※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

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End.F'〜N

 

「ま、マイクロチップ?」

 

 ワンヘッド戦に臨む前にそんな事実を知ることになるとは。

 スマホにGPSアプリでも入れられているのかと……。

 だから医者だけはスマホの電源を切っていても居場所を探し当てられたのだな。

「……まさか非同意か?てっきり同意の上で緊急時のためかと……。お前はツギハギで不安定で治療のため……。」

 牙頭オーナーが絶句している。

 無理もない。

 当人の私も理解出来ていないのだから。

「……ボロちゃんに直ぐに新しい新居を……あ、そうだガッちゃん、ボロちゃんをしばらく住まわせてあげて?通勤もボロちゃん一人だと危ないから。」

 ……それは、牙頭オーナーに迷惑がかかる。

「ああ、当然だ。ボロはオレと一緒に住むの嫌か?」

 違う、違うが。

「あの……流石にご迷惑になりますから。」

 そう言うとバチッと両肩を叩かれる。

「今更迷惑とか水臭いことを言うんじゃねえ!!」

 ……涙が止め処なく……。

「……ボロちゃんの通帳とか身分証明とかはある?それとも村雨か天堂が持ってるの?」

 優しさが苦しい。

「……ぅっ……保険証……は医者が……。」

 大人が泣いてはいけないのに。

「……そっか、、後は僕たちにまかせて。」

 背中をポンポンと叩かれて嗚咽してしまった。

「ボロ、今日はオレの部屋を紹介がてら休め。早く空き部屋をつくらねえとな。」

 牙頭オーナーに腕を組まれて引きずられる。

「でも……いいんですか?私がいたら恋人の方が……」

 上司でもある成人男性の厄介になるわけにはいない。

「……お前がオレの恋人になってもいいんだ。……だがな、お前には選択の権利がある。まず休め。」

 選択の権利……。

 

「はい……ありがとうございます。」

 

、、、

 

「ボロは料理が下手くそだな!皿洗いにもどすぞ!」

 

 牙頭オーナーは自炊するタイプだったようで、交代で料理を作り、その他の家事は私が担当した。

「えへへ、すみません。」

 そう頭を掻くとポンと頭を撫でられる。

「……すっかり顔色がよくなって安心した。なんだか漁夫の利みたいになっちまったが、諸々が片付いたらデートに行くか。」

 ……デート?

「あの……その……」

 顔から火が出るように熱い。

「オレが相手だと不満か?」

 そんなことは……。

 

、、、

 

「ドライヤーはちゃんと当てろ!!」

 

 牙頭オーナーは私の面倒を甲斐甲斐しく見てくれた。

「……服を着るのも大変だったんだな。万歳しろ。」

 私を玩具にすることもない。

 ソファに座って抱き寄せられているのに、緊張とは裏腹に何もされない。

 する価値がないから?

 女として見られないから?

「少しは男……オレを頼ることを覚えろ。」

 いいのだろうか、他人を頼ってしまって。

「女として扱われるようになれば自分が価値ないものだと二度と思うことはねえだろうよ。」

 駄目だ。

 牙頭オーナーに言われると全幅の信頼を抱いてしまう。

 

「ボロ、お前はオレにとって…オレ必要な存在だ。」

 


 

 牙頭オーナーが帰って来たようだ。

 

 酔っ払っているのか、私に割り当てられたベッドに潜り込んできた。

 ……レ◯プされる?

 身を強張らせたが、牙頭オーナーは腕を回しただけで寝息を立てた。

 お酒の匂いと整髪料の匂い……そして牙頭オーナーの匂いがする。

 

、、、

 

「悪い……。」

 

 牙頭オーナーは起きるなり頭を下げた。

「いえ、酔っぱらってベッドを間違えることくらいありますよ。」

 笑ってみせると、真剣な目つきでこちらを見た。

 その鋭い眼差しで見つめれたら……私は……。

「下心があって、わざと入った。」

 全ての言葉を聞き終わる前に牙頭オーナーに抱きついてキスをした。

 舌が絡まるたびにクチュクチュという下品な音がして、脚を腰に巻き付けて息継ぎを忘れてキスをねだった。

「待て……こういうことはハッキリさせてからだ。」

 身体を引き剥がされて、眼と眼が合う。

「オレの女になるか?……成果。」

 ゴクリと唾を飲み込んだ。

「はい……牙頭オーナー……。」

 目線が下に落ちる。

「お前……そんなに待てねえのか。」

 部屋着のショートパンツから愛液が染み出て太ももを伝った。

「牙頭オーナー……見てください……。」

 私はショートパンツと下着を脱いで開脚して割れ目を開いてみせた。

 自分の指を中に入れると、牙頭オーナーの呼吸が荒くなったのが分かる。

 オナニーなんてしたことないのに。

 牙頭オーナーに見られているだけで………

「あぅ……イく……牙頭オーナーぁ……」

 私が喘ぎ声を出すと、逞しい腕に抱きしめられた。

「……っふぅ……抱きつぶしていいんだな?成果……。」

 耳打ちされただけで腰がカクカクと動いた。 

「はい……牙頭オーナー……」

 また眼が合った。

 発情した獣のような瞳。

 熱い舌が首筋を這い周り、熱いモノがグプグプと侵入してくる。

 

「……お前はオレの女だ……成果。」

 

end.F' 『懐柔』

 


 

「……獅子神、助けてくれ。」

 

 藁にもすがる思いで獅子神の袖を引いた。

 獅子神は不機嫌になって手を振りほどいた。

「お前はギャンブラーだろ?……抵抗できたろ。」

 ……そうだな。

 成人男性五人を殺害するのは容易いことだ。

「というのは冗談だ。夕飯は職場のまかないを食べるから要らない。」

 獅子神は「ハァ……」とため息をついて何か言おうとしていたが、小言を言われる前に退散した。

 

、、、

 

「お疲れ様でしたー!!」

 

 今日も牙頭オーナーは来なかったな。

 ……そうそう代表取締役が現場に顔を出すことのほうが珍しいので、不在は当たり前だが。

『プライベートなことでもいい、話せ。』

 甘えたことを考えてしまった。

 牙頭オーナーも漆原弁護士もギャンブラーだった。

 私の置かれている状況に口出ししたり、手を差し伸べる義理などない。

 

、、、

 

 帰り支度を済ませて従業員入り口を出ると肩を掴まれた。

 

「ボロ、顔貸せ。」

 

 牙頭オーナーの外車の助手席に詰め込まれる。

 怖い。逃げ出したい。

「お前の友達っていう女子高生がオレを訪ねて来た。」

 ……愛美ちゃんが?

 なんのために?

 ……医者との不貞をバラして解雇させるため?

 脂汗が出て、身体が冷えていく。

 

「アイツらとはまだ『仲良し』か?」

 

 ……どういう意図だ?

 ……仲良く乱交しているか?という……。

 吐きそうだ。

「……はい。」

 牙頭オーナーがこちらを向いた。

「……首だ。」

 ……泣きたい、もう嫌だ。

 目をつむるとパーカーの襟刳りをグイッと引かれて牙頭オーナー側に蹌踉めいてしまう。

「これは合意か?合意の上か?」

 痕を見られた?

 ……死にたい。

「……はい。」

 恐怖で震えが止まらない。

「今から伊月のところに行く。しばらくお前は伊月の世話になれ。」

 ……それって、どういうことだ?

「ゴタゴタが片付くまでは出勤停止だ。しばらく休め。」

 

、、、

 

「よく来たね、ボロちゃん。……もう何も心配しなくていいからね。」

 

 漆原弁護士が肩を抱いて部屋に案内してくれた。

 部屋は広く、デザイナーズ家具がデタラメに配置されたrッキーホラーショーのようなトンチキで悪趣味な内装をしていた。

「あの……私は……私はどうしたらいいのですか?」

 何をすれば存在を許して貰えるのか、分からない。

「しばらくは秘書として働いてもらいたいかな。ボロちゃん、法律系の知識あるでしょ?」

 私なんかが秘書?

「人手が足りなくて困ってたからさ。……濡れ手に泡かな。」

 コーヒーを不気味なデザインのコップに入れて出してくれる。

 いいのかな、私が……。

「ボロちゃんは僕と暮らすの不安かな。防犯上、同棲した方がいいから。」

 ……。

「ご迷惑をおかけして……申し訳ありません。」

 涙が止め処なく流れる。

 

「ボロちゃんは一杯頑張ったから……たまには自分にご褒美をあげなきゃダメだよ。」

 


 

 漆原弁護士の秘書となり、事務所で働き始めたが皆親切だった。

 一から仕事を覚えるのは厳しくもやり甲斐があった。

 そしてなによりも……。

 

「漆原先生……ご褒美ください。」

 

、、、

 

「成果ちゃん……服、自分で脱げるかな。」

 

 言われた通りにシャツのボタンを外していく。

 自分で胸を揉んで何とかアピールしてみる。

「偉いね。……おねだりしてごらん。」

 漆原先生に耳元で囁かれて下着がびしょびしょに濡れてしまった。

「漆原先生……いやらしい私にお仕置きしてください。」

 スカートを捲りあげて下着をずらして開脚する。

「もうこんなになっちゃったんだ、成果ちゃんはセックスのことしか頭にないのかな?」

 細く長い指が割れ目にピトッと置かれた。

「うぅ……意地悪しないで……」

 先生の腕にしがみついて股をこすりつけて絶頂してしまう。

「成果ちゃん、挿れてほしい?」

 息が耳にかかる。

「欲しいです……先生の……欲しいです……」

 ブラジャーをずらして先生の腕を胸で挟む。

「ちゃんと言って?何が欲しいの?」

 分かってるくせに……胸が苦しい。

「漆原先生のお◯ん◯んが欲しいです。」

 先生は私を腕から引き剥がすと、指を腟内に入れた。

「あぁんあっ、先生ぇっ先生っ、イくイきますぅ……」

 身体を仰け反らせて潮吹きしてしまった。

「指だけでイっちゃた?成果ちゃん……本当に欲しいものじゃなくても満足しちゃうのかな?」

 サラサラとした長い髪が肌に当たるたびに快感で頭が真っ白になる。

「ごめんなさいっごめんなさいっ……気持ちよすぎてっ……イくっ……欲しいのに……」

 

「……もう何も考えなくていいから安心してね。成果ちゃん。」

 

end.G 『剥奪』

 


 

 初めて『一方的な搾取ではない合意の愛を確認するための性交渉』を体験した。

 

 私は恩人でもある漆原先生と牙頭オーナーのためなら何だってする。

 

「成果ちゃん、ガッちゃんに突かれるの気持ちいい?」

 漆原先生のモノをフェラチオしながらバックで腰を打ちつけられて失神しそうになる。

「あんっ、きもちいっ、きもちくてぇ……ふぇらがあっ」

 パチュパチュと激しく抽挿されて潮吹きしてしまう。

「成果、ちゃんと伊月もイかせやれよ。」

 フェラチオをしたくても、気持ち良くて

「あぁんあぁんきもちぃきもちぃですぅ……きもちぃから」

 意思が……飛ぶ。

 

「出すぞ、成果。」

 

、、、

 

 3Pセックスというご褒美を貰って快感の余韻に浸っていると、漆原先生が映画をつけた。

 

「成果、セックスしながら受け答えできるか?」

 頑張らないと……。

「はい、頑張りまぁんっ、まって、あぅまってくらさいぃ」

 漆原先生に後背座位で胸を弄られながらモニターを必死に見る。

「ねえ……ボロちゃん、pラサイトについて感想を教えて?」

 ボロ、久々に……その名前で呼ばれた。

「はい、漆原先生ぇっ……あんっあうっあ同じ人種でありながらぁっ貧富ぅっひいてはぁはあっ育ちがっ、ちっ地上か半地下っかぁでぇっ身分をおっおっ深いぃ、はあっあん決定されるぅ……イくっ……自己の努力ではぁ……どうしょうもぉ……ないっ……あんっあんっ憤りを抱えてぇっ……またイくぅ……はあっ……あの凶行に出てぇ……半地下の家族がぁインディアンのぉ装いをす……」

 ……。

「どうした?ボロ。」

 ……嘘だ。

「わ、私はなんて取り返しのつかない道を……。」

 これではまるで、私は女として飼われている、以前までの状況と何ら……いや、むしろ

「ボロちゃんには難しかったね……また気持ちよくなって忘れようか。」

 バチュンと子宮口を突き上げられた。

「か、帰りましゅ、帰りますぅ」

 必死に腕から離れようとしても、二人の成人男性に抑え込まれては……太刀打ち出来ない。

 

「帰る?何を言ってんだボロ。お前の家はここだ。」

 

end.G' 『飼育』

 


 

「ワンヘッドとして……ヘッグスメダルを使いたい。」

 

 土屋田はその言葉を待ってましたとばかりに特別業務部六課の荒川と桃園を呼んだ。

「……その権利を行使する。」

 

、、、

 

 私は『第3種失踪権』を得た。

 

 カラス銀行からは常に所在を把握され、ワンヘッド戦を組まれた場合には出向くという形。

 つまり、賭博場以外の日常を全身整形をした「別人」の姿で残りの余生を暮らす事ができるのだ。

 新しい住まいはあえて近場にした。

 失踪するとき、遠くに逃亡するより「あえて近い場所」に身を隠すことで目眩ましができる。

 金ならハーフライフ戦で稼いだ金額が幾らか残っているから、贅沢をせず今までどおりの生活なら次のゲームまで潤沢過ぎるほど保つだろう。

「私は自由になったのだ。」

「ボロさんって貧乏性は変わらないんだね。」

 ……。

 恐る恐る振り返ると、彼らがいた。

「……どちら様でしょうか……尋ねる部屋を間違ってますよ?」

 首を傾げて顎に手を置いた。

「ボロ、しばらく見ないうちに雰囲気変わったな。」

 ……。

 雰囲気だと……?

 顔の輪郭も、瞼も、髪色、瞳の色も何もかも違うだろうが。

「あの……すみません、人違いだと……思います。」

 髪を耳に掛け、目線を下にして指を弄る仕草をする。

「あなたはマヌケだな、重心のズレによる歩き方の癖は変えられなかったか。」

 ……ブラフだ。

「うぅ……なんなんですか?警察の人……呼びますよ?」

 涙を溜めて唇に緩く握った拳を置いた。

「ずいぶん近場だな、別荘扱いか?ちゃんとした新居探しなら手伝うぞ?ブスババア。」

 ……。

 落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け

 陽動だ、これはカマをかけている。

「怖いっ……警察、警察っ……」

 クソ……御手洗か?行員が個人情報を漏らすんじゃねえ。

 手首を天堂に掴まれた。

「珍しい方ですね……裏稼業……王罰組の電話番号を連絡先に入れるとは。」

 ……繋がった。

「す、すみません、怖い人たちに囲まれててぇ……お金は出すので助けてくださいっ」

「……またアンタか……トラブルはゴメンだ。」

 ……切った……?

「もしかして、ブスババア……カラス銀行がヤー公とズブズブなの……分かってないのか?」

 ……は?……は?

 

「ボロさん、疲れてるなら別荘より温泉にいこう?」

 

end.H『無効』

 


 

「君のハーフライフ戦、無しにしたから。」

 

 ジョイキッチンの閉店時間になるなり、メイド服を着た雪村から突然の宣告を告げられる。

「な……それは、無いだろ……取り消しは不可能だ……。」

 決定が覆るなど……あり得ない。

「ま、ボロさんの勇敢なお友達にお礼を言うことだね。」

 どういう……。

「驚いたよ。賭場に乗り込んできて『ボロさんを助けてください!』って絶叫するんだから。」

 愛美ちゃんが……?

 どうして……そんな事をしたって……。

「ワンヘッド『夢喰』……夢野章の娘さんだけある。」

 ワン……ヘッド?

「な……なら、愛美ちゃんは本当に……天才ギャンブラーの愛娘だったのか……?」

 俄には信じられない。

「……これは君と僕だけの秘密だよ?バレたら二人とも現実の首が飛ぶ。」

 ……。

「……ああ。」

 

、、、

 

「……愛美ちゃん。」

 

 愛美ちゃんの部屋の玄関チャイムを鳴らす。

 ……。

 やっぱり帰ろう。

「……ボロさん、来てくれたんだ。」

 振り返ると頬に指を突き刺された。

「……遅いよ!……ボロさんはいっつも遅刻するんだから。」

 ……。

「愛美ちゃ……愛美ちゃん……。」

 思わず抱きしめて泣いてしまった。

「ボロさん、もう大丈夫だよ。……私が居るからね。」

 きつく抱きしめる。

「うん……うん……。」

「あのー……オレもいるんだよなァ……。」

 愛美ちゃんを背にして振り返ると、ギザ歯の……山吹刑事が頭を掻いて立っていた。

「ボロさん!!山吹さんも協力してくれたんだよ!?」

 ……そうだったのか。

「すまない……山吹刑事……お前をただの変態ロリコン刑事だと誤解していた……。」

 山吹に胸ぐらを掴まれた。

「やっぱりテメーは悪党サイドだな……」

 

「もう!!喧嘩しないの!!……おかえり、ボロさん。」

 

end.I 『逃避』

 


 

「……愛美ちゃん、落ち着いて聞いてくれ。」

 

 ……嘘だ。

 ボロさんが死んだ……?

「なんで!?死因は何!!教えてよ獅子神さん!!」

 泣いて腕を揺すっても、それ以上は何も答えてくれなかった。

「……もう会う理由がない……。オレたちに付き纏うな。」

 そう言い残して立ち去ってしまった。

 

、、、

 

 こぶつさんとは連絡を取り続けられたけど、ボロさんの話を振るとはぐらかされた。

 ……友達だったじゃない。

 お揃いのハンカチは?

 一緒に遊んだ思い出は?

 全部無かったことにするの?

 

、、、

 

 しばらく経ってから、ポストに「あなたは当選されました」という怪しくやけに重たい封筒が入っていて、捨てようとした時に表面の「汚れ」に気付いた。

 その汚れに砂をかけると「よくできました、愛美ちゃんは天才だね」と下手くそな字で書かれてあった。

「ボロさんから……?」

 封筒を開けると、通帳と鍵が入っていて、鍵は私書箱のもののようだった。

 預金額は数十億円という見たこともない金額だった。

 

、、、

 

「山吹さん……これ。」

 

 山吹さんは苦虫を噛みつぶしたような顔をした。

「アァ……ったく、……この口座は愛美ちゃんが自由に使える……私書箱にあった印鑑と書類からして……あの女、死後のヒーローになったつもりかよ。」

 私にお金を遺してくれたの?

 どうして?

「ハァ……なんで村雨なんかに挑むかなァ……。」

 ……村雨?

「山吹さん、村雨さんとボロさんって……」

 山吹さんはハッとした顔をしてバツが悪そうに頭を掻いた。

「何でもないからな。」

 

 ……真経津さんは、ボロさんと村雨さんは浮気してるって言っていた。

 でも、ボロさんは村雨さんに対して好意を抱いてなかった。

 ……ならボロさんは、汚名を着せられて……それを苦にして自殺したんじやないの?

 絶対にそうだ。

 ……許せない。

 このカラス銀行の通帳は……引き落とししか出来ない。

 ……賭博口座だ。

 ボロさんもギャンブラーだったんだね。

 だから私を突き放したんだ。

 ボロさんは私を守ってくれた。

 

 今度は私が……ギャンブラーとして仇討ちしなきゃ。

 村雨礼二を、私が殺す。

 あの世に送ってやる。

 

 お守りの鈴がパチンと弾けて割れた。  

 

end.J『踏襲』

 


 

「……はぁっ……はぁもう無くなったようだ、終わったな。」

 

 もう、いいだろ。

「まだだ。」

 お前は中出しするような無責任な奴ではない。

「んっ……終わった。」

 箱にはもう何もない。

「まだだって言ってんだろ。」

 最初から、何もなかったんだ。

 私と彼らの間に情などはこれっぽっちもなかった。

 

「ボロ、最後にお前の好きな映画を観ていいぞ。」

 

 言われるがままm来世紀ブラジルを流して二人で観た。

「ボロ、お前はアイツみたいに飛びたいか?」

 ……飛べるもんならな。

「……ああ。」

 すると、叶がうなじ付近を舐め始めた。

「……ここか……少し痛むぞ、我慢しろ。」

 激しい痛みと血肉が食いちぎられた音がする。

「痛いっ!!」

 涙を浮かべて振り返ると、叶は舌を出していた。

 その舌の上には皮膚と血液と……血まみれの小さいガラス製のカプセルが乗っていた。

「マイクロチップ……取ったから。……逃げようぜ?オレら二人で。」

 叶は窓ガラスを開け、腕に乗った鳩にカプセルを飲ませて飛び立たさせた。

「でも、叶の立場はどうなる?」

 私と逃げたら彼らだけでなく、カラス銀行も敵に回すことになる。

「……つべこべうるせー。引き出せる額だけ引き出して行くぞ。」

 叶は服を着て私を引っ張った。

「行くって……どこへ?」

 

「ボロは馬鹿だな、ユートピアだよ。」

 

、、、

 

 叶はこんな旧型のアメ車を持っていたんだな。

 

「……やっぱり、叶……叶さんの迷惑に。」

 運転席の叶に目をやるとデコピンをされた。

「叶さん、じゃなくていい加減……黎明って呼べよ……それかダーリンな。」

 ……。

「……はは、なんだよそれ……ハニー……ありがとう。」

 さっきまで雨だったからか、空に虹がかかっている。

「うるさい。今は運転に集中してる。 続きはベッドの上でしろ。」

 信じていいの?

「うん……黎明。」

 

、、、

 

「黎明っ黎明っ……好きっ好き……愛してる。」

 

 黎明との……初めて好きになった人とのセックスは……すごく気持ちいい。

「オレも愛してる、成果。」

 ずっと、このままで……。

 

 それは突然だった。

 愛の住処に重装備をした黒スーツの男たちが乱入して辺り一面を蜂の巣にして血溜まりにした。

「嘘だ……黎明、死なないで……」

 

 このままじゃ、黎明が死んじゃう。

 

「駆け落ちなんて、今時B級映画でも流行らないから。」

 

、、、

 

 ボロの奴……さっきより感じやすくなって快楽に喘いでいる、箱を買いに行って正解だったな。

 

「オレとのセックス……よかったろ?ワンヘッド戦から降りろ。」

 ボロの眼はオレを見ていない。

 オレが映らない。

「うんうん、叶は女を満足させるいい男だな。黎明とのセックス……いいな。」

 どうしたんだよ。

「なんでだよ……オレを好きになったんじゃないのか?」

 オレを見ろ。

 

「黎明は好き。叶、お前は要らない。」

 

end.K 『仮初』

 


 

「彼女は私の腕の中で安らかに眠った……私の永遠の怪物として。」

 

 ……ボロさんが、死んだ?

「嘘だっ!!なんで……?」

 村雨さんは微笑むばかりで、要領を得ない。

「……あんたたちがボロさんを追い詰めたんだ!!人でなし!!人殺し!!」

 暴れる私を山吹さんが羽交い締めにした。

 

「落ち着け愛美ちゃん。……オメーらガチでヤバェな。いずれパクることになる予感しかしねぇ。」

 

。。。

 

「ボロさんって逆ハーのヒロインみたいだよね!」

 

 よく考えてみたらボロさんの周りにはイケメンばっかり!

「……一人は妻帯者、一人は彼女持ち、二人は会話不能、うち四人は所有権を主張してくる………。」

 冗談で言ったつもりなのに空気がよどんで、ボロさんの瞳は濁っている。

「モテ期ってやつ?」

 腕に抱きつくと、ボロさんはいつものボロさんに戻った。

「愛美ちゃんはモテモテかな?」

 ……ふっふーん!よくぞ聞いてくれました!

「もちろん!告白なんて10回以上されてるし!」

 ドヤッと腰に手を当てて胸を張る。

「愛美ちゃんは可愛らしいからな。……山吹に変なことされてないか?」

 ボロさんは心配症なんだから!

「うん!18歳になったらデートするって約束したもん!」

 私ももう直ぐ大人になる。心配しないで?

 

「よかった……。」

 

。。。

 

「君が夢野、夢野愛美ちゃん?」

 

 ボロさんが亡くなった日、長髪の弁護士を名乗る男性が訪ねてきた。

「君に生前贈与をした人がいるんだ。……それと、君の顧問弁護士として身の回りの世話を頼まれてる。」

 ……え?

「君の周りには悪い大人がたくさん居るからね……「彼女が死んだ原因として逆恨み」している者も居るようだ。」

 どういうこと?

「連絡先から村雨、真経津、獅子神に関するものを消去するんだ。」

 ……それって

 

「僕がボロちゃんの意志を継ぐよ。」

 

。。。

 

「漆原弁護士、生前贈与をしたいのです。」

 

 ボロちゃんは、ワンヘッド戦で死ぬつもりなんだね。

「ボロちゃん、身内いたっけ。」

 表では絶縁してても、身内とは縁を切れないものだから。

「まさか。……赤の他人です。暦年課税とかあるでしょうから、なるべく彼女に処理の手間をさせない形にしたい。……そして、彼女の顧問弁護士になっていただきたいのです。金ならありますから。」

 ……たくさん調べたんだね。

「ボロちゃん、死ぬつもりかい?それなら協力できないかな。」

 君はクジ引きで当たりを引いて、今を生きているんだよ。

「まさか……資金洗浄ですよ。あとから金は引き出します。」

 ……わかったよ。

 

「……そっか、引き受けるよ。」

 

end.L『遺産』

 


 

「妊娠した……相手がわからない、降ろしたい。」

 

 検査キットで陽性だった。

 ……父親が誰かなど……。

「命を粗末にするな。DNA鑑定をすればいい。」

 ……そういう話をしているのではない。

「ふふ、処女懐妊。まるで聖母ですね。」

 ……何を言っているんだ?

 お前が最初に中出し……。

「オェェゲェェ……」

 胃液がこみ上げてくる。

「大丈夫ですか?悪阻でしょうか、可哀想に。」

 触るな……気持ちが悪い。

「どうせ真経津は責任を取らないだろう?私との子にしよう。」

 何を言っているんだ?

 倫理観が壊れている。

「あなたが望むのなら、神と婚姻届を出しましょう。」

 吐き気が止まらない。

 

「出産したら挙式を挙げましょうね。シングルマザーだと大変ですから。……私のうさぎさん。」

 

、、、

 

 DNA鑑定で天堂の子だと……された。

 

「結婚しましょうね、ボロさん。……私の伴侶。」

 ふざけるな、なぜレ◯プ犯と結婚せねばならない?

「子供はオレたちも面倒見てやるからさ!安心しろよ!」

 今、一人の人間の人生の話をしているんだ。

「天堂、彼女の性的なメンテナンスは続けるが、構わないな?」

「ええ、もちろん。」

 なんて言った?

「天堂さんと結婚したらボロさんとエッチできなくなるの?」

「なぜ?」

 

「よかったー、これからもエッチしようね!」

 

、、、

 

「赤ちゃん産みたくない。死んでやる。」

 

「あなたと私の子ですよ?産ませます。」

 

「いきたくない。」

 

「いきなさい。」

 

、、、

   

「母乳ってこんな味するんだね。」

 

「こら、母乳は限りがあるのだから赤子優先だ。」

 

「ミルク作ったぞ、人肌で……よし。」

 

「ほら、パパたちが作ったミルクを飲みましょうね。」

 

、、、

 

「ゆるして……。」

 

 なぜ、獅子神に後背位で犯されている?

「ん?何をだ?」

 私は天堂の……妻に、なったんじやないのか?

「『もっと愛されたい私を許して』じゃない?」

 ことが済むと、ソファに座る医者に背面座位で犯された。

「ボロ大先生、このゲームの抜け穴は見つかったか?」

 ゲーム……?分からない……。

「あ……あっ、イく……」

 何が、なんなのか、分からない。

「ボロさん、答えられませんか?」

 天堂は、旦那じゃないのか?

「ああ……あぁん」

 なんで止めないの?

「ボロは馬鹿だからな、ハーフライフ戦のうち何回負けた?」

 真経津に渡されて、対面座位で犯される。

「おっ……あっあ」

 苦しい。

「3回は負けたんじゃなかった?」

 誰か、助けて。

「て、天堂、どうして、どうして……」

 私は、誰の……

「何がですか?」

 何……

「私は……あっ天堂の奥さんじゃないの?」

 天堂に渡されてソファにしがみつかされてバックで犯される。

「そうですよ、あなたは私の妻です。」

「え?え?」

 分からない。

「ふふ、キョトンとしていて可愛らしいですね。」

 なに?

「皆に愛されて鳴く愛しいうさぎ……。神は平等です。」

 

「もう許してやれよ。」

 

「何をですか?おや、逢為が泣き始めましたね、手が空いている方が、あやしをお願いしますね。」

 

end.M『永遠』

 


 

「すみません、加知 成果の葬儀は誰が喪主になってるんすか?」

 

 姉が死んだらしい。

 

 うちの姉は頭が悪く器量が悪く身体も悪い……どうしようもない出来損ないで、通信制高校卒で専門卒とかいう最悪の学歴。

 長男である俺が大学を卒業した頃時期に姿をくらました。

 たぶん正社員だったのに会社を辞めて、自暴自棄になったんだろう。

 享年30か……。

 俺とは5歳年が違い、……性格も真逆だった。

 陰険で皮肉屋で人の幸せをよく思わない奴。

 くたばって当然、でもまあ哀れではある。

 

 葬儀場につくと、やっぱり簡素なもので参列客も十数人しかいなかった。

 葬式で来てくれる奴が十数人しかいないって……最後まで人間性は変わらなかったんだな。

 

 姉は未婚のまま死んだはず。

 なら喪主は友人か?

 友人なんかできたのか。

 

「すみません、喪主の方にお話がしたくて。俺は加知 守。肉親です。財産分与とかの話、ありますよね?」

 そう尋ねると雰囲気が変わり、女性陣を個室に入れた。

 まあ女子供に遺産相続みたいな難しい話は分からないからな。

「君が噂の弟くん?僕は弁護士の漆原。」

 長髪の男が声をかけてきた。

 噂……?

 どうせいつもの「俺ばかり優遇された」という「優秀だから認められる」ことに対する僻みを悪く言っただろ。

「あなたが……そうか……。」

 眼鏡の軟弱そうな男がコツコツと歩いてくる。

「……お前、財産分与って。」

 筋肉質の金髪男が二人共腕を組んだ。

 姉に財産なんかないのは分かってる。

 でも「内縁の夫だからうちに遺産を要求する」「世話をしたから費用を請求する」寄生虫がいたら困るだろ。

 まあ弁護士がいるなら話が早いな。

「いやー……うち、そんな蓄えないんで。葬儀費用とか請求されたら困ります。そこのところ話しておきたくて。」

 

「そうか、ならお前の葬儀費用はお前の親族に請求するから。」

 

 ……は?

 茶髪の男が式場の扉の鍵を閉めた。

 なんで、俺は取り囲まれてるんだ?

 

「はじめまして弟さん!さようなら。」 

 

end.N『絶縁』

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