「あのー……。」
見知らぬ男性から肩を叩かれた。
「……服のタグ……切り忘れてますよ。」
慌てて背中に手を回すが、身体が硬くて手を回せずワチャワチャと動いていると首筋に指が触れた。
……。
「落ち着いてください。今捩じ切りますからね。」
目を瞑って拳を握りしめる。
……首の後ろに手があるだけで、恐ろしくて泣き叫びたくなる衝動が抑えられない。
「……取れました。はい、どうぞ。」
振り向くと眼鏡をかけた青年がニコリと微笑み、タグを手のひらに渡してくれた。
「……ありがとうございます。……申し訳ありませんでした。」
頭を深々と下げると、青年は手をパーにして顔の前で振った。
「いえいえ、謝罪なんて大げさですよ。困ったときはお互い様ですから。」
彼の腕にはスパティフィラムの鉢が入ったビニール袋が下げてあった。
「あ、スパティフィラム、ニッポンのピースリリーだ。」
また余計なことを言ってしまった。
……だから友人が居ないのに。
「……もしかして、『hット・ファズ』のエンジェルのセリフですか?」
驚いて顔を上げると、青年がまたニコリと微笑みかけた。
「……はい。」
……どうしたら、私の映画語りで引かない人間に会ったのは初めてだ。
「……あの、なんだかナンパみたいになっちゃいますけど……よかったらお茶していきませんか?家、すぐそこなんですよ。」
青年が指さすのは路地に面した小さな古書店だった。
……ナンパ……されたことがないな。
普通、初対面の異性の家に行くのは……。
「……はい。」
、、、
「そうなんですよね、エンジェルもダニーもお互いを補完しあったから友情に発展して……あ、すみません、僕ばかりが語ってしまいました。」
古書店の奥の畳の部屋に通されて、こたつに入ってミカンを食べている。
……。
「互いにすれ違いがあったからこそ、友情はより深くなる。」
……私は何をしているんだろうか。
医者から充てがわれた上等なワンピースと天堂が選んだパンプス、叶が見いだしたアクセサリー、真経津が塗ったマニュキア、獅子神から贈られたバッグを身に着けて、ただ行く宛もなく放浪していた。
……私は、私で構成されていない。
この青年は「身なりがマトモ」そうな私だから声をかけたのだ。
普段のパーカー姿であったなら……。
「……あの、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
……私はツギハギの怪物だ。
……醜いからな。
「ああ、大丈夫……です。」
急須からお茶が湯飲みに注がれる。
「……僕、あんまり映画を語れる友達が居なくて。」
……そうか。
「……もし、あの……嫌じゃなかったら……こん……今度一緒に映画でもどうですか?」
青年は顔を下にして震えている。
「……はい。あなたが嫌でなければ。」
バッとこたつの天板に手を付けて身を乗り出した。
「やった……じゃなくて……えっと……次の土曜日……」
……彼は私について勘違いをしている。
、、、
「……う、お前とデートなんかするわけないだろ……。」
青年は映画館のロビーで会うなり、左腕を右手で握りしめながら絞り出すように声を出した。
「か……勘違いするな……ぶ、ブス……ババア……う……すみません……ごめんなさい……さようなら……。」
彼は何度も頭を下げ、逃げるようにその場を立ち去った。
「はい……さようなら。」
私はその背を手を振って見送った。
「どうしたのボロさん、悪口言われた?」
真経津、出てくるタイミングが早すぎるぞ。
「あなた……まさか泣いているのか?」
医者の指が目の下を拭った。
「ボロさんは何も悪くありませんよ、彼が愚か者だったのです。」
本当にそうか?天堂。
「お前はオレたちとだけつるんでればいい。」
黎明に腕を引かれる。
「振られたくらいで気にすんなって!」
獅子神、お前はどっちなんだ。
私の友人か、彼らの友人か、どっちなんだ。
「ボロさんもミニスカサンタコスチュームを着るべきだね。」
目が爛々と光ったミニスカサンタコスを着た雪村に肩を掴まれる。
「私は皿洗いと掃除……裏方担当だから。」
そう手を振りほどこうとすると、同僚さんに手を掴まれた。
「牙頭オーナーがもう一着用意してる。」
……。
「それにさ、ハロウィンの時の『フランケンシュタインの花嫁』コスで売上上がったでしょう?フランケンシュタインのミニスカサンタ……いけるって!」
何がいけるのか分からない。
……しかし、私に拒否権などはないからな。
「……分かった。」
、、、
「あ!ボロさん……ミニスカサンタ服似合ってるじゃん!」
一番来て欲しくないタイミングで来て欲しくない客が訪ねてきた。
「いらっしゃいませ……ご注文がお決まりになりましたらベルにてお呼びください。」
愛美ちゃんはニコニコしてメニュー表を指さした。
「ボロさんのオススメは何?」
……。
「く、クリスマス限定の甘酸っぱいラズベリーソースがかかったチキンソテーとソーセージの盛り合わせです。」
羞恥心で爆発しそうだ。
「じゃあそれください!!」
満面の笑みを浮かべる彼女は無垢で、無邪気で、無知だ。
「お待たせ致しました。ご注文の品は以上でよろしいでしょうか。」
テーブルにチキンソテーとソーセージの盛り合わせを並べ終わるとスカートの裾を引っ張られた。
「ボロさん、明日……23日のクリスマスイブイブって時間ある?」
……明日はシフトがある。
「はい。……1時間ほどであれば。」
友達に渡すプレゼントでも買いに行くのか?
だとしたら時間が足りないな。
「じゃあ公園でミニクリスマスパーティーしよ?」
ミニ……?
「……はい。」
「やった!約束だよ?指切りげんまん……ね?」
、、、
閉店時間になると牙頭オーナーが訪れた。
「売上はどうだ雪村……お。」
牙頭オーナーと眼が合った。
その瞬間、顔から火が出るように身体が熱くなった。
恥ずかしい。痴態を見られた。
「……クッ……ハハハ!!」
嗤われた、年甲斐も無くみっともないから。
ブスババアが無理をしているから。
身の程を弁えないから。
ザッザッと足音が近づいてくる。
怖い。
「なかなか似合ってるな、ボロ。」
肩に手が置かれた。
「あ……いえ。」
……。
たった今、なぜ牙頭オーナーに対してこれほどまでに恐怖心を抱いているのか、理解してしまった。
「馬子にも衣装だな。たまには女らしい服を着てみろ。視点が変わる。自分も視点も他者からの視点もな。」
牙頭オーナーと長く同じ空間にいると……
私は女になってしまうからだ。
、、、
「はぁ……。」
衣装をくれてやるとされても……もう袖を通すことはない。
来年の今頃には……。
白いレジ袋を持ったパーカー姿の自分がショーウィンドウに反射した。
「醜いな、あまりにも……。」
……背後に、誰かいるな。
「お」
オリジナルデスギャンブル『赤い夜黒い夜』
『Red night Black night』
敗者は死亡する可能性がある。ハーフライフ〜ワンヘッド相当。
ペナルティは鞭打ち。
プレイヤー
先攻:白ひげ(ブラック/レッド) 14ライフ(14人)
後攻:待つ者 14ライフ(14人)
【ターンの流れ】
待つ者は白ひげがレッドかブラックかを予測して暖炉に火を灯す
白ひげはレッドかブラックかを選択して待つ者から奪い与える
ターン終了
ターン終了後、プレイヤーは先攻後攻を交代する
白ひげか待つ者がライフ0になった時点でそのプレイヤーは敗北する。
【待つ者】
待つ者は、白ひげがブラックかレッドかを予測する。
予測してブラックだと思えば『暖炉』に火を灯して、白ひげを殺害する。
殺害したのがレッドであった場合はライフが1つ減る。
レッドの場合は『靴下』の中に以下4つを入れる
「水」「ろうそく」「ソーセージ」「リーフブレット」それぞれ4個所持している。
手持ちに「木の棒」がある場合は靴下に任意のタイミングで木の棒を入れる事が出来る
「水」が0になると3ターン毎にライフが1つ減る
「ろうそく」が0になると『暖炉』に火を灯して殺害が出来ない
「ソーセージ」が0になると他のアイテムの減りが+1増える
「リーフブレット」が0になると木の棒を入れられなくなる
【白ひげ】
白ひげはレッドまたはブラックを選択するが3回に最低1度は『レッド』でなければならない。
また、靴下に「木の棒」が入っていた場合はライフが1つ減る。
レッドのときは以下3つのいずれかを所持し待つ者に与える。
『レッド』
「リンゴ(トロイの木馬)」「金貨(相手のろうそくを増やす)」「ジンジャーブレッド(相手のライフを増やす)」
リンゴ:次ターンで必ず相手の待つ者が『リーフブレット』を所持する
ブラックのときは以下の役職から被りなく選択する。
13つ滞りなく回したら、再び選択可能となる。
『ブラック』
Stekkjarstaur(ステキャルストゥイル)
水とろうそくを盗む。
Giljagaur(ギリヤゴイル)
水とソーセージを盗む。
Stúfur(ストゥーフル)
水とリーフブレットを盗む。
Þvörusleikir(スヴォルスレイキル)
ろうそくとソーセージを盗む。
Pottaskefill(ポッタスケフィル)
ろうそくとリーフブレットを盗む。
Askasleikir(アスカスレイキル)
水を盗む。木の棒(ムチ)を渡す。
Hurðaskellir(フルザスケリル)
木の棒(ムチ)を渡す。
Skyrgámur(スキールガオムル)
リーフブレットとろうそくを盗む。
Bjúgnakrækir(ビューグナクライキル)
ソーセージとリーフブレットを盗む。
Gluggagægir(グルッガガイギル)
何もしない。
Gáttaþefur(ガオタセフル)
リーフブレットを盗む。木の棒(ムチ)を渡す。
Ketkrókur(ケトロウクル)
ソーセージを盗む。木の棒(ムチ)を渡す。
Kertasníkir(ケルタスニーキル)
ろうそくを盗む。木の棒(ムチ)を渡す。
「目覚めたか?」
いつの間にか彼らに取り囲まれて、私はミニスカサンタ服を着て自室にいる。
「ここ壁薄過ぎね?さっきまで隣がパコッてる音丸聞こえだった。」
……いつからいるんだ。
「ボロさんはそれをおかずにオナニーしてるんだよ。」
……。
「欲求不満なのですね。だから部屋を越さない。」
そんなわけがないだろうが……。
「ボロ、『赤い夜黒い夜』を覚えてるか?」
……やめてくれ、お願いだから。
「いやだ、やめてくれ。お願いだ獅子神、彼らを止めてくれ。」
……なんで、なんで獅子神が上に乗ってるんだよ。
「なぜだ?先ず、あなたが白ひげ、我々が待つ者だ。」
獅子神に首筋に歯を立てられた。
「痛い痛い痛い痛いやだ、やめてやめて……」
顔を上げた獅子神の唇には血が滴っている。
「あー、やっぱりこの強さで噛むと皮膚を喰い破って出血するな。噛むときは……」
再び二の腕に歯を立てられて絶叫してしまう。
「痛い痛いよ……痛いから……」
涙が溢れて止まらない。
なんでだよ、なんで……。
「これくらいなら出血しないな。……こぶつさんは噛んだら嫌がるかな……。」
……彼女に試す前の……試しを……。
私でしているのか?
「じゃあサンタにはプレゼントをやるから。」
カチャカチャとベルトを外し始めた。
「だから、いやだ、ふざけるな、いらない」
ピタッと動きが止まった。
「……なら木の棒を使うか?あんまりムチとか使いたくねえんだけど。」
横で微笑む真経津の手には鞭があった。
「やめて……やめ」
顎を掴まれて、肉食獣と眼が合った。
「なら、挿れるから。」
両手を医者と天堂に掴まれ、脚を真経津と叶に抑えられて抵抗が出来ない。
「やめてやめてやめてお願いお願い獅子神やめ」
膣に硬いモノが当てられて、割り進んでくる。
「っ……ハァ……確かに良いな……。」
獅子神は両手を私の頭の左右につけて腰を振り始めた。
「あっあっああああっあっあっ…あああっ」
激しい鈍痛が全身を駆け巡る。
「ボロさん、獅子神さんのこと好きみたいだよ?」
……ふざけ
「悪い、ボロ……オレにはこぶつさんがいるから……。」
なら、なんでお前は
「あああっあああっあ、あ、あ、ああああっ」
隣の部屋からドン!というクレームが入る。
「ボロさんのミニスカサンタ可愛いね!」
獅子神が果てると、真経津が上に乗って獅子神が脚を押さえた。
「やっやめ……やめて、これはレ◯プだろうが……」
えづきながら必死に藻掻くと、天堂に後ろから抱きしめられ衣装の胸部にあるボタンが外されていく。
「違います、聖なる愛の儀式です。」
ブラジャーをずらされて、胸がむき出しになる。
嫌だ、こんなの
「違う、乱交だ、お前達は私を輪姦している。」
天堂の指が先端をクニクニと捏ね、医者がもう片方に吸い付いた。
「ああっ、だめ、やめて、やめてよぉ……」
刺激に耐えられず、身体がビクビクと跳ねてしまう。
「ボロさん巨乳だからおっぱいこぼれ出ちゃってるね!」
お前らが、そう
「やめて、や……あん…あっ」
怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ
怒りを燃やせ……正気を保て
殺してやる……全員殺してやる
「邪魔だから服脱がせたほうがよくねぇか?」
獅子神がスカートを捲り上げた。
「着衣だからいいんだろ?年増のボロが無理してミニスカサンタコスをしてるからエロいだって、敬一くんはまだまだ青いな。」
真経津がズブズブと侵入してくる。
「あ……あは!ボロさん、乱交好き?っ……ふ、締付てる……はぁ……ボロさん……気持ちい?」
舌を捩じ込まれて、舌を噛もうとするとヌルリと抜けた。
「村雨さん、ネクタイ持ってきた?ボロさん舌を噛んでくる!」
医者はガサガサと動いて、天堂に後背座位で犯され真経津に正常位で犯されている私の口にネクタイを噛ませた。
「ふーっ……ふーっ……」
そして私の上に乗り指を腟内に入れてバラバラと動かした。
「ふっふ、ふーっ……ふーっ……」
再び隣の部屋からドン!というクレームが入る。
「可愛らしい、もっと鳴け。」
何度目かの絶頂、そして潮吹きをして腰がカクカクと浮いた。
「あー……エロいな……ボロ……気持ちいか?」
叶が腟内に舌をねじ込んてくる。
最早快感なのか痛みなのか分からない。
「ふーっ……」
苦しい、身体も心も何もかも。
その時、玄関のチャイムがピンポンピンポンピンポンと連打された。
「おいオバサン!!うるせえぞ!!ババアのくせに何男連れ込んでアンアン……」
玄関の戸がバタンと閉じる音がした。
「うさぎさんはセックスが大好き……。」
天堂に後背位で何度も腰を打ちつけられながら、獅子神と叶に支えられて医者のモノを咥えさせられる。
「うっ……うぁ……く」
酸欠で頭が回らない。
「……っ、ふ……上手くなったな、ボロ大先生……。」
医者に頭を撫でられる。
「次はオレな?ボロ、フェラチオして?」
一呼吸する間もなく叶のモノが口内を犯す。
「ふ……うぐ……うぅ……」
喉奥を突かれて反射的に舌が突き出てモノを舐めしゃぶるかたちになってしまう。
「あー……ボロ……気持ちい……ハァ……ハァ……オレのこと大好きなんだな……」
苦くて苦しくて涙が止め処なく流れる。
「ねえ、またアレやろ?誰のか当てるヤツ!」
……今、またって言ったか?
「やらぁ、もうやめてくだしゃぃ……」
天堂のモノが引き抜かれたと同時にバチュンと思い切り突き上げられた。
「今、誰のチン◯で犯された?」
……死ね、殺してやる
「ころしゅ……」
ピストン運動が激しさを増し、パチュパチュという音が静かな部屋に鳴り響く。
「もー、大好きな獅子神さんだよ?ちゃんと覚えてね!」
背中を無数の指が這い回る。
「ボロ……可愛い。」
頭が割れるように痛い。
私は地獄に堕ち、責め苦を受けている。
……なぜだ。
「ボロさんは私の伴侶ですから。」
神などいない。
「うぅっ神は死んだのだ……あっあっあふぐっ」
天堂のモノが口内を犯す。
「神はここにいます。神を、友人を愛しなさい。」
友人などいない。
「抵抗したらお仕置き、しなくてもご褒美としてレ◯プしてやろう。」
「いいかた!順番に愛し合おうね!」
「輪姦は順番で輪わすわけじゃないからな。」
「レ◯プでいいだろ。」
「いいえ、愛の交換です。」
、、、
「メリークリスマスイブイブ!」
真経津は私に抱きついて顔を首筋に埋めた。
「結構良かったな……ボロ、またしないか?」
……。
「あー……な、ボロは丁度いいからな。」
そうかよ。
「クリスマスベビー……9月生まれが多くなるのも頷ける。」
良かったな。
「ふふ、聖なる夜ですから……。」
性なる、な。
「ボロさんのミニスカサンタ可愛かったから他にも衣装買わない?」
真経津が叶に話題を振った。
「お、いいな、晨くんはミニスカポリスとか好き?」
叶はスマホをポチポチと弄り始める。
「ナースだ。」
医者が叶のスマホを取り上げた。
「……殺してくれ。」
彼らはキョトンとした顔をしてこちらを見た。
「昨夜は感じすぎてイすぎてしまったから……。つまり良かったです、という感想ですね。」
すると真経津が突然立ち上がって台所の食料庫の扉を開けた。
「これなあに?」
……なんで見つけるんだよ。
「ボクへのクリスマスプレゼント?……わあ、マフラーだ。あったかいな。ありがとうボロさん!」
……愛美ちゃんへの……プレゼントだったのに。
「泣いちゃうほど?ボクも嬉しいな!」
「ボロさん!遅いよ!!私、1時間も待ったんだよ?」
ボロさんは悪びれる様子もなく頭をかいた。
「ごめんごめん、忘れてた。」
……ボロさんにとって、私とのクリスマスパーティーの予定は……昨日の今日で忘れるくらい「どうでもいい」ことなの?
。。。
「愛美ちゃん、ボロさんの秘密……知りたい?」
獅子神さんと真経津さんが家まで送ってくれたあと、真経津さんだけが引き返して来て耳打ちしてきた。
「……秘密?秘密って……。」
私が知っているボロさんはジョイキッチンでパートをしている厨二病患者、そしてお父さんが素晴らしいギャンブラーだと「弟子入りをするなら彼だ」と絶賛した村雨礼二と顔見知り……。
……あれ?
なんでボロさんは……村雨さんと知り合いで……。
賭博場に関係している御手洗さんから憎まれているんだろう。
村雨さんは「御手洗さんの担当が真経津さんだから」だと言った。
それがどうして憎しみに繋がるの?
そもそも、どうして私に「かごめ」や「黒い棺」みたいなゲームをさせたの?
……なんで私が知らないゲームを真経津さんと村雨さん、ボロさんは知っていたの?
ボロさんは、何者なの?
「ボロさん、村雨さんと浮気してるんだ。」
……え?
「……ボクから聞いたって内緒にして?嫌われたくないから……。」
ボロさんは……村雨礼二の愛人だから、ゲームを知っていて……御手洗さんから憎まれてる……ってこと?
「ボロさんは、いけないことをしてるんだよ。」
。。。
「……ボロさん、これ。」
ラッピングした包を渡す。
「開けていいかな。」
頷くとピリピリと包を開け始めた。
「……わぁ……手編みのマフラーだね。……嬉しい。」
ボロさんはマフラーを巻いてニコニコした。
「……私には……プレゼント、くれないんだ。」
……当日にプレゼント交換をする約束はしなかった。
でも……。
「えへ、ごめん、ないよ。」
ボロさんは頭を掻きながら変な顔をして笑った。
思わず拳を握って叫んた。
「ひどいよ!!どうせ村雨さんとイチャイチャしてて約束を忘れたんでしょ!?」
北風が吹き人けのない公園に強い冷気が吹き込んだ。
「あ!愛美ちゃんだ……それにボロさんも。」
何処からともなく真経津さんが現れた。
「……真経津……お前……。」
急に重力が重くなって膝をつきそうになる。
苦しい、痛い、空間が歪んでるみたい。
真経津さんは新品のマフラーを大切そうに撫でた。
「真経津さん、マフラー……似合ってるね……。」
気まずくて、話題を反らしてしまった。
「このマフラー、ボロさんから貰ったんだ。いいでしょ?」
……真経津さんには、プレゼントを渡したんだ。
私には……くれないのに。
「私のことが邪魔なら最初からそう言ってよ!!」
ポタポタと涙が地面に落ちた。
友達だと思ってたのは私だけだったの?
年が離れていても……
「ああ、目障りだ。キャンキャン吠えるガキは嫌いだ。」
……そんな風に思ってたんだ。
「酷いこと言うなぁ、……そうだ、前から言おうと思ってたんだけど『愛美ちゃんはギャンブルの才能がある』!改めて御手洗くんに紹介しようか?」
突然ボロさんが真経津さんの胸ぐらを掴んで鬼のような形相になった。
「馬鹿なことを抜かすな殺すぞ……あのガキにギャンブルの才能なんてこれっぽっちもない……野垂れ死んでくたばるのが関の山だろうが……。」
いくらなんでも……
「ひどいよ……ボロさん……。」
涙がポロポロとこぼれた。
「もう……連絡してこないで……絶交だから……ボロさんなんて大っきらい……。」
この場から一刻も早く立ち去りたかった。
走って、とにかく走った。
「最低だよ……大嫌い……大嫌いで……。」
苦しいよ。
、、、
彼女が走り去ると、ブランコに腰掛けた。
真経津は何事もなかったかのように背中を押した。
「愛美ちゃんがボロさんがボクたちと乱交してるって知ったら精神がおかしくなっちゃうから。来年は受験を控えてるのに不味いよね?ボクって優しい?」
キコキコとブランコに揺られた。
「dーティハリー4の犯人の気分だ……泣けるぜ……。」
すると頬にキスをされた。
「あはは、ボロさんってやっぱりおかしいね!」
「叶、ちょっとラブホまで付き合ってほしい。」
珍しいな、ボロからオレを誘うなんて。
、、、
ボロはベッドに突っ伏してひたすら泣いた。
「私が……私が……。」
晨くんから「女子高生と絶縁させた」とは聞いていたが、こんなにショックを受けているボロをみたのは初めてだ。
「まあ……。お前は若い女が気に食わないタイプだし、いずれこうなるとは思ってた。」
ベッドに腰掛けて頭を撫でた。
「ああ……私は心も醜いからな……人の心を踏みにじる……平気で踏みにじるのだ……。」
目を真っ赤にして泣き腫らすボロに欲情して舌キスする。
ジトーッと舌が絡まりよだれが糸を引いた。
「どうせガキだろ?お前のことなんか忘れるって……なあ、セックスするだろ?」
ボロを抱き寄せて腰に手を回し、耳を喰む。
「ああ……。」
、、、
「……遅かったですね、村雨先生。」
……またあの女の家にいたんだ。
独特な雨上がりのアスファルトのような香りを身にまとって帰ってくる日、間違いなくあの女と接触した。
「二人きりのときは礼二さんと呼べと教えたはずだが。」
後ろから抱きしめられえうなじにキスをされる。
「……理由を教えて下さい。なぜボロさんなんですか?」
私の問いかけを無視するようにスカートの中を弄られる。
「前にも話したはずだ。彼女と私は『フランケンシュタイン博士と怪物』の関係で、切っても切れない関係だ。」
理由になってない。
「なら、他の患者でもいいでしょう!?どうしてあの女なんですか!?」
動きが止まり、ソファに押し倒される。
「理由か?……どうしてだろうな。……私がしてしまった唯一の誤診だからだろうか。」
スカートをずり下ろされ、開脚させられる。
「私だけを愛してください……村雨先生……。」
背中に手を回してキスを繰り返した。
「寂しい思いをさせて済まない。……愛している、可乃。」
今、この時だけは私だけの先生。
私だけのあなた。
「礼二さん……私も愛しています。大好きです。」
、、、
「御手洗さん……私です。夢野愛美です。……おりいってお話があります。」
、、、
「ねえボロさん、これなあに?キラキラしてるね。」
それは、飾り棚の端の小箱に隠していたのに……。
こぶつさんからもらった、大切な香水瓶。
やめて、それだけは
「ガラスだね、あ……手が滑っちゃった。」
「ごめんね?壊れちゃった!新しい香水瓶を買ってあげるから、ボクを許して?」