※この作品はR-18です。

【可哀想】じゃなきゃ抜けない!   作:BIBI

27 / 32
第24話 それは好奇心ではなく恐怖だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 瓦礫と化したステージ。その足場の悪い中、ヴィムは担架で運ばれるアラスターを眺めていた。

 

 

『アラスター様が意識を失っていたようですが、アレは一体……』

 

 

『僕の魔力が体に流れ込んで意識が飛んだだけです。体に別状は有りません。まぁ大した技じゃないんで……。わりと力業というか……、魔力操作に格差がある上で、不意を突かないと成立しない技なので……』

 

 

 

『…………。ここで誰もが気になっていることだと思うのですが、貴方とエルゼ様はどちらが強いのでしょう……?』

 

 

 

『どうでしょうね。本気の模擬戦をしたことはありませんが、まぁ僕の方が数段強いでしょうね』

 

 

 近づいてきた女性スタッフの質問に、ヴィムは軽く返答する。

 

 

 

「「――――ッ⁉」」

 

 

 どよめく会場。エルゼよりも強いという発言に驚愕したのだろう、女性スタッフも自分から質問を投げかけていたというのに絶句していた。

 

 

 

『ななな! 何だって――ッ⁉ 妹の力を知った上で、自分の方が強いっていうのか――――ッ⁉ だとしたらフィル=ニールに匹敵するってことにならねぇかぁ――――⁉』

 

 

 多くの者が動揺する中で、エタンはしっかりと実況を続ける。

 

 

 彼も相当な実力者故に、先程の戦いぶりからヴィムの実力がフィルに近いことは察していた。だから他の者より幾分か動揺は少なく、やはりかという印象が強いのだろう。

 

 

 

「フィルの言っていたこと、マジっぽいな……」

 

 

「勝てないかもって言っていたもんね……」

 

 

「確か、決勝で当たるんだよね? どんな戦いになるんだろ……」

 

 

 フィルの周囲の生徒にも緊張が走っていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 幼い頃からフィルは、イントラーダという闇ギルドで育てられていた。イントラーダは優秀な研究者が多くおり、考え得る効率的な教育に最善を尽くしている。

 

 

 

 だからフィルを含め、何百人も厳しく教育されていた。何度も危険な実験が繰り返され、殆どの者が死しにゆく中、フィル=ニールは圧倒的な実力を身に着けた。

 

 

 

 被験者の子供の中で、唯一の魔人というだけあり、イントラーダの中でも将来的な地位が約束されていた。

 

 

 

 そして今、フィル=ニールは表舞台でも高い地位を得ようとしている。別に地位や名誉や金銭に執着している訳ではない。

 

 

 ただ、自分の力を試したかっただけ。

 

 

 イントラーダに気に入られたのも、この性格こそが大きな要因。

 

 

 フィル=ニールは善悪よりも、自分にとって大きな壁を求めている。だからこそイントラーダの情報を他言せず、決して政府に味方しない。

 

 

 

 政府を、世界を敵に回した方が、面白そうだから。

 

 

 面白そうだからと、思っていたが――……。

 

 

「…………」

 

 

 何だろうな……、この胸の内でグルグルと渦巻くような不快感は。まさか俺は不安なのか……? 戦う事を避けたいと考えているのか……?

 

 

 俺は俺が一番強いだなんて自惚れていないはずなのに……。何でこんな気持ちに……。

 

 

 来賓席のヴァンダ=グロールを見た時ですら、不安なんて抱かなかった。勝てないと確信していたが、将来的には勝機はあると判断できた。

 

 

 

 だが……、あの男――ヴィム=ライザーだけは――。

 

 

 駄目だ。

 

 

 

 まるで戦ったら駄目な相手だと、魂が知らせているみたいに……。興味は有っても、それは好奇心ではなく、不安。いや、恐怖なのかも知れない……。

 

 

 

 俺は――アイツとだけは本気の戦いはしたくない……。

 

 

「…………」

 

 

 観客席でフィルはただ、ヴィムを見ているだけで嫌な汗を掻いていた。

 

 

 

「――フィル! おい、聞こえているのか?」

 

 

 隣の席の男子が話しかける。

 

 

「え? どうかしたのか……?」

 

 

 いつの間にか周囲の生徒達に注目されていて、それに今さら気づいたフィルは少し動揺した。

 

 

「絶対勝てよ! 応援してるからな!」

 

 

「フィル! お前なら勝てる! 魔力密度に物を言わせてぶん殴ってやれ!」

 

 

「実況でも言ってたけど、何だかんだ魔力密度で勝敗は決まるからな~。魔力密度で上なのは圧倒的なアドバンテージな訳だし、いけるだろ」

 

 

 

 口々に応援の言葉が投げかけられる。それを受け、フィルが「……いや、今回は」と棄権も視野に入れていると告げようとした時、闘技場の中心に彼女が舞い降りた。

 

 

 

「…………は?」

 

 

 誰かが呆けて、声を漏らした。

 

 

 騒がしかった観客達が一斉に言葉を失い、静寂が一帯を包む。

 

 

 

『なんてこった――ッ! 異例の事態が発生した――――ッ! 武闘祭の本戦はここで一時中断だ――――ッ! 何と皇帝からの勅令だ‼ たった今からヴィム=ライザーとヴァンダ=グロールの対決だとよ――――ッ‼ どうなってんだ――――ッ⁉ 俺もよく分かんねぇ――――ッ‼』

 

 

 

 エタンの叫びの様な実況。それに会場は今日一番というほど、大きくどよめく。

 

 

 




【Ci-enで先行公開中!!】
https://ci-en.dlsite.com/creator/36741/article/1819242

 Ci-en限定の番外編も投稿してます!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。