「嫌だ……嫌だ……。」
ガバっと布団を剥いで冷や汗をかきながら起きるのが当たり前になっていた。
悪夢では観音坂先輩を私が誘惑して堕落させたという事になって私から観音坂先輩を逆レ◯プをして、その悪事に対して後ろ指をさされてバッシングされるという内容。
なによりも辛かったのは夢の中のセックスとリンクするように身体が熱を帯びて、秘部が濡れていることだ。
「……思い出したくなかったよ。」
記憶喪失なんて一時的な逃避行も、残酷な事実を元にした夢によって現実に引き戻された。
私は……彼に未練があるんだ。
だからこんな悪夢に苛まれてしまうんだ。
……元から断ち切らないと一生苦しむままだ。
、、、
天国さんは有給休暇を快く受け入れてくれた。
「気をつけろよ。何かあったら直ぐに連絡しろ。」
そう言うと駅まで見送りにまで来てくれて、彼がどうしてここまで親切にしてくれるのか分からずに不意に涙が頬を伝った。
「はい、天国さん。……すぐに帰ってきますから。」
電車に乗って深呼吸をした。
ちゃんとケリをつけないといけない。
、、、
「帝統くんいますか?」
初めてシブヤの拠点の戸を叩いた。
「あ!!クゼちゃんじゃん!!記憶戻ったの?」
飴村さんはニコッと笑って腕を引いた。
「はい。記憶は戻りました。」
部屋の中では夢野さんが読書をしていて、こちらを見るとパタリと本を閉じた。
「君が帝統に会っていいのかな。」
空気がピリッと張り詰めて喉を締める。
「……はい。会いたいんです。」
私は彼に会わないといけない。
誰のためでもなく、自分のために。
「ダイスはあっちの部屋にいるけど……今はタイミング悪いから行かないほうがいいと思うなー。」
飴村さんはキャンディを頬張りながら廊下を指さした。
「……それならば。いや、だからこそ今行くべきだね。」
、、、
廊下の先の鉄で出来た扉は鍵がかかっておらず、ノックをして隙間を開けた。
「ああんああんすごいよぉ帝統ぅ……」
耳を塞ぎたいのを必死に我慢して目を向けた。
視線の先では帝統くんと見知らぬ女性があられもない姿で繋がり、交わっていた。
「あ、クゼさん……終わるまで待って。」
彼は私に気がつくとそれだけを言って腰を振るのを再開した。
こうなることは、分かっていた。
「帝統ぅ、あれだれぇ?んっ……マネージャー?」
女性は対面座位で突き上げられながらこちらを向き、蕩けた顔を晒して見せた。
「あー……俺の友達。」
、、、
「さっきの女性は……。」
どうしてこんな馬鹿な質問をしてしまうんだろう。
「ああ、お金をくれるお姉さんの一人。パトロンとか言えばいいかな。そう言えば記憶戻ったの?入間さんを呼んで迎えに来てもらうか?」
情けなくて、自分の惨めさに涙が溢れた。
「ど、どうした、フラッシュバックか?」
帝統くんは私の体に触れないように様子をうかがっている。
こんなことなら……と考えてしまうなんて、愚かだな。
「私は最低だ、自分勝手だ。……なんで私の恋だけが叶うと思ったのかな……」
恋に落ちなければよかったなんてこと、後悔しても意味がないのに。
「クゼ……」
彼は私をソファに座らせて、泣き終わるまで側に居てくれた。
「ごめんね、心配かけて。私、ナゴヤで働いてるってことを伝えたかっただけだから……」
苦しいけど、私だけが辛いわけじゃない。
私は乗り越えなければいけない。
自分のために。
「ああ……頑張れよ。応援してっから。」