ONE PIECE ―紫電の副船長(レイル・ロード) 作:烏丸レン
1. 虚飾の知性の終焉
シロップ村の海岸。レオンの放った「雷穿」によって両肩の自由を奪われたクロは、砂浜に無様に転がっていた。かつての「百計」と称された知性は、恐怖と屈辱にまみれ、鼻眼鏡は無残に砕け散っている。
「……殺せ……。計画を潰され、このような辱めを受けるくらいなら……」
「殺す? フッ、お前のような効率に特化した男を、ただの死体にするほど俺は馬鹿じゃねぇよ、クロ」
レオンは銀髪をかき上げ、動けないクロの頭を軍靴で踏みつけた。
「お前は平和を欲しがってたな。……いいぜ、お望みの『静寂』を与えてやる。ただし、それは俺という主人の影の下、感情を殺した『計算機』としての静寂だ」
レオンは掌をクロの後頭部に密着させた。「バリバリの実」の真骨頂——脳の記憶中枢と感情野への、精密かつ暴力的な「雷撃による書き換え」だ。
「雷牙・洗礼(らいが・せんれい)」
「がああああああぁぁぁぁっ!!!」
クロの絶叫が夜の海に響き渡る。脳を直接焼かれる衝撃。これまでの傲慢な自尊心、仲間への裏切り、そのすべてが強大な雷光によって「主人への絶対服従」という一段上のプログラムで上書きされていく。
2. 犬となった軍師
一刻後、メリー号の船倉。
そこには、衣服を整えられ、膝をついて頭を垂れるクロの姿があった。その瞳からは、かつての狡猾な光が消え、機械的なまでに冷徹な、しかし主人を仰ぎ見る熱烈な陶酔が混じった色が宿っている。
「……おはよう、クロ。気分はどうだ?」
レオンがソファに深く腰掛け、傍らに控えるベルの腰を引き寄せる。
「……快適です、レオン様。これまでの私は、あまりにも無意味なことに拘泥していた。私の知略は、すべてあなたという絶対強者のために捧げられるべきだった」
クロの声には、感情の起伏がない。だが、その言葉には一点の曇りもない服従が込められていた。
「いい返事だ。……おい、ベル。こいつに新しい眼鏡を渡してやれ。これからは、俺の『別部隊』の参謀として、その腐った頭脳をフル回転させろ」
「はい、レオン様。……さあ、クロ。あなたの仕事よ。次なる目的地、バラティエまでの最短航路と、効率的な女たちの配置図を作成なさい」
ベルが冷ややかに命じると、クロは無言で眼鏡をかけ直し、机に向かった。かつて一味を皆殺しにしようとした男は、今やレオンの手足となり、冷酷なまでに効率的な「奴隷兵官」へと作り変えられた。
3. 支配の証
「……ところで、レオン様。任務の前に、一つだけ許可を」
クロが眼鏡を光らせ、レオンを直視した。
「なんだ?」
「……私をここまで完璧に『再起動』してくださったあなたの力……。その一部を、私の身体にも直接刻んでいただけませんか。それが、私の忠誠を維持するための最高の潤滑剤となります」
レオンは不敵に笑い、タバコをくゆらせた。
「……ハッ。お前も結局は、支配される快楽に目覚めたわけか。いいぜ、計算機野郎。その身体、死なない程度に可愛がってやるよ」
レオンはクロを自分の足元に呼び寄せた。かつての「百計のクロ」は、今やレオンという王の影で、その覇道を計算し続ける忠実な「頭脳」へと成り下がった。
銀髪の副船長の艦隊に、最強の「盾」である双子の巨兵に続き、最も冷酷な「矛」である軍師が加わった瞬間であった。