第14話 秘密結社シエスタ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――エルゼのボテ腹を楽しんだり、ジュードとして三姉妹やローレと会ったり、色々を忙しい日々を送っている内に、気づけば三週間が経った。
今日は国立魔導学院の入学式を兼ねた〈武闘祭〉の日だ。魔導師にとって重要なのは知力やコミュ力ではなく、圧倒的な戦闘能力。
故に敗れた者は覚える価値なし。強者の顔は覚えておけって意味で、こういう武闘祭が行われる様になったらしい。
今年も例年通り、朝から夕方までが新入生のトーナメントが男女別に行われる。僕が出場する上級生のトーナメントは夜の予定だ。
「……相変わらずの景観だね」
帝都は高層で石造りの建物が多い。モンスターの襲撃されやすい理由で、辺境に行くと殆ど見られない高層の建物も帝都なら問題ないという事だろう。
僕としては見栄えが良いとは思うものの、あまり合理的とは思えなかった。モンスターはいたくとも、強い魔導師が集まりやすい。
喧嘩をすれば簡単に倒壊して、瓦礫が地面まで降り注ぐはずだ。
「富の象徴らしいよ。帝都だと、建物の高さこそが自分の財力を示すだとか……」
エルゼは開き直って、僕と手を繋いで歩いていた。僕達は美男美女なので街中を歩いているだけで凄く目立つ。
武闘祭の日だからこそ、制服姿が注目されやすいのも加味しても、多くの人から視線を集めている。
「私もトーナメント優勝を目指すから。兄妹二人で圧勝しまくって、優勝しよ。兄妹で優勝した事例はないし、凄く目立つと思う」
ジュッと僕の腕を掴む力が強くなり、意気込みを伝えるエルゼ。
「千年続いているのに、兄妹で優勝の事例がないなんて意外だよね」
「……当たり前でしょ? 普通は親の才能を受け継げるのは、第一子だけなの。私達みたいに兄妹揃って強い事って珍しいんだから」
「それもそっか」
軽く納得した様な態度を取りつつ、僕は王族を思い出す。
王族は〈異能〉の性質上、兄妹揃って才能を受け継ぐと聞くけど……。それでも兄妹で優勝は難しいものなのか……。
王族って意外と大した事ないんだな。何人か攫って人体実験しようと思ってはいたけど、あまり期待でき無さそうで残念……。
……そういえばトーナメント表だと、僕は王族と当たるんだっけ? だったら少し痛めつけて力の底を見てみようかな。
大した事なさそうなら、人体実験は無しでいいや。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
秘密結社――シエスタ。
そのメンバーである獣人の少女――イーディスは時計台の最上階から、大通りを見つめていた。
風で揺れる長い銀髪は、彼女の美しさを引き立てている。平均的な身長だが、どことなく小柄に見えるのは、彼女が童顔で華奢だからだろうか。
かなり痩せ型だが、胸は大きい。藍色のワンピースと彼女の碧眼も相俟って、幻想的な雰囲気を漂わせている。
猫系の獣人で耳をピコピコさせて可愛らしい印象なのに、何故か上品過ぎて近寄り難い印象だ。
「ヴィムさん……」
「イーディス。変装もせず会場に行くつもりですか?」
綺麗な緑色の瞳が特徴的なエルフの少女――セリア。彼女は長い髪を束ね、一本のおさげにしている。
身長が平均より高く、落ち着いた雰囲気も相俟って、大人っぽい雰囲気を漂わせているがイーディスよりも一つ年下だ。
因みに本人はイーディスより、ずっと年上のお姉さんに見られてしまう事を気にしている。
別に老けている訳ではないのだが、同年代よりも穏やかで仕事をそつなくこなしてしまうので、年上に見られがちなのだ。
「勿論。リスクは有ります。でもヴィムさんが戦う以上は、応援してあげないと。意外と寂しがり屋ですからね、あの人」
「寂しがり屋は貴女でしょ、全く……」
ふんすと意気込むイーディスに、肩を落として溜息を吐くセリア。
「せめて顔を隠してください。イレインさんに勘づかれますから」
「逆に怪しいですよ、顔なんて隠していたら。下手に変装している方が、何か怪しい人なんじゃないかって思われます。それに私自身の正体がバレる心配なんてしてません。どうせ私は昔と今じゃあ姿も魔力も違い過ぎますからね」
少し悲哀の込められた自虐的な微笑。目を伏せ、彼女は目の前でチラチラと揺れる髪を指でなぞって耳に掛けた。
「……とはいえ、バレた時は何て説明しますか? 色々と面倒でしょう」
「一般的に、亜人の溶けた肌が治癒する事例なんて、一つしかないでしょ?」
「まさか……」
察して顔を引き攣らせるセリアは、隣のイーディスに目を合わせる。
「――子供を産んだと言いましょう。妊娠期間で魔力回路が整う事例は、別に珍しくありません。魔力回路の乱れが治った事で、
腕組みし、自信満々にイーディスは話す。
「……まぁ、馬鹿正直に理由を答える訳にもいきませんし、下手な言い訳をすれば怪しまれますから。仕方ありませんね」
乗り気ではないが、同じ言い訳をしようとセリアも納得した様子だった。
「ヴァンダ様に声を掛けられたらどうしましょうか? 彼女が相手だと、流石に実力の高さは隠せませんよ。面白半分で戦いを挑まれるかも知れません」
「その時は…………――軽く倒しちゃいますか……」
「やめてください、目立つんで……!」
少し悩んだ後に決め顔でとんでもない事を言うイーディスに、セリアは冗談と理解しつつも焦って突っ込む。
そう、イーディスは現代最強と名高いヴァンダを容易く倒せる実力を有している。そしてセリアもまた、ヴァンダを優に越える実力者。
何せ彼女達はヴィムから直接、体術や剣術を叩き込まれているのだ。
当然、弱い訳もなく――。
〈補足〉
ヴァンダは二週間前に出立してますが、帝都に到着したのは数日前です。帝都に向かう道中で視察や会談など、溜め込んだ仕事を一気に消化していました。