オリジナルデスギャンブル『夢から醒めた夢』
『The Awakening Dream』
敗者は死亡する可能性がある。ハーフライフ〜ワンヘッド相当。
ペナルティは麻酔ガス(発狂死)。
一対一。
プレイヤーは想い人との恋の成就を目的とする。
プレイヤーは先攻後攻で役割を入れ替える。
【プレイヤー】
先攻後攻で役割を決める
3セットのうち、一度は被りなく割り振らなければならない
(一度もドロッセルマイヤーを選択しないは出来ない)
少女:クララ、金平糖の女王
クララはドロッセルマイヤーが想い人である
金平糖の女王に想い人はいない
くるみ割り人形:ドロッセルマイヤー、甥
ドロッセルマイヤーは金平糖の女王が想い人である
甥に想い人はいない
セットを跨いでも少女、くるみ割り人形のPは引き継がれる
『共通ポイント』
恋の病P:初期値11P
恋の病を11抱えている、告白を失敗するごとに-1P
0Pになると恋に敗れて敗北する
秘密P:初期値7P
相手プレイヤーから秘匿される
プレゼントP:初期値0P
負債P:恋の病以外で「引かれるべき数値がない時」にその数値分だけ+1P
15Pを超えるごとに恋の病P-1P
『少女』
お菓子P:初期値3P、5Pごとに秘密Pに変換可能
『くるみ割り人形』
銃剣P:初期値3P、5Pごとに秘密Pに変換可能
【5色のカード】
カードはお互いに指定した後、同時に公開する
以下の効果に加えて、n巡目の最初にポイントを0P、1P、3P、5P、7Pと被りなく割り振る
緑:木の役目、nP
『相手』
緑では、nP分のお互いのP加算(お菓子P、銃剣P)
赤では、赤の効果を2倍にする
黒では、黒の効果を無効化する
金では、金にカード分のPを捧げる
白では、白のカード分のPを奪う
赤:火の役目、nP
『相手』
緑では、緑のカード分のPを奪う
赤では、nP分のお互いのP減算(お菓子P、銃剣P)
黒では、黒の効果を2倍にする
金では、緑の効果を無効化する
白では、白にカード分のPを捧げる
黒:土の役目、nP
『相手』
緑では、黒のカード分のPを捧げる
赤では、赤のカード分のPを奪う
黒では、次ターンを1つ戻る(③→①)
金では、金のカードの効果を2倍にする
白では、白の効果を無効化する
金:金の役目、nP
『相手』
緑では、緑の効果を無効化する
赤では、赤にカード分のPを捧げる
黒では、赤のカード分のPを奪う
金では、nP分のお互いの負債P加算
白では、白の効果を2倍にする
白:水の役目、nP
『相手』
緑では、緑のカードの効果を2倍にする
赤では、赤の効果を無効化する
黒では、黒にカード分のPを捧げる
金では、金のカード分のPを奪う
白では、次ターンを1つスキップする(①→③)
【NPC】
『ネズミの王様』
ライフP:27P
銃剣Pでしかマイナスにならない
『道化師たち』
ライフP:27P
お菓子Pでしかマイナスにならない
【ターンの流れ】
1巡目と二巡目を1セットとし、1セット毎に先攻後攻と役割を入れ替える
①金平糖とくるみ割り人形のダンス:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
クララなら秘密P-nP
金平糖の女王なら秘密P+nP
くるみ割り人形側:
ドロッセルマイヤーなら秘密P+nP
甥なら-nP
②花のワルツ:
5色のカードを効果として利用する
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カードの効果を使う
対象P:秘密P
自動追加
少女:お菓子P×2倍の秘密P取得
甥:銃剣P×2倍の秘密Pを取得
③キャンディケーキ:
以下選択肢から選択する
少女側:
A:秘密P7Pと引き換えにプレゼントP+1P
B:秘密P1Pと引き換えに相手プレイヤーの秘密P-1P
C:お菓子P1Pと引き換えに相手プレイヤーの銃剣Pを-1Pまたは+1P
くるみ割り人形側:
A:秘密P7Pと引き換えにプレゼントP+1P
B:秘密P1Pと引き換えに相手プレイヤーの秘密P-1P
C:銃剣P1Pと引き換えに相手プレイヤーのお菓子Pを-1Pまたは+1P
④道化師たちとの戦い:
道化師たちを倒している場合はスキップする
道化師たちは少女の恋の病Pを1つ奪う
以下選択肢から選択する
少女側:
A:くるみ割り人形にお菓子P分の銃剣Pを渡す
B:お菓子Pを7つ差し出して自分の恋の病Pを奪わせない
C:お菓子P11Pごとに道化師たちのライフを-1P
くるみ割り人形側:
A:少女に銃剣P分のお菓子Pを渡す
B:銃剣Pを7つ差し出して相手の恋の病Pを奪わせない
C:銃剣P20Pごとに相手の恋の病Pを1つ奪う(裏切り)
⑤アーモンドタルト:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
相手から選択された自分のカード分のお菓子P加算
くるみ割り人形側:
相手から選択された自分のカード分の銃剣P加算
その後、以下を行う
互いが指定したカードの効果を使う
対象P:お菓子Pおよび銃剣P
⑥トレパック:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
相手から選択された自分のカード分のお菓子P加算
くるみ割り人形側:
相手から選択された自分のカード分の銃剣P加算
その後、以下を行う
互いが指定したカードの効果を使う
対象P:お菓子Pおよび銃剣P
⑦アジアンティー:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
相手から選択された自分のカード分のお菓子P減算
くるみ割り人形側:
相手から選択された自分のカード分の銃剣P減算
その後、以下を行う
互いが指定したカードの効果を使う
対象P:お菓子Pおよび銃剣P
⑧コーヒー:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
相手から選択された自分のカード分のお菓子P2倍減算
くるみ割り人形側:
相手から選択された自分のカード分の銃剣P2倍減算
その後、以下を行う
互いが指定したカードの効果を使う
対象P:お菓子Pおよび銃剣P
⑨チョコレート:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
相手から選択された自分のカード分のお菓子P2倍加算
くるみ割り人形側:
相手から選択された自分のカード分の銃剣P2倍加算
その後、以下を行う
互いが指定したカードの効果を使う
対象P:お菓子Pおよび銃剣P
⑩お菓子の国:
5色のカードを効果として利用する
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カードの効果を使う
対象P:秘密P
自動追加
金平糖の女王:お菓子P×2倍の秘密P取得
ドロッセルマイヤー:銃剣P×2倍の秘密Pを取得
⑪ねずみの王様の戦い:
ねずみの王様を倒している場合はスキップする
ねずみの王様はくるみ割り人形の恋の病Pを1つ奪う
以下選択肢から選択する
少女側:
A:くるみ割り人形にお菓子P分の銃剣Pを渡す
B:お菓子Pを7つ差し出して相手の恋の病Pを奪わせない
C:お菓子P20Pごとに相手の恋の病Pを1つ奪う(裏切り)
くるみ割り人形側:
A:少女に銃剣P分のお菓子Pを渡す
B:銃剣Pを7つ差し出して自分の恋の病Pを奪わせない
C:銃剣P11Pごとにねずみの王様のライフを-1P
⑫少女とくるみ割り人形のダンス:
5色のカードをポイントとして利用する(効果無し)
互いにカードを伏せ、互いが指定した相手カード分のポイントを使う
少女側:
クララなら秘密P+nP
金平糖の女王なら秘密P-nP
くるみ割り人形側:
ドロッセルマイヤーなら秘密P-nP
甥なら+nP
⑬クリスマスツリーの下:
以下選択肢から選択する
少女側:
A:秘密P7Pと引き換えにプレゼントP+1P
B:秘密P1Pと引き換えに相手プレイヤーの秘密P-1P
C:お菓子P1Pと引き換えに相手プレイヤーの銃剣Pを-1Pまたは+1P
くるみ割り人形側:
A:秘密P7Pと引き換えにプレゼントP+1P
B:秘密P1Pと引き換えに相手プレイヤーの秘密P-1P
C:銃剣P1Pと引き換えに相手プレイヤーのお菓子Pを-1Pまたは+1P
アポテオーズ:
『1巡目』
少女側がくるみ割り人形に告白が可能、しなくてもよい
少女が以下のいずれかの条件を満たして、少女がクララで、且つくるみ割り人形がドロッセルマイヤーであれば少女の恋が成就して少女側のプレイヤーが勝利する
勝利条件(or)
①プレゼントPが27P
②お菓子Pがセット&ロール跨ぎ累計255P
③道化師たちを倒している
『2巡目』
くるみ割り人形側が少女に告白が可能、しなくてもよい
くるみ割り人形が以下のいずれかの条件を満たして、くるみ割り人形がドロッセルマイヤーで、且つ少女が金平糖の女王であればくるみ割り人形の恋が成就してくるみ割り人形側のプレイヤーが勝利する
勝利条件(or)
①プレゼントPが27P
②銃剣Pがセット&ロール跨ぎ累計255P
③ねずみの王様を倒している
「眞鍋先生、おはようございます。」
先生がクルッと振り返って「おはよう。」と会釈してくれる。
そして耳打ちされる。
「放課後、保健室に。」
うれしい。
……私は眞鍋先生と内緒の関係。
「ねえ成果ちゃん、今日抜き打ちテストだって!最悪だよね!?」
彼女は親友の愛美ちゃん。
明るくて天然で少しだけドジっ子だ。
「そうなんだ……嫌だな。」
私は勉強が苦手だ。
計算が早いから数学のテストは誰よりも早く解き終わって、繰り上がりの凡ミスをしてテストは赤点ばっかり。
筆者の気持ちを答えるのだけは得意だからそれだけはいつも花丸だけど。
「……ね、成果ちゃん……眞鍋先生とは何処まで行ったの?手、繋いだ?」
やめてよ、もう。
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
「……秘密。先生とは……何でもないから。」
「先生?■■さん、□□さんのことを言ってるの?」
うるさいな。
、、、
「眞鍋先生……あの……。」
夕日が保健室のカーテンから射し込んで壁に陰影を落とした。
「座って、加知 成果さん。」
ベッドに座った眞鍋先生がポンポンとマットレスを叩いた。
「はい……。」
ドキドキする。
こうやって眞鍋先生と二人きりで映画をみると、私だけが特別な存在になったんだと錯覚する。
「成果……新しい午後ローコレクションはないのか?」
慌てて再生プレイヤーを止めて、段ボール箱をひっくり返す。
あれ、なんで一本もないの?
ここにしまったはずなのに、なんで?
「眞鍋先生、待っててください。すぐに探しますから。」
先生がソファから立ち上がった。
「成果は■■……というより、■■……だな。」
待って、先生。
私を見限らないで。
「眞鍋先生、待ってください。私、良い大人になりますから。」
先生は振り向かずに繁華街の人混みに消えてしまった。
「待って……置いていかないで……。」
「■■さん、ボクはここにいるよ?」
、、、
「誰かっ助けてぇ……」
声のする方に走っていくと、こぶつさんが男に襲われていた。
「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね」
包丁で何度も男を刺すと、男の皮膚がどろどろと溶けて中から可乃さんが現れた。
「痛い……酷い、■■さん……どうして私を殺すの?」
違う、私はやってない、私は違う。
「お前が□□先生を私から奪った……殺してやる。」
血まみれの可乃さんに首を絞められる。
「助けて……苦しい……眞鍋先生っ……」
「□□さんは助けに来ないよ、家に帰ったから。」
、、、
「大変でしたね。」
シスターが私の頭を撫でてくれる。
「怖かった……私、人に迷惑をかけたかもしれなくて……」
手が止まり、気づくと自分の身体に無数の男たちの手が絡みついている。
「助けて……」
シスターが顔を上げると、ゲーム制作者の悠丹さんだった。
「あなたは私を助けてくれなかったじゃない、なんで自分だけ助かろうとしてるの?」
違う、私は助けようとした。
……したよね?
「私は……私は……」
「■■さんだよ。」
、、、
私の身体は泥だらけで、誰も私に気づいてくれない。
「誰か……私はここにいます。」
手を伸ばしても「邪魔」「汚い」と払いのけられる。
泥は次第に固まってヒビ割れて激痛が走る。
懐かしい足音がする。
「先生、眞鍋先生ですか?」
瞼に土が入って視界が濁っている。
「私だ。」
……誰、違う、眞鍋先生じゃない。
「私を忘れたのか?」
知らない、誰だよ……お前は。
「□□先生のこと、好きなの?」
、、、
気づくと保健室のベッドで眠っていたみたいだ。
「おはよう、成果さん。」
眞鍋先生が頭を撫でてくれる。
「ほら、うさぎだ。」
先生の腕からうさぎが飛び出した。
……知らない、このうさぎは私のうさぎじゃない。
見上げると、眞鍋先生は真っ黒い影になっていた。
「あなたは……誰なの?」
「■■さん、どうしたの?ボクは□□□、□□□□だよ?」
知らない。
「ボロさん大丈夫?汗びっしょり……悪い夢でも見たの?」
目をやると、真経津が心配そうな顔をして覗きこんでいた。
「今も。」
腕に爪を立てると痛みがあり、出血した。
「具合悪いの?村雨さんを呼ぶ?」
立ち上がると立ちくらみで倒れそうになり、真経津に抱きかかえられる。
「すごい熱……村雨さんを」
スマホを取り出そうとする手を掴んだ。
「シャワーを浴びて寝れば落ち着くさ。」
シャワーを浴びる最中も真経津はぴったりと隣についた。
「真経津、狭いから。」
腕に腰を掴まれる。
「ボロさん、倒れそうで心配だから。」
違うだろ?
……自決しないか、自壊しないか、見張ってるんだろう?
「そうか……ありがとう。」
真経津は頭を肩に乗せた。
「ボロさん、ボロさんは……ボクのこと、好きだよね?」
……。
「ああ、大好きだ。真経津。……お前はいい子だな。」
どうでもいい。
。。。
「『The Awakening Dream』で、共闘してやろうじゃないか……相手の少女に銃剣Pを引き換えにお菓子Pを与えてやろう)」
また真経津と対峙するとは……。
こいつとは意思疎通が出来ない。
いや、出来なくて構わない。
ゲームにただ勝てばいい。
そのためなら共闘もしてやろう。
……目的は告白を成功させることだ。
今までの動きからおそらく、真経津側の少女はクララだ。
「えーいいの?もしかして、ボロさんはドロッセルマイヤーさん?」
。。。
「で、どう感じた?」
彼女の映画解釈語りは今日も行われた。
「yン・シュヴァンクマイエルのファウストか。……あなたは映画通と言ってほしいのか?劇場に取り込まれた哀れな男、運命に目をつけられた……でいいか?」
彼女は冷蔵庫から牛乳パックを取り出して卵黄と一緒にミキサーにかけた。
「私の解釈は少し違う。あれは普遍な日常だ。誰もが送る日々。」
そう言いながら小麦粉が入ったボウルに液体を流し込んだ。
「あの木の人形が運命を示すのではないのか?」
フライパンに油を薄く敷き、液体を垂らす。
「別に……あの男でなくてもよかったんだ。」
菜箸で円状になった生地をひっくり返した。
「あの男が選ばれたのだろう。」
焼き上がった生地をポイと皿に投げては同じ動作を繰り返した。
「あの男は「役」を演じただけだ。だから次の男が劇場に入る場面で終わる。男は「あの男という役」の人生を選ばなければならなかった。」
一通り動作が終わると食器を洗い始める。
「どちらにしろ同じではないか。」
洗い終えると皿を手に持ってソファに座った。
「……そうかもな。」
。。。
「こんにちは。あなたもギャンブラーですか?」
カラス銀行の賭博場に続く廊下を歩くと、見知った顔に声を掛けられた。
瑚太郎さん、やっぱりギャンブラーだったんだ。
「こんにちは。はいそうです。ボロと言います。あなたはハーフライフ?ワンヘッド?」
彼はニコッと口元を緩めて握手を求めた。
……瑚太郎さんがハーフライフ以下なわけがない。
ワンヘッドで何人も葬り、特別な権限を既に取得し会得師ているのだろう。
差し出された手を握ると、強い力で握り返された。
「よろしくボロさん。僕は眞鍋瑚太郎。」
そのまま手を引かれそうになったとき、肩を掴まれて逆方向の力が働き板挟みになり膠着した。
「……ボロ大先生、知り合いならば紹介しろ。」
医者か。
「え?知らない人、たった今知り合いになったが。」
肩を掴む力が強くなり、痛い。
「……話を逸らすなな。心拍数と発汗等の心体的緊張からあなたの嘘は分かる。」
医者は私のメンテナンスをするようになってから、距離感を間違えるようになってきている。
彼は妻帯者だ、匂い付けだのなんだのに構っている暇はない。
「恐らく彼は教職者だ。だから緊張したのだろう。」
横目で瑚太郎さんを見るとハハッと笑った。
「その通り。僕は教職者だ。それでは失礼します。」
目線を戻すと、医者が何か言いたげな目をしていたが、特に説明する必要はない。
関係を持っている真経津にすら言う必要がない。
彼は私を所有物としているのだから。
「そういえば、真経津がワンヘッドに昇格したんだって?」
、、、
「久しぶりだな、成果。」
自室に戻ると、瑚太郎さんが布団の上に座って寛いでいた。
「はい、瑚太郎さん。今年瑚太郎さんが来る前にうさぎが死にました。」
毎年一回、瑚太郎さんは私の部屋を訪れていた。
「そうか、たった13年で死ぬとは飼い主がダメだったな。」
『うさぎを適切に飼っているか』という名目で。
「そうですね、私は双極で更に頭が足りないもので。可哀想なことをしました。」
瑚太郎さんがキッチンに置いたティーパックをカップに入れてお湯を注ぐと甘い香りがして吐きそうになり、鼻を腕で塞ぎながら茶菓子と共にトレイにのせてちゃぶ台に運んだ。
「それで、今は彼とセックスしているのか?」
カタリとトレイを置いて正座する。
「いえ。セクハラされるようになりましたが、愛撫に至らず、本番もしていません。彼は妻帯者なので。」
彼は立ち上がって腕を引いた。
「他の男とセックスしているな?」
名前を出さないが、既知の情報だろう。
「はい。」
腕を引かれて布団に座らされる。
「具合はどうだ?」
真経津は遊びの一環として性行為をしているに過ぎない。
「たいして。特段言うことはありません。」
背中に手を置かれ、私はそのまま彼にもたれ掛かった。
「彼以外とも不純異性交遊をしているな?」
不純……今のところは真経津……医者のセクハラをカウントした場合……。
「はい。瑚太郎さんならご存知でしょう。」
背中から回された手がパーカーの中に入り込んだ。
「お前は立派な大人に成れなかったな、成果。」
。。。
。。。
彼とのファーストコンタクトで、強姦魔を殺害しようとしたのを止められて腹を蹴ろうとしたが否されて手首を捻り上げられ、声を上げてしまった。
「だ、誰だっ!?」
強姦魔が気配に気づいて振り向くと、彼はひたすら強姦魔を蹴り上げて絶命させてしまった。
「君、悪いことはしてはいけないよ。」
そう振り返って私に注意をすると、被害者の女性には目もくれずスタスタと歩み寄ってきた。
「名前は?」
「加知 成果です。」
、、、
「すみません。映画コレクションは獅子神の家に置いてしまっているため、ありません。」
覆いかぶさる彼に事実を述べた。
「うぶな演技か?」
今更……
「まさか。瑚太郎さんのルーティンから外れる事象があるというだけです。」
瑚太郎さんの舌、唇、指が身体をなぞるたび、身体は『女として』正しく反応を示した。
「そうか、成果が男女の駆け引きを覚えるわけがなかったな。」
、、、
「たいして教育されてないな、成果。」
上に乗りながら頬を撫でる。
「いえ、彼らは必死で教育しているつもりです。」
腰の動きに合わせて自分も動く。
「成果の取り扱いは難しいからな。そろそろ女になれ。」
「分かりました。……あぁん。」
、、、
ことが済むと、瑚太郎さんは壁を背にして胡座をかいて、そのすき間に私を座らせた。
「次のワンヘッド戦の前に番候補に『仕込み』をした。何か分かるか?」
番候補……恐らく同じ教育者……まだ悪意に染まっていない。
新人教師。
仕込みならば、孕ませることを想起させる。
……しかし、瑚太郎さんはそんな単純なことをしない。
「好意の種まきをした。」
頭をコツンと叩かれる。
「抽象的過ぎる。具体的に答えろ。」
好意の種まき、瑚太郎さんに全幅の信頼を寄せる。
……一度恐怖体験をさせ、それを救ったのか。
「暴漢に襲わせ、救った。」
また頭を叩かれた。
「人が相手を信じる要素は?」
信じる……自分が確実に相手を理解したとするとき。
「あ、わかりました。自作自演をした。」
瑚太郎さんにしては回りくどい。
「正解だ、成果。どうやったか分かるか?ヒントは写真だ。」
写真……教育者ならば年中行事の写真を必ず撮影され、データが保管されている。
「行事の写真を張り合わせてストーカーがいると思わせる。……ストーカー役になるんですか?」
瑚太郎さんはギュッと私を抱きしめる。
「個人サイト。後は分かるな?」
個人サイト……特定のIPアドレスからしか閲覧できないストーカーサイトを用意した。
サイトならワンヘッド戦で勝利した場合消去できるが、魚拓は残るはず。
「閲覧権限。」
つまり、瑚太郎さんは情報を隠蔽できる権限を持っている。
「どうやって番候補に気付かせると思う?」
ただ、後から気づかせるとなると……。
ストーカー役、写真……。
なるほど。
「写真に特定の日付または特定の物をに目が行く構図を入れて自席に忍ばせた。アナログなら直ぐに証拠を消せる。それを特定の事柄に紐づけ出来るようにしてある。」
頭を撫でられた、正解か。
「成果にしては上出来だ。」
、、、
「やはり眞鍋とかいう男と知人だったな?性交したと臭いで分かる。」
医者がいつになく不機嫌そうな顔をしている。
「ああ、ミステリアスな雰囲気に惹かれてワンナイトラブを誘ってみた。」
腕を曲げてやれやれというポーズをとると、腕をつかまれ強く握られた。
「……ボロ大先生の初恋相手か?」
初恋ねえ……恋だったら、どんなに……。
「さあな。」
。。。