※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

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Vivid Vision Halo Dragon

 

「マツリちゃん、本当にワンヘッドだったんだな。」

 

 獅子神さんが『中卒だったんだな』くらいのトーンで収穫したばかりのジャガイモの皮を剥きながら独り言のようにポツリと零した。

「ええ……まあ、バレちゃあしょうがないですね。禍根(カース)として大活躍してました。つよつよギャンブラーです。」

 自分も顔を上げずにニンジンを切り刻みながら答えた。

「特権は何を選んだんだ?」

 ……話したくない。

「獅子神さんはハーフライフですよね?ワンヘッドに上がってからご自分で種別を調べてみては?……第二種以上です。」

 チラリと顔を覗き込むが、眉一つ動かさず表情が汲み取れない。

「それもそうだ。」

 獅子神さんは新たに手に取ったジャガイモのソラニンとチャコニンが多分に含まれる毒芽を深く切れ込みを入れて抉り出した。

「……管理を誤りました。グリコアルカロイドが蓄積しています。潜在的な危険はゆとりを持って除去しなければなりません。その籠にあるジャガイモは破棄しなければ。手前の籠のものを使ってください。」

 ジャガイモを抉る手がピタッと止まった。

「……なあ、マツリちゃん。オレたちのこと、まだ信用ならないか?」

 ……はあ?

「すみません、おっしゃっている意味が分かりません。」

 とりあえずニンジンを鍋に入れ、タマネギを刻んだ。

「次の対戦がワンヘッド戦ではなく、復帰戦だからとかいう曖昧な理由でハーフライフ戦になったのは銀行」

「自分は銀行の対戦カードを指定できる立場にありません。……天堂さんとマッチしたのは残念でしたね。」

 彼の包丁がジャガイモから離れた。

 場外戦術として仲間を守る術として刺しに来るなら迷わず殺す。

「……今からでも遅くねーと思うから、梅野に連絡してエスカレーションしてもらってさ、対戦を取り止めてもらおう。」

 ……そんなに仲間の命が惜しいのか。

 群れを作る羊のなんと脆く弱く惨めで臆病な姿であろうか。

「獅子神さんの大切なお友達である天堂さんが死んでしまったら悲しいですもんね。でも私は対戦を強行しますよ?」

 包丁が動いた、刺しに来る。

「オレだけじゃなく、天堂はマツリちゃんにとっても友達じゃねーのかよ。」

 ……包丁が落ちた、視界に獅子神さんが映らない。

 どこ?どこにいったの?

「天堂さんは天堂さんで、獅子神さんのお友達で、獅子神さんのお友達なら村雨先生のお友達。だから大切にしないといけない人間だけど、仕方がないから。」

 身動きが取れない。

 どうして?

 目が痛い。苦しい。頭が痛い。

 頬に水が伝っている。

 苦しい。苦しい。吐きそうだ。

 ああ、タマネギを刻んだからか……

 視界が歪んでいるのはそのせいだ。

 

「……マツリちゃんはもう、ギャンブルを辞めろ。」

 


 

オリジナルデスギャンブル『鮮やかな虹霓』

『Vivid Vision Halo Dragon』

 

 プレイヤーは幻妖となり虹霓を使役する。

 虹霓は虹が雌の龍、霓が雄の龍である。

 先攻後攻を決め、ターン後に入れ替える。

 

 ペナルティは席に紐付き浮かぶ色付き風船の破裂。

 風船は集めた色分紐付けられる。

 

 今回は四捨五入とする。

 

 禁止行為は3分以上の遅延、暴力行為。

 

【プレイヤー】

 二つの垂直に16のマス目(0〜15)が開いたパレットが渡される。

 また、数字札(0の札、1の札、2の札、5の札、10の札)5枚、算術札(プラス札、マイナス札、タイムス札)、時刻札(上表示:幻日環、下表示:幻月環)をそれぞれ1枚ずつ使い回す。

 

『幻環』

 初期値: 0

 360を超えた分は余りを1から再度入れる。

 (例 :365ならば5になる)

『パレット』

 雌の龍と雄の龍の2つがある。

 2つのパレットは同じ虹霓として扱う。

 基本的にパレットを指す時は任意のパレット1つを選択する。

 0〜15の16マス。

 パレットは先入れ先出し方式(FIFO処理)であり、16を超えると0のマスから色が若い順にズレ、0にあったものは破棄される。

 パレット上に残っている色が天弓(龍)を構成するため、特定色が抜けると龍とは見做されない。

 (色の作り直しが必要)

 初期値:それぞれのマスはnull

 

【ターンの流れ】

 先攻は後攻が伏せ置いた時刻札を開示する。

 その時に表示した向きにより使用する色相が決まる。 

 (先攻が向きを変えて構わない)

 その後、お互いに数字札2枚と先攻は算術札を一斉に出し、先攻の数字札に対して後攻の数字札を算術する。

 算術した値が360を超える場合、下3桁を取り出してmod(360)で値を取り出す。

 1セット内で数字札は被りなく出さなければならない。

 算術札は1セット内の制限はない。

 (例 :先攻10と5の札とタイムス札、後攻0と10の札ならば105×100=10,500、500をmod(360)するので140が値となる)

 幻日環、幻月環共にHに該当する数字があればその値の効果を得、そのパレットに色を入れる。

 算術した値を幻環に入れる。(既存の幻環に加算する)

 加算した値がHに該当する数字があればその値の効果を得、そのパレットに色を入れる。

 数字が無ければ先攻は自分の出した数字札から以下を選択する。

 ①2枚の数字札を組み合わせて数値にし、幻環に加算しHに該当する数字があればその値の効果を得、その色にパレットに色を入れる。

 (例 :先攻10と5の札なら、105または510のいずれか)

 ②2枚の数値札と算術札で算術した数値を幻環に加算しHに該当する数字があればその値の効果を得、その色にパレットに色を入れる。

 (例 :先攻10と5の札とタイムス札なら50)

 ③稚龍を持つ場合、1匹を消費して現在の値で幻環を加算または減算する

 (例 :先攻10と5の札とタイムス札、後攻0と10の札ならば105×100=10,500、500をmod(360)するので140が値となり、140を加算または減算に使用する)

 ④雌の龍を持つ場合、1匹を消費して任意の値(1〜360)を幻環に加算する(効果も発動する)

 ⑤雄の龍を持つ場合、1匹を消費して自分が得た値を相手に加算することができる

 

 また、現在の自分の幻環が相手の幻環の補色であった場合(補色式で導く)次ターンで相手が得る効果を相手が得た後に受ける事ができる。

 

 先攻後攻を入れ替える。 

 5ターンを1セットとする。

 

【幻妖の龍】(Specter)

 プレイヤーが集める龍。

 虹霓は霓の天弓と虹の天弓を揃えて『番の虹霓』を2ペア完成させたプレイヤーが勝利する。

 

『番の虹霓』

 初期値: 0 2となった段階で勝利する

 以下が揃えば龍は番となり、虹霓となる。

 赤、黄赤、黄、緑、青、青紫、紫

『虹の天弓:雌の龍』

 初期値: 0

 以下が揃えば雌の龍を1匹獲得する。

 赤、黄、緑、青

『霓の天弓:雄の龍』

 初期値: 0

 以下が揃えば雄の龍を1匹獲得する。

 黄赤、青紫、紫

『光の天弓:稚の龍』

 初期値: 0

 以下が揃えば稚の龍を1匹獲得する。

 黄、シアン、マゼンタ

 

【色相:幻日環】(Hue)

 ①〜㉔は円状に繋がっており時計回りに配置されている。

 補色は色相角の式で求める。

 (例 :①のH:0°の補色は⑬のH:180°である)

 ① H:0°(#FF0000)赤 :相手のパレットを1つ押し出す

 ② H:15° (#FF4000)ガーネットオレンジ :得た値を次ターンに持ち越しして自分の幻環の算術に使用できる

 ③ H:30° (#FF8000)黄赤 :次に出す相手の数字札を指定する

 ④ H:45° (#FFBF00)シトリンイエロー :1セット中自分のパレットを相手から操作されない

 ⑤ H:60° (#FFFF00)黄 :3セットの間現在配置済みのパレットだけ固定する

 ⑥ H:75° (#BFFF00)ペリドットイエロー :1セット中算術札を1枚のみに使用制限する

 ⑦ H:90° (#80FF00)黄緑 :1セット中に数字札を1回重複制限を無視

 ⑧ H:105°(#40FF00)クリソベリルグリーン :1セット中時刻札の向きを下表示のみに制限する

 ⑨ H:120°(#00FF00)緑  :自分の任意の1マスを1〜15の間で繰り上げる

 ⑩ H:135°(#00FF40)ヒスイグリーン :自分の任意のパレットの色と相手の色を一つ入れ替える

 ⑪ H:150°(#00FF80)エメラルドグリーン :自分のパレットの任意の補色を追加する

 ⑫ H:165°(#00FFBF)青緑 :自分のカラーパレットの1マスを入れ替える

 ⑬ H:180°(#00FFFF)シアン :3セットの間現在配置済みのパレットだけ固定する

 ⑭ H:195°(# 00BFFF)アイオライトブルー :自分のパレットをHの昇順に入れ替える

 ⑮ H:210°(#0080FF)青紫 :次に出す相手の算術札を指定する

 ⑯ H:225°(#0040FF)サファイアブルー :自分のパレットマスを15の位置を基準にに詰める

 ⑰ H:240°(#0000FF)青 :自分のカラーパレットの1〜3マスを入れ替える

 ⑱ H:255°(#4000FF)ラピスラズリパープル :次の3ターンに出た値を色を持つHに一番近いHを探し、その値とする

 ⑲ H:270°(#8000FF)アメジストパープル :いずれかの任意の効果を発動する

 ⑳ H:285°(#BF00FF)紫  :相手のカラーパレットを3マス押し出す

 ㉑ H:300°(#FF00FF)マゼンタ :3ターンの間現在配置済みのパレットだけ固定する

 ㉒ H:315°(#FF00BF)赤紫 :相手のカラーパレットを1マス押し出す

 ㉓ H:330°(#FF0080)ルビーレッド :1セット中効果を無効とする

 ㉔ H:345°(#FF0040)レッドベリル :相手が次に得る値を次の幻環で使用できる

 

【色相:幻月環】

 ①〜⑩は円状に繋がっており時計回りに配置されている。

 補色は①と⑥、②と⑦、③と⑧、④と⑨、⑤と⑩である。

 ① H:0° (R)赤 :相手のパレットを1つ押し出す

 ② H:30° (YR)黄赤 :次に出す相手の数字札を指定する

 ③ H:60° (Y)黄 :3セットの間現在配置済みのパレットだけ固定する

 ④ H:90° (GY)黄緑 :1セット中に数字札を1回重複使用可能

 ⑤ H:120° (G)緑 :自分の任意の1マスを1〜15の間で繰り上げる

 ⑥ H:165° (BG)青緑 :自分のカラーパレットの1マスを入れ替える

 ⑦ H:240° (B)青 :自分のカラーパレットの1〜3マスを入れ替える

 ⑧ H:210° (PB)青紫 :次に出す相手の算術札を指定する

 ⑨ H:285° (P)紫 :相手のカラーパレットを3マス押し出す

 ⑩ H:315° (RP)赤紫 :相手のカラーパレットを1マス押し出す

 

【色効果】

 重複した場合、打ち消すものであれば打ち消しを行い、そうでないものは上乗せする。

 

【補色式】

 色相角で補色を導く式。

 色相角 H = ( H + 180 ) (mod360)

 (mod 360 は「360で割った時の余り」という意味である。)

 簡単に言うと、360以上ならば360を引く。

 (または360で割った『余り』を出す)

 360未満ならば(H + 180)のまま利用する。

 (例 :30 = ( 30 + 180 ) = 210 ←そのまま利用する)

 (例 :330 = ( 330 + 180 ) = 510、mod360で1余り150、すなわち510 - 360 = 150)

 つまり、180未満は+180以上は-180とする。

 


 

「災難でしたね、天堂さん。」

 

 恒例行事の如く個別の共通のテーブル部分が連結したガラスパイプに入れられて用意された簡素な椅子に着席した。

 天堂さんは無表情で、笑みを浮かべているのか怯えているのか分からない。

 先行は自分、後攻は天堂さんとなった。

「安心しなさいマツリちゃん。神が来ましたよ。」

 ……何を。

「何を言ってるんですか?意味が分かりません。神は既にこの場にいるのに。……時刻札を開示します。」

 私から見て時刻札が下、つまり幻月環になっているはず。

 理由は簡単、種類が少なく短期に無駄なくパレットを埋められるからだ。

 そして自分がそれを見越して向きを変えないことも承知済みだろう。

「やっぱり幻月環だったみたいです。神は全てを見通しますから。」

 天堂さんは目も眉も唇も動かない。

「では、マツリちゃん……マツリ、数字札と算術札を出しなさい。」

 自分は[1][2][*]を12と乗算とする。

 天堂さんは[1][0]を10とする。

「あれ?幸先良いスタートダッシュを切っちゃいました。」

 幻月環のH:120° (G)緑。

 雄の龍のパレットの[0]番目に緑が入ったが、先入れ先出し方式ならずらしておこう。

「パレット[0]の緑を[9]に移動します。」

 

 先行後攻が交代し、天堂さんが両手を開いた。

「マツリ、神は救いを求める者を見捨てない。」

 ……だから

「違いますよ?天堂さん。神は愚かな山羊を救わない。何故ならば無垢な仔羊ではなく、山羊とは悪魔の使いであるから。」

 自分はクルクルと回してから時刻札を下に向けて伏せた。

 天堂さんから見て時刻札が上、つまり幻日環。

「マツリは邪悪なる山羊だから救われないと。」

 ……違う

「侮辱で我を忘れさせる戦法ですか?」

 顔を見ても蝋人形のように動かないが、本当に人間なのか?

「マツリは日の下で陽に当たりたいと。幻日環。」

 ハッタリだ。

「やはり幻日環でしたね。」

 上下の2種しか状態がないんだから、1/2の確率を当てただけ。

「さあ?では数字札と算術札を出してくださいよ。」

 自分は[2][0]を20とする。

 天堂さんは[10][0][+]を100と加算とする。

 幻日環のH:120° (#00FF00)緑

「偶然ですね、マツリ。同じ緑です。パレット[0]の緑を[9]に移動しますね。」

 ……違う、気圧されるな。

 確率的に120になるのは容易に想像出来ること。

 自分は可食可能な純粋無垢なる清らかな山羊……ではなく仔羊であり自分は村雨医師により安寧へと導かれるべき飽くなきユートピアに足を踏み入れられる存在であり桃源郷に向かい入れられる存在が自分だけであり自分は自分であるから自分は自分の自分に自分と

 

「マツリ、告白をするなら聞き入れます。」

 


 

「自分は樂舵の会始まって以来の御子、祟拝山 尊(すいはいざん たっと)であり、災いと祟りを司る禍根(カース)、祟り神の使い、化身である。」

 

 畜生、畜生、畜生。

 何故、何故、何故、互いの雌の龍のパレットに黄、緑、青が入り、雄の龍に黄赤、青紫が入っているのだ。 

「マツリ、残りは赤と紫。マツリは邪神などではありません。マツリは」

「家畜共、頭を垂れて我に平伏せ。畜生、畜生、畜生。皆の首は皆の首は切った切った全て切った。」

 幻妖の龍を統べ、使役するのは自分しかいない。

 幻環も互いに315°の赤紫。

「マツリが世間を騒がせた樂舵の会の経営者……いえ、会長の血筋だということは電子の黒海(アングラ掲示板)に曝された個人情報から推察出来ていました。」

 だから何だ。

「畜生、畜生、畜生、畜生どもの首を切らねばならない。それが私の使命だ。生まれた意義だ。思想という種を根絶やしにするには、全ての分布地を周り根から皮脂まで掘り起こし、地獄の業火で焼却し、悪意のガソリンを燃やし尽くして全てが灰になるまで種を絶やすのだ。根絶せねばならない。誰かがやらねば、自分がやらねばならない。」

 自分が血統であるという漠然とした事実に何ら特別な意味を付与することは叶わない。

 時刻札をルーレットのように回転させたあと、下に向けて伏せた。

 あの男から見て時刻札が上、つまり幻日環。

「マツリはしたくない事をした。自分の家族や周囲の人間が間違っていると知っていたから。無辜の被害者を出さないために、被害者を出した。……幻日環。」

 百発百中か、だったら何だ。

 ワンヘッドクラスはカードシャッフルを見切るなど容易い。

「……はあ?被害者を出したなら自分は加害者。それ以外にない。速く数字札と算術札を出してくださいよ。」

 自分は[5][10]を510とする。

 あの男は[10][2][*]を100と加算とする。

 つまり510×102=52,020、52,020mod360=180。

 幻日環の H:180°(#00FFFF)シアン

「また稚の龍が増えました。マツリ、もう一人で背負い込む必要は」

「黙れ!!偽物の分際で神を語るな!!自分こそが地獄より出でた全ての悪!!諸悪の根源禍根(カース)である!!畜生、畜生、畜生、首を切られたくなければ頭を垂れよ!!1列に並べ!!断罪の時である!!現世の罪は自らの血で贖うのだ!!」

 男の幻環に加算され、495となるがmodで幻環135°となる。

 幻日環のH:135°(#00FF40)ヒスイグリーン

「そういえば畑のトマトが熟れてきましたね。スイカがカラスに食べられてしまっています。マツリ、どうやってカラスを追い払えば」

「畜生、畜生、畜生、今目の前にある生死ついて向き合わねば、お前の首は血に落ち永遠の拘束を受けるだろう。はなから始末する予定であったのだ。自分には村雨先生だけいればよい。いらぬ、いらぬ、いらぬ、いのちの恩人以外に用はない。」

 138°ヒスイグリーンの効果で以下を交換し、幻環135°に150°が加算される。

 H:135°(#00FF40)ヒスイグリーン

 H:150°(#00FF80)エメラルドグリー

 幻環285°……つまりH:285°(#BF00FF)紫が手に入り、150°エメラルドグリーンの効果で補色を手に入れた。

 H:75°(#BFFF00)ペリドットイエロー

 この効果で1セット中算術札を1枚のみに使用制限するとして、不利になるのは同じこと。

「……ところで、何故『お守り』と称して梅の下に首吊り紐を吊り下げていたのでしょうか。」

 ……答えたくない。

 話したくない、煩い、見ないで、あっちに行って。

 知らない、誰?わかんない。知らない人。

 自分は日向に行けないから、何をしても、無駄。

 裏切られるなら、裏切っておけばいい。

 頭いい、頭いいね、賢い、尊はいい子、尊い子。

 あなたこそが地獄から私を救ってくれる愛しい子。

 尊、あなたには外界のことなど必要ないの。

 ……さんがいつもあなたを見守って

「マツリは誰かに『止めてほしかった』のではないですか?ひとりぼっちの孤独から救い出してくれる差し伸べられた手を持っていたのでは」

「黙れって言ってんだよ!!お前なんか……お前なんか……」

 その時、ようやく男と目線が合い、男の口もとは緩んでいた。

 あんなに風船をぎゅうぎゅうに詰めて、更に4つの風船が……。

 風船の……ガラスパイプ内の隙間がほとんど無い。

 もしかして、摩擦の静電気で爆発する水素ガスか?

 目先のことだけ見てしまって、ただの風船による圧迫と酸欠による窒息だと……。

 そんなわけ、無いのに……。

「マツリ、神は告解を受け入れます。」

 駄目だ、今動いたら風船が爆発して連鎖的な炎上になる。

 そんなことになったら、天堂さんが……。

 天堂さんが死んじゃう。

 

「誰か助けて……天堂さんが死んじゃう……神様、どうか天堂さんを守ってください……。」

 

 頭が割れるように痛い。

 目が回る。

 苦しい。

 天堂さんを助けなきゃ……。

 大切な……。

 

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