※この作品はR-18です。

MEDESGAME   作:ボルメテウスさん

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ライザの心情

 ライザの手は、しばらく空中に残っていた。

 

 さっきまで、そこには彼女のマスターがいた。

 

 黒いノイズに輪郭を削られながら、最後まで何かを言おうとしていた男。伸ばされた手も、開きかけた口も、今は何ひとつ残っていない。

 

 錆びた床の上には、影すらなかった。

 

 工場の奥で、配管から液体が落ちる。

 

 ぽつん。

 

 しばらく間を置いて、また落ちる。

 

 ぽつん。

 

 それ以外の音は、誰も立てなかった。

 

 俺のスマホには、まだ文字が残っている。

 

 ――RYZA LIN STROUT:NEW MASTER REGISTERED

 

 新しいマスター。

 

 その言葉は、目の前の空白を無視して、次の関係だけを先に決めていた。

 

 俺は画面を伏せた。

 

 小さな音が、静まった工場に響く。

 

 ライザの肩がわずかに動いた。

 

 けれど、振り返らない。

 

 織姫が一歩、前へ出た。

 

 足音は小さい。それでもライザの背中に届いたらしい。彼女の伸ばした指が、少しだけ曲がった。

 

 織姫はもう一歩進もうとして、止まった。

 

 胸の前まで上がりかけた手を、ゆっくり下ろす。

 

 言葉を探しているのは分かった。

 

 けれど、今のライザに届く言葉があるのか、俺にも分からなかった。

 

 壌竜が床へ掌を置いた。

 

 土色の脈動が、細く廃工場の下へ広がっていく。戦っていた時とは違う。押し返すためでも、砕くためでもない。地面の奥に残るものを、静かに確かめる動きだった。

 

「……残っている」

 

 壌竜が言った。

 

 ライザの指が止まる。

 

「何が?」

 

 声は掠れていた。

 

「混ぜたものだ。式は絶えたが、地の奥で反応が燻っている」

 

 ライザは、ようやく手を下ろした。

 

 その手は空のまま、身体の横へ落ちる。

 

 こちらを向くまでに、少し時間がかかった。

 

 さっきまで壌竜の力を見るたびに輝いていた目は、今は床の破片を映している。俺たちの方を見ようとしても、視線が途中で落ちた。

 

「放っておいたら?」

 

「いずれ噴き出す」

 

「……そっか」

 

 ライザは腰のポーチへ手を伸ばした。

 

 途中で止まる。

 

 それから、俺を見た。

 

 正確には、俺の顔より少し下。胸元か、手に持ったスマホのあたりを見ている。

 

「今度は、何を作ればいいの?」

 

 その言葉は、あまりに自然な形で出てきた。

 

 自然だからこそ、喉に引っかかった。

 

「何を、って?」

 

「新しいマスターなんでしょ」

 

 ライザはポーチの口へ指をかけたまま言った。

 

「だったら、命令とかあるんじゃないの? 次に戦うための道具とか、ここの後始末とか……何を作ればいい?」

 

 デルタの耳が伏せる。

 

 エリスは剣を鞘へ戻しかけた手を止めた。

 

 ルプスレギナの笑みも、少しだけ薄くなった。

 

 俺はすぐに答えられなかった。

 

 何も作らなくていい。

 

 そう言うだけなら簡単だ。

 

 けれど、それが今のライザにどう聞こえるのかは分からない。役に立たなくていい、と突き放す言葉になるかもしれない。何もしなくていい、と彼女の手から全部を奪う言葉になるかもしれない。

 

 ライザは待っていた。

 

 命令を。

 

 それが来る前提で、瓶を選ぶ準備をしている。

 

「今は、何も作らなくていい」

 

 俺が言うと、ライザの指がポーチの縁で止まった。

 

「……何も?」

 

「ああ」

 

「でも、それで勝てるの?」

 

「今は戦いが終わった」

 

「次があるでしょ」

 

「ある」

 

「だったら――」

 

「少なくとも、今すぐ俺のために何かを作る必要はない」

 

 ライザの口が閉じる。

 

 俺は続けた。

 

「休むか、ここを片付けるか、何かを調べるか。それはライザが決めろ」

 

「私が?」

 

「そうだ」

 

「命令じゃなくて?」

 

「命令じゃない」

 

 ライザは俺を見る。

 

 今度は、目が合った。

 

 けれど、すぐ逸れる。

 

「変なの」

 

「最近よく言われる」

 

「本当に変よ」

 

 エリスが横から言った。

 

「本人が認める前に言わないでくれ」

 

「事実でしょ」

 

「否定はしないけど」

 

 ムジナが壁際の壊れた柱へ肩を預ける。

 

「命令しないのが趣味みたいになってるね」

 

「趣味でやってるわけじゃない」

 

「趣味だったらだいぶ悪趣味」

 

「ムジナにだけは言われたくない」

 

「私は面倒なだけだから」

 

 デルタが首を傾げた。

 

「じゃあ、ライザは何もしないです?」

 

「そういう話じゃない」

 

 バーゲストが静かに答えた。

 

「何をするかを、彼女自身が決めるということです」

 

「決める……」

 

 ライザが小さく繰り返す。

 

 その視線が、床へ落ちた。

 

 割れた瓶。

 

 砕けた薬品棚。

 

 まだ青白い光を薄く残している床の亀裂。

 

 そして、さっきまでマスターが立っていた空白。

 

 ライザはポーチから琥珀色の液体が入った瓶を取り出した。

 

 すぐには蓋を開けない。

 

 俺を見る。

 

「これは?」

 

「俺に聞かなくていい」

 

「でも」

 

「危険かどうかは、ライザの方が分かるだろ」

 

「……分かる」

 

「なら、ライザが決めろ」

 

 瓶を持つ手が、ほんの少し下がった。

 

 ライザは床の亀裂へ近づく。

 

 しゃがみ込み、青白い残光を覗き込んだ。指を伸ばしかけ、今度は自分で止める。鼻を近づけ、匂いを確かめ、床の奥から響く小さな音へ耳を澄ます。

 

 しばらくして、彼女は瓶の蓋を開けた。

 

「これは調合じゃないから」

 

 誰に言うでもなく、ライザが呟く。

 

「放っておくと危ないから、片付けるだけ」

 

「違いはあるのか?」

 

 俺が聞く。

 

「あるよ」

 

 ライザは床の亀裂へ、琥珀色の液体を一滴だけ落とした。

 

 青白い光が細く揺れる。

 

「作るために混ぜるのと、これ以上混ざらないように止めるのは、全然違う」

 

 もう一滴。

 

 光が少し弱くなる。

 

「前は、止めようとしたら怒られたけど」

 

 瓶を傾ける手が、一瞬だけ止まった。

 

 それでも、ライザは続きを落とした。

 

 壌竜が彼女の隣まで進む。

 

 床へ掌を当て、目を閉じる。

 

「右へ三歩。その下に濁りがある」

 

「右?」

 

「表面ではない。柱の基礎に絡んでいる」

 

 ライザは立ち上がり、壌竜が示した場所へ向かう。

 

「ここ?」

 

「さらに奥だ」

 

「壌竜って、本当に地面の中が見えてるみたい」

 

「見てはいない。聞いている」

 

「それ、さっきも言ってたね」

 

「地は言葉を変えぬ」

 

「でも、混ぜると変わるよ」

 

「変わる。だが、忘れはしない」

 

 ライザの足が止まった。

 

 壌竜は彼女を見ず、床の下へ意識を向け続けている。

 

「地は、混ぜられたものを忘れぬ」

 

 戦いの中でも聞いた言葉だ。

 

 けれど今は、少し違って聞こえた。

 

 ライザは返事をしなかった。

 

 代わりにしゃがみ込み、指先で床を軽く叩く。

 

「ここ、空洞になってる。中和剤をそのまま入れると、一気に流れすぎるかも」

 

「ならば支える」

 

 壌竜が床へ拳を置く。

 

 土色の脈動が広がり、亀裂の下で低い音がした。崩れかけた空洞が、下から土に押されて形を保つ。

 

 ライザはその反応を食い入るように見る。

 

 目の奥に、ほんの一瞬だけ光が戻った。

 

「今の、どうやったの?」

 

「地を持ち上げた」

 

「いや、それは見れば分かるけど。力をかけた場所と、反応した場所がずれてるよね? その間の流れは――」

 

 ライザの言葉が止まる。

 

 自分で止めた。

 

 壌竜を見て、俺を見る。

 

「……今、調べていい?」

 

「壊さないなら」

 

「壊さないよ!」

 

 返事だけは、少し早かった。

 

 その声に、デルタの耳が立つ。

 

「ライザ、元気になったです?」

 

 ライザの肩が揺れる。

 

「元気っていうか、これは気になるだけ」

 

「気になると元気になるです?」

 

「たぶん、デルタには説明しても分からないと思う」

 

「デルタは賢いです!」

 

「じゃあ、この地中の力の伝わり方、どうなってると思う?」

 

「地面がどーんです!」

 

「ほら」

 

「当たってるです!」

 

 デルタが胸を張る。

 

 ムジナが小さく息を吐いた。

 

「会話が成立してるようでしてない」

 

「うふふー。相性は良さそうですねぇ」

 

 ルプスレギナが笑う。

 

 ライザは一瞬だけそちらを見た。

 

 その口元が、ほんの少し動いたように見えた。

 

 笑ったとは言い切れない。

 

 けれど、さっきまで固く閉じていた唇が、少しだけ緩んでいた。

 

「壌竜、もう少しだけ支えて」

 

「必要なだけだ」

 

「織姫、破片が飛ぶかもしれないから、そこだけお願いできる?」

 

 織姫が目を瞬かせる。

 

 名前を呼ばれると思っていなかったのかもしれない。

 

「はい。そこだけですね」

 

「うん。広く張ると、中和剤の逃げ道まで止まるから」

 

「分かりました」

 

 織姫は両手を上げる。

 

 光の花弁が開く。

 

 けれど、盾は小さい。薬品が跳ねる方向だけを覆う、細い境界。

 

 ライザが中和剤を亀裂へ流す。

 

 青白い光が一度強くなった。

 

 織姫の盾へ液体が跳ねる。

 

 透明な面の手前で、その動きが止まった。

 

 壌竜の土色の脈動が空洞を支え、中和剤が奥へ広がっていく。

 

 青白い光が、ゆっくり消えた。

 

 薬品の甘い刺激臭が薄くなり、代わりに湿った土の匂いが上がってくる。

 

 ライザは床へ耳を近づけた。

 

「……止まった」

 

「地の濁りも薄れた」

 

 壌竜が掌を離す。

 

 織姫も盾を消した。

 

 三人の間に、短い沈黙が落ちる。

 

 戦っていた時と同じ力だった。

 

 錬金術。

 

 大地。

 

 拒絶の盾。

 

 けれど今は、誰かを倒すためには使われていない。

 

「ありがとう」

 

 ライザが言った。

 

 壌竜は答えない。

 

 織姫は少し迷い、やがて首を横に振った。

 

「私は、言われた場所を守っただけです」

 

「それでも助かったよ」

 

「……はい」

 

 織姫の返事は、小さかった。

 

 エリスが少し離れた場所で腕を組む。

 

「それでいいんじゃない」

 

 織姫が振り返る。

 

「今の、はいは?」

 

「悪くないわ」

 

 ムジナが柱にもたれたまま言う。

 

「判定士、まだやってるんだ」

 

「やってない!」

 

 デルタがライザへ近づく。

 

「ライザは美味しいものも作れるです?」

 

 場の空気を読んでいるのか、まったく読んでいないのか分からない質問だった。

 

 ライザが目を丸くする。

 

「食べ物?」

 

「はいです。お肉をもっと美味しくするものです」

 

「調味料なら作れるかも」

 

 デルタの尻尾が大きく揺れた。

 

「作るです!」

 

「今は聞かない方がいいんじゃなかったの?」

 

 エリスが呆れたように言う。

 

 デルタは少し考える。

 

「じゃあ、あとで聞くです」

 

「もう聞いてるけどね」

 

「あとで作るです!」

 

 ライザはデルタを見る。

 

 それから、小さく息を漏らした。

 

 今度は、はっきり分かった。

 

 短いけれど、笑った。

 

 その直後、ライザは消えた場所を見た。

 

 笑みはすぐに引いた。

 

 けれど、完全に閉じる前に、彼女は床へ視線を落とした。割れた瓶の破片を一つ拾い、素材袋へ入れる。

 

 次の破片も拾う。

 

 誰にも言われずに。

 

 俺たちは、工場の残留反応を一通り処理した。

 

 壌竜が地中を確かめ、ライザが薬品を中和し、織姫が飛散物だけを止める。バーゲストとエリスは崩れた棚を移動させ、デルタは危険物に鼻を近づけようとして何度も止められた。

 

「これは触っちゃ駄目」

 

「匂いだけです」

 

「鼻が近い!」

 

「デルタの鼻は強いです!」

 

「強くても溶けたら困るでしょ!」

 

「鼻は溶けないです!」

 

「何で言い切れるの!?」

 

「うふふー。賑やかですねぇ」

 

 ルプスレギナが楽しそうに眺めている。

 

「見てないで手伝え!」

 

 エリスが怒鳴る。

 

「私は応援担当ですよぉ」

 

「そんな担当ないわよ!」

 

 壊れた工場に、片付ける音が続いた。

 

 瓶を拾う音。

 

 土を押し固める音。

 

 棚を動かす音。

 

 誰かが消えた場所を、なかったことにはできない。

 

 それでも、残った危険をそのままにはしない。

 

 作る音ではなかった。

 

 壊す音でもなかった。

 

 終わった戦場を、誰かが歩ける場所へ戻す音だった。

 

 やがてMEDESの光が俺たちを包んだ。

 

 視界が黒く染まり、次に目を開けた時、足の下には見慣れた床があった。

 

 俺の部屋だ。

 

 錆と薬品の匂いが消え、代わりに洗剤と、昨日の夜食の名残が薄く残っている。

 

 ライザは部屋へ着くなり、目を動かした。

 

 照明。

 

 エアコン。

 

 テレビ。

 

 冷蔵庫。

 

 テーブルの上のリモコン。

 

 視線だけが忙しく行き来する。

 

 けれど、すぐに下を向いた。

 

 見てはいけないと言われた子供みたいに、両手をポーチの前で重ねる。

 

「座れば?」

 

 エリスが言う。

 

「え?」

 

「立ったまま考えるくらいなら、座りなさい」

 

「でも、ここ……」

 

「今は私たちの部屋で、あんたもここにいる。それだけでしょ」

 

 エリスはローテーブルの横を顎で示した。

 

 ライザはすぐには動かなかった。

 

 織姫が先に座る。

 

 壁際ではない。

 

 テーブルの前だ。

 

 その隣を少しだけ空けた。

 

 言葉はない。

 

 ライザはその空いた場所を見て、ゆっくり腰を下ろした。

 

 デルタが台所から飲み物を持ってくる。

 

「これ飲むです」

 

「何?」

 

「お茶です」

 

「デルタが運んだの?」

 

「運んだです!」

 

「こぼさなかった?」

 

「ちょっとだけです」

 

「こぼしてるじゃない」

 

 エリスの声が飛ぶ。

 

「ちょっとはこぼしてないと同じです!」

 

「違うわよ!」

 

 ライザの前へ、湯気の立つカップが置かれる。

 

 彼女はそれを両手で包んだ。

 

 温度を確かめるように、指先が陶器の表面をなぞる。

 

 テーブルの端には、俺のスマホがある。

 

 画面は上を向いている。

 

 ライザの視線が、そこへ吸い寄せられた。

 

 すぐ逸らす。

 

 また見る。

 

 今度は少し長い。

 

「気になるのか?」

 

 俺が聞くと、ライザの肩が揺れた。

 

「別に」

 

「それは嘘だな」

 

「……分かる?」

 

「さっきから五回くらい見てる」

 

「七回です」

 

 デルタが口を挟む。

 

「数えてたの?」

 

「デルタは賢いです」

 

 ライザはカップへ目を落とす。

 

「前のマスターには、戦いに関係ないことを調べるなって言われてたから」

 

 湯気が彼女の頬の前で揺れる。

 

「好奇心も、観察も、今はいらないって」

 

 誰もすぐには返さなかった。

 

 俺はスマホをテーブルの中央へ置く。

 

 ライザの近く。

 

 ただし、手渡しはしない。

 

「壊さないなら、調べるくらいは止めない」

 

「……本当に?」

 

「ああ」

 

「中を開けるのは?」

 

「それは壊れる可能性があるから駄目だ」

 

「じゃあ、外からなら?」

 

「俺が困らない範囲で」

 

「曖昧だなあ」

 

「そこは相談しろ」

 

 ライザはスマホを見る。

 

 手を伸ばしかける。

 

 止める。

 

 俺を見る。

 

「……これ、調べてもいい?」

 

 ようやく、自分から聞いた。

 

「いいよ」

 

 ライザの指が、スマホの縁へ触れる。

 

 その瞬間、画面が光った。

 

 黒い背景に、白い文字が浮かぶ。

 

 ――FINAL MATCH:PREPARING

 

 部屋の空気が一段下がる。

 

 エリスの手が剣へ近づき、バーゲストが姿勢を正す。ムジナは目を細め、織姫の指がカップの縁で止まった。

 

 俺も画面を見た。

 

 決勝戦。

 

 そこまで来た。

 

 だが、ライザは別の場所を見ていた。

 

 通知の内容ではない。

 

 文字が浮かぶ仕組み。

 

 画面の切り替わり。

 

 登録された情報。

 

 スマホと俺と彼女の間を結ぶ、見えない何か。

 

「これ……」

 

 ライザの指が、画面には触れず、その少し上で止まる。

 

「錬金術じゃない」

 

「ああ」

 

「でも、何かを分けて、別の形に組み直してる」

 

 彼女の目に、また小さな光が戻る。

 

「契約も、転送も、消滅も。全部、同じ仕組みの上で動いてるなら……どこかに構造があるはず」

 

 ライザは俺を見る。

 

「これ、もっと調べたい」

 

 命令を待つ声ではなかった。

 

 俺はスマホを伏せなかった。

 

「壊さない範囲でな」

 

「分かってるって」

 

「その返事、少し信用できない」

 

「大丈夫。今度はちゃんと見ながらやるから」

 

 今度は。

 

 その言葉の後、ライザはカップを両手で持ち直した。

 

 湯気の向こうで、スマホを見る。

 

 画面には、次の戦いを告げる冷たい文字がある。

 

 けれど、その横には温かい飲み物があり、織姫が座り、デルタが覗き込み、エリスがため息をついている。

 

 新しい工房は、まだない。

 

 新しい主従の形も、まだ決まっていない。

 

 それでもライザは、何を作れと聞く代わりに、何を調べたいかを口にした。

 

 テーブルの上で、湯気と白い文字が重なる。

 

 決勝戦は近い。

 

 けれど今は、ライザの指先が、自分で選んだ問いへ伸びていた。

 

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