「検査の結果、ポリープが認められた為その場で切除した。切除したポリープを病理検査に回す。」
不機嫌な医者……ええと、村雨医師がモニターに映る自分の腸内の様子を指さしながら淡々と語った。
「なんだ……。」
ふと漏らした言葉に彼は眉をひそめた。
「なんだとはなんだ。」
そんな禅問答のような受け取り方をされるとは。
「悪いところがあれば……早く見つけて治せるかなと。切除していただきありがとうございました。」
頭を下げて礼を述べた。
いっそのこと悪かったほうが諦めがつく……とは医者の前では言えないな。
「あなたは他に体調に不安があるのか?」
相変わらず目の隈が凄いな、彼の方の体調が心配になる。
「はい……実は数年前にとある手術したんですけど……そのせいで更年期障害が来てしまって。」
流石に「子宮切除」とは言えない。
「子宮切除で更年期障害が早まるが、それに対する処置はヘルスリテラシーとして各々が対象する他にないからな。」
あ……電子カルテに書いてあるのか。
マイナンバーで手術歴、病状も共有されてる?
「そうですね。」
村雨医師は胸ポケットから名刺を取り出して裏側に何かを書いて渡した。
「……経過観察をする。」
渡された名刺にはメールアドレスが記載されていた。
「こ、個人アドレスを患者に渡しちゃ不味いでしょ。」
「担当したのは私だ。何の問題もない。」
、、、
「すげー……邸宅じゃん。」
村雨医師とメールでやり取りをしていると、開腹をするという流れになった。
個人的に開腹とは殺傷されるのかもしれないが、とりあえず来てみた。
「ボーッとするなマヌケ。玄関の鍵は開いている。」
門扉のインターホンから彼の声がする。
「はい。今行きます。」
、、、
「うわ……本当に手術出来るようになってる……。」
部屋の一室には手術台や何やら一式が揃っていて壮観だ。
「同意書の説明を行う。」
村雨医師の隣に付いて同意書に目を落とす。
「んー……字が小さい。」
内容は死亡した場合の補償や治療後のアフターケア、対価まで書いてある。
……対価!?
まさか手術される側にお金をくれるわけないよな。
紙を凝視して約款を確認すると呆れ声が耳元でする。
「あなた、視力も落ちていないか?眼鏡をかけろ。」
「ありがとうございました。なんとお礼を言っていいか。」
まさか麻酔までされるとは、麻酔科医と外科医と内科医を全部一人で完結させるとは黒医師に引けを取らない凄腕だな。
「あなたはまず安静にしていろ。勝手に動くな。気絶していろ。」
今、気絶しろって言ったか?
なんだか命の恩人を思い出す言い回しだ。
「まさか闇医者が実在するとは思いませんでした。」
村雨医師はむっとしたようで手で瞼を押さえつけた。
「いいから失神しろ。」
その手に触れると、ゆっくりと目元から遠ざかる。
「お礼をさせてください。」
彼は距離を置いて深い溜息をつきながらカルテに目を落とした。
「礼とは?具体的に何で示すつもりだ……言ってみろ。」
そんなの私みたいな凡人ができる礼など一つしかない。
「初めての体験を……差し上げます。」
、、、
「あー……雨が振り始めてしまったな。明日は中止したほうがいいか。」
春の天気は不安定で、雨が降ったら泥だらけになってしまう。
中止の連絡を村雨医師にメールしようとスマホを取り出すと玄関の硝子引き戸がバンバンと鳴った。
……今は20時を超えている、地域の人間なら大声で名を叫ぶからリサイクル業者を偽った強盗か?
恐る恐る玄関の明かりをつけると複数人の気配があった。
「……どなたですか?」
「入れてー!!」
なんだ、怪異か?
「すみません、廃品回収なら業者名を名乗ってください。」
声をかけると人がバラけて数人が裏に回った。
「入れてー!!」
警察沙汰にしたくはないが、声から男性だと分かる。
強盗なら何もないことを証明すれば……いや、したとして顔を見てしまったら、いや、声を聞いてしまっているから始末されるな。
どうしたものか。
「入れてー!!」
「うるさいんですけど!!近所迷惑!!」
叫び返すとピタッと奇声と戸を揺らす動きが止まった。
「え、近所迷惑って言うほど近くに民家なんか無かったよ?」
確かにこの集落は過疎で、そもそも家々が離れているから近所迷惑にはならないんだけど。
「そうなんですけど煩いからやめてほしいです。強盗なら見て分かる通り資産価値があるものはありません。」
すりガラスにあった人影が一つから段々増えていく。
「裏口の鍵開いてた。不用心だ。」
背後から声がする。
「今鍵を開け……すげーな、棒鍵なんて初めてみた。これ外出する時どうすんだ?」
伸ばされた手が棒鍵を抜いて戸を開いた。
「初めまして!ボクは真経津 晨!よろしくね。」
「すごい!土間だ!見て!大黒柱!!」
オレンジ色の髪の……真経津さんが大黒柱にくっついた。
「天井が高いな……梁まで掃除するの大変だろ。」
金髪の獅子神さんが天井を見上げて玄関にあった竹箒で済をつつきはじめた。
「なあ、玄関にあったのスズメバチの巣?」
紫髪の叶さんはバスケットボール大のスズメバチの巣をもぎ取ってこちらに渡した。
「これはですね、オオスズメバチの巣を置くことで他のスズメバチが来なくなるんです。今はアオダイショウの巣です。」
そのスズメバチの巣を白髪の天堂さんに渡した。
「神に蛇を渡すとは。」
天堂さんは出てきたアオダイショウを掴んで外に出した。
「畳だ!!広いね!!」
いつの間にか真経津さんは畳に上がって奥の間の引き戸に手を掛けていた。
「待ってください!!」
無惨にも明け放たれた部屋には付けっぱなしのPC画面が暗闇に煌々と光り輝いている。
「へー……ゲーム作ってるのか。」
獅子神さんと叶さんが画面を眺めて、マウスをいじり始めた。
「ピンクになってるじゃん。」
椅子に座ってキーボードを叩こうとする叶さんを止めようと横から顔を出して説明をする。
「すみません、マテリアルが……」
「お風呂が台所と繋がってる!!」
慌てて台所に走ると天堂さんが上着を脱いでおり、真経津さんが洗濯場から持ち出したタオルを抱えて風呂場に立っている。
「昔の作りですからカーテンで仕切りあるのでそこは……。狭いんで入るなら市営の大衆浴場……ああ、もう21時では閉まっている」
「冷蔵庫になんもないのな。卵とハムくらいか。」
獅子神さんが冷蔵庫を開けて吟味している。
「あのですね、野菜を食べる分だけ作っていて」
「あ!!たけのこご飯だ!」
声のする方を見ると真経津さんが炊飯器からたけのこご飯を盛り付けて食べている。
「これじゃ足りないな。」
「あく抜き分が鍋にあるので作れますから」
鍋の蓋を開いて確認する。
人数分は入っているはず。
ドンという音と硝子が割れた音がして、畳の間に戻ると叶さんと半裸の天堂さんが障子を倒してはめ込み硝子が散らばっている。
「あ……ユミピコと相撲取ってたら勢い余って……」
「ああ……はめ込み障子の硝子は今は貴重で……それより怪我はないですか?」
天堂さんは傷一つなく、叶さんは指を切っていた。
「ごめん。」
「赤チン塗りましょうか……。」
救急箱を奥の間から取り出して赤チンを叶さんの指に塗る。
「もう製造は終了しているだろう。」
振り返ると村雨医師が立っていた。
「すみません、その前にこの惨状はいったい何なんですか?」
「ねえ、なんて呼べばいい?」
どうやら彼らは村雨医師の友人らしかった。
「神が名前を与えてやろう。……祀り、マツリちゃんだ。」
マツリちゃんってなんだよ。
天堂さんはカーテンを引いてそのまま風呂に入ったようだ。
「マツリちゃん、たけのこはまだあるか?」
獅子神さんが台所の戸を開けている。
「明日掘らないとありませんね。」
確かに『初めてのたけのこ掘り体験』に友人を参加させるとは聞いていたが、今日はその前日の金曜日だ。
「なあ、100畳近くある平屋に一人暮らしなの?」
叶さんが背後に立って自分の手首を掴んで操り人形のようにして遊んだ。
「過疎ですからね、社会問題ですね。」
外では雨が降っている。
「布団は人数分あるか?」
布団……。
「ありますよ。今出してきますね。」
叶さんを引き連れたままで奥の間の襖を開けて布団を出した。
「これ、しばらく使ってないだろ。流石にコインランドリーで洗いたい。」
確かに湿気っている。
「軽トラに積んで洗ってきます。ブルーシートで雨に濡れないようにしますから。」
二人で布団を土間まで運ぶと叶さんが玄関の戸を開けた。
「オレが運転する。」
それは流石に。
「すみません、保険の関係で自分が運転しますから。」
事故を起こされたらかなわない。
「礼二くん!留守を頼んだ!」
村雨医師はコクリと頷いた。
下の名前「礼二」なんだ。
、、、
「街灯すら無いのな。」
叶さんは真っ暗な闇夜を眺めている。
彼はタッパがデカいので軽トラの助手席にギュウギュウになり窮屈そうだ。
「月明かりはありますよ。星空も見えますしフクロウも鳴いていますから。レバーを巻いて窓を開けてみてください。」
叶さんは素直に応じて手動式の窓を開いた。
「なんかいい匂いするな。」
紫色の髪が夜風に揺れている。
「マツリカですよ。この近くに植えたんです。」
彼は指を出して空気を切った。
「雨が強くなる前に運んじゃいましょう。」
荷台から布団を担いでコインランドリーに運び入れると頭を叩かれた。
「オレがやる。」
布団を取られたので次の布団を担いだ。
「オレがやるって言ったよな。」
どうやら自分一人でやるつもりらしい。
「こういうのは協力したほうが早いですからね。」
彼を押し入れるように布団をグイッと押し付けると嫌な顔をした。
「……あのな」
怒りの眼差しが外に向いた。
「……何あいつら。なんでオレを見てんの?」
ガラスの外ではエンジン音につられて地域の人間が集まってきたようだ。
「ああ、よそ者が珍し……ええと、女が独身で一人暮らしをしていると頭がおかしいとされるので。自分を警戒してるんですよ。」
洗浄機に布団を押し込めて重い扉を閉めた。
「はあ?因習村かよ。」
まあ普通の感覚ならありえないだろう。
ただ、そういう古い価値観が流れている地域は確実に存在するから。
「あとは叶さんがオシャレだからじゃないですかね。」
また叶さんに頭を叩かれる。
「オマエ生意気。」
頭を擦りながら残りの布団を運び入れた。
、、、
「乾燥まですると結構時間かかりますね。」
壁にかけられた時計は22時を指している。
「オマエはなんで礼二くんに金を借りたの?」
室内ベンチに腰掛けながら問いかけられる。
「金?借りてませんよ。」
なんで金の貸し借りの話になったんだ?
「え……ならどうして礼二くんに手術させたんだよ。」
村雨医師は借金のかたに手術をしてるのか。
「手術してくれる医者は貴重ですから。」
叶さんは明らかに引いたように口を開けた。
「うわ……。」
そのまましばらく会話はなかった。
「叶さんはどうして村雨先生とお知り合いになったんですか?」
叶さんは人差し指を顎につけて首を傾げた。
「改めて聞かれると表現しにくいな。」
確かにいつどこで知り合いになったかなんて形容しがたいな。
「みなさん仲が良さそうで」
そこまで言って言葉が続かずに窓に駆け寄った。
「雨が強くなってきましたね。明日はたけのこがたくさん生えますよ。」
ガラスに映る自分に溜息を付くと背後に叶さんが立ったのが見えた。
「独りぼっちで寂しいか?」
「わー!!ふかふか!!」
真経津さんが勢いよく布団に抱きついてきたのでよろけそうになるのを天堂さんが支えてくれた。
「真経津も布団運ぶの手伝えよ。」
獅子神さんが率先して軽トラから布団を運びだして、村雨医師は勝手にふ菓子を食べていた。
「な……村雨先生、なんで勝手に」
「菓子があったからだ。」
そんな「そこに山があるからだ」みたいな……。
布団を5枚敷き終わる頃には0時近くを指していた。
「先にマツリが入れよ。」
叶さんが風呂場を指さした。
「叶さんがお先にどうぞ。」
頭を叩かれて腕を引かれた。
「なら一緒に入る?」
「自分が先に入ります。」
、、、
「はぁ……。」
湯船はスカスカになっていたので、湯を張り直しながら怒涛の一日を振り返る。
村雨医師とたけのこ掘りの約束をしたら波乱が吹き荒れた。
人はあまりに多くの情報が流れ込むと慌てる暇も無くなる。
「なあマツリ、背中流そうか?」
叶さんが引き戸を開けた。
「いえ、大丈夫です。」
、、、
「ではおやすみなさい。」
寝間着に着替えて奥の間の襖を開けた。
「あはは!ネコ型ロボットみたい!もしかして押し入れで寝るの?」
枕投げで乱れた髪を揺らしながら真経津さんが笑顔で尋ねた。
「はい、そうです。明日は泥だらけになってもいい格好でお願いします。」
すると彼は急に真顔になった。
「なんで?布団が5組しかないから?なら誰かと一緒に寝ればいいでしょ。」
いいわけないからな。
「マヌケ、せめて居間のソファで寝ろ。」
村雨医師が咎めるのを無視して押し入れに入った。
「タラララッ!ドコデモネラレルヒト〜」
そうほざいて襖を閉めた。
、、、
スマホの時刻は2時を回った。
PCを落とせていない。
畳の間を通らずにPCがある奥の部屋には渡り廊下を伝って行ける。
寝静まった彼らを起こさないように忍び足で部屋に向かった。
「ふう、エラーは当日に直さないと。」
「だよな、シェーダーの問題だから。」
椅子には叶さんが座っていた。
「叶さんも同じ趣味なんですか?」
叶さんの背後から覗き込むようにマウスとキーボードを操作した。
「本当にオレを知らないのか?叶黎明。」
叶黎明……。
「VTuberですか?確かにいい声してますね。」
グイッと腕を引かれて耳元で囁かれる。
「リアルASMR。」
思わず吹き出してしまった。
「ふ、あは。リムライトを作ってからなら聴きますよ。」
「おはようマツリさん。」
いつの間にか誰かの布団で寝ていたらしい。
「おはようございます。真経津さん。」
伸びをすると彼らがさも当然であるかのように着替えをしていたので目を閉じた。
「マツリちゃん、ベーコンエッグを作ったから着替え終わったら食べろよ。」
獅子神さんの声が台所から聞こえてくる。
「わかりました。」
「マツリちゃん!!神に献上する歯ブラシセットを出せ!!」
仕方がないので目を瞑りながら壁伝いに洗面所に向かった。
「新品のセットはこの棚にあります。」
天堂さんに歯ブラシセットを渡して洗濯機を見ると既に回してあった。
「マツリちゃんと村雨の分は次に洗うから。早く着替えてくんねえ?」
獅子神さんが呆れた声を出した。
「はい。着替えますね。」
奥の部屋に行く前に半裸の彼らを目にしてしまったがノーカンとしたい。
着替えを取り、押し入れに入って服を脱いだ。
「マツリ、流石にそこで服を脱ぐのは窮屈だろ。」
襖が開いて叶さんが腕を引いた。
「ちょっと待って、プレイバック。」
頭を叩かれた。
「着替えくらい気にするなよ。オマエ、礼二くんに腹の中を見せてるだろ。」
腹の中が思惑のニュアンスではなく文字通りの意味だから困る。
「おー[[rb:神事 > じんじ]]。」
「神を呼んだか?」
、、、
「はい、ということで、たけのこ掘りをはじめて行きたいんですが。」
既に[[rb:鍬 > くわ]]やノコギリやら[[rb:杵 > きね]]で竹を叩いている。
「人の言うことを聞けない方には、たけのこを掘らせることはできません。」
「コラ!!お前らマツリちゃんの話を聞け!!」
彼らは獅子神さんの鶴の一声で大人しくなった。
「ではまず、実演をします。まずたけのこを発見します。小さな葉っぱが見えますか?この周りをシャベルで掘って全体像が見えるまで掘って鍬で深さを取り、生えている向きに反するように根を鍬で思い切り断ち切る。はい。掘ったら穴を埋めましょう。」
人に説明するのは初めてで息切れと発汗が止まらない。
「結構大変なんだね。次はボクがやる!」
シャベルを真経津さんに渡してたけのこの皮を包丁で剥いた。
「ハエが根の断面にたかってくるな……まるで鮮魚みたいだ。」
獅子神さんが手袋をしながらまじまじと様子を眺めた。
「はい。新鮮なので早く皮に切れ込みを入れて始末しないと。皮の毛がしばしばするので近づかないほうがいいですよ。」
彼は料理が好きなのか興味津々といった様子でこちらを見た。
「オレにやらせてくれ。このピンクのイボは根っこか?」
「はい。そうですよ。」
「ねえ!森の先にお花畑があったよ!!」
道具を片付けていると真経津さんが満面の笑みを浮かべて立っていた。
「自分の土地です。あと無闇矢鱈に歩き回ると他の土地所有者に迷惑になりますから入っていい土地か確認してくださいね。」
あれだけ重労働してよく歩き回れるな。
「梅の木の下に縄があったが。」
天堂さんがズイッと顔を近づけてくる。
「あ、動物用の罠で」
「首吊り紐だったよ。」
真経津さんも隣に立った。
「あそこがマツリちゃんの土地なのならば」
「あれはお守りです。」
二人の顔が虚を突かれたような顔をしている。
「お守りだと?あなた、ずいぶんと悪趣味だな。」
背後に村雨医師が立っている。
「はぁ……本当にお守りなんですよ。『いつでもこの場所で死ねる』っていう。言わば聖域です。」
自分の土地で誰にも悟られることなく死ねる。
これがどれだけ救いになるか。
「へぇ、なら荒らしに行くか。」
獅子神さんと叶さんがノコギリと剪定バサミを持って竹林を歩いていった。
「ちょ!人の聖域を土足で踏み荒らさないでください!」
「今更かよ。」
、、、
「ほら、首吊り紐だ。」
天堂さんに折られた梅の木の枝ごと渡される。
「これではタダの輪っかです。」
ボロボロにいたんだ縄は既に脆くなり、朽ちはじめている。
その縄を叶さんが奪うと首にかけられた。
「タダの輪っかを今引いたらオマエはどうなる?」
深呼吸をしよう。
「苦しみます。加減によっては叶さんを人殺しにしてしまいます。」
なんで会ったばかりの人に諭されているんだろう。
「マツリちゃん、縄を千切ってみせろ。」
獅子神さんが縄を指でなぞった。
「やってみます。」
縄は朽ちているとはいえ、なかなか千切る事が出来ない。
「ねえマツリさん、あれ桃?食べていい?」
「はい、いいですよ。」
真経津さんを目で送ると涙が伝った。
「自分の力でやり遂げろ。あなたの頭抜けた図太さなら可能なはずだ。痛みを極限まで耐えるあなたなら。」
村雨医師、もしかして命の恩人の医師と同一人物なのか?
「ちなみに医師の間であなたは『痩せ我慢伝説』となっている。」
「はぁ!?なんですか!?」
その瞬間縄が勢いよく千切れた。
「これで祀りは契りを結んだ。」
「マツリ!バーベキューしていいよな?」
彼らは確認を取る前から庭で肉を焼いている。
「いいですけど、アナコンダとアリゲーターの肉とかで食中毒されたら」
「連帯責任だな!」
、、、
しばらくの間、自分は死ねないようだ。