オリジナルデスギャンブル『再会のマメシバ』
『Reunion with the Mameshiba』
プレイヤーはマメシバの飼い主となり、相手の財宝を奪うことを目指す。
先攻後攻をターン毎に交代する。
ペナルティは土砂の蓄積。
【環境】
プレイヤー同士は0〜15が書かれた『道』のマスで直線で繋がっている。
両者共にゲーム開始前に7つの財宝を道の何処かに埋める。
※例 0に5つ、2に1つ、7に1つなど
マメシバが『道の小屋』に戻ると財宝取得が確定する。
【プレイヤー】
『道の小屋』
プレイヤーAは0の前、プレイヤーBは15の後ろに位置する。
マメシバが『帰巣本能』で帰るときは『道の小屋』に戻る。
『財宝』
7つの財宝:開始前に埋めるので初期値0、相手の7つの財宝を奪うと勝利
『伝書鳩』
相手のマメシバに対して『部分命令』を出せる。
伝書鳩は次の自分のターンまでは空中を飛んでいる。
次の自分のターンになるとまた手元に戻る。
自分のターン中3回に1度飛ばせるが、伝書鳩を飛ばすと自分のマメシバに命令出来ない。
『部分命令』
マメシバの命令のコマンドを一つ変える。
『帰巣本能』
大好きな歌:自分たは相手のマメシバに対して『道の小屋』に戻る命令を出せる。マメシバは次のターンに飼い主の『道の小屋』に回数制限を無視して直帰する。
【マメシバ】
マメシバは命令で動く。
初期命令:飼い主『プレイヤー』、行動『待機』、回数『0』
マメシバは『道』以上に進行する事が出来ない(0または15で空動作する)
マメシバはターン後、現在地に留まる。
マメシバは『穴掘(DIG)』で掘った財宝を咥えている。
咥えている財宝の個数にに制限はない。
【コマンド】
飼い主:『プレイヤーA』『プレイヤーB』
行動:
『待機(NONE)』何もしない
『移動(MOVE)』方向命令がある場合に移動、一度でも方向が命令されたらそれに準ずる
『方向(WARD)』BUCK(後退)またはFOR(前進)
『遠吠(BARK)』マメシバの現在地に財宝があるが知らせる、ない場合は鳴かない
『穴掘(DIG)』マメシバの現在地を掘る。
マメシバは1度の行動につき1つの財宝しか掘り出せない。
回数:0〜2
※飼い主『プレイヤーA』、行動『方向(WARD)、FOR』、回数1
これで前進命令の準備
飼い主『プレイヤーA』、『移動(MOVE)』、回数2
これで前進2マスに進む
飼い主『プレイヤーA』、『遠吠(BARK)』、回数1
これで相手の財宝がそのマスにあるか把握する
飼い主『プレイヤーA』、『穴掘(DIG)』、回数2
これで相手の財宝を最大2つ獲得できるが、まだ財宝が残っているかは次に『遠吠(BARK)』をするか『穴掘(DIG)』をしないと確認出来ない
※伝書鳩による『部分命令』
飼い主『プレイヤーB』、『穴掘(DIG)』、回数2
飼い主をプレイヤーBとみなし、自分の財宝を『相手の財宝』として獲得できる
【ターンの流れ】
先攻は命令をマメシバまたは伝書鳩に出して『道』に送る。
後退は命令をマメシバまたは伝書鳩に出して『道』に送る。
先攻後攻を入れ替える。
「眞鍋瑚太郎……!?」
これ、ハーフライフ戦よね!?
どうしてワンヘッドクラスが相手なの!?
「……まだ子供じゃないか。帰りなさい。」
まさか村雨先生と同じようにワンヘッドからわざと落ちたのかしら、それともワンヘッドに昇進していないのか……。
「いいえ、帰らないわ。……私は専門学生、成人してるわ。シュークリームが大好きな眞鍋瑚太郎先生。」
眞鍋先生は前髪が目元に掛かり表情が伺いしれない。
「嘘をつくと立派な大人になれないぞ、[[rb:燐子 > りんね]]。パパに『我が儘を言って未成年ながらギャンブラーになってしまい、心配と苦労をかけてごめんなさい』と謝ろう。」
やっぱり第3種閲覧権を持っている……。
ワンヘッドだったのは間違いないわ。
「ええ、この勝負に負けたら言うわ。」
お互いに7つの財宝を道にセットすると、お互いを繋ぐ道の上0と15の外側……道の小屋に犬のオブジェクトがせり上がってきてスタンバイが完了した。
先攻はアタシで命令文『リンネ、方向(WARD)FOR、回数1』を指示するとアタシのマメシバが道のマスを一回前進した。
こういうゲームって案外手前に隠すものだから、灯台下暗しってやつね。
「さあどうぞ、眞鍋先生。」
眞鍋先生はまったく無反応のまま、命令文『眞鍋、方向(WARD)FOR、回数1』を指示して、眞鍋先生のマメシバも一回前進して互いのマメシバが0と15のマスに躍り出た。
「君にはまだ、この先に未来がある。」
そうよ、アタシには……バラ色の未来が待っている。
負けるわけには行かないの。
「ええ、未来ある若者に嫉妬したのかしら?」
彼は命令文『眞鍋、方向(WARD)FOR、回数2』を指示し、眞鍋先生のマメシバは2回前進した。
……13のマスは5つ財宝を隠した場所。
大丈夫、大丈夫よ。
まさか一つの場所に5つも財宝を埋める策を取るなんて思わないでしょうから。
アタシは命令文『リンネ、遠吠(BARK)、回数1』を指示するとマメシバが鳴いた。
「あら、財宝はここにあったのね?」
次のターンで掘って、一度帰巣本能で道の小屋に戻して確実に財宝を手に入れる。
「では、財宝をいただくわ。」
アタシは命令文『リンネ、穴掘(DIG)、回数1』を指示して、画面にはマメシバが財宝を咥えたイメージが表示される。
今回は着実に行けば勝つ見込みがある。
「子供は、間違ってもいいんだ。」
彼は命令文『眞鍋、穴掘(DIG)、回数2』を指示した。
……は?
『遠吠(BARK)』をしないで『穴掘(DIG)』を指示できるの!?
画面には財宝を咥えた両者マメシバが映っている。
「……そうね。」
「間違ってもいいが、間違った事実は変えられない。」
眞鍋先生に見つめられていることが目元が見えなくてもひしひしと伝わってきて恐ろしい。
彼は再び命令文『眞鍋、穴掘(DIG)、回数2』を出した。
何で財宝が複数あると分かったの!?
でもいいわ、アタシが取り返せばいいし13のマスの残り一つは気づかれないまま。
「説教しがちになるのが、いかにもな大人って感じよ?眞鍋先生。」
アタシは次に眞鍋先生が『帰巣本能』をするターンに『伝書鳩』で命令を書き換えて奪い返せばいい。
自分のマメシバに命令文『リンネ、帰巣本能、回数1』を出してマメシバが道の小屋に戻り財宝が1Pカウントされた。
これならいけるわ。
「アタシは伝書鳩を使うわ。部分命令を『アタシ』に変えるわ。」
これで眞鍋先生が『帰巣本能』をしても別の何かでもアタシのマメシバになる。
「減点、76。」
……何がよ。
彼の口元が緩んでいる。
眞鍋先生は自分のマメシバに命令文『リンネ、穴掘(DIG)、回数2』を指示した。
……は?何でまた同じ場所を!?
財宝5個、全部掘り起こされた……!?
「伝書鳩は後攻のターンで使うべきだったな、[[rb:燐子 > りんね]]。」
「では、5つの財宝を貰おうか。」
そうニコッと笑って自分のマメシバに新たに命令文『眞鍋、帰巣本能、回数1』と指示して5つの財宝を獲得して5Pカウントされた。
、、、
結局、自分の財宝含めて9P先に盗られてしまった。
「気をつけて帰れよ。[[rb:燐子 > りんね]]。」
プラスチックの枠がせり上がってきて上から土砂が流れ込んでくる。
もう嫌。
私は死にたくない。
死にたくないよ。
、、、
目が覚めるとベッドの上にいて、隣のパイプ椅子に松本が座っていた。
「アンタ……まさかずっといたの!?気持ち悪いわよ!!」
起き上がって松本を叩いた。
「眠り姫には寄り添う王子様が必要だから……なんてね。リンネさんはハーフライフから降格したよ。……だからゆっくり休養して。」
やっぱり降格か……負け続きだったものね。
「まったくもう!!アンタがネームドとばかり組ませるからよ!!」
……でも自分の実力を理解できて、かえって良かったかもしれないわ。
「すみません。でもヤケになってエナドリがぶ飲みは止めてくださいね。」
……エナドリ?
転生してからエナドリなんて口にしていないわよ。
エナドリを飲むくらい疲れているように見えるのかしら。
「……はあ?アタシがエナドリを口にするわけないでしょう。」
そう言うと松本は固まった。
「あ、将来そういう大人になりそうって意味です。」
……。
「……失礼しちゃうわ!謝りなさい!!」
「……あの時、助けられなくてごめんなさい。」
僕が転生者だと自覚したのは、カラス銀行に入社したばかりの頃だった。
叶黎明を表の窓口業務で見かけたとき『あ、■■さんの推しキャラだ』そう思った瞬間、脳裏に前世の記憶が洪水のように流れ込んできて、この世界がジャンケットバンクだと客観的に理解した。
それと同時に、能力が発現したのだと直感した。
『相手の1分以内の認識を歪めることができる』
この能力を『パルプ・フィクション』と名付けて、人事面接の時に担当幹部の認識を『自分は窓口業務ではなく特別業務に居るべきだ』と歪め、特別業務部に異動が決まった。
ただ、直ぐに歪みは『実力の有無』によって解消されかかり、完全に消える前に『自分を裁定する権限は業務課ではなく特別審査課』とし、正式ルートで『特別審査課』に席を置いた。
それでも辻褄を合わせ続けるのは難しく、白金班以外の一人一人に『自分は白金班の松本』とし、白金班には『自分は宇佐美班の松本』として立場を隠すのに精一杯だった。
誰にどの班として説明をしたかを記憶するのは苦痛だったが、カラス銀行の特別業務部自体が全員で介することがあまりないため、一度固定されたらほとんど更新されることのない『自分の所属』を主張をしないことで影の薄い幽霊行員の立場を獲得できた。
……絶対に■■さんもこの世界に転生し、必ず叶黎明に会いに訪れる確信があったから。
。。。
「■■さん、この仕様書がわからなくて……すみません。」
僕は一度聞いたことを覚えられず、メモを取ってもメモの内容を理解するのに時間がかかるお荷物新人で、勤め先がそうそう『新入社員』のクビが切れないことをいいことにタダメシを喰らうボンクラだった。
「また?□□くん……これはね?……まって、今はメモはしないで。多分、□□は並行作業が苦手なんだと思うから、まずは私の説明を聞いて?」
先輩にあたる■■さんは高卒採用だったらしいけれど知識が豊富で、何よりグズでノロマと言われているクズな僕に嫌な顔一つせずに指導してくれた。
そして、■■さんに説明された時にだけ、すんなりと内容を理解できた。
「ありがとうございます……いっつもご迷惑をかけて……僕、一回じゃ覚えきれなくて。」
仕様書を握りしめて頭を下げる。
きっと大卒のくせに使えない新人として見下している……。
「普通のことよ、気にしなくていいわ。他の人が意地悪く教えないなら『教えるのも業務のうち!!』と言ってやりなさい。言えないなら私の名前を出しなさい。……ただ、教える側の都合と時間を奪っていることを忘れてはダメよ。何度も聞くということは教えた労力が無駄になったということは事実なんだから。叱られるうちが華よ。本当に用なしだと思われたら注意しても無駄だと優しくされるようになる。」
見下していても、■■さんは飴と鞭を使い分けて懇切丁寧に向き合ってくれた。
「……はい!■■さん……。」
■■さんが回転椅子をくるりと回したとき、膝の上からスマホが落ちた。
「あ!」
拾い上げると男性キャラクターのアップがホーム画面に設定してあった。
「この待ち受け……なんでしたっけ。青年漫画?」
バッとスマホを奪い返され、驚いて■■さんの顔を見ると赤面していた。
「ちょっと、人の待ち受けみないでよ。……ジャンケットバンクっていうの。」
……ジャンケットバンク……見たことないな。
「へえ……BLですか?」
■■さんは目を白黒させて俯いた。
別に偏見とか持ってないのに……■■さん、案外……。
「違うわよ!もう……はぁ……。」
……知りたい。
「好きなキャラクターとかいるんですか?この待ち受けのキャラですか?名前は?」
知りたい、もっと。
「……教えなーい。ほら!無駄話しない!ちゃんと言ったことを覚えた?」
「はい、■■さん。」
あなたのことを知りたい。
。。。
。。。
それからジャンケットバンクを電子版で購入して読み耽った。
「叶……叶黎明。」
このキャラは動画配信者で監視と監禁をしている異常者なのに、何がいいんだろう。
……強いから?堂々としているから?
……顔がいいから?
勇気を振り絞って社交辞令的に交換した■■さんの個人アカウントに『ジャンケットバンク読みました!叶黎明ってビジュアルが強いですね!ファンになりました!』そう送ると既読が直ぐに付いたあと、暫く返信が無かった。
やっぱり突然後輩から業務に脈略もない話を振られたら困るよな。
ブロックされたらどうしよう。
送った後に翌日どんな顔をして会えばいいか分からなくなるなんて……。
ベッドに寝転がって自省していると、通知音が鳴って慌てて飛び起きて画面を見た。
『レイメイはビジュアルだけじゃない!!デッドマンズ・キャンドルライトをちゃんと見た!?獅子神さんに対する教育姿勢……愛よ。レイメイは愛でできているの。だから自己愛が一番強いの……自認が神の天堂弓彦ではなく、レイメイが一番強く愛を知っている。』
……嬉しい。
先輩のことをまた一つ知れた。
、、、
先輩とは帰る方向が逆だったけど、たまたま用事をその方向に見つけるつもりだから同じ帰り路になった。
■■さんはジャンケットバンクの夢小説を書いている。
もちろん投稿サイトのものもSNSの呟きも全部読んだ。
先輩に似た考えの美少女女子高生ギャンブラーが叶黎明に見初められ、フレンズ入りして……叶黎明と……。
先輩は強引にされるのが好き、Sっ気のある責められ方が好き、監視され管理されるのが好き。
……■■さんはヤンデレが好き。
■■さんはワイヤレスイヤホンでながらスマホをするのが癖になっていて危ない。
相互フォローになっている匿名ファン垢で注意喚起した方がいいかな。
先輩は僕が書く叶黎明の夢小説の信者だから。
……言うことを聞いてくれる。
人けが少なくなる道に入った。
危ない、変な人がいたら大変だ。
女性の夜間の一人歩きは危険すぎる。
この道を抜けたら大きい車道に出るんだから気をつけて。
それは突然だった。
車の音が減速せずに歩道側に向かってきている。
フロントガラスをみるとトラックの運転手が発作を起こしていた。
このままでは■■さんが
「危な
。。。
特別業務部に紛れ込んで『顧客の子女がギャンブラーになりたいと申し立てに来る』との話が出たとき、■■さんだと確信した。
そして、宇佐美主任が話をつけるとの話を聞きつけ後を追った。
僕の『パルプ・フィクション:相手の1分以内の認識を歪めることができる』能力は『その一分以内に認識されための』にしか効力が効かない。
つまり、『その場で認識していない過去や未来の事象』を歪められないから、宇佐美主任が認識したら速やかに認識を歪めるのが望ましい。
認識が定着した後では歪ませても知識の蓄積や感情が挟まり解除されやすくなる。
能力は強力だが、永続性が無く歪みの是正が一度起きたらまた歪ませるのは途方も無い労力が伴う。
『これは石ではなく金塊』と歪ませても実物があれば歪みは直ぐに解消される。
『あなたは敵意があるが、私に好意を抱く』としても感情は切り替わるので歪みは直ぐに解消される。
『あなたは今口頭説明した計画を実行する』としても歪みの基となる計画案を認識していなければ不発になり、また聞いても複雑さ故、思考が切り替わり直ぐに歪みは解消される。
……この能力は、『誰が所属し役職にあるか』といった概念の更新がほとんど無いものしか介入は実質不可能。
『起きた事象はAではなくBだった』としても事象を象徴するものや事実を再認識されればその時点で解消される。
身分詐称に特化したピーキーなもの。
そうこうしているうちに、宇佐美主任が出迎えたのは気の弱そうな男性と、……。
■■さんだった。
重心を斜めにしてダルそうに立つ姿、説明を受けている時に爪を見る癖、紛れもない……僕の先輩。
宇佐美主任と応接室に消えた先輩の声を聞きたくて扉に耳をつけた。
そして、先輩も能力を持っていると確信した。
……場所を当てる?
それだけだったらギャンブラーにはなれない。
恐らく1分、記憶を読むか履歴を辿る能力だ。
『パルプ・ノンフィクション』とでも名付けよう。
運命だと確信した。
僕の『パルプ・フィクション:相手の1分以内の認識を歪めることができる』と先輩の能力は対になっている。
僕が事実を改変し、先輩は事実を知る能力。
あの日、僕は先輩を交通事故から守れなかった。
今は違う、今なら■■さんを守れる。
応接室から怒りを滲ませて出てきた■■さんに声をかけた。
「こんにちは。僕は松本班の松本茶色といいます。……ギャンブラー志望の方ですか?」
……咄嗟に『白金班』でも『宇佐美班』でもなく『松本班』と名乗ってしまった。
「そう!!アタシは[[rb:天塚 燐子 > あまつか りんね]]!!リンネさんって呼んで!!」
大丈夫だ、本当にそうなればいいだけ。
積み上げて事実にすればいい。
「そっか、僕は宇佐美主任に話をしてくるね。」
応接室に入ると宇佐美主任がこちらをチラリと見て視線を手元に落とした。
「宇佐美さん、僕がその書類をお預かりします。」
認識改変前の証拠になるものはこちらで偽装しないと歪みの解除のトリガーになる。
「いえ、私の仕事ですから。」
……書類を強奪して背中に隠した。
「……何をする、松本。……松本。……所属は?」
鋭い眼光と目が合った。
もう歪みが解除されたのか。
「嫌だなぁ……白金班です。」
「はぁ……また5スロットから出直しね。」
リンネさんはランク落ちして5スロットの賭場にいる。
かえってよかった。
『パルプ・ノンフィクション』で思考ではない行動履歴をみる能力など、単純に『相手が何をしたか分からない』ゲームにしか効力がないんだから。
このままギャンブルに飽きて一般人に戻って……。
僕とだけ交友を持っていればいいんだ。
「5スロットに神が降臨したな。」
……嘘だろ。
振り返るとフレンズたちが……真経津、村雨、獅子神、天堂……そして叶黎明が入室してきた。
不味い、リンネさんがもし憧れを目にしたら。
憧れに手が届くかもしれないと分かってしまったら。
「あ……ああ!!レイメイ……!?本物!?」
今、リンネさんに『パルプ・フィクション:相手の1分以内の認識を歪めることができる』を行使しても、誰かが『レイメイ』『叶黎明』と呼べば歪みは瞬時に解消される。
「お、ずいぶん若い女性が居らっしゃる……まさか未成年が紛れ込んでいたりしないでしょうね。」
声の方を見るとフレンズ担当の行員、宇佐美班の渋谷、榊、梅野、御手洗……伊藤班の昼間まで勢揃いしている。
なんでだよ、なんで5スロットに担当行員とハーフライフ以上のギャンブラーたちが一同に……。
はは、あり得るか。
彼らは賭場に出入りできるし、担当行員も同席しても何らおかしくない。
この大人数で……もし、もし歪みの解消が発生したら『集団的認知の連鎖崩壊、インフォメーション・カスケード』が起こって収拾がつかなくなる。
「ごきげんよう。アタシは[[rb:天塚 燐子 > あまつか りんね]]と申します。」
急いで先輩の腕を掴み通用口経と引き摺った。
「何をするのよ!!レイメイに挨拶しただけじゃない!!無礼よ!!離しなさい!!」
離すわけには行かない。
一刻も早く立ち去らねば。
「なんだ?リアコか?」
最悪だ、叶黎明が反応を示した。
「……!!アタシ……ずっとアナタのファンでした。今までも、これからも。」
……リンネさんを抱きかかえて立ち去ろうとすると叶黎明に肩を掴まれた。
「お前、誰。」
……推しキャラからの塩対応、もういいでしょう。
憧れは理想の人間像とは違うんだ。
「……嬉しい……アタシは高校生ギャンブラーのリンネ……。」
場に緊張が走った。
「はぁ?高校生がギャンブラーなわけないだろ。」
昼間があきれた声を出した後、こちらを見た。
「お前……宇佐美班の……」
やめろ、やめてくれ。
「彼は宇佐美班では無く……部外者であるという説が有力です。」
とにかく彼らをまいて一人一人にまた『パルプ・フィクション』を使えばまだチャンスはある。
「彼はアタシの担当の松本班の松本茶色主任ですわ!!」
行員達が一斉にこちらに詰め寄ってくる。
「高校生?専門学生では?それに松本班?松本主任?……お前は誰だ?」
逃げるが勝ち、今は戦略的撤退をするしかない。
抱きかかえたリンネさんが震え始めた。
「え?松本は松本班の主任……そうよね?松本……そうだって言って。」
声が震えてる、早く……早く
「大丈夫ですから、■■さん……。」
思わず前世の名前で呼ぶと、リンネさんは電池が切れたように意識を失った。
「リンネさん!?しっかりしてください!!」
、、、
なんとか『今やるべきは自分への尋問ではなく救護だ』と認識させ医務室に運んだ。
「彼女は極度のストレスを一度に浴びて処理が追いつかなったのだろう。あなたは行員たちに引き渡す。」
それでいいから、何でもいいから彼女を助けて……。
リンネさんの手を握り祈るとパチっと目を覚ました。
「よかった……リンネさんが無事で……。」
手をはたき落とされる。
「……アナタ、どちら様?」
……はは。
「嫌だなぁ、僕ですよ。松本班の松本茶色主任です。」
「あなたは身分を偽るな。気がついたか、小娘。」
うるさいな。
今は混乱した先輩の記憶を呼び出す方が重要なんだよ。
「それにアナタもよ?随分と偉そうな口を聞くわね。」
……いや、そんなはずは。
先輩は好きなキャラクターを目の前にして引くことを選んだだけだ。
「私は医者だ。」
「あらそう、失礼な方ね。」
……違う
ガララッと音を鳴らして医務室の扉が開かれ、叶黎明が現れた。
「礼二くん、女の意識……戻ったならその男を引き渡そう。」
■■さんの顔を見ると、眉間にしわが寄っている。
「入室の時はノックぐらいしたらどうなの?次から次へと……。」
嘘だ……嘘だと言って
「……アナタは誰?」