※この作品はR-18です。

【可哀想】じゃなきゃ抜けない!   作:BIBI

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第25話 底知れない二人の実力。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

『特別ルールの発表だ! 今回は特殊な結界と呪印を採用! それにより、ななな、なんと! 結界で観客席に魔力や瓦礫は飛ばないが! 魔力の殺傷性は制限しねぇんだとよぉ!』

 

 

「「――――ッ⁉」」

 

 

 エタンの説明に観客達が違和感を覚え、一瞬静まり返る。

 

 

「それって……」

 

 

 観客の一人が呟くと――。

 

 

『つまり、死ぬリスクがあり! ガチの決闘だって話だ――――ッ!』

 

 

 エタンの声は会場中に大きく響き、それにテンションがブチ上がった者達が歓声を上げた。

 

 

「マジかよ……」

 

 

「うっそだろ……?」

 

 

「相手は学生だろ? 流石にやりすぎ……」

 

 

「いや、何の為にそんな……」

 

 

 多くの人が歓声を上げる中、やはり付いていけず困惑する者も少なからず存在する。

 

 

『勿論、戦いの継続が不可能なほどの重傷だと判断されたなら、その時点で試合は終了とする! だが、これはお遊びの模擬戦じゃない! 正真正銘の決闘なんだ! 死人が出るかも知れねぇからよぉ! 見たくねぇ奴は一時的に退出することをオススメするぜ!』

 

 

 

 エタンはノリノリで言いながらも、何でこんなことになったんだという気持ちは拭い切れない。だが――先程のヴィムの力と発言。

 

 

 

 底知れない彼に本気を出させるには、ヴァンダ=グロールしかいないだろうと、エタンは考える。

 

 

 特にヴィムの力は今まで見た力の本質とは違って見えたが故に、どんな戦いになるのか想像できなかった。

 

 

 故に困惑以上に、楽しみで仕方がなかった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 教皇ディックは、狼狽えていた。ヴィム=ライザーの戦いぶりを見て、ではない。寧ろそこについては驚きなんて欠片もない、何故なら――――。

 

 

 

 彼は知っていたから、冒険者ヴィムの存在を。

 

 

 その底知れない強さを。

 

 

 かつてディックがオキザリス王国で活動していた時、冒険者と騎士団によって計画を阻まれた。台無しにされてしまった。

 

 

 

 その時、もっとも厄介だった人物、それこそが冒険者――ヴィム。

 

 

 モニターに映る彼の姿は成長で多少の変化はしているが、先程の戦いぶりから間違いなく同一人物だと踏んで、ディックは急いで来賓席に向かった。

 

 

「これは、一体、どういうことですかな? オーガスト」

 

 

 席に着いた皇帝の後姿に向かって、ディックが言葉を掛けた。

 

 

「教皇……、私も何がなにやら分からんのだ。というか分かりたくもない」

 

 

 振り返りもせず、疲れた様に肩を竦め床を見つめるオーガスト。見て分かる程の心労。その様子から、ヴァンダの我儘に付き合わされたというのは、想像に難くなかった。

 

 

「ヴァンダ様が手綱を握っているということですか……。いやはや、彼女には困ったものですね。最近はめっきり政府へ口出しをしなくなったと思っていましたが、やはり人というのは簡単に変わることは出来ないらしい……」

 

 

 言いながら、教皇はオーガストの席に着く。ヴァンダが座っていた席とは別。ローレと皇帝の間の席は、モニター越しでヴァンダが座っていたことを確認している。

 

 

 

 今は瓦礫と化したステージ上にいるとはいえ、そこに座るのは失礼というものだろう。

 

 

 

「随分と急いできたみたいっすけど、やっぱ教皇様も気になります? ヴィム=ライザーとヴァンダ=グロールの戦いが」

 

 

「私もそれなりに鍛錬してますからね。ヴァンダ=グロールの戦いを生で見られるなら、仕事どころじゃないですよ」

 

 

 意味深に目を細め笑うローレに、当たり障りのない回答を口にするディック。

 

 

「…………」

 

 

 ディックは席から見下ろし、ヴィムの姿を見た。

 

 

 

 間違いない……。身長の伸びて顔立ちも少し変わっているが、彼だ。ナタリー=ウェストの傍にいた、あの冒険者だ。

 

 

 

 素性を探っても何も出てこないと思ったら、まさか貴族だったとは。

 

 

 しかも公爵家……。

 

 

 意図せずのことでしょうが、やられましたな……。

 

 

 目ぼしい貴族は頭に入れていましたが、まさか貴族のパーティーすら欠席し続けるボンクラ息子が――奴だとは……。

 

 

 公爵家の貴族が顔も隠さず、堂々と本名で活動しているなんて、誰が想像するのか。

 

 

 

 まぁいい……。力の底をわざわざ見せてくれるというなら、是非もない。その方が対策を講じる材料が増える。

 

 

 それにあの得体の知れないヴィム=ライザーの実力なら、ヴァンダの本気を一欠片でも引き出せるかも知れない。

 

 

 精々彼には健闘して欲しいものですね……。ヴィム、ヴァンダ、この二人の実力次第では、今後我々の方針も大きく影響するのだから。

 

 

 

「死闘……。なんて野蛮で時代錯誤な……」

 

 

「命を懸けるなんて、仕事だけで充分でしょうに……」

 

 

 フローラとセレストとは観客席で、不快感を顔に出していた。冒険者を生業としている彼女達にとって命懸けとは、仕事であって遊びじゃない。

 

 

 理解ができなかった、意味もなく命を懸けた試合に臨むなんてことは。

 

 

「でも正直、生温い試合じゃ本当の実力って分かんないしね。ガチの戦いをしたいってのも分かるかも。……ていうか、もっとヴィム君の力を見てみたい」

 

 

 

 アリシアがワクワクとした様子で、能天気に話す。先程の戦いを見て、ヴィムの力に強く興味を持ったらしい。

 

 

 

 命懸けの決闘の是非なんてどうでもいいくらい、好奇心の方が優先されている様だ。

 

 

 というか三姉妹の中では最も好戦的なのはアリシアであり、決闘には多少の理解があるのだろう。

 

 

「…………。まぁ確かに最強の異能と魔力密度を持つヴァンダ=グロールに、彼がどう立ち向かうのか。少し気になりますね」

 

 

 

 緊張感のない末っ子も発言に、溜息を吐くフローラ。彼女は真剣に考える事をバカバカしく感じてしまったらしい。

 

 

 

 そもそもこんな無茶苦茶な決闘、誰がどう見てもヴァンダ=グロールの決定なのは一目瞭然。

 

 

 仮に彼女の行いが悪だとしても、それを誰が止めるというのか。善悪なんて考えるだけ無駄だ。そう割り切ってしまった。

 

 

「……異能については微妙じゃない? 噂じゃヴィム君は無能力者らしいよ? ヴァンダ様の異能封印が機能しないじゃん」

 

 

 アリシアはバーガーをモグモグと食べながら話す。

 

 

「異能の気配がないからって、異能者じゃないと決めつけるのは軽率ですよ。周囲に影響を与えない異能なら、気配は外に漏れないんですから……。本人が異能者じゃないと言ったところで信用はできません」

 

 

 

 それに先程の力……。アレを異能なしに成したとはとても……。

 

 

 フローラはヴィムがアラスターを倒した光景を思い出し、目を細めて顎に手を当てた。

 

 

 ありえないとは思いますが……、仮に、仮にですが……。

 

 

 アレが異能なしで成した技だとすれば、もしかすると――――。

 

 

 あのヴァンダ=グロールに傷一つくらいは付けられるかも知れませんね……。

 

 

 

 

 




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