※この作品はR-18です。

MEDESGAME   作:ボルメテウスさん

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剣士の身体

目を閉じて、まだ数秒しか経っていなかった。

 

扉が開く。閉まる。気配が近づく。

 

さっきまで部屋の外にいたはずのエリスが、今はベッドのすぐ横に立っている。目を開けた俺を見下ろす彼女の顔に、迷いはなかった。いや、迷いがないように見えるだけだ。瞳の奥に、自分でも整理しきれていない熱がある。

 

「起きて」

 

俺が何か言うより早く、エリスはベッドに上がった。片膝をつき、俺の肩を押して仰向けに固定する。細いが鍛えられた手だ。剣を振る手が、今は俺の胸の上にある。

 

「エリス」

 

「黙って」

 

彼女は短く言った。命令ではない。だが、俺の言葉を待っていない。自分の決断を邪魔されたくない顔だ。

 

俺は動かなかった。動けなかったのではない。動かなかった。

 

エリスは俺の顔をじっと見る。赤い瞳が、暗がりの中で熱を持っている。怒りではない。羞恥でもない。それらを全部ひっくるめて、押し潰すように前に出ている。

 

「まだ守るとは決めてない」

 

「知ってる」

 

「隙だらけで、弱くて、命令もしない」

 

「そうだな」

 

「剣士として、あんたを主にする理由なんて、まだ一つもない」

 

エリスはそう言って、俺の胸を押さえていた手を離した。

 

そのまま両手で俺の首の横を挟むようにベッドへ押し付ける。逃げられないわけではない。だが、逃げる理由も今は見当たらない。

 

「でも、確かめさせて」

 

「何を」

 

「私が、あんたのどこを見てるのか」

 

言葉の途中で、エリスの唇が降りてきた。

 

キスというより、押し付けだ。柔らかさと同時に強さがあった。舌は入らない。息を交わす暇もなく、離れて、また押し付ける。何度か繰り返されて、ようやく彼女が息を吸った。

 

「下手だな」

 

「うるさい」

 

「キスしたことないのか」

 

「馬鹿にしてるの?」

 

「してない。驚いただけだ」

 

エリスは舌打ちして、また顔を寄せる。今度は唇を割ってくる。ぎこちなくて拙い。だが必死さが伝わった。歯に当たりそうになりながらも、自分の意志で押し込んでくる。

 

俺は応えた。

 

舌を入れて絡ませると、エリスの肩がわずかに震えた。怒るかと思いきや、逆に彼女の舌が追いかけた。呼吸の合間に、微かに漏れる息が熱い。

 

しばらくして唇を離したとき、互いの唾液が糸を引いた。エリスはそれを舐め取ることなく、濡れた唇を見せたまま睨むように俺を見つめる。

 

舌を絡ませたまま、エリスが俺の唇を食むように吸い上げる。拙いが貪欲だ。歯が当たるのも気にせず、息継ぎの間も惜しむように顔を押し付けてくる。

 

彼女の両手が、俺の肩から首へと移動した。指先が食い込む。剣を握る手が、今は俺を離さないようにしがみついている。唾液が混ざり合い、口の端から零れて首筋へと垂れた。

 

「……っ、ふ」

 

息を吸う合間に、エリスの瞳がぼやけた光を宿す。怒っているのか、照れているのか、興奮しているのか、おそらく全部だ。自分でも整理できない感情を、キスという形で俺にぶつけている。

 

俺は彼女の背中に手を回した。剣士の引き締まった体が、わずかに震える。

 

「ん……っ」

 

エリスが喉の奥で鳴らす。口を離した瞬間、銀の糸が切れて彼女の顎に落ちた。それを拭うこともせず、彼女は荒い息のまま俺の目を覗き込む。

 

「なに、その顔」

 

「どんな顔だ」

 

「余裕ぶってる顔」

 

「余裕はない」

 

「嘘つき」

 

エリスはまた噛みつくようにキスをした。今度はより深く、舌を押し込んでくる。俺の舌を探り当て、絡ませ、吸い上げる。動きは先ほどより少しだけ慣れていた。飲み込みが早いのは剣士としての勘か、それとも本能か。

 

彼女の太腿が俺の腰に触れる。体重をかけて押さえつけるようにしながら、キスを続けた。逃がさないという意思が、唇の圧力から伝わってくる。

 

エリスの手が、自分の服の襟元にかかった。

 

俺の上に跨ったまま、彼女は乱暴に上着を脱ぎ捨てる。布が擦れる音のあと、暗がりの中に白い肌が浮かび上がった。次に下着を外す。迷いはない。ためらいはあるが、それを見せないように、わざと勢いをつけて脱いでいる。

 

裸になったエリスが、俺の腰の上で姿勢を正した。

 

「見なさい」

 

声は強かったが、肩がわずかに上下している。呼吸が浅い。暗がりでも分かる。彼女の肌がうっすらと赤らんでいるのが。

 

鍛えられた体だった。

 

バーゲストのような圧倒的な大きさはない。デルタのような獣じみた躍動感とも違う。だが、剣士として鍛え抜かれた筋肉が、無駄なく全身を覆っている。肩は張り、腕には細く長い筋が走り、腹筋は深呼吸のたびに薄く浮き上がった。胸は小ぶりだが形が良く、先端は緊張で硬く尖っている。

 

「小さいと思った?」

 

「思わない」

 

「嘘つき。バーゲストとか、デルタとか、あんたの周りにはもっと……」

 

「比べるな」

 

俺の言葉に、エリスは口を閉じた。

 

彼女は自分の体をよく知っている。剣を振るために作られた体だ。無駄な脂肪はほとんどない。女性らしい丸みよりも、斬撃のための筋肉が優先されている。それを恥じているわけではない。だが、他の契約体たちと並んだ時、自分がどう見えるかは理解している。

 

「俺はお前を見てる」

 

エリスは何も言わず、ただ俺の目を見つめた。それから、ゆっくりと俺のシャツに手をかける。ボタンを外す指先が、かすかに震えている。

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