「夜のお勤めをしてきますね。」
ヴェルデさんを膝の上から降ろして自室から出ようとすると飛び上がった彼に頭をコツンと叩かれた。
「……行くな。私が夫だ。お前が知る男は私だけでいい。」
肩に乗った状態で耳元に囁かれる。
「そう言われましても……約束してしまいましたし。」
スパナさんも入江さんも私とのセックスを日常のルーティンとして消費することに何の疑問も抱かない。
私は入江さんにミルフィオーレファミリーに拉致されて、スパナさんの元で技術を学び、ボンゴレ十代目に救われてボンゴレファミリーに入ることができ、アルコバレーノのヴェルデさんを夫に迎えて『成果としてのセックス』をコントロール出来るようになり、今に至る。
「……私だけを愛せ。」
耳を喰まれた。
「痛いっ……困りましたね。彼らのストレス管理なんですよ。」
説き伏せようとしても歯を立てられてなかなか扉から外に出られない。
「夫の私が行くなといっているんだ!!」
至近距離で大声を出されて耳鳴りが鳴った。
「いきなり大声出さないでください!……ただのセックスですよ。」
メローネ基地に在留していた時も、ボンゴレファミリー配下の新施設に配属された今も同じ。
彼らは私の「No!」を「Yes!」に変える。
私が意思を挟んだところで、何も波及せず水面は鏡写しのままだ。
「……今までそうやって生きてきたのか?……体を売って出世してきたのか?」
……仕方がない。
ベッドにヴェルデさんを座らせて、跪いて目線を合わせる。
「……そうですね……ミルフィオーレファミリーに拉致されてからはずっと……。」
きっと科学者として、男性社会で生きてきた彼には伝わらない。
「……ならば生き方を変えろ。したくない性行為をしなくていい。私が君の夫でいる限り……君の意思を尊重する。」
ヴェルデさんは眼鏡をカチャリと鳴らせて静けさを帯びた瞳をこちらに向けた。
「ヴェルデさん……。」
手を彼の小さな頬に添えると言葉の強さと相反する柔らかな感触に思わず笑みが溢れる。
しばらく撫でていると彼は白衣のポケットから薬を取り出し服用すると、みるみるうちに成人の姿になった。
「……では、夫婦の営みをしようか。」
……。
「……したくないです。」
肩をガっと掴まれて顔が近づいた。
「……前言撤回だ。……したくなくても私との性行為だけはしろ。……兎に角、彼らは待たせておけばいい。」
……もう
「ふふ……言わんこっちゃない。……でも……ヴェルデさんが旦那様になってくださって本当によかったと思ってますよ。」
髭がはえた彼の顎を丁寧に撫でる。
「……嫌味か。」
「どっちだと思います?」
、、、
「……君はいわゆる魔性の女というやつか。……くっ……入江にスパナ、あげくの果てに私までも惑わすとは。……っ……エンジニアキラー……はっ…はっサイエンティストキラーか。」
彼女の腰を掴んでピストン運動の速度を上げた。
「あっあっ……まっ魔性に見えます?」
身体を捩らせてシーツを握る媚態は何処からどう見ても扇情的でエロティックである。
「うっ……見える……はぁっ……サキ……」
太ももを持ち上げて上からプレスするように抽挿を繰り返す。
「あんっ……論理的にぃ……説明してくださいっ……」
舌を出して息を切らし、潤んだ眼差しをする女を性的でないとどうして言えようか。
「……はっ……君の不安げな上目遣いは……く……庇護欲を刺激して首を傾げる動作は嗜虐心をくすぐる……性的なアプローチだ……情欲を催させ……はぁ……激しくする」
彼女の背を壁につけた状態でM字開脚させ、何度も突き上げる。
「あっ……深いっ……はぅ……ならぁっ……他の誰でもいいですね……」
生意気な口を利く唇を塞いで乳房を揉みしだきながら腰を振る。
「な……サキ以外の女などただの女ではないか……く……誘惑して私を誑かすな……出す」
子宮口に向けて避妊具越しに射精すると時間切れとなって元の姿に戻ってしまった。
「はぁ……はぁ……良かったです……ヴェルデさん……旦那様……大丈夫ですか?」
彼女は肩で息をしながら小さくなった私を抱きしめ、唇を額に落とした。
「男を翻弄して……夢中にさせるのが上手い……とりあえず口づけをしよう。」
唇同士を合わせると、サキはニコッと微笑んだ。
「ふふ、なんだか……かわいいですね。旦那様。」
まるで子どもをあやすように頭を撫でて額を合わせた。
「なに……?私がかわいいだと?」
私では満足出来ないのか?
愛する時間が足りないのか?
「私にメロメロになってるみたいに見えますよ。」
頬に何度もキスをされリップ音が鳴った。
「……事実だからな。君に夢中だ。」
そう漏らすと彼女は目を丸くして視線を合わせた。
「……あの、言っていて恥ずかしくないんですか?」
……彼女は稀に初い反応をする。
「……恥?君は私の妻だ。夫が妻を溺愛して何が悪い。」
「あの、ヴェルデさん、サキちゃんの膝の上にのって話すの不愉快なので控えてもらえますか?」
入江も同じ不満を持っているようだった。
「私はサキの夫だ。そうだな?サキ。」
ヴェルデは司令官の席に座るサキの膝の上に鎮座してふんぞり返っている。
「そうですね、私はヴェルデさんの妻です。」
……違う。
「ヴェルデに夫っていうラベルがついただけ。サキはウチのことが好き。」
サキはウチとだけ情が通っているのに。
「サキさんは支配者階級ですね!!」
ジャンニーニは笑いながらキーボードを叩いた。
「ふん……誰を愛しているか言ってやれ、サキ。」
皆の注目がサキの口元に集まった。
「私はボンゴレ十代目に忠義を誓っています。」
……それはウチらも。
「うん、それは知ってるよサキちゃん。好きな男は誰かって聞いてるんだよ。」
入江が苛立ったように強い怒気を含んだ口調に変わる。
「強いて言うなら……」
サキが顎に指を当てて首を傾げた。
「私だな?」
「僕ですよ。」
「ウチ。」
「ボンゴレ十代目かな……。」
、、、
「サキちゃんは僕のこと好きだよね?好きって言って。」
サキちゃんは司令官としての役務のために形式上としてヴェルデさんを夫に迎えただけだ。
「はい、好きです……。」
現に彼女は善がっているし、身体も僕を受け入れている。
「僕も好きだよ……サキちゃん……。」
、、、
「ウチのこと好き?」
サキを上に乗せて突き上げると胸を上下に揺らしながら身体を弓なりに反らして絶頂した。
「はい、好きです……。」
サキは女。
マフィアのエンジニアとして生き残るには体を使うしかないからヴェルデや入江に抱かれているだけ。
「ウチも好き……。」
、、、
「私を愛しているな?」
立ちバックの体位から何度も膣壁を擦り上げると、彼女は潮吹きして膝から崩れ落ちた。
「旦那様を愛してます……。」
たしかに私との婚姻関係は打算から始まったものだろう。
……だが、今は違う。
「私も君を愛している……。」
今日は待ちに待ったボンゴレ十代目が過去から新施設に訪問する予定日だ。
顔を洗って身支度を整えて鏡を見る。
私はボンゴレ十代目の一番の手先に成れているだろうか。
忠義を示すためならなんだってする。
あの日、彼に救われた命。
この命は彼のために使う。
、、、
「わー……意外とみんなチームワークあって協力してて安心したー……。」
ボンゴレ十代目は新施設を興味深げに眺め、メンバー一人ひとりの様子を窺った。
「はい!十代目が安心して頂けるようにしていますから。」
未来の貴方ではなく、過去の貴方に忠誠を誓います。
「あ……あの……そう言えばさ……。」
手を引かれてヒソヒソ声で囁かれた。
「リボーンから『サキはオレのことが好き』だって聞いたんだけど……その……オレには京子ちゃんが……」
彼は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ふふ、知ってますよ……私は十代目の手先である。……それだけですから。」
貴方の女になりたいわけではありません。
「手先って……うーん……いいのかな。……オレはボンゴレファミリーをぶっ潰す……それでも?」
ボンゴレ十代目のご意思なら。
「いいんですよ……未来で待ってますから。……あなたの未来は私が守ります。」
そう答えると満面の眩しい笑みが返ってきた。
……まるで日向にいるような、暖かい光。
「……そうだな!ありがとう……サキ!」
、、、
「〜♪」
サキはボンゴレ十代目が訪れてから明らかに機嫌がいい。
「ぐ……随分とご機嫌だな……。」
そんなに若い男がいいのか?
まさかマフィアのボスという理由だけで発情しているのか?
「はい!……えへへ、十代目に頼られちゃいました……嬉しい。」
……今までに見たことのない笑顔を、たった一時の接触で容易く零すな。
私に向けたことのない感情を他の男に向けるんじゃない。
「……抱く。」