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戦闘用に軍服スカートに近づけた修道服。下には短パンを穿いており、激しい動きも問題ない。
モニターに映し出されるは、美しい容姿。豊満な胸。金のメッシュが入った長い黒髪も魅力的。少年なら見ただけで性癖が歪みそうなほど、ただならぬ色気を放っていた。
見た目だけならおっとりとした、綺麗で儚げな聖女という感じ。だが、その場にいる者達は背筋が凍り付く程の緊張感が走っていた。
ヴァンダは大して魔力を隠蔽していない。この場にいる者が、あえて少しだけ意識を傾けるだけで嫌でも痛感してしまうのだ、彼女の力の一端を。
特に中途半端に才能を持つ者ほど、その脅威は大きく感じる――。
『随分と落ち着いているのね。……貴方、殺し合いに慣れてるの?』
全くと言っていい程に緊張した様子を見せないヴィムに、ヴァンダが違和感、というか新鮮さを感じる。
もしかすると初めてかも知れない。自分を前にすれば、命の奪い合いですらない単なる稽古ですら、相手は緊張し、委縮する。
だが目の前に佇む彼は、そうではなかった。まるで息を吸う様に試合に臨み、命の危険なんて欠片も感じてない様に落ち着いていた。
死が常に隣り合わせの状況に慣れている……? 何なの……? 彼は……。
ヴァンダは少し眉を顰める。
『…………。冒険者として活動していた時期が長かったので……、それなりには』
一拍置いて苦笑し、余裕の態度を崩さないヴィム。その姿はヴァンダが今まで見てきた猛者達とは大きく異なる。
典型的の強者はもっと獰猛で、もっと野性的で、もっと真剣だった。誰もが警戒心が強く、強者としての風格を漂わせていた。
だが、ヴィムは――。
どちらかといえば軟弱な雰囲気。不気味な程に自然体……。その癖、魔力操作という一点に限れば私より遥か上だなんて……。
『……快く受けてくれて嬉しいわ。死ぬリスクのある試合なんて、絶対受けてもらえないって思っていたから』
彼女は決して人の気持ちが分からないタイプじゃない。自分と命のやり取りだなんて殆どの者は避けたがると理解している。
だからこそ素直に嬉しかった、二つ返事で決闘を受け入れてもらえたことが。
『どうにも妹が僕を侮っているみたいなんで……、少し凄い所を見せてやろうかなって』
『……それは単に、妹さんと直接戦えば良いんじゃないの?』
頬を掻き肩を竦めるヴィムに、ヴァンダが首を傾げた。
『ヴァンダ様も同じなんじゃないですか? 本気を見せるほどの相手がいないと、力を証明する機会も作れないでしょ?』
暗に妹では相手にならないと口にするヴィム。その傲岸不遜な態度と言葉に、『……なるほど。確かにそうね。その通りだわ』ヴァンダは思わず笑ってしまった。
それに共感できたのだ、彼の言葉に。
彼女もまた本気の戦いを人に見せる機会に恵まれなかった。世界中で自分の名が轟き最強だと謳われているというのに、その力の底までは知られていない。
その事実に、どこかもどかしいものがあった。
――ゴーン、ゴーン。
時計台の鐘がなる中、「…………遂に、始まりますね」イーディスも観客席の上階で立ったまま、真剣な表情でヴィムを見ていた。
「どちらが勝つと思います?」
「そんなの、決まってるでしょ……?」
セリアの愚問に、イーディスは呆れて肩を落とした。
『さぁさぁ! 遂にこの時がやってきたな! そろそろ始めようじゃないか! 歴史に残る一戦を!』
鐘の音が終わった瞬間に、エタンが声を張り上げた。
『言わずと知れた最強の魔導師ヴァンダ=グロールに‼ 魔力操作の天才ヴィム=ライザーの力がどこまで通用するのか‼ この戦いで見せてもらおうとしよう‼』
エタンの言葉に、会場から歓声が沸き立つ。
『ヴァンダ=グロールの異能は封印‼ この世の、ありとあらゆる異能が彼女の前では無力と化す‼ 魔力密度は歴史上並び立つ者なし‼ 数多の武術を一目で模倣する観察眼‼ まさに完全無欠の天才‼』
その会場の誰もが知っている常識をあえて説明するエタン。彼のいる隣にはゲストとして「…………」エルゼが座っている。
顔色が悪く、心配そうに彼女はヴィムへ視線を向けていた。
『そんな絶対強者に対するはヴィム=ライザー‼ 異能もなく‼ 魔力密度も人の域を出ない‼ 力のほぼ全てがヴァンダ=グロールに大きく劣る‼ だが‼ 一点だけ勝るものがある‼ それは歴史上類を見ない程の圧倒的な魔力操作技術‼ その力から繰り出される技は‼ 理解不能の未知そのもの‼ 未だ人生で一度も力を底を誰にも見せた事のない一点突破の天才‼』
別に力の底を見せた事がないとか、ヴィムの口から聞いた訳ではないが、とりあえず盛り上げる為にエタンはベラベラと適当なことを言った。
『――勝つのは万能か! 一点突破か! 力か! 技か! この戦いで何方がより優れた存在なのか! ここで証明してくれッ!』
彼が告げた瞬間に、大きくゴングが鳴り響く。その瞬間、開幕早々にヴィムは剣を上から下に振り下ろしていた。
「「――――ッ⁉」」
殆ど者は、斬撃を視認できず状況の理解が追い付きもしない。ただ呆然と言葉を失うのみ。
いつの間にか巨大な魔力の斬撃は地面を割いていた。そしてヴァンダ=グロールが立っていた場所は土煙に包まれており――。