※この作品はR-18です。

【可哀想】じゃなきゃ抜けない!   作:BIBI

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第22話 最後に立っていた奴が勝者

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 試合が順調に進んでいた。もう既に半分近くの生徒が脱落している。

 

 

「新入生に、魔人が二人……?」

 

 

 来賓席でオーガストが顔を顰めて口にした。頬から汗が落ち、状況を呑み込めていない様子である。

 

 

「闇ギルド絡みとみて間違いなさそうね」

 

 

「まぁそうですよね、こんな偶然ある訳ないんで……。少なくとも片方は闇ギルドが絡んでいるかと……」

 

 

 不敵に笑うヴァンダの推測に、ローレが神妙な顔して同意した。

 

 

「……随分と楽しそうだな、ヴァンダ殿」

 

 

 隣を見てオーガストは理解できないという風に呆れる。

 

 

「エルゼかフィルか……、いえ両方と戦ってみたいわ。できる?」

 

 

 可能かどうか尋ねる。ヴァンダのその目は本気であり、半ば脅迫の様に映る。これにはオーガストも厄介そうに顔を引き攣らせて――。

 

 

 

「……エルゼと戦うのはやめて頂きたい。王家はライザー家とひと悶着を起こしたばかりだからな……。要らぬ邪推をされてしまう。……だが、男子の部であれば問題ない」

 

 

 やりづらそうに、大きく肩を竦めるしかない。オーガストとしても力の底は見ておきたいというのが本音。

 

 

 

 ヴァンダであれば本気を出してないなら見抜けるだろう……。恐らく性格的にも暴力に頼ってでも相手の本気を引き出すはず。

 

 

 

 強引な手段は好ましくないが……、仕方あるまい……。ライザー家とこれ以上の関係悪化を避ける為、エルゼだけは戦わせるわけにはいかないが……。

 

 

 

「それで良いわ。本戦男子の部だけ。私と戦える特別な権利を与えましょう。勿論、告知なしでね。告知しちゃうと私と戦うことを避けて優勝しない道を選ぶかも知れないから」

 

 

 

 逃げ場を与えるなと釘を刺すヴァンダの笑顔は、ゾッとするくらい恐ろしい。オーガストは「…………そうだな」力なく返事した。

 

 

 

「次の対戦は少し荒れそうですね」

 

 

 空気を変える為、気を遣うローレは話題変えを試みる。

 

 

「荒れる?」

 

 

「次の試合は第二王子ですから」

 

 

 疑問で首を傾げるヴァンダに、ローレが視線を合わせてトーナメント表の紙を見せた。

 

 

 

「エルゼちゃんが王家の娘を一撃で倒してしまった後っスからねぇ。フィル君にアラン君もやられたとなれば……、王家はもう負けられないはずでしょう……? 王家が全員初戦敗退したら、流石に恥どころの騒ぎじゃない。そうですよね?」

 

 

 

 物怖じせずローレは皇帝であるオーガストに向かって核心を突く。

 

 

「ふッ……。それならまだマシだ。本当に大きいリスクは、そこじゃない」

 

 

「…………マシ、ですか?」

 

 

 肩を竦めて笑うオーガストに、ローレは理解できないと少し戸惑う。

 

 

 

「そうだな。王家の者が全員初戦敗退というのも恥だが、一番マシな結果だろう。一番の問題はアラスターだ」

 

 

 今戦っている生徒を眺めながら、オーガストはアラスターの顔を思い浮かべた。

 

 

「恥ずかしい限りだが、アイツは性格が悪すぎてな。試合で相手を痛めつける悪癖があるんだ。私は何度も注意しているんだがな……。これが中々治らない。それなのに次の対戦相手はエルゼの兄――ヴィム=ライザーときた……。今から眩暈がしてくる」

 

 

 

 オーガストは何度も何度もアラスターに注意してきた。だが改善の見込みはなく、それどころか増長は止まらなかった。

 

 

 

 エルゼを含め、昔からアラスターより強い者は何人もいた……。だがアイツは力だけで負けは認めない……。

 

 

 

 恐らくアラスターにとって、勝利というのは相手を殺す事。手段は問わない。一騎討ちに拘らず、駒を集め策を弄して殺す。

 

 

 

 エルゼやフィルの力を見ても、脅威と判断しつつ負けは認めていないはずだ。

 

 

 どうしたものか……。どうにかアラスターにも恐怖や敗北を教えてやりたいものだが……、私には力が足りない。

 

 

 

 厄介な子供に手を焼いているオーガストは、「はぁ……」と大きく溜息を吐いた。

 

 

 

「…………。それ不味くないッスか? いやだって……、エルゼちゃんのお兄さんッスよ……? それに夫でもあります。痛めつける様な真似なんてしたら、内戦まった無しなんじゃ……」

 

 

 

「エルゼは理知的だ。感情で王家を潰そうだなんてしないだろう。だからこそだ。アラスターがどう動くか、私には分からない……」

 

 

 

 先行き不安だとローレの表情が引き攣ると、オーガストは気まずそうに頬を掻く。

 

 

「ふふふ……。王家は貴方の代で滅亡した方が良いんじゃない?」

 

 

 冗談交じりに言っているのだろうが、半分くらいは本音だろう。恐らくヴァンダは王家だろうと、国の治安を荒す様なら潰す気だった。

 

 

 

 それを理解しているからこそ、「…………そうかも知れんな」オーガストは肩を竦めるしかない。強く反対もできないことは非常にもどかしかったが、国の未来を考えればそれもありなのではないかと思えてくる。

 

 

 

 確かにアラスターは才ある人間で、ある種カリスマ性もある……。国を良い方向へ導く手腕は持ち合わせているのかも知れない……。

 

 

 

 だが断言できる、アラスターが皇帝の座に着けば真っ先に闇ギルドと手を組むと。それだけは決してあってはならない……。

 

 

 

 アラスターの存在がいる限り、オーガストは王家滅亡に強く反対できなかった。

 

 

 




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