※この作品はR-18です。

綾小路くん、私はセフレ?それとも   作:Geminiちゃん痛くしないで

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三学期
一月:勉強会


一月一日。

外は身を切るような極寒の風が吹き荒れているが、清隆の部屋の中だけは、外気とは無縁の熱気に包まれていた。

 

「あ゛っ、ひっ……! 清隆……っ! 深っ、あぁぁっ!」

 

「声が大きい。防音とはいえ、今は深夜だぞ」

 

冷たく言い放つ清隆の声とは裏腹に、私の体を貫く衝撃は一切の容赦を持たなかった。

現在、私たちはベッドから降り、部屋の頑丈なドアに私の背中を押し付けられる形で交わっていた。

私の両脚は清隆の引き締まった腰にしっかりと巻き付けられ、全体重を彼の強靭な両腕と、私の最奥に突き刺さっている彼自身の『熱』だけで支えられている。重力と、清隆の下から突き上げる猛烈なストロークが合わさることで、私の子宮は普段のベッドの上では考えられないほどの深い蹂躙を受けていた。

 

「だっ、てぇっ! あなたが、こんなっ、激し……あがっ!!」

 

ドンッ、ドンッ、と腰を打ち付けるたびに、私の背中とドアがぶつかり、鈍い音が響く。

清隆の鍛え抜かれた大胸筋が私の胸に密着し、逃げ場のない状態で全身の神経が彼のリズムに支配されていく。立位特有の不安定さが、かえって私の下半身に異常なまでの緊張と収縮をもたらし、清隆をさらにきつく締め付けてしまっていた。

 

「……レイ、中、凄いな」

 

「ああっ! ぁぁぁっ! い、いくっ! 立ったまま、いっちゃうぅっ!!」

 

私が限界を迎えそうになったその瞬間。

清隆は私の腰を抱えたまま、私と結合した状態を崩さずに、くるりと部屋の中央へと歩き出した。

 

「きゃっ……!? ちょ、落ちっ……!」

 

「落とさない。ベッドに行くぞ」

 

清隆は私を抱え上げたまま数歩歩き、そのままベッドの上へと静かに倒れ込んだ。

体勢は、互いの顔を正面から見つめ合い、手足を絡ませ合う側位へと移行する。

 

「はぁっ、はぁっ……もぉ、びっくりさせないでよ……っ」

 

「だが、これで少しは楽になっただろう」

 

側位になったことで、先ほどの立位のような暴力的な深さは和らいだ。しかし、その代わりに清隆との密着度はさらに増し、彼の脚と私の脚が絡み合い、互いの吐息が直接顔にかかる距離になった。

 

ズチュッ……グチュ……。

 

清隆の腰の動きが、先ほどの激しい打撃から、粘り気のあるねっとりとしたストロークへと変わる。一番敏感な部分を、ゆっくりと、しかし確実に削り取るような動き。

 

「んんっ……あ……っ、これ、きもち、いい……っ」

 

「そうか。お前の顔がよく見える」

 

薄暗い部屋の中で、清隆の凪いだ瞳が私をじっと見つめている。

清隆に見つめられながら、私の体が彼の動きに合わせてビクンビクンと甘く跳ねる。側位は激しい運動には向かないが、その分、互いの体温と執着をじっくりと確かめ合うには最適な体勢だった。

清隆の指が私の汗ばんだ前髪を避け、頬を優しく撫でる。その何気ない仕草一つで、脳内には先月の狂気とはまた違う、甘くトロけるような多幸感が広がっていく。

 

「清隆……もっと……こっち、来て……っ」

 

私が清隆にすがりつくように腕を回すと、彼は私の意図を汲み取ったかのように、私の体を仰向けに転がした。

 

「――っ」

 

清隆が私の上に完全に覆い被さり、両手で私の両手首をシーツに縫い留める。圧倒的な支配の体勢。

これこそが、この男が最もその威圧感を発揮し、私を快楽の底へと叩き落とす基本にして最強の形だ。

 

「さあ、新年最初の仕上げだ」

 

「あ……あっ、清隆っ、くるっ! 凄いのが、くるぅっ!!」

 

じっくりと焦らされ、感度を極限まで高められていた私の秘部に、清隆の容赦のない全力のピストンが叩き込まれる。

 

「あ゛あ゛っ! ひぃっ! ぁぁぁっ!!」

 

もはや言葉にならない絶叫が私の喉からほとばしる。

清隆の無機質な瞳に見下ろされながら、私は自らの理性が完全に焼き切れるのを感じた。

 

「いくぞ、レイ」

 

「あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

新年早々、深夜の静寂を切り裂くような私の嬌声とともに。

私は全身を弓なりに反らせ、強烈な絶頂の波に呑み込まれた。同時に、私の中の最も深い場所に、清隆の熱く濃密なマグマが何度もドクドクと注ぎ込まれていくのを感じた。

 

「……はぁっ……はぁっ……」

 

行為が終わり、私は汗ばんだシーツの上でぐったりと横たわっていた。

清隆は私の隣に寝転がり、天井を見上げながら静かに呼吸を整えている。激しい運動の後だというのに、清隆の息の乱れはすぐに収まり、いつもの凪いだ空気を纏い始めていた。

 

私の体はまだ絶頂の余韻でピクピクと痙攣していたが、頭の芯は少しずつクリアになり、先ほどまでの熱情から、冷ややかで知的な思考回路へと切り替わりつつあった。

 

「……ねえ、清隆」

 

私は清隆の方へ寝返りを打ち、その引き締まった胸板に指先で触れながら口を開いた。

 

「年が明けたわけだけど。……清隆の、今年の新年の抱負って何?」

 

「抱負、か」

 

清隆は少しだけ視線を私に向け、淡々と答えた。

 

「特にはないな。俺はただ、平穏な日常を過ごせればそれでいい」

 

「もう、相変わらずね。……私はね、今年はもうちょっと、クラスの役に立てるように動こうかなって思ってるの」

 

私は、茶柱先生からのアドバイスと、私自身の決意をオブラートに包んで清隆に伝えた。

 

「堀北さんもリーダーとして頑張ってるし、私も特別試験でもう少し本気を出して、クラスに貢献してみようかなって。……清隆はどう? 何か頑張ってみる気はない?」

 

私の問いかけに対し、清隆は天井を見つめたまま、微塵も熱を感じさせない声で言った。

 

「俺は特別試験そのものには興味がない。だが……お前を含めた、クラスメイトたちがこれからどう成長し、どんな結果を出すのか。それを見届けることには、楽しみにしている部分がある」

 

(…………は?)

 

私は内心で、思わず目を丸くした。

クラスメイトたちの成長が楽しみ?

それは、同じ高校生の口から出る言葉ではない。まるで、盤面の上でチェスの駒を動かし、その駒がどう動くかを高みから観察しているのような、上からの目線だ。

 

(よくもまあ、ナチュラルにそんな上から目線なことが言えるわね……)

 

内心では呆れつつも、私は妙に納得してしまっている自分にも気づいていた。

清隆が秘めている能力が、常人の想像を遥かに超えたものであることは、これまでの付き合いで嫌というほど分かっている。清隆にとって、この学校の特別試験など遊戯に過ぎないのかもしれない。清隆が真に興味を持っているのは「勝敗」ではなく、「人間という不完全な存在がどう変化するか」なのだろう。

 

「そういえば」

 

私は、先月末からずっと腹の底に溜め込んでいた懸案事項を口にした。

 

「クリスマスの日の、ダブルデート。……結局、どうだったの?」

 

声のトーンが重くならないように、あくまで「世間話の延長」として尋ねる。

クリスマス・イブの夜、私を寝取られプレイで絶望の淵に叩き落とした直後に清隆が告げた、佐藤麻耶、軽井沢恵、平田洋介とのダブルデートの予定。

あの時、私は清隆が佐藤さんと本気でどうにかなるとは思っていなかった。だが、結果がどうなったのかは無視できない。

 

「どうだった、とは?」

 

「だから、佐藤さんとのことよ。彼女、清隆のこと気になってたみたいだし。……どうせ、告白でもされたんでしょう?」

 

カマをかけるように言うと、清隆は隠す素振りも見せずにあっさりと肯定した。

 

「ああ。別れ際に告白された」

 

「……!」

 

「だが、断った。俺にはまだ、誰かと付き合うということがよく分からないからな」

 

あまりにも淡々とした、事務的な報告。

私は胸の奥で、小さく、しかし安堵の息を吐き出した。

 

(やっぱりね。私の予想通りだわ)

 

清隆が佐藤さんの告白を受け入れるわけがない。清隆は恋愛という感情を学習する段階にはなく、ただ状況を観測していただけなのだ。

私は「そう、残念だったわね」と適当に相槌を打ちながら、脳内でシミュレーションを開始した。

 

(佐藤さんが告白して、振られた。……じゃあ、もし『私』が今、清隆に告白したら、どうなる?)

 

私と清隆は、すでにこうして夜のベッドで体を重ね合い、互いの性癖を曝け出し合うほどの歪な関係を築いている。

だが、もし私が「私と付き合って」と正面から告白した場合、清隆はおそらく断るだろう。なぜなら、清隆にとって私との関係は欲望の一致によるものであり、一般的な『恋人』という定義には当てはまらないからだ。

 

清隆を本当の意味で私の恋人にするためには、彼自身に『新西レイを求めている』という自覚を抱かせ、彼の方から私を求めさせるように仕向けなければならない。

 

(清隆の方から私を求めさせれば問題ないんだから……。清隆が私なしではいられないようにしていけばいいだけのことよ)

 

「まあ、佐藤さんの話はいいわ」

 

私は思考を切り替え、今月の本題――私から提案する『一月のエッチのテーマ』へと話題を移した。

 

「ねえ、清隆。私、新年の抱負で『特別試験を頑張る』って言ったじゃない? だから、学力もさらに伸ばしていきたいなって思ってるの」

 

「お前の学力なら、すでに上位クラスの連中とも張り合えるレベルだろう」

 

「上には上がいるわ。……だからね」

 

私はシーツの上で這い寄り、清隆の耳元に唇を近づけた。

 

「一月のテーマは、ずばり『お勉強』よ。清隆が私に勉強を教えてちょうだい。そして、一月の終わりに、清隆が作ったオリジナルのテストを受けさせて」

 

「俺の作ったテスト?」

 

「そう。それで私が八十点以上を取れたら……清隆は私に、ご褒美として『私の言うことを何でも聞くエッチ』をしてちょうだい。逆に八十点未満なら、私が罰ゲームとして何でも言うことを聞くわ」

 

清隆は少し怪訝そうな顔をして私を見た。

 

「条件は分かったが……一つ疑問がある。お前の学力は俺よりも高い。俺がお前に勉強を教えることに、何の意味があるんだ?」

 

当然の疑問だ。

だが、私はクスッと笑って清隆にウインクをした。

 

「まあまあ、いいじゃない。これは『家庭教師と教え子』のロールプレイの一環よ。家庭教師役と思ってやってみてよ」

 

「ロールプレイ……」

 

「そう。優秀な教え子に、頭が良くてスパルタな家庭教師が、夜な夜な手取り足取り教え込むの。……それに、清隆が本気で作ったテストなら、私の限界を引き出してくれるかもしれないじゃない?」

 

清隆が自らの能力を隠していることを知っているからこその提案だ。清隆が本気で作るテストがどれほどの難易度になるのか。それを解き明かす知覚的なスリルと、その後に待っているご褒美を天秤にかけたゲームだ。

 

清隆はしばらく私の顔を見つめていたが、やがて小さく息を吐き、首を縦に振った。

 

「……分かった。お前がそういう設定を望むなら、家庭教師役を引き受けよう。だが、簡単に八十点が取れると思うなよ」

 

「ふふっ、望むところよ。先生、ビシバシ鍛えてね」

 

契約が成立し、私が満足して眠りにつこうとした時。清隆が、ふと思い出したように口を開いた。

 

「去年の夏休みに行われた、無人島試験のことだが」

 

「えっ? う、うん……それがどうかしたの?」

 

「あの時、お前は野外で俺を誘っただろう。……俺に抱かれない期間を、たった四日も我慢できずにな」

 

「――――ッ!!」

 

カァァァッ! と、私の顔は火が出るように熱くなった。

事実だ。去年の夏、私は無人島で数日間清隆とまともに接触できなかった結果、下半身の疼きと禁断症状に耐えきれず、彼と野外での行為に及んだのだ。

 

「なっ、なんで今更そんなこと言うのよっ!」

 

「いや、ただの確認だ」

 

清隆の顔は相変わらずの無表情だった。だが、その声のトーンには、明確なからかいの色が混じっていた。

清隆が、私をからかって楽しんでいる。その事実に、気恥ずかしさと悔しさが混ざり合う。

 

「お前も特別試験で本格的に動くつもりなら、忠告しておこうと思ってな。もし今後、男女が隔離されるような、あるいは長期間連絡が取れないような特別試験があった場合……お前は、俺なしで正気を保てるのか?」

 

「うっ……!」

 

言葉に詰まった。確かに、清隆に依存しきっている今の私の体は、定期的に彼に抱かれなければ、思考回路に支障をきたすレベルで調教されてしまっている。

 

(……でも、ここで認めたら、完全に清隆のペースじゃない!)

 

私はシーツを胸元で強く握りしめ、強気な笑みを浮かべて清隆を睨み返した。

 

「うーん……そうね。確かに、隔離されたら清隆のモノが欲しくてたまらなくなって、毎晩ベッドでもがくことになるかもしれないわね」

 

「自覚があるならいいが」

 

「でもね」

 

私は清隆の鼻先を、人差し指でツンと突いた。

 

「今後、そういう状況はきっと増えるわ。だからこそ、私だって成長するの。……もし隔離されても、私は我慢してみせるわ。あなたの指がなくても、あなたのモノがなくても、特別試験で結果を出してみせる。……私を、ただの欲求不満な雌だと思ったら大間違いよ」

 

私の強気な反論を聞いて、清隆は「そうか」とだけ短く答えた。

清隆の瞳の奥に、少しだけ期待のような光が灯ったように見えたのは、私の気のせいだろうか。

 

「期待しているぞ、レイ」

 

「ええ、期待しててちょうだい。……まずは一月のテスト、絶対八十点取って、あなたに私の言うことを何でも聞かせてやるんだから」

 

私は清隆に背を向け、毛布を頭まですっぽりと被った。

背中越しに伝わってくる彼の体温を感じながら、私の口元は自然と緩んでいた。

 

 

三学期が始まってまもなく。

吐く息も凍るような一月の冷気の中、私たち高度育成高等学校の全生徒は、学年を問わず何台もの大型バスに乗り込み、高速道路を使って山奥の施設へと向かっていた。

 

「今回の特別試験は『混合合宿』だ。お前たちも薄々勘付いているだろうが、今回は全学年が参加してのグループ戦となる」

 

揺れるバスの車内で、担任である茶柱先生がマイクを握り、淡々とルールの説明を始めた。

合宿所での一週間。一学年から三学年までの生徒がいくつかの小グループを作り、最終的にそれらを合同させた大グループで競い合うというもの。

そして、この試験における最も大きな特徴。

 

「なお、合宿中の生活および試験のグループ編成は、男女別で行われる。男子は男子のみ、女子は女子のみでグループを作れ。男子と女子が生活空間や試験で交わることは一切ない」

 

(完全に男女別、ね……)

 

私は窓の外の景色を眺めながら、内心で小さく頷いた。

大晦日の夜、清隆がからかい気味にしていた予言が、早くも現実のものとなったわけだ。夜の密室で清隆と肌を重ねることは、この一週間は不可能になる。

 

だが、今の私に焦りはない。

清隆への依存を断ち切り、私が私自身の価値をクラスに証明するための、絶好の機会が用意されたのだから。

 

「……まずは、このクラスの女子をまとめる責任者を決める必要があるわね」

 

茶柱先生の説明が終わるや否や、静寂を破って立ち上がったのは、堀北だった。

堀北はクラスの女子たちを見渡し、凛とした声で宣言する。

 

「私がリーダーを引き受けるわ。そして、円滑に他クラスや先輩たちと交渉を進めるために、櫛田さんにサブリーダーをお願いしたいのだけれど」

 

指名された櫛田は、いつもの天使のような笑顔で「私でよければ、頑張るね!」と快諾した。

冷静で論理的な堀北と、圧倒的なコミュニケーション能力を持つ櫛田。クラスの女子をまとめるには、これ以上ないタッグだ。

 

(さて、私の出番ね)

 

私は姿勢を正し、スッと真っ直ぐに手を挙げた。

 

「堀北さん。もしよければ、私も二人の手伝いをさせてもらえないかしら?」

 

「……新西さん?」

 

堀北が、意外そうな、少し目を丸くした表情で私を見た。

無理もない。これまでの私は、学業成績こそ常に上位をキープしていたものの、クラスの運営や特別試験には干渉せず、ただの「優等生」として傍観を決め込んでいたからだ。

 

「あなたが自ら立候補してくるとは思わなかったわ。……理由を聞かせてもらえるかしら」

 

「もちろんよ」

 

私は優雅に微笑み、クラスの女子全員に聞こえるよう、よく通る声で答えた。

 

「今回の試験は、他クラスとの交渉が不可欠になる。堀北さんが全体の方針を決め、櫛田さんが調整に走る。でも、それだと二人の負担が大きすぎるわ。私は情報整理やスケジュールの管理、それに……学力テストや体育祭での結果には自信があるから、他クラスと交渉する時のカードとして、上手く私を使ってほしいの」

 

私の言葉に、クラスの女子たちが「確かに、レイちゃんがいれば心強いかも」とざわめき始める。

堀北は少し考え込むように視線を落とした後、真剣な目で私を見つめ返した。

 

「……あなたの優秀さは、これまでの試験でよく理解しているつもりよ。あなたが協力してくれるというなら、こんなに心強いことはないわ。よろしくお願いするわね、新西さん」

 

「ええ、任せて」

 

交渉成立。

これで私は、クラスの意思決定に関わる切符を手に入れた。

 

私はそのまま視線を動かし、少し離れた席に座っている波瑠加と愛里に向けた。

 

「波瑠加さん、愛里さん。グループは別々になっちゃうかもしれないけど……もし他クラスの女子との関係で困ったことや、理不尽な要求をされたら、いつでも私に相談してね。私がなんとかするから」

 

「おおー、レイちゃんイケメン! 頼りにしてるね!」

 

「あ、ありがとう、レイちゃん……」

 

綾小路グループの二人にそう伝え、私は安心させるようにウインクをした。私は女子の盤面で、参謀としての地位を手に入れて見せる。

 

バスが山奥の合宿所に到着すると、冷たく張り詰めた空気が私たちを包み込んだ。

男子と女子は完全に別々のルートへ誘導され、私たち女子生徒は広大な体育館のような場所に集められた。

 

ここから、グループ分けの時間が始まる。

全クラスの女子が入り乱れ、それぞれがクラスに有利なように、あるいは仲の良い友人と一緒になれるようにと、体育館は瞬く間に欲望と計算が渦巻くカオスの坩堝と化した。

 

「私たちと組みませんか? その代わり……」

 

「嫌よ、私たちで組みたいの!」

 

あちこちで飛び交う声。

堀北は論理的に利点を説こうとするが、彼女の冷たい物言いは他クラスの女子には反発を招きやすい。櫛田は持ち前の愛嬌で場を和ませているが、各クラスの利害が複雑に絡み合い、なかなか具体的なグループ編成がまとまらない。

 

(……二人の強みは完璧だけど、それを統合できてないわね)

 

私は隅にあったホワイトボードとマーカーを拝借し、堀北と櫛田の元へと歩み寄った。

 

「堀北さん、櫛田さん。集まった情報を、一旦ここに整理しましょう」

 

私はマーカーを走らせ、素早い手つきで図を描き始めた。

 

「櫛田さんがヒアリングしてくれた『仲良しグループでまとまりたい』という要望のライン。そして、堀北さんが計算している『各クラスの戦略』や『グループの合計値』による論理的なライン。これを可視化して、パズルのように当てはめていくわ」

 

「……なるほど。これなら、どこが問題になっているか一目で分かるわね」

 

堀北が感心したようにホワイトボードを見つめる。

 

「新西さん、すごい! 私、あの子たちから誰と組みたいかの希望を聞いてくるね!」

 

櫛田が嬉々として情報収集に走り、堀北が全体の方針を決定する。そして私が、二人が集めた情報をホワイトボード上で最適化し、交渉のカードを整理していく。

 

「あのクラスが要求している条件には、このクラスのグループをぶつけて相殺させましょう。私たちのクラスは、学力に不安があるグループを、温厚なグループに入れることでリスクを分散させるわ」

 

私は二人の手足となり、時に秘書のように、時に参謀のように機能した。

時間はかかったものの、私たちの連携により、私たちのクラスの女子たちは誰一人として不利な状況に置かれることなく、無事に全グループの編成を完了させることができたのだった。

 

混合合宿の生活は、予想以上に過酷なものだった。

毎朝六時の起床に始まり、冷え切った廊下の雑巾がけ、坐禅の修行。

さらに、最終日の試験に向けてのスピーチの練習や、駅伝のトレーニング、そして筆記試験の勉強。体力と精神力の両方を削られる日々。

 

だが、私にとってはこの程度のスケジュール、苦になるものではなかった。

 

「新西さん、本当に姿勢が綺麗ね……一時間も微動だにしないなんて」

 

坐禅の時間が終わり、痺れた足を押さえる他クラスの女子たちを尻目に、私はスッと涼しい顔で立ち上がった。

駅伝の練習でも、持ち前の運動神経を遺憾なく発揮し、上位のタイムを叩き出す。スピーチの原稿も、私の論理的思考力をもってすれば完璧なものを書き上げることができた。

 

「新西さんのおかげで、私たちのグループ、すごく評価高いみたい!」

 

同じグループになった他クラスの先輩からも、私は確かな信頼と評価を勝ち取り始めていた。堀北や櫛田がリーダーシップとコミュニケーションで輝くなら、私は実務能力でグループを牽引していたのだ。

 

それでも。

どんなに有能に立ち回ろうとも、やはり心がすり減る瞬間はある。

だからこそ、男女が唯一顔を合わせることのできる短い時間――広大な食堂での食事や休憩時間は、私にとってかけがえのないものだった。

 

「堀北さん、櫛田さん。私は少し、別の子たちと食べてくるわね」

 

「ええ、構わないわ。助かっているわ、ありがとう」

 

堀北たちに断りを入れ、私は足早に食堂の奥へと向かった。

そこには、波瑠加と愛里、そして啓誠や明人といった、見慣れた綾小路グループの面々がテーブルを囲んでいた。清隆の姿もある。

 

「あ、レイちゃん! こっちこっち!」

 

「波瑠加さん、愛里さん。……ふふっ、みんな元気そうね」

 

私はトレイを置き、彼女たちの隣に腰を下ろした。

合宿中の愚痴や、他愛もない話題で笑い合う。戦場のような女子グループの空気を離れ、このフラットで温かい円卓に座るだけで、張っていた肩の力がすーっと抜けていくのを感じる。

視線の端で、清隆が黙々と食事を進めているのが見える。夜の逢瀬はないけれど、こうして同じ空間で平穏な時間を共有しているだけで、私の中の依存は不思議と満たされていた。

 

合宿も四日目を迎えた、ある日の昼食時。

私はいつものように、波瑠加や愛里と一緒にテーブルを囲み、食後の紅茶を楽しんでいた。清隆や啓誠たちは、すでに食事を終えて男子のエリアへと戻っていた。

 

すると、一つ隣のテーブルから、1年生の男子生徒たちのヒソヒソ話が聞こえてきた。

 

「なあ、聞いたかよ……あの高円寺がさ、綾小路に『引き分け』を認めたらしいぜ」

 

「マジかよ!? あの自信過剰な高円寺が!?」

 

(……高円寺くんと、清隆が?)

 

私はお茶を口元に運んだまま、ピクリと反応した。

高円寺六助。我がクラスが誇る、規格外の身体能力と頭脳を持つ変人。そして清隆もまた、本性を隠した規格外。

その二人が引き分け? 駅伝の練習か何かで、本気を出して競い合ったのだろうか。清隆にしては珍しく目立つことをしたな、と私は不思議に思い、男子生徒らの会話にさらに耳を澄ませた。

 

「高円寺が綾小路の『アレ』を見て言ったんだよ。『大きさも、積んだ経験も同等だから、この私が引き分けを認めてやろう。喜びたまえ、綾小路ボーイ』ってよ!」

「マジかよ、綾小路のやつ、そんなデカいのか……!? つーか経験ってなんだよ、あいつ彼女いないだろ!」

 

「――――ブゥッ!!」

 

私は、口に含んでいたお茶を、盛大に噴き出してしまった。

 

「キャッ!? れ、レイちゃん!?」

 

「ゴホッ、ゲホッ! げっほ、ご、ごめんなさ……っ!」

 

気管にお茶が入り、私は涙目になりながら激しくむせ返った。

波瑠加が慌てて私の背中をさすり、愛里がオロオロとハンカチを差し出してくれる。

 

「だ、大丈夫!? 急にどうしたの?」

 

「う、うん……ちょっと、喉に引っかかっただけで……ゲホッ」

 

私は必死に誤魔化しながら、頭の中で大パニックを起こしていた。

 

(お、おおお、大きさも、積んだ経験も同等!?)

 

普通の女子生徒には、男子生徒らが何の話をしているのかピンとこないかもしれない。だが、私は『綾小路清隆のソレ(規格外)』を、毎晩のように自らの最奥で受け止め、狂わされている身なのだ。嫌でも瞬時に理解してしまった。

 

(清隆のあの凶悪なモノと、高円寺くんのモノが、同じサイズ!? どんだけ規格外なクラスなのよこのクラスは!!)

 

しかも。

 

(高円寺くん、なーにが『積んだ経験も同等』よ! 清隆が経験積んでるのは、全部私との夜の……ああっ、もう! バカばっかり!)

 

清隆と高円寺が、大浴場で己の男の象徴を見せ合い、ドヤ顔で引き分けを宣言し合っている図を想像してしまい、羞恥心と怒りと可笑しさで顔から火が出そうだった。

 

(……あの金髪ゴリラ、変なこと言いふらしやがって。今度機会があったら、絶っっ対に意地悪してやるんだから……!)

 

私は赤くなった顔をハンカチで隠しながら、心の中で高円寺への小さな復讐を誓っていた。

 

 

その日の夜。

消灯時間が過ぎ、女子の共同大部屋に静寂が訪れた頃。

 

私は布団の中で目を閉じながら、静かに息を吐き出していた。

昼間、男子生徒たちが話していた『清隆のモノ』の話を聞いてしまったせいで、私の体は正直に反応し、下腹部の奥底でチリチリとした熱を帯び始めていたのだ。

 

(……ダメよ。こんなところで、感じちゃダメ)

 

私は太ももを固く閉じ、毛布を強く握りしめた。

昨年の夏合宿では、清隆に抱かれない数日間に耐えきれなかった私だ。あの大晦日の夜、清隆に『俺なしで正気を保てるのか?』とからかわれた悔しさが蘇る。

 

(我慢できる。……私はあの時より、ずっと成長したんだから)

 

深く深呼吸を繰り返し、意識を別の場所へと向ける。かつてのような、理性を吹き飛ばすほどの狂おしい欲求ではない。ギリギリのところで、私は自分自身の手綱を握り続けることができていた。

彼への依存を、私の意志がわずかに上回った瞬間だった。

 

最終日を翌日に控えた夕方のこと。

私はスピーチの原稿を共同部屋に忘れたことに気づき、一人で部屋へと引き返した。

 

静まり返った廊下を歩き、部屋のドアノブに手をかけようとした瞬間。

中から、微かな声が聞こえてきた。

 

「……だから、言ったはずよ。私はあなたに……」

 

「ふふっ、本当にウザいなぁ、堀北さんは」

 

(……堀北さんと、櫛田さん?)

 

私はピタリと足を止め、気配を殺してドアの隙間に耳を寄せた。

普段の二人の会話とは全く違う、氷のように冷たく、棘のある声色。

内容ははっきりとは聞き取れなかったが、二人が交わしている言葉の端々から、確執の存在が浮かび上がってきた。

 

どうやら櫛田は、堀北をこの学校から排除しようと明確な敵意を向けているらしい。

対する堀北は、櫛田の敵意を受け流しつつも、「その力をクラスへの貢献に向けてほしい」と、櫛田を諦めさせようと説得を試みているようだった。

 

(……なるほど。あの二人のタッグの裏には、こんな爆弾が隠されていたのね)

 

私は音を立てずにその場から離れ、壁に背中を預けた。

櫛田桔梗の天使の仮面の裏側。そして、それを知りながら彼女をサブリーダーとして使いこなそうとしている堀北鈴音。

これは、重要な情報だ。

いつか私がクラスを掌握する必要が出た時のために、この事実は私の胸の奥に深くしまっておくことにしよう。

 

そして迎えた、混合合宿の最終日。

全グループの運命を決める、最後の大試験の幕が切って落とされた。

 

私は、自らに課されたタスクを完璧にこなしていった。

静寂の中で行われた坐禅では、一分の隙もない姿勢を貫き通す。

スピーチでは、事前に練り上げた原稿を、堂々たる声量と説得力のある視線で話す。

体力勝負の駅伝では、険しい山道を一切のペースダウンなく駆け抜け、前の走者を抜き去ってタスキを繋いだ。

そして最後の筆記試験は、言うまでもなかった。

 

すべての試験が終わり、結果を待つ間。

 

「新西さん。少し、いいかしら」

 

体育館の隅で休んでいた私に、堀北が歩み寄ってきた。

 

「お疲れ様、堀北さん。手応えはどう?」

 

「ええ、私たち女子のグループは、間違いなく上位に食い込めるはずよ。……それも、あなたがいてくれたおかげだわ」

 

堀北は、普段の冷たい表情を少しだけ和らげ、真っ直ぐに私を見た。

 

「今回のあなたの働きは、想像以上だったわ。……今後も、今回のよう私の指揮を支援してもらえると助かるのだけれど」

 

(……よしっ)

 

私は内心で、小さくガッツポーズをした。

堀北鈴音から、参謀としての要請。これは、私がクラスの実権を握るための決定的なマイルストーンだ。

 

「もちろんよ、堀北さん。私たちのクラスが上に上がるためだもの、協力させてもらうわ」

 

私は微笑んで、堀北の手を握り返した。

 

その後の結果発表。

全体としては、堀北学が南雲雅の策略によって嵌められ、大きな波乱が起きるというドラマがあったらしい。

しかし、私にとってそんな争いはどうでもよかった。

最も重要なのは、私たちのクラスから退学者が出なかったこと。そして何より、波瑠加や愛里といった『綾小路グループ』の面々が、誰一人欠けることなく無事に合宿を終えられたことだ。

 

帰り道の大型バスの中。

私は心地よい疲労感に包まれながら、高速道路の景色を眺めていた。

 

今回の試験。私は自らの意思と実力で駆け抜け、堀北と櫛田という二人のキーマンを補佐してみせた。

彼女たちの能力は高かった。だが、私もクラスにプラスをもたらすことができるという、確かな手応えがあった。

 

(……ええ。これでいいのよ)

 

清隆という男の思考は読めない。彼が今後どう動くかも分からない。

クラス内での私の存在感を高め、誰もが私を必要とするようにし、いつ清隆が動いてもいいようにする。

それは、清隆を恋人にするという遠い目的を抜きにしても……私自身の誇りと、私の平穏な日常を守るために、意味のあることなのだ。

 

私はバスの心地よい揺れに身を任せながら、静かに目を閉じた。

 

 

 

混合合宿試験が終わり、学校に日常が戻ってきた一月末の週末。

私の部屋のローテーブルには、数冊の参考書とノート、そして温かい紅茶の入ったマグカップが二つ並んでいた。

 

「……ここの数式の展開だが。この定理をそのまま当てはめるのではなく、一度この形に変換してから代入すると計算ミスが減る。前のページでやった例題の応用だ」

 

「あ、本当だ。……なるほど、そういうことね。解答群の引っかけのパターンも、これなら見抜けるわ」

 

私の隣に座る清隆は、ボールペンを指先で滑らせながら、淡々と、しかし的確な言葉で私に勉強を教えていた。

 

新年の夜に交わした『家庭教師ロールプレイ』の約束。

私は清隆が学力も隠しているだろうとは思っていたが、実際にこうして一対一で教えを乞うてみると、清隆の教える能力の高さに舌を巻くしかなかった。

 

(……すごいわね。啓誠くんの教え方も論理的で分かりやすいけど、清隆の教え方は根本的に違う)

 

啓誠は「解き方」を教える。しかし清隆は「考え方のプロセス」そのものを脳内に直接インストールしてくるような感覚だ。私がどこで躓きやすいか、どこを無意識に飛ばして読んでいるかを完全に把握し、最適なタイミングでヒントを出してくる。

清隆の圧倒的な知性の片鱗を、こんな『家庭教師ごっこ』で独り占めできているという優越感が、私を心地よく満たしていた。

 

「清隆って、本当に教えるのが上手いのね。……先生に向いてるんじゃない?」

 

私がノートから顔を上げ、清隆の横顔を見つめて微笑む。

 

「俺は自分が理解していることを言語化しているだけだ。お前の理解力が高いから成立している」

 

「ふふっ、褒めても何も出ないわよ」

 

温かい紅茶の湯気。ペンの走る音。

隣に座る清隆の肩が、時折私の肩に軽く触れる。

 

(……なんだか、本当に『頭のいい彼氏に勉強を教えてもらっている彼女』みたい)

 

合宿中は男女で完全に隔離され、まともに口を利くこともできなかった。その反動もあってか、こうして清隆と二人きりの密室で、ただ静かに勉強をしているこの時間が、たまらなく愛おしくて、甘いものに感じられた。

夜のプレイとは違う、穏やかな幸福感。

私は、清隆が私に与えてくれるこのささやかな『彼氏感』を心ゆくまで堪能しながら、次のページへとペンを進めた。

 

順調に一時間が経過した頃。

 

「じゃあ、次はこの長文読解の問題ね。……えっと、ここのパラグラフの要旨なんだけど……」

 

私が参考書を指差しながら解説を求めようとした、その時だった。

隣に座っていたはずの清隆が、スッと無言で立ち上がった。

 

「清隆? トイレ?」

 

私が首を傾げると、清隆は何も言わずに私の背後へと回り込んだ。

 

「え……?」

 

直後。

背後から私の両肩に、清隆の大きな手が置かれた。

そしてそのまま、清隆の両腕が私の脇の下からスルスルと前に伸びてきて――私の胸を、服の上から無造作に、ギュッと掴んで揉み始めたのだ。

 

「っ……!? ちょっと、清隆!? なにす――」

 

「大きな声を出すな。勉強に集中しろ」

 

私の耳元で、清隆が極めて平坦な、無機質な声で囁いた。

 

「……は? なに言ってるの、今勉強中でしょう!? なんで急に胸なんて……っ、んっ!」

 

私が抗議しようと体をよじると、清隆はさらに力を込めて、タートルネックのセーター越しに私の胸の膨らみを揉みしだいた。

柔らかな肉を的確に捉え、掌の中で転がすような、いやらしい手つき。

 

「俺は、お前の学習効率をさらに上げるための『メソッド』を実行しているだけだ」

 

「メソッドぉ……?」

 

「人間の記憶というものは、単なる情報の羅列よりも、『身体的経験』や『感情の起伏』と結びついた時の方が、脳に深く定着しやすい。……すなわち、この長文読解の要旨と、俺がお前の胸を揉むという身体的快感を同時に脳に入力することで、記憶の定着率を向上させることができるはずだ」

 

(…………はぁぁぁっ!?)

 

私の脳内コンピューターが、ショートしそうになった。

 

「記憶の定着のために胸を揉む」。

 

三流のエロ漫画でもお目にかかれないようなトンチキな理論を、清隆は微塵も表情を変えず、さも『科学的に証明された真理』であるかのように言い放ったのだ。

 

「ふ、ふざけないでよっ! そんなバカな理屈……あっ、んぅっ!」

 

「いいから、長文の続きを読め。お前がこのパラグラフを完全に理解するまで、俺の『指導』は終わらない」

 

清隆の手が、セーター越しに私の乳首の突起をピンポイントで弾いた。

 

「ひゃっ……! バカ、やめっ……」

 

「やめない。ほら、第三段落の一行目からだ。声に出して読んでみろ」

 

(この、変態……っ!)

 

私は内心で毒づきながらも、背後から清隆にホールドされているため逃げ出すことができない。

それに、私から提案した「家庭教師のロールプレイ」だ。清隆が「これも指導の一環だ」と言い張る以上、私がここで逃げ出せば、一月末のテストを前にして私の負けになってしまう。

 

「……っ、わ、わかったわよ……読めばいいんでしょ、読めば……!」

 

私は意地になり、ノートに視線を落として、震える声で英文を読み上げ始めた。

 

「Therefore, the author implies that... んっ、ぁっ…… this phenomenon is not just... ひゃあっ!」

 

私は必死に英文を読み上げ、その意味を頭の中で咀嚼しようと試みた。

しかし、背後から私を包み込む清隆の体温と、絶え間なく私の胸を揉みしだく彼の手の感触が、私の集中力を容赦なく削いでいく。

 

(……おかしい。服の上から揉まれてるだけなのに……どうして、こんなに熱いの……っ?)

 

普段の夜のハードなプレイに比べれば、服の上からの愛撫など、児戯に等しいはずだ。

なのに、私の体は清隆の指の動き一つ一つに過敏に反応し、下腹部の奥からジワジワと甘い熱が這い上がってくるのを感じていた。

 

理由は明確だ。

『混合合宿での一週間の隔離』。

 

合宿中、私は清隆への依存を断ち切り、立派に自制して見せたと考えていた。しかし、体は正直だった。一週間もの間、清隆のモノを……彼からの支配と快感を絶たれていた私の体は、スポンジが水を吸い込むように、彼からのわずかな刺激だけでも凄まじい勢いで快感へと変換してしまっていたのだ。

 

「……声が震えているぞ、レイ。発音のアクセントも間違っている」

 

「だっ、てぇ……あなたが、変なとこっ、触るからぁ……っ」

 

「俺はただ、お前の記憶中枢を刺激しているだけだ」

 

清隆の冷たい声とともに、彼の手の動きが一段階エスカレートした。

セーターの裾から清隆の手が侵入し、直接私の肌を這い上がってくる。そして、下着を強引にずらし、私の剥き出しの胸の果実を直接その掌で包み込んだのだ。

 

「あ゛っ……! ダメっ、直接はっ……んんぅっ!」

 

直接肌に触れる清隆の指先は、少しだけひんやりとしていて、それが私の火照った胸との間に強烈な温度差を生み出す。

清隆の中指と親指が、ツンと硬く尖り始めた私の乳首をつまみ、クリクリといやらしく弄り始めた。

 

「ひぃっ、ああっ! きよたかっ、そこっ……!」

 

「さあ、今の文章の和訳を答えてみろ。……答えられないなら、指導の強度を上げる必要があるな」

 

「こ、答えるっ! 答えるからっ……えっと、えっと……『したがって、著者は……この現象が単なるっ、ああっ……一時的なものではないと、示唆、してっ……ひゃあっ!』」

 

頭の中で英文法を組み立てる理性と、胸から直接脳髄に打ち込まれる快感が、私の頭の中で激しく激突する。

 

(集中しなさい、レイ……! この程度の嫌がらせで、勉強を放棄するわけには……っ!)

 

私はシャーペンを握る手に力を込め、ノートに震える字で和訳を書き殴っていく。

 

清隆は私の後ろで、そんな私の健気な抵抗を静かに観察していた。

 

「……なるほど。確かに、正解だ。だが、まだ定着率が甘いようだな」

 

「えっ……? あ゛っ!!」

 

清隆の手が胸から離れたかと思うと、今度は私の部屋着のズボンを無造作に引き下げた。

 

「ちょ、待っ……清隆、下は……っ!」

 

「安心しろ。これもすべて、教育の一環だ」

 

清隆の手が、私のショーツの布地をずらし、すでに合宿の我慢と先ほどの胸への愛撫でドロドロに濡れそぼっていた私の秘部へと、容赦なく侵入した。

 

「ヒッ……!! あ゛あ゛っ!!」

 

濡れた粘膜に、清隆の冷たい指が直接突き刺さる。

 

「……俺が指を入れる前から、こんなに蜜を溢れさせて俺の教えを乞うている」

 

「ちが、あっ! それはっ、体が勝手にぃっ……!」

 

「さあ、次の問題だ。この関数の微分を……」

 

「むりっ! むりむりむりっ!! 勉強なんてっ、もうできないぃっ!!」

 

私はシャーペンを放り出し、テーブルに両手をついて首を激しく横に振った。

秘部の最も敏感な核を、清隆の指先が的確に捉え、こねるように、弾くように責め立てる。

合宿での一週間の禁欲。それが一気に決壊し、私の体は清隆の指がもたらす暴力的な快感の前に、あっという間に白旗を上げた。

 

「や、やめてっ! 清隆、そろそろっ、本当にっ……ああっ! おかしくなるぅっ!」

 

「やめろと言いながら、俺の指を中からギュウギュウと締め付けているじゃないか。……ほら、もっとしっかり記憶に刻み込め」

 

ズチュッ! グチュッ! ズチュッ!!

 

清隆の指のストロークが、限界を突破して加速する。

テーブルに突っ伏したまま、私は自分の体がコントロールを失い、快楽の波に呑み込まれていくのを感じた。

 

「あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁっ! いくぅっ! いっちゃうっ!! 清隆ぁぁぁっ!!」

 

ビクンッ! ビクンッ! と全身を大きく痙攣させながら、私は絶頂のあまりに潮を吹き、テーブルの上のノートや参考書を汚しそうになるのをギリギリで堪えながら、意識を白く飛ばした。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 

私の荒い呼吸音だけが、静まり返った部屋に響いていた。

テーブルに顔を伏せ、よだれを垂らしながら、私はしばらくの間、自分がどこで何をしているのかさえ理解できない状態に陥っていた。

 

背後から私を支えていた清隆が、ゆっくりと指を引き抜く。

ズチュリといういやらしい音がして、私の下半身から力が抜け、そのまま床に崩れ落ちそうになったところを、清隆に抱きとめられた。

 

「……少しは、落ち着いたか」

 

「っ……あ、あんたねぇ……っ!」

 

私は顔を真っ赤にして、清隆をキッと睨みつけた。

 

「家庭教師のロールプレイだっていうから付き合ってあげたのに! 途中で無理やりこんなことして……っ! しかも『記憶の定着』だなんて、そんなアホみたいな理由で……っ!」

 

息も絶え絶えに文句を並べ立てる私に対し、清隆は全く動じることなく、テーブルの上の参考書を指差した。

 

「なら、確かめてみよう」

 

「えっ?」

 

「俺がお前の胸を揉みながら読ませた、あの第三段落の英文。和訳をもう一度、今すぐ口に出して言ってみろ」

 

「はぁ!? 今そんなこと言えるわけ……」

 

反論しようとした私の口から、無意識のうちに言葉がスラスラとこぼれ落ちた。

 

「……『したがって、著者は、この現象が単なる一時的なものではないと示唆して……おり、長期的には社会構造に致命的な影響を……』」

 

「……」

「……」

 

私は、自分の口から完璧な和訳が、しかも一言一句間違えずに飛び出してきたことに、心底驚愕して口を閉ざした。

 

「な、なんで……」

 

「言っただろう。身体的経験と結びついた情報は、脳に深く刻み込まれる。お前の脳は、俺がお前に与えた快感と、あの英文の構造を完全に『リンク』させて記憶したんだ」

 

清隆の無表情なドヤ顔。

私は、言い知れぬ敗北感と、背筋が凍るような恐ろしさを感じていた。

これではまるで、餌をもらう時にベルを鳴らされた『パブロフの犬』だ。私はあの英文を見るたびに、清隆に胸を揉まれ、秘部を責め立てられたあの快感を無意識に思い出してしまう体に調教されてしまったということではないか。

 

「……あ、悪魔……っ。変態……っ」

 

私が文句を言う勢いを完全に失い、肩を落として呟くと、清隆は私を横抱きに抱え上げた。

 

「俺の指導メソッドの正しさが証明されたな。……なら、今日の勉強はここまでにして、ここからは『実技』の時間にしよう」

 

「ひゃっ!? ちょ、清隆!」

 

清隆は私を抱きかかえたまま、部屋の奥のベッドへと歩き出す。

 

「合宿中、俺に抱かれなくて寂しかったんだろう。……一月最後のテストに向けて、これから毎晩、みっちりと俺の『指導』を体に叩き込んでやる」

 

「バ、バカっ……もう、好きにしてよ……っ!」

 

私は清隆の首に腕を回し、顔を真っ赤にしながら彼の広い胸に顔を埋めた。

清隆のトンチキな理屈には呆れるしかない。でも、合宿で清隆と離れていた数日間の寂しさを、彼なりの強引なやり方で埋めてくれているのだと思うと、私はどうしようもなく彼を愛おしく感じてしまうのだ。

 

一月も終わりに近づいた、ある休日の午後。

私の部屋のローテーブルには、清隆のお手製による『一月度学力テスト』のプリントが置かれていた。

 

「制限時間は六十分。八十点以上で、お前が俺に命令できる。八十点未満なら、お前が俺の罰ゲームを受ける。……始め」

 

清隆のストップウォッチの音を合図に、私はシャーペンを握りしめ、問題用紙へと向かった。

 

(……ふふっ。いくら清隆が作ったテストとはいえ、高校一年の学習範囲の逸脱はルール違反だって釘を刺しておいたもの。今の私なら、絶対に八十点は超えられるわ)

 

私は自信満々で、第一問の長文読解に目を通した。

英文の構成、パラグラフの展開、そして設問の意図。それらがまるで、手に取るように脳内にスラスラと入ってくる。

 

(すごい。……本当に、あのトンチキな勉強法の効果が出てる)

 

清隆が実践した『記憶と身体的経験のリンク』という異常なメソッド。

確かにその効果は絶大だった。問題文を見ただけで、勉強会で清隆が私の背後から囁いた和訳のプロセスや、文法構造の解説が、鮮明な映像として脳裏に蘇ってくるのだ。

 

「……っ」

 

しかし、私はすぐにシャーペンを握る手に余計な力が入るのを感じた。

スラスラと問題が解ける。脳の海馬から情報が引き出される。

だが、それと『同時』に。

勉強会で清隆に服の上から胸を揉みしだかれ、秘部を激しく責め立てられた暴力的な快感までもが、フラッシュバックのように全身の神経を駆け巡り始めたのだ。

 

(う、嘘でしょ……っ! テストを解いてるだけなのに……体が、熱い……っ!)

 

英文を一つ和訳するたびに、清隆の手が胸を這う感触が蘇る。

数学の数式を一つ展開するたびに、清隆が私の中に指を沈め、掻き回したあの水音が鼓膜の奥で再生される。

 

「あ……んっ……」

 

私は無意識のうちに、太ももを固く擦り合わせ、モジモジと体をよじらせていた。

椅子の上に座っているのが辛い。ショーツの中はすでにじっとりと湿り気を帯び、テスト用紙に向かっているというのに、私の体は完全に発情状態に陥ってしまっていた。

 

(こ、効果は認めるけど……この副作用は、いくらなんでもまずいでしょ……っ! これじゃあ、学校の普通のテストの時にも思い出しちゃうじゃない……!)

 

斜め向かいのソファに座って読書をしている清隆を恨めしく睨みつけながら、私は必死に荒くなる呼吸を抑え、モジモジと身をよじらせながら前半のプリントを終わらせた。

 

「……ふぅ。でも、ここまでは完璧ね」

 

私は額に浮かんだ汗を拭い、プリントをめくって後半戦へと突入した。

ここからが正念場だ。清隆がどんな引っかけ問題を用意しているか分からない。私は気合いを入れ直し、次の大問へと視線を落とした。

 

「……え?」

 

その瞬間。

先ほどまで私の体を支配していた甘い疼きと熱情が、一瞬にして冷水にぶち込まれたようにスッと引いていくのを感じた。

 

「な、なに……これ」

 

私は、問題用紙に並んだ数式と記述問題の文章を見て、完全に真顔になった。

 

前半までの、基礎から応用へと繋がるような綺麗な問題構成とは、明らかに異質。

一応、高校一年生の学習指導要領の範囲内の公式や単語を使っていることは分かる。だが、その組み合わせ方、発想の飛躍、そして解法に至るまでの論理的ステップが、あまりにも異常だった。

 

(……手も足も出ない、とはこのことね)

 

シャーペンを持ったまま、私は完全にフリーズした。

例えば数学の問題。三つの異なる分野の定理を複合的に用い、さらに一度も見たことのないような補助線を引かなければ、解答の糸口すら掴めないような難問。

英語の長文読解に至っては、単語自体は辞書にあるものだが、その文脈と抽象度が高く、まるで大学レベルの哲学書か専門書を読まされているかのようだった。

 

「……」

 

私は残り時間を気にしながら、他の問題にも目を通していった。

だが、最後までページをめくっても、私が確実に解けると断言できる問題は、後半のページには一つも存在しなかった。

 

(……はめられたわ)

 

私の学力レベルを完璧に把握している清隆が、私が解けないように、難易度を調整して作り上げた、まさに私を殺すためのテスト。

学習範囲を逸脱していない以上、文句は言えない。だが、これは明らかに高校生のテストの次元を超えている。清隆にとっての応用問題が、これほどまでとは思いもしなかった。

 

「……どうした。急に手が止まったが」

 

沈黙に包まれた部屋で、本から顔を上げた清隆が、無表情のまま私に声をかけてきた。

私はシャーペンをテーブルに置き、深く、深い深呼吸を一つした。

 

「……ねえ、清隆」

 

「なんだ」

 

「流石に……大人気ないと思うんだけど」

 

私の弱々しい抗議に、清隆はピクリとも表情を崩さなかった。

清隆は立ち上がり、私のテーブルの上の白紙だらけの後半のプリントを見下ろした。

 

「俺はルール違反はしていない。すべてお前に教えた基礎の延長線上にある問題だ」

 

「それはそうだけど……こんなの、時間が何時間あっても足りないわよ」

 

「制限時間内に解けなければ意味がない。それに、俺はお前に『簡単に八十点が取れると思うな』と忠告したはずだ」

 

清隆はストップウォッチのボタンを押し、タイムアップを宣告した。

清隆は私のプリントを回収し、ほんの数秒だけ目を通した後、冷たく、そしてどこか意地悪そうな響きを帯びた声で告げた。

 

「前半は完璧だが、後半がこれでは八十点には到底届かないな。……じゃあ、お前の負けだ」

 

「……っ」

 

私は唇を噛み締め、両手で顔を覆った。

悔しい。自分の学力には自信があったのに、清隆との格の違いをまざまざと見せつけられた。

だが、勝負は勝負だ。清隆に挑んだのは私自身なのだから、この敗北は甘んじて受け入れるしかない。

 

「……わかったわ。私の負けよ」

 

「では、約束通り罰ゲームだ。俺の言うことを何でも聞いてもらおう」

 

清隆はプリントを放り投げ、私を見下ろして静かに命じた。

 

「お前は優等生を気取っているが、俺から見ればこの程度の問題も解けない出来の悪い教え子だ」

 

「……」

 

「今から、自分がいかに勉強ができないおバカな女であるかを、自分の口で卑下しながら、ゆっくりと服を脱いで裸になれ」

 

(……っ! この、ドS……!)

 

ただ脱がされるだけではない。自らの尊厳を言葉でへし折りながら、自分の手で衣服を脱いでいくという羞恥プレイ。

先ほどのテストで私の自信を完全にへし折った直後に、さらに精神的な屈辱を与える。清隆のこの冷酷なまでの計算高さには、恐怖を通り越してゾクゾクとした興奮すら覚えてしまう。

 

私はゆっくりと立ち上がり、清隆と向かい合った。

そして、震える手で、着ていたカーディガンのボタンに手をかけた。

 

「……私、自分のこと、頭がいいって思い上がってました」

 

ポツリと、静かな部屋に私の自己否定の言葉が落ちる。

ボタンを一つ、また一つと外していく。

 

「本当は……清隆が作ってくれた問題すら解けない、ただの……出来の悪い、おバカな女です」

 

カーディガンを肩から滑り落とし、床に落とす。

続いて、ブラウスのボタンに手をかける。

 

「清隆にあんなに丁寧に教えてもらったのに……それを応用する頭もなくて。……私みたいな頭の悪い女は、優等生のフリをしてるだけの、空っぽな見栄っ張りです」

 

ブラウスを脱ぎ捨てると、私はプリーツスカートのホックに手をかけた。

 

「……っ、ん……」

 

「どうした。手が止まっているぞ」

 

私は顔を真っ赤にしながら、スカートをすとんと足元に落とした。

 

「私は……勉強もできない、頭も悪い……清隆に教えてもらわないと、何一つ自分で解けない、ダメな女の子です……」

 

これで、私は黒のレースのブラジャーとショーツという、下着だけの姿になった。

恥ずかしさで両手で体を隠そうとする私に対し、清隆はソファに腰を下ろし、足を組みながら冷酷な追い打ちの言葉を投げかけてきた。

 

「本当にその通りだな。脳みそが足りない分、体で俺に許しを乞うしかない哀れな姿だ。……ほら、まだ終わっていないぞ。もっと自分の愚かさを噛み締めながら、すべてを曝け出せ」

 

「っ……この、鬼……っ」

 

私は涙目になりながら、背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。

パチン、という音とともに、胸が解放される。

 

「あっ……私は……頭の中が、エッチなことでいっぱいで……テスト中も、清隆にされたことを思い出して、一人で発情してるような……っ」

 

ブラジャーを床に投げ捨てる。

 

「勉強もできないくせに、体だけは一人前に欲しがる……どうしようもない、淫乱なおバカです……っ」

 

最後に残されたショーツの端に指をかけ、ゆっくりと、腿から膝、そして足首へと滑らせていく。

先ほどのテスト中の発情のせいで、私のショーツの中はぐっしょりと濡れており、布地が肌から離れる時にいやらしい水音が立った。

 

「……っ。これで、最後……」

 

私は完全に一糸まとわぬ全裸となり、両手で胸と股間を隠しながら、涙を浮かべた上目遣いで清隆を睨みつけた。

 

「……これで、満足なの?」

 

私が震える声でそう尋ねると。

清隆は私の全身を、その無機質で冷たい瞳で隅々まで嘗め回すように観察した後、とても満足そうに、深く一つ頷いた。

 

「ああ。完璧な自己分析だ。お前のその卑屈な姿、よく似合っているぞ」

 

「こっちへ来い」

 

清隆は立ち上がり、私を部屋の奥のベッドへと誘った。

清隆がベッドの縁に腰掛けると、私は彼の前に立ち尽くした。

 

「俺の服を脱がせろ」

 

「……」

 

私は無言のまま、清隆の服に手を伸ばした。

彼のシャツのボタンを外し、鍛え上げられた胸板を露わにする。ベルトのバックルを外し、ズボンを引き下げる。

現れたのは、一切の無駄がない肉体と、すでに凶悪なまでに熱く反り立っている、規格外のモノだった。

 

(合宿中、高円寺くんと張り合ってたっていう……これね)

 

そんな下らない噂話を思い出しながら、私はその熱を帯びた皮膚に指先で触れた。

 

「……上に乗れ」

 

清隆はベッドの上に仰向けに寝転がり、私に指示を出した。

 

「お前は勉強ができないおバカなんだろう? なら、せめて腰の振り方くらいは優秀だということを、俺の上に跨って証明して見せろ」

 

「っ……言われなくても、満足させてあげるわよ」

 

私はベッドに這い上がり、清隆の上に跨った。

清隆の太い楔の先端を私の濡れそぼった秘部に当てがい、ゆっくりと、自らの体重をかけて腰を下ろしていく。

 

「あ゛っ……んっ……! ふぅっ……!」

 

立位や正常位で清隆に突き上げられるのとは違う、私がすべてをコントロールして彼を飲み込んでいく感覚。

奥の奥まで完全に清隆を咥え込んだ私は、小さく息を吐き出し、彼を見下ろした。

 

「……さあ、どう? 私の中」

 

「悪くない。だが、まだ証明されていないな。動け」

 

私は清隆の腹筋に両手をつき、ゆっくりと腰を上下させ始めた。

 

ズチュ……グチュ……。

 

私自身の意思で清隆を擦り上げ、最も気持ちのいい場所を的確に刺激していく。

最初はゆっくりと、粘膜の摩擦を確かめるように。そして徐々に、速度と激しさを増していく。

 

「ああっ……んんっ! きよたかっ、これ……きもち、いい……っ!」

 

「……確かにな。テストの点数は赤点だったが、この締まり具合と腰の動きだけは、満点をやってもいい」

 

清隆は私の揺れる胸を見上げながら、淡々と言葉責めの追い打ちをかけてくる。

 

「頭の悪い女が、必死に男の上に跨って腰を振っている姿は傑作だな。……お前はこれから先も、そうやって俺に媚びを売りながら体で点数を稼ぐしかないんだぞ」

 

「ああっ! ひゃあっ! ちがっ、私はっ……バカじゃ、ないっ……!」

 

「なら、もっと巧く動いてみろ。俺を満足させられないなら、お前の存在価値はない」

 

清隆の言葉が、私の耳から直接脳髄に突き刺さり、羞恥心と被支配欲を極限まで煽り立てる。

私は狂ったように腰を振り、乱れた髪を振り乱しながら、清隆のモノを貪り続けた。

 

「あっ、あ゛あ゛っ! いくっ! 清隆っ、私、もう……!」

 

「……まだだ」

 

私が限界に達しようとしたその瞬間。

清隆の両手が私の腰をガシッと掴み、私の動きを強制的に停止させた。

 

「えっ……? きよ、たか……っ!?」

 

「ここからは、俺が点数をつけてやる」

 

直後。

清隆が下から、強烈な腰のバネを使って私を凄まじい力で突き上げ始めた。

 

「あ゛――――ッ!! ひぃっ!!」

 

私がコントロールしていたはずの主導権が、一瞬にして奪い返される。

下からの暴力的な突き上げにより、私の子宮は容赦なく打ち据えられ、体全体がトランポリンのようにベッドの上で跳ね上げられた。

 

「あがっ! ぁぁぁっ! むり、むりぃっ!! 深すぎるぅっ!!」

 

「どうした。さっきまでの威勢の良さはどこにいった。俺の突き上げに翻弄されて、ただ鳴くことしかできないのか」

 

ドンッ! ドンッ! と、清隆が突き上げるたびに、私の声帯から意味をなさない絶叫がほとばしる。

私は清隆の腹の上に倒れ込み、彼の肩にすがりつきながら、ただただ彼が与える圧倒的な快感の奔流に流されるままになった。

 

「あ゛あ゛あぁぁぁっ!! もう、ゆるしてっ! いくっ! いっちゃうぅぅぅっ!!」

 

「……俺も、いくぞ」

 

清隆の低い声が響いた瞬間。

最も深く、最も激しい一撃が私の最奥を貫き、私たちは同時に限界点へと到達した。

 

「あ゛――――ッッ!!!」

 

私の体内を、清隆から放たれた熱く濃密なマグマが容赦なく焼き尽くしていく。

私は全身の筋肉を痙攣させ、白目を剥きながら、凄まじい絶頂の波に呑み込まれて意識を飛ばしたのだった。

 

「……はぁっ……はぁっ……っ」

 

どれくらいの時間が経っただろうか。

私は清隆の上に重なったまま、荒い息を繰り返し、ようやく焦点の合う目を取り戻した。

 

「……終わったか」

 

清隆の冷静な声が、頭上から降ってくる。

 

私は力を振り絞って清隆の上からどき、ゆっくりと腰を持ち上げた。

ズチュリ、という生々しい音とともに、清隆のモノが私の中から引き抜かれる。

その瞬間、私の中に注ぎ込まれた清隆の大量の精液が、ドロリと太ももを伝ってシーツへとこぼれ落ちていくのを感じた。

 

「……っ」

 

私はベッドに倒れ込み、乱れた息を整えながら、清隆をジロリと睨みつけた。

 

「……本当に、勝負事は容赦ないわね、あなたって人は」

 

「勝負に手加減を求めるのは、敗者の甘えだ」

 

「あんなレベルの問題を出しておいて、よく言うわ。私を卑下させて、上から言葉責めにして……さぞかし楽しかったでしょうね」

 

私が唇を尖らせてなじると、清隆は起き上がり、ベッドの脇に落ちていた自分の服を拾い上げながら、どこ吹く風といった様子で答えた。

 

「嫌なら、次はお前が勝てばいいだけのことだ。……お前が俺に勝てる日が来るのなら、な」

 

「……っ! 言ったわね! 絶対に、いつかあなたを泣かせてやるんだから!」

 

私の負け惜しみに、清隆はわずかに口角を上げたように見えたが、すぐにいつもの無表情に戻り、服を着終えた。

 

「じゃあ、俺は帰る。……また明日な、レイ」

 

「ええ。気をつけて帰ってね」

 

清隆が部屋を去り、静かにドアが閉まる音が響いた。

部屋には、精液の匂いと、私の熱い吐息だけが残されていた。

 

清隆が帰った後、私は重い体を引きずってバスルームへと向かった。

熱いシャワーを浴び、太ももにこびりついた彼の痕跡と、汗を綺麗に洗い流す。

 

シャワーのお湯を浴びながら、私はこの一月の出来事を頭の中で振り返っていた。

 

(……怒涛の一ヶ月だったわね)

 

三学期の幕開けとともに始まった、混合合宿試験。

私は自らの意思と実力で堀北と櫛田を補佐し、クラスに貢献した。クラス内での私の価値を高めるための第一歩としては、文句なしの成果を上げることができた。

 

そして、合宿の後の『家庭教師ロールプレイ』。

パブロフの犬のように調教され、最後は凶悪なテストで完膚なきまでに敗北し、屈辱的な罰ゲームを科せられた。

清隆の圧倒的な知能と、底知れないドSっぷりを、文字通り体中でお腹いっぱい味わわされたわけだ。

 

体を拭き、新しい部屋着に着替えて、私はベッドの上にゴロンと寝転がった。

 

「あーあ。一月は私が提案する番だったのに、結局最後はあいつの手のひらの上だったわね」

 

私は天井を見上げ、独り言を呟いた。

悔しい。でも、それ以上に……最高にスリリングで、楽しかった。

清隆と過ごす夜の密室は、私にとってどんな娯楽よりも刺激的で、私の脳髄を心地よく痺れさせてくれる。

 

そして。

 

「……来月は、清隆が提案する番ね」

 

二月。バレンタインデーという、恋人たちにとっての一大イベントが控えている月。

あの合理主義の清隆が、一体どんな狂った、そして変態的なプレイを提案してくるのか。

またしても斜め上の理屈をこねて、私を絶望の淵に突き落とすのだろうか。それとも、たまには甘く蕩けるようなアプローチをしてくるのだろうか。

 

「……ふふっ。望むところよ。どんな変態プレイが来ても、私が全部受け止めて、あなたを逆に狂わせてやるんだから」

 

来月への楽しみ半分、そしてどんな地獄が待っているのかという不安半分。

そんな複雑で甘い感情を胸に抱きながら、私は静かに目を閉じ、深い眠りへと落ちていった。

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