

「帰る!もう帰る!獅子神っ……獅子神ぃ」

 強い力で抱き寄せられる。

「なぜ?愚か者の名を呼んだ?恋慕の情があるですか?」

 ……。

「違う……天堂……なんでだよ、なんで間違いを犯したんだ。」

 後背座位の体位になってしまい、胸を弄られてズボンを脱がされた。

「ですから、間違いなど犯していません。」

 ゴツゴツとした指が秘部をなぞる。

 私は……最初から間違っていた。

「あれは何だったんだよ……あの優しさは……何だったんだ。……陵辱が目的なら悪趣味過ぎる。」

 顔を押さえつけられて舌が捩じ込まれる。

「愛です。」

 涙が溢れて止まらない。

 背中と頭を固定されて長いディープキスが繰り返される。 

「ならどうして泥酔状態のときに送り狼なんてしたんだ?なぜ早くに抱いたと言わなかった?」

 愛というのなら、なぜ告げない。

「ボロさんは私に親しみを覚えていらっしゃった。だから抱擁を強請り、男である私の膝の上に座った。」

 ……それは

「膝の上に乗せたのは天堂だろ……。」

 進んで膝の上に乗った覚えはない。

「その後、私は『用事があるので失礼します』と何度も離席しましたね?」

 ……。

「あれは『勃起しました』の合図だと、お分かりになりましたよね?」

 ……。

「それでも親しくし、酔いつぶれて無防備な姿を晒して抱いてくれと強請ったのはあなたです。」

 ……。

「……送り狼の正当性になってない。」

 もう嫌だ。聞きたくない。

「あなたが『天堂……だっこして』といったんですよ?あなたが誘惑した。」

 私は……人と会話、しているか?

「ですから私には報告義務はありません。あなたは私の伴侶になるために酔いつぶれたフリをした。」

 ……神、……神か。

 

「続きをしましょうね、ボロさん。」

 背中を撫で回されて反応してしまう自分が憎い。

「私を『昔飼っていた愛しいうさぎ』と思いなさい。そうすれば痛みも和らぎますから。」

 脚をこじ開けられてモノが挿入され始める。

「ま……て、ゴム……ゴム」

 冗談だったら、冗談だと。

 

「必要ないでしょう?私達は愛し合っているのですから。」

 

、、、

 

「また散歩に行きましょうね、今度は堂々と手を繋いでお出かけできますから。ねえボロさん、聞いていらっしゃいますか?」

 

 腰を打つけて彼女の顔を確認するが、意識はあるが快感に溺れて反応出来ないでいるようだ。

「どうして「うん」と言ってくださらないのですか?」

 彼らとのセックスではなく、私とのセックスに耽溺になる私のうさぎ。

「……ああ、とろけてしまってそれどころではないですね。終わったらゆっくり話しましょう。」

 私の愛に言葉が出ないほど感動しているなんて。

「なんて可愛いらしいんでしょう。中に出してあげますからね。愛するものを授けます。」

 彼女は私にしがみついて絶頂した。

 

、、、

 

「私を愛したらまずいんじゃないか?」

 

 神の腕に包まれて幸せですね。

「なぜ?」

 神の愛を確認したくて堪らない、可愛らしいうさぎさん。

「なぜって……神だから、平等に愛するべきだろ……。」

 嫉妬ですか?

 

「神の前に一人の男ですから。ボロさんは私のことが大好きなんですね。」

 


 

 もし仮に、天堂に本当の好意があったとするならば、送り狼をした翌朝に「あなたが好きだ」と言ったはずだ。

 

 何も言わなかったのは……つまりそういうことだ。

 そして、送り狼から犯された日から時間が経っている。

 天堂は平気な顔をして中出しした。

 あの日、避妊具を使ったのか?

 元々生理不順だから……ひと月やふた月なくても……。

 

「医者……事後避妊薬をくれ……。」

 

 医者は怪訝そうな顔をした。

「真経津の奴め……まったく、避妊はちゃんとさせろ。事後避妊薬も万能ではないのだから、5日以内が原則だ。中出しされたらすぐに言え。」

 ……怖い、嫌だ、誰か、助けて。

 

 そのタイミングでスマホの着信音が鳴った。

 

「……土屋田、随分と連絡が遅かったんじゃないか?」

 

、、、

 

「今日はk誨師だ。」

 

 今日も皆が揃っている。

「で、あなたの解釈はなんだ?」

 医者は足を組みながら私の肩に身体を預けている。

 真経津は勝手に膝枕のように頭を乗せ、天堂や叶、獅子神は何もそれについて異議を唱えない。

「特筆すべきは革命家気取りの大量殺人犯だ。彼は自らの犯した罪の重さに耐えかねシニカルを装って教誨師に虚勢で揚げ足取りをして「許されることを拒否」をしたのだ。」

 彼は決して知識人ではなかった。

 知性という隠れ蓑を被り、怯えていたに過ぎない。

「「核がなんで落とされたか」「共産主義がなぜ廃れたか」という博識でも教養でもない、一般常識を使った屁理屈を使っで、浅く深掘りができない表面的な虚勢と知識があると他者に見せかけたい愚かさの描写だ。」

 ただの知識の羅列を、知性とするな。

 「ただ、少なくとも最後に「分かり合えた」という描写が描かれたのだ。」

 ……彼らは本当に分かり合えたのだろうか。

 我々のような観測者がそう判断したに過ぎない。

「読み書きができない老人は「自己の存在意義と名称づけを他者に委ねるのを是としなかった」「他者が同一のものの捉え方をしているのか」「言葉で通じ合えるのか」を説いた。」

 知性に年齢や性別、生まれは関係がない。

 そう信じられたら救われるのか。

 救いとは、許容され、責められないことにあるのか。

「つまり、「自分内で罪を認められるかどうか」すなわち「真に悔い改めたかは他者が知り得ることはない」かつ「そもそもとして罪を罪と共通認識ができるのか」がテーマであり、端的に言えば「自分の見方と他者の見方は異なり、真実かどうかすらも事実か虚偽かを抜きにして判定をするかは自分と他人であり、同一ではない」ということだ。」

 そう語り終わる頃には皆が寝息を立てていた。

 

「観測者のあなたに……私はどう見えているのだろうな。」

 

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