「入れてー!!」
なんだ、怪異か?
ドアノブをガチャガチャされる音でようやく寝つけたのに目が覚めてしまった。
スマホの時間を確認すると『01:01』のデジタル表示が光ってため息がでる。
「入れてー!!」
仕方がない、今日はジョイキッチンのパートが休みだから許してやるか。
それに深夜にアパートの玄関から訪ねてくるとは珍しい。
「入れてー!!」
いつもはベランダから侵入してくるから、掃き出し窓に『ラフメイカーは回れ右』と『>>1さんと8頭身』のポスターを貼ったのが功を奏したか。
「待て、ドアガチャをするな。金具が痛む。」
上下スウェットで寝起き姿のまま防犯チェーンを外すとガバっと抱きしめられた。
「ボロさん……会いたかった……。」
な、なんだ?
前前前世から会いに来たみたいなテンションだ。
かなり強い力で抱きしめられている。
「どうした真経津、今日のプレイは傷心的な感じなのか?」
とりあえず頭を撫でてやったが、なかなか離れない。
ひとまずチェーンを付け直してドアを閉めた。
「ずっとずっと、会いたかったから……。」
……はあ、成る程。
金曜のロードショーで有名なアニメ映画を見たな。
感動的な再会からの、というやつか。
「昨日、獅子神の家で会ったばかりだろ……。」
背中を撫でて体が離れるのを待った。
「ボロさんって……こんなにやわかったんだね……。」
……挨拶代わりのディスか。
「そうだな、ネコ型ロボットより白餅ロボットに近いぞ。」
その間も真経津はずっと離れず、首や耳に顔を押し当ててただ単に匂いを嗅いでいるのか、前戯を始めようとしているのかが分からない。
玄関は流石に辞めてほしいんだが、体格的に真経津を制御できないからコントロールが難しい。
「ボロさんはやわいのに……ボクが強い人だって思っちゃったから……」
……あ?
ハーフライフ戦での戦績はそこまで悪くないが?
「真経津……喧嘩なら昼に買う。……手が冷たいからなかに入ってお茶でも飲め。」
背中を擦ってポンポン叩くとようやく体が離れた。
その時、初めて真経津の瞳から雫がこぼれ落ちたのをみて絶句してしまった。
喜怒哀楽の哀という感情を出している彼の姿を初めて見たように思う。
こいつ、泣くのか……。
「うん……ボロさん。」
「真経津、ミルクティーでいいか?牙頭オーナーに高級そうな茶葉を貰ってな。」
台所に立って漆原弁護士に見繕って貰った奇天烈なデザインのティーポットにお湯を注いでいると、また背後から抱きつかれた。
「やだ……。」
なんでだよ、よく飲んでるだろうに。
すぐに好みがコロコロと変わる……というよりもワガママをいって困らせたいだけなんだろうが。
「真経津、お湯を扱ってるんだ。危ないからやめなさい。」
ヘソの前に交差している両手を引き剥がそうとしても、なかなか動かない。
そして首すじに鼻と唇を押し付けられているが、いかんせん身体は感じてしまうので、手が滑って火傷を負わせてしまったら不味い。
「ボロさんのおっぱいを吸ってるだけで充分だから……。」
……。
「真経津、あまり深夜に人を故意に苛立たせ怒りを焚べるのは……身の振り方としてよく考えろ……。」
とりあえず無視をして紅茶をティーカップに移して牛乳を冷蔵庫から取り出す。
その合間も真経津は抱きついたままなので、磔を背負うようにズルズルと移動した。
「あ!お風呂沸かしてくるね!」
急に伸し掛かる重さが軽くなり、よろけてしまった。
兎に角、次の行動が予測可能であって予見不可能。
関係を持ってから暫く経つが、本人の心の核に触れられたことなど一度もないだろう。
化け物か。それとも超常現象のたぐいなのか。
二つのティーカップに牛乳を注いだあと、慌てて風呂場に駆け寄った。
「すまない真経津!!風呂掃除を男にさせてしまったな。後は私が代わるから、ちゃぶ台にミルクティー用意したから飲んでいてくれ。」
真経津はパーカーを脱いでワイシャツ姿になって風呂釜を磨いていた。
「なんで男とかの話になるの?」
……。
……そうだった。
私がおかしいんだ。
「あ、いや。真経津の手は綺麗だから……痛んでしまうから。」
真経津からスポンジを受け取って無心で汚れを削り落とした。
兎に角、汚れは汚れた者が処理すればよく、綺麗に見繕わないと綺麗な人間にとって
「ボロさんの手、好きだよ。ボロボロの手。」
顔を上げると手首を掴まれて指が真経津の口に入りそうになった。
「汚いからやめて!!」
自分でも出したことのない甲高い叫びに驚き、彼も目を丸くしている。
「……ごめんなさい。ボクに舐められるの嫌だったんだね。」
……違う、私が汚いのであって、今は風呂掃除中であって汚い私の手には汚いものが。
「……違う。すまない。……風呂に湯を張るから。」
「ねえ、ボロさん。」
風呂に湯を張って水で手足を洗っていると脱衣場で肩を叩かれた。
「なん……」
「ボロさんは引っ掛かりやすい。」
人さし指を頬に突き立てられ、不敵な笑みを浮かべる顔と目が合った。
心理戦はギャンブル中だけで十分なんだよ。
「はぁ……そうだな。お前たちより劣る。格下だよ。」
ため息をつくと肩に真経津の顎が乗り、耳に彼の髪がフワフワと当たってくすぐったい。
……スエットの中に両手が入ったな。
「またそうやって『自分は仲間はずれだから』『弱いうさぎで狩りには負ける』『だからみんなとは居られない』って予防線を張るんだね。」
……こいつ、キレさせたいのか。
それで激昂したところを捻り上げる『わからせ』『お仕置き』セックスをする。
「……誰もそこまで言っていないが。ハーフライフ戦の勝率は」
「ねぇボロさん、仲間に入れてほしい?」
指がブラジャーをずらして円を描くように乳輪をなぞっている。
セリフと行動が一致してないんだよ。
「仲間に『入れて』だと?仲間なんてもんに許可されたり優遇されなきゃ入れないなら、私は入らないよ。……自分から『入っていた』でないのなら、必要ない。」
両腕を引き剥がそうとしても毎度毎度びくともしない。
「よかった、負け犬のボロさんのままで……。」
血管が何本かキレたな。
「お前……っう」
乳首をきゅむっと摘まれて尻を突き出した姿勢になってしまった。
また後背位か。
「ボロさん……ボロさんはボクのものなんだから勝手にいなくなっちゃダメだからね……絶対に……。」
右手はそのまま乳房を鷲掴みにして揉みしだき、左手は秘部を弄って、舌は耳穴をゾリゾリと舐めている。
「ひゃあっ……や、約束は……できない……」
いつものパターンで無理やりのようなセックスが始まる。
「……そっか。」
身を強張らせると身体が離れた。
……油断はできない、次に何が起こるかを常に考えていないと、彼らと共に過ごすのならば必ず致命傷を負う。
「……じゃあ紅」
目の前が真っ暗になって舌が捩じ込まれた。
口内の歯の列を確かめるように丁寧に舌がなぞっていく。
頭を抑えつけられているのか、身動きが取れない。
「ん……ボロさん、いっぱいキスしよう」
「……んふっ、はっ…ふっ……んん……」
今回のディープキスはやけに慎重で長く、息継ぎができない。
そして私の身体も敏感に反応して、とっくに腰が砕けているのを真経津の脚と手が支えた。
「んっ……ボロさんってキス、大好きだったんだね……」
抵抗して反論しようにも、抱きしめられている体勢ではどうしようもない。
「はっ……違う……」
何とか胸板を腕で押し返すと、いつもの獲物を嬲る瞳ではない、何かを訴えかけている瞳と目が合った。
……なんだ?
「……ならさ、責任取ってよ」
いや、何だよいきなり。
「……責任?なんのだよ。」
シャツの襟を掴むと真経津は頬を赤らめて目を伏せた。
「お◯んちん、イライラしちゃったから……」
……。
いや、先ほどまでの論議は?
「お前、頭おかしくなったのか?……どんなAV見たんだ一体……。」
前に叶と見たAVは女教師ものだったな……。
AVは基本的に痴漢や時間停止、コスチュームの……。
違うな、これは『ショタおね』もの。
エロ漫画かエロゲか……。
「だからさ……せ、責任……とってよ……」
真経津が赤面しているのは珍しいな。
恥ずかしいなら言わなければいいのに……。
……なんだか可哀想になってきたな。
……これが『可哀想は可愛い』か。
「はぁ……真経津くんのお◯んちんがイライラしちゃったか……」
そのまま下がってテントが張ったズボンのファスナーを下げるとガチガチに勃起したモノがそそり立っていたのでフウッと息を吹きかけた。
「あっ……ボロさんの意地悪……」
指の腹で亀頭を撫でると我慢汁が垂れて更に反った。
「真経津くんのお◯んちんはナデナデされるとおっきしちゃうのか……よしよし……いっぱいナデナデしてあげるからな……」
裏筋をツーッと撫でてから全体を指で包んで手コキを始め、見上げると耳まで真っ赤になった真経津が手の甲で口を押さえている。
「……真経津くん、我慢しなくていいぞ……ピュッピュッしてみようか……」
シュコシュコと手を動かすとビュルッと顔射され、手を離した。
「……ごめんなさい、ボロさん……掛けるつもりはなくて……」
立ち上がって顔を手で拭うと、生暖かい舌が頬を這った。
精液を舐めるのはあまり……。
「こら真経津、舐めちゃだめだぞ。」
頭を撫でつつ、肩を押して退かそうとするがまったく微動だにしない。
「ヤダ、舐める……」
「やっ……やめろ……」
真経津は洗濯機に背中から寄りかかる私の顔をひたすらに舐めて、舐めながらスエットを器用に脱がせてしまった。
「ボロさん……ボロさん……」
やはり何かがおかしい。
手のひらを額に当ててみたが熱はないようだ。
「だっ……大丈夫なのかぁっ……あっ……」
顔を舐め終わると耳から首すじ、鎖骨を唇がキツく吸い付きキスマークを作りながら何度も舌がなぞっていく。
そんな中、手持ち無沙汰な両手は乳房を執拗に揉みしだいている。
「……ボロさんはボクのこと、大好きだよね?」
……自分は好きや愛しているといった責任が生ずる言葉を吐かないくせに、確認だけは一丁前に何度でもしたがる。
「……はっ……まふぅ……真経津はぁ……いい、いい子だよ。」
その返しに苛立ったのか、両手は太ももを持ち上げて唇は乳首を喰んだ。
唇はふにふにと動いて舌がチロチロと舐め吸った。
「……ねえ、どっちかが折れなきゃいけないのに、どうしてボロさんはそんなに意地っ張りなの?」
それはお前にだって言えるだろうが。
お前が……お前が……
「ああっ、やっ、ちょっとまってぇ、だめぇ……」
願いは聞き入れられず、洗濯機に乗せられた秘部に顔が埋まって舌が割れ目を喰んで吸い上げた。
髪の毛に性感帯が擽られて、必死に頭を退かそうとしたが、敢え無く絶頂してしまった。
「……ボロさんのお◯んこはペロペロされるとヒクヒクしちゃうんだね。」
……クソ、『おねショタ』プレイではなく『わからせ』だったか。
「はあっ……ほんとにだめなの……やめてぇ……」
執拗に膣を舌が撫で回すたびに愛液が太ももから洗濯機に滴って、みっともなさやしょうもなさ、後ろめたさが胸に黒い靄となって現れる。
「中出しさせてくれるならやめてあげる。」
……はあ?
何を言ってるんだ?
……中出ししたいがためにこんな茶番をしているのか?
今まで避妊して……。
まさか医者に『事後避妊薬』があると言わ……言わないな。
「だめぇ……にぃ……きまってぇ……」
太ももの裏を靭やかな指が何度も擦るたび。
陰核を舌が押してジュルルッと卑猥な音を出して愛液を啜られて、何度も何度も絶頂を繰り返した。
「なら、ずーっとク◯ニするからね。」
「いっ……いいからぁ……中出ししていい……」
快楽攻めに早々に陥落し敗北宣言をすると、洗濯機に上半身を乗せられて後背位になると右脚を持ち上げられた。
「……見ててね、ボロさんとボクが本当に繋がるところ……」
脚を持つ手の力がゆっくり緩むと、膣がモノをズブズブと咥えこんでいく。
「あっ……ああ……あああ」
バチュンと根元まで挿入されると、そのまま動く様子がない。
それがかえってモノの形や熱さ、硬さに意識が集中させるかたちになって……挿れられただけで潮吹きをしてしまった。
「……ボクのことが大好きなんだね」
……なんでそんなに、苦しそうな顔をしてるんだよ。
……やっぱり私となんかしたくなくて、罰ゲームか何かで。
「……真経津……来て……。」
……揶揄れている馬鹿でもいい、身の程知らずの道化でもいい。
「うん。……うん。いい子じゃなくてごめんなさい。」
、、、
「真経津、流石に二人はぎゅうぎゅうだろ。」
真経津は性交渉のあともピッタリと離れず、風呂釜に張った湯をだいぶ無駄に流しながら二人で浴槽に入った。
「わ、おっぱいって浮くんだね。」
……。
真経津の頭をコツンと叩いた。
「で……どんなエロ漫画を読んだんだ?」
答える気はないようにタオルに包まった頭を肩に乗せた。
「……逢いに来にきちゃだめなの?」
はぁ、参ったな。
もしここで完全に真経津との縁を切れたとして……。
……いつ来るか分からないラフメイカーを期待しているのも本心だ。
「……いつでも来ていいよ。」
そう語りかけると頬にキスされ、指を絡められた。
「ボロさんの手も、好きだよ。」
、、、
「ミルクティー、冷めてしまったな。レンチンするか?」
真経津はピタリとくっついたまま肩に頭を乗せている。
「いい……ずーっとこうしてたいから。」
仕方がなく冷めたミルクティーを口にした。
砂糖がないから渋みと口当たりが丁度いい。
すると布団に置きっぱなしだったスマホの着信が鳴り、慌てて駆け寄って確認すると『03:00』のデジタル表示と『れめぴ 』にガックリと肩を落とした。
「なんの用だ。今何時だと思っている。」
『は?オレには何時でもお前に連絡する権利があるから。』
……はぁ、パートの日だったらキレていた。
『晨くんの家でアニマルビデオ見てたら、お前みたいなやつが出てきて』
「まったく、家主が居ないのによくやるな。」
メールにしろ。
『はあ?晨くんが居ないのに集まるわけないだろ』
……何を言って
「……真経津?」
先ほどまで抱きついていた真経津の姿がない。
ベランダも玄関にも開けられた形跡がない。
『もしもし?代わりました。どうしたの?ボロさん。』