※この作品はR-18です。

悪癖   作:ummt

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リインカーネーション
起 モノクロの蝶


 

 

「もう!!なんでレイメイと全然会えないわけ!?アンタ……まさか、わざと遠ざけていないでしょうね!?」

 

 バンッと車の運転席を蹴った。

「ごめんね、リンネさん。そうそう叶黎明クラスを割り当てられないから。」

 運転席のから気の抜けた返事を受けて、さらに脚で座席を蹴った。

「なんでアタシが松本班とかいうモブ班なのよ!!」

 

 ……アタシ、天塚 燐子(あまつか りんね)はいわゆる転生者だ。

 前世の記憶を取り戻したのは16歳の夏、ゲリラ豪雨の雷に撃たれた時だった。

 奇跡的に一命を取り留めたアタシは、この世界が大好きだった『ジャンケットバンク』の中だと『カラス銀行の顧客』……つまりVIPの暗黒金持ちのパパがいるから直ぐに気づけた。

 原作では、ちょうどEzModeの途中で3週連続休載の途中だったはず。

 前のアタシは夢小説を書くのに夢中で、ながらスマホをしていてトラックに轢かれて死んだ。

 

「白金班の灰谷蓮司に交代して!!」

 何度も後部座席から蹴ると、車が止まった。

「はいはい、到着しましたから。リンネさん。」 

 後部座席の扉を松本が開けて、その腹にパンチを入れる。

 

「しっかりしなさいよ!!」

 

。。。

 

 カラス銀行のVIPといっても直接ギャンブラーに声をかけられないから、パパにお願いして『高校生ギャンブラー』になりたいとおねだりした。

 そうしないと推しのレイメイに会えない。

 アタシはレイメイに会って彼女になるんだ……。

 パパはアタシを危険な目に合わせられないからと嫌がったけど、ママの忘れ形見のアタシのお願い事を最終的には聞き入れてくれた。

 

「未成年者はギャンブラーとして扱えません。」

 パパと直談判しにいったのに、宇佐美主任はありえない対応をした。

「はあ!?違法賭博してるのに!?……分かりました、アタシの実力をお見せします。」

 応接室のソファから立ち上がって深呼吸する。

「宇佐美主任、ボールペンをお好きな場所に隠してください、その間アタシは目を瞑ってますから。」

 ……私は転生者としてチート能力を手に入れていた。 

 『相手の1分以内の行動を知ることができる』

 これは願ってもない能力だった。

「はあ……分かりました。」

 宇佐美主任がボールペンを胸ポケットに隠ずふりをして、ソファのすき間に入れた。

「目を開けます。ボールペンはソファのすき間にあります!!」

 高らかに宣言すると、宇佐美主任はニコッと微笑んだ。

「……それで、実力とは?」

 ……はあ!?

「アタシ!!ギャンブラーとしての勘があるんです!!……しょうがないなぁ……宇佐美主任の誕生日は10月10日、AB型で趣味はガチャガチャ収集、好物は生クリームですよね!?」

 ようやく宇佐美主任が真面目な顔になった。

 これで……

 

「そうですが、実力とは?」

 

。。。

 

 そのまま宇佐美主任にOKを貰えずに部屋を出ると、見たこともない男性キャラクターが待っていたかのように廊下に立っていた。

 

「こんにちは。僕は松本班の松本茶色といいます。……ギャンブラー志望の方ですか?」

 

 松本班なんて聞いたことがなかったけど、モブ班として存在しててもおかしくない。

「そう!!アタシは天塚 燐子!!リンネさんって呼んで!!」

 松本は「高校生と伏せ、成人済みの専門学生として登録する」と言って賭博口座の通帳を渡した。

 ……確か、賭博口座は一定の額が必要だった気がするけど、パパのコネクションのおかげで優位に立てたみたい。

 

「僕が担当行員になります。よろしくね、リンネさん。」

 


 

 前世の記憶によって5スロットや4リンクの内容は分かっていたし『相手の1分以内の行動を知ることができる』能力によって無敗のままハーフライフ戦に昇格できた。

 

「すごいね、リンネさん。無双だね。」

 隣でヘラヘラ笑う松本に肘鉄を食らわす。

「……で、相手は誰なの?」

 レイメイだったら嬉しいけど、デッドマンズ・キャンドルライトとかブルー・テンパランスだったら死んじゃうかもしれない。

 アンハッピー・ホーリーグレイルならリスクは低いけど、もうレイメイは真経津くんと戦ってるよね。

「入ってみてのお楽しみ。」  

 ニヤけながら松本が扉を開けると、暗黒金持ちたちの視線が一斉にこちらを向いた。

 四角いテーブルに対面するように置かれた椅子、その向こうに時雨が立って手首を擦っている。

「あ……時雨賢人!?……まだ生きてたんだ……ライフ・イズ・オークショニアで……」

 慌てて口元を隠すと、時雨賢人と目が合った。

「オヤオヤ、相手が年端もいかないお嬢さんとは……。よく対戦相手をリサーチしていますね。」

 まだ死んでないならレイメイもアンハッピー・ホーリーグレイルで戦っていない?

 でも『リサーチしている』と言ったし、あのあと生存してたということ?

「そうね……アタシには何でもお見通しなんだから。捜査二課、誕生日は6月28日、B型の34歳で好物はフグ刺しの時雨賢人さん。」

 ギャンブルモードに表情を切り替える。

「成る程、少々厄介かも知れませんね。」

 

 司会は特四片伯部班の紅宮だった。

 

「皆様!!本日の司会は紅宮が担当させて頂きます!!」

 


 

オリジナルデスギャンブル『モノクロの蝶』  

 

 プレイヤーは蝶のコレクターとなり、蝶を先にコンプリートした者が勝者となる。

 モチベーションが0になった場合は敗北する。

 

 先攻後攻をターン毎に交代する。

 

 ペナルティは胴体に巻き付く糸(ワイヤー)の増加。

 

【蝶札】

 表面と裏面がある。

 

『黒蝶』

 ①表面が黒、裏面が黒

 ②表面が黒、裏面が白

 ③表面が黒、裏面が紫

 ④表面が黒、裏面が青

 ⑤表面が黒、裏面が鏡

 

『白蝶』

 ①表面が白、裏面が黒

 ②表面が白、裏面が白

 ③表面が白、裏面が紫

 ④表面が白、裏面が青

 ⑤表面が白、裏面が鏡

 

【蝶の遷移】

 初期段階:全ての蝶は初期段階からスタートする

 第一段階:卵

 第二段階:孵化

 第三段階:幼虫

 第四段階:前蛹

 第五段階:蛹

 第六段階:羽化

 第七段階:成虫、この段階になるとコレクションに加算される

 

【コレクション】

 全ての蝶は初期段階として保持している

 種類ごとに複数匹保持できるが、第七段階を経たあとは新しい蝶を自動的に初期段階として取得する

 黒蝶:裏面が黒

 白蝶:裏面が白

 紫蝶:裏面が紫

 青蝶:裏面が青

 鏡蝶:裏面が鏡

 純黒蝶:表面も黒のみ

 純白蝶:表面も白のみ

 

 純黒蝶と純白蝶は表面がそれぞれの色かつ裏面指定も同色ならば変化と見做す

 

【プレイヤー】

 コスト:初期値0P

 資金:初期値16P、コレクションか新種追加毎に+7P

 モチベーション:初期値7P、コストが+7Pごとに-1P、コレクションか新種追加毎に+3P

 

【ターンの流れ】

 

 毎ターン開始前に資金+5Pが与えられる。

 

『飼育フェイズ』

 後攻は場に3枚の蝶札を表面を上にして出す。

 ※1セット内で必ず全ての種類を最低一度は出す

 

 先攻は取得したい裏面の色を宣言して1枚の札を選択する。

 後攻は先攻が選択した札の裏面を提示する。

 

 宣言通りならばその色の蝶の段階を一段階上げる。

 宣言が失敗した場合コストを+1Pする。

 

 これを3枚の札全てに行う。

 

『調達フェイズ』

 先攻は以下の選択肢から行動を選択する。

 

 A:資金を-1Pしてコレクションの第一段階以上の蝶を一匹選んで段階を上げる、複数回使用可能

 B:資金を-3Pして相手のコストを+3Pする

 C:資金を-5Pして次に相手が出す札の中に自分が指定した裏面の色の蝶を入れる

 D:資金を-7Pして自分が指定した裏面の蝶を第一段階にする

 E:自分が指定した蝶を捨て、段階ごとに段階の2倍の資金を得る

  ※例 第五段階ならば10Pの資金を得る

 F:相手プレイヤーが了承した場合、自分が指定した相手の蝶(段階)と自分の蝶(段階)を交換し、相手に資金4Pを支払う

 G:資金を-9Pして鏡蝶を自分が指定した蝶(段階)に変える

  ※例 鏡蝶を純黒蝶に、ただし同じ段階なら無効

 H:自分が指定した蝶を捨て、段階ごとに+2Pしたコストを除算する

 ※例 第五段階ならば7Pのコストを削減、余り分は切り捨てる

 

 蝶を破棄しても新たな初期段階の蝶が配置される。

 

 完了後、後攻が同じフェイズを行う。

 

 これを一ターンとし、先攻後攻を入れ替える。

 

 

 28ターンを1セットとする。

 

【特殊ターン】

 以下の28ターンを一周期とし、繰り返す。

 

『春風』

 7ターン目、双方の純白蝶と純黒蝶以外の第三段階未満の蝶が第三段階になる

『梅雨風』

 9ターン目、双方の特定の蝶が初期段階になる

 セットが五以上になっても以下のからスタートする

  一セット目:純白蝶、純黒蝶

  ニセット目:鏡蝶

  三セット目:黒蝶、白蝶

  四セット目:紫蝶、青蝶

『夏風』

 14ターン目、双方の第五段階未満の純白蝶と純黒蝶が第五段階になる

『秋風』

 21ターン目〜23ターン目、双方の全て蝶が第五段階以上にならない(それ以外の段階は上がる)

『冬風』

 28ターン目、双方の全ての第五段階以外の蝶は初期段階に戻る

 


 

「アタシが先攻。……その札は『黒蝶で裏が紫』ね?当たってるでしょう?」

 

 時雨は札を裏返すと、裏が紫だった。

 それもそのはず『相手の1分以内の行動を知ることができる』能力で何を伏せたかの情報が脳裏に飛び込んでくる。

 『飼育フェイズ』はアタシが必ず勝てる。

「実に素晴らしい、3枚共当てるとはなかなかできることではありませんよ。」

 『調達フェイズ』もAの段階上げ一択でいれば先にコレクションをコンプリートできる。

「そうね、アタシは紫蝶の段階を一段階上げるわ。」

 宣言すると、モニターに映し出された紫蝶のイラストが卵から孵化状態に変わった。

 

「お手並み拝見といたしましょう。お嬢さん。」

 

 後攻、時雨のターンになると時雨は札を2つ当てて、1つ外したペナルティとして胴体にワイヤーが1本巻かれた。 

「刑事さん、大丈夫?ライフ・イズ・オークショニアで取り留めた一命を大切になさって?」

 アタシはてっきり電流により死亡したものだと思っていたけど、時雨のメガネを山吹が持っていただけで死亡したとは明言されていなかった。

「……一命?何のことでしょうか。彼は確かに死にましたが。」

 ……彼?

 なら山吹が死んだ?

「あら、相棒の方が亡くなったのね。」 

 山吹が死ぬルート……もしかして、アタシは本編と違う世界線にいるの?

「頓珍漢なことを言って場を混乱させようとするとは、随分と陽気な方だ。山吹は死んでいません。」

 頓珍漢?……まさか

「……もしかして、村雨先生と獅子神さんのどちらかが亡くなった……?」

 時雨はため息をついてテーブルをコンコンと叩いた。

「撹乱が策のようですね。ライフ・イズ・オークショニアで対戦したのは彼らではありませんよ。」

 ……よかったぁ、真経津フレンズが欠けていたらどうしようかと思った。

「陽動に乗って差し上げましょう。私は紫蝶と青蝶の段階を一段階上げます。」

 二種類同時に!?そうだった……『一種類のみ』とは言ってなかった。

「顔色が優れないようですが、体調が優れないのなら棄権なされては?」

 そんなの……無理。

 アタシはレイメイの彼女になるんだから!!

 

「問題ないわ。続けましょう。」

 

、、、

 

 14ターンが来る前にに、時雨は紫蝶と青蝶、鏡蝶を第七段階にしてコレクションして、アタシも真似してお互いの第五段階未満の純白蝶と純黒蝶が第五段階になった。

 

「君に一つ尋ねたい。」

 アタシは間違って1回ずつ純白蝶と純黒蝶に資金を投資してしまった。

「まさかとは思いますが、ただ全種類に資金を出してません?」

 そんな事言われたって、普通一回説明を聞いただけじゃ分からないでしょ!?

「ブラフよ、ハッタリ。」

 どうしよう『相手の1分以内の行動を知ることができる』能力があっても、自分の行動の正解は分からない。

 『飼育フェイズ』のペナルティを受けることはないけど、こうなったら時雨の動きをトレースするしかない。

「アタシは純黒蝶を第七段階にして、純白蝶を第六段階に上げるわ。」

 お互いの純黒蝶、純白蝶がコレクションされた。

 

「私の見当違いでしたか。」

 

、、、 

 

 23ターン目までに時雨は黒蝶、白蝶を第五段階にして、鏡蝶を再び第二段階にした。

 

「アタシも直ぐに追いつくわ……。」

 失敗したのは紫蝶、青蝶のコレクションだけ。

 まだ巻き返せる。

「なんとも幸せな方だ。この状態でも勝つ気でいるとは。」

 アタシは時雨を真似すればいい。

 

 25ターン目までに時雨は黒蝶を第七段階にしてコレクションして、白蝶と鏡蝶を第五段階にすると漆黒蝶と純白蝶を再び第二段階にした。

 ……分かったわ、Hの選択鏡蝶と黒蝶を捨てて資金を稼ぐ気なのね。

 

 28ターン目、第五段階以外の蝶は初期段階に戻ってお互いに白蝶、鏡蝶だけが生き残った。

「では提案です。Fで鏡蝶を差し上げたいのですが、どうなさいますか?お嬢さん。」

 ……アタシはまだ鏡蝶を持っていない。

 でもあと二段で鏡蝶は手にはいる。

「必要ないわ。」

 時雨には白蝶というリーチがかかっている。

 でもDで時雨の白蝶を第一段階に引き戻せばいい。

「ここまで読み外すとは。私は鏡蝶を差し上げたのに。Bを使用します。あなたのコストはモチベーションを0にした。……敗北ですよ、お嬢さん。」

 時雨がフッと笑みを零すと私に向かって沢山のワイヤーが胴体に巻き付いて身体を締め付ける。

 

「嫌!!アタシは死にたくない!!」

 


 

 目を覚ますと、松本が至近距離で顔をのぞき込んでいた。

 

「ギャアッ!?何よっ!!」

 ニヤケ面を突き飛ばすと、自分の胴体が真っ二つになっていないことに気づいて胸をなで下ろした。

「良かった、リンネさんが生きていて。」

 そっか、ハーフライフ戦だから死ぬとは限らないんだ。

 松本に背を向けて恐る恐る服をめくり上げると、ミミズ腫れのように痕が残っていた。

「最悪!!お嫁にいけないじゃない!!パパにお医者を……そうだ、村雨先生に頼むチャンスじゃない!!松本!!連絡しなさいよ!!」

 背中を蹴ると、気の抜けた声を出した。

「個人情報ですから、会ったときに直接言ってください。」

 ……まだハーフライフ戦を一回負けただけ。

 それに原作と違うルートを歩いている。

 

「分かったわ……。絶対にフレンズ入りしてやるんだから!!」

 

 

 

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