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曇り空。雨がポツポツと落ち、そろそろ激しい雷雨に変わりそうな雲行きで、更にエルゼ捜索に難航しそうな気配が漂う。
当然、ライザー家の夕食は
「エルゼの失踪から四日……。進展なしか……。まだヴィムは
用意された夕食が、殆ど喉を通らない。酒も何も味がしない。普段の傲慢で活力が漲る態度が嘘の様に消え失せ、ローマンはナイフとフォークを動かす手を止めた。
「……ヴィムが死んでいたら、私――」
目の前に皿はない。ただ水の注がれたコップのみ。殆ど何も口にせずフリーダは憔悴しきった様子。娘がモンスターに攫われ、息子まで後を追って音沙汰なし。
こんな状況で親が元気でいられるはずもない。少し前まで充実感に溢れた日々を送っていた二人だが、今はもうその面影は一切感じられなかった。
子供がいなくなって初めて、自分の幸せがどれだけ子供達の存在に支えられていたのかを痛感した。
「…………言うな。アイツを信じろ。簡単に死ぬような奴じゃない」
ローマンは自分自身を冷酷な男だと思い込んでいた。だからこそ、自分が子供の心配で満足に食事も摂れない事に内心戸惑っている。
「無事にエリゼとヴィムが帰ってきたとしても、私は王派閥を許せない。仕方がないと理屈では分かっているが、娘を切り捨てられておいて同じ派閥で居続けるなんて不可能だ。フリーダ、それは分かってくれ」
「……私もその決断には同意するわ」
険しい表情で告げるローマンに、フリーダも異論は挟まなかった。本音としてフリーダもまた王家には失望している。何せ今回の事件は不明な点が多い。
B級モンスター。しかも群れを成して生活するゴブリンが帝都の近くまで来ていたのにも関わらず、何の噂も前触れもなかった。明らかに突発的に現れたモンスターであり、敵派閥による誘導があったとしか思えない。
実際の所、王家の振る舞いは目に余る部分は近年見られていた。何か派閥が激化し兼ねない火種はそこらに燻っていた。
それを放置するべきではないとライザー家は指摘していたのに、王家が無視していたのが実情。ローマンやフリーダから見れば、これは王家が招いた事件だ。
子供がこんな目に遭って許せる親がいる訳がない。ライザー家が王派閥から抜けるのは傍から見ても至極当然である。
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その宮殿に住むのは基本的には王族のみ。優秀な騎士達によって常に警備されており、外部からの襲撃は難しい。
「エルゼ捜索を中断……?」
広い一室。ソファに座っているアランは、向かい側の席に腰を降ろす皇帝と視線を合わせた。
「リスクが大き過ぎるのだ。ゴブリンは集団で生活する。実際に黒ゴブリンが二体以上いた事例もある。深追いは危険だと判断した」
皇帝と言っても魔導師であり、武闘派。高級な素材には変わりないが、動きやすい軍服をオーガストは好んで着用している。
「この一件は、『王家がやらかしました』でお終いだ」
足を組み、冷たく返す。オーガストとしても辛い決断だったが、仕方がなかった。こればかりは独断で行動できない。
「エルゼ……」
「……アラン。私はお前が悪いと思っている訳ではない。帝都近くでまさか二級モンスターが出現するなど想定できる訳もない。だが公爵家の跡取りを見捨てたのも事実。お前の首一つで済む話なら良かったんだが、そういう訳にもいかない」
罪悪感で目を伏せる息子に、オーガストは静かに哀れむ。
ライザー家は当然王家と懇意の仲であり、だからこそ子供達を婚約させていた。だがこうなっては関係は決裂したと考えるべきだろう……。
二級モンスターが偶然公爵家の者を襲うとは考えにくい。恐らくは王派閥の分断を狙う何者かがいた……。そう判断するのは決して私だけではない。
この緊張感が高まった状況で、王派閥の人員を出動させるなど、自殺行為に等しい。
ローマンとは幼い頃からの親友だったが、仕方がなかった。オーガストはライザー家を斬り捨て、エルゼ捜索の中断を決定した。
「これから王派閥の分断が幾つか起こり、争いは激化するだろう。王家の立場が弱くなり、これからは――――……」
その後もオーガストは淡々とこれからの方針を説明した。それを聞きながらアランは「…………」モンスターに襲撃された事件の日を思い出していた。
僕は動けなかった。君を助けたい気持ちより、逃げ延びたいという気持ちが勝ってしまった。自分でも驚いたな。まさか僕がここまで根性なしだなんて……。
仮に彼女が帰ってきた所で、僕は彼女に何を言えば良い? 謝れば許されるのか? だけど許されてどうする? 僕は王族として〈穢れ者〉と交われない。婚約破棄も既にされているんだぞ。
エルゼと駆け落ちする訳にもいかない。僕にはまだ政略結婚など、王族の一人として利用価値が残されている。こんな状況で逃げ出すわけにはいかない。
それにあの事件、僕は抵抗せずエルゼを切り捨てる事を受け入れた。どの面を下げて彼女に会えば――……。
……いや、言い訳かも知れない。
僕はただ、モンスターに犯された女を心から愛せる自信がないんだ……。正直、セックスするだけならやりたい。エルゼは面も良くて、体も申し分なかったから。でも、それは誰にも知られない場所で、こっそりやりたいってだけの話だ。
〈穢れ者〉と体を重ねた事実を、周囲に知られるのは、正直キツい……。僕まで周りから蔑まれ笑われてしまう……。
もうエルゼは切り捨てるしかない。彼女には心から申し訳なく思うし、自分も無力を恥じるばかりだが……、エルゼと結婚したら僕の理想の幸せを築けなくなる。
仕方がない事なんだ……。もう諦めよう。
彼女が生きて帰ってこれたとしたら、僕の口からも婚約破棄は伝えよう。幼い頃からの付き合いだ。冷たくあしらうのではなく、最後は誠実な態度で向き合って別れたい。
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瓶を傾け、ジョロロロロと音を立ててミルクはコップに注がれる。
「――――ふぅ……。スッキリしたぁ」
僕はコップを口に寄せ、ゴクゴクと一気に飲み干し、ぷはぁと声を漏らす。
もうエルゼ監禁から四日経つのかぁ、早いねぇ♪
十五年、修行に集中する為に、ずっと禁欲生活していたからね。監禁して四日間、寝ている時間以外は基本的にエルゼを犯し続けちゃったよ。
やっぱり良いよね。凌辱を受ける女って。黒ゴブリンやお爺さんに変身して犯し、ゴブリン達を操作して遠距離から輪姦を楽しむ。
エルゼが思いのほか、直ぐに従順な性奴隷に成り下がったのは驚いたけど、よっぽど怖かったんだろうな。言う事聞かない時は普通にぶん殴ったりしたからね。
さてとゴブリンを処理しないとね。精液や唾液の代わりに媚薬水を入れた泥人形だし、放置しておくのは色々と不味い。
ゴブリンやお爺さんの死体は一応氷漬けにしてあるから、これを解凍して適当な場所に投げておけばいいでしょ。
それにしても、このお爺さんには悪い事をしちゃったな。凌辱が似合う見た目だったとはいえ、ただの物乞いのお爺さんを拉致って殺すとか、我ながらヤバい……。
とはいえ仕方なかった。僕の変身能力は決して万能じゃない。殺した相手じゃないと変身は出来ないんだ。
「ご冥福をお祈りいたします。お爺さん。次は僕に一目惚れされない人生を歩んでね」
そう心から哀れみ、僕は死体に向かって手を合わせた。
「さてと……、そろそろ助けに行こうかな」
僕は既に貴族の正装をボロボロに汚している。如何にもこの四日、血眼になって妹を捜索していたと言わんばかりだろう。我ながら完成度が高い。
後はゴブリンとお爺さんの死体を適当な場所に配置すれば完璧。
どこからどう見ても、命懸けで妹を助けに来たお兄ちゃんにしか見えないだろ。エルゼも幸せだろうな。信頼できる兄と再会できて、生きて帰れるんだから。
今からエルゼの喜ぶ顔が楽しみだよ。
転生者とはいえ僕はエルゼを大切に想っている。やっぱり家族だから、家族が幸せだと自分も嬉しい。噓偽りなく、彼女が心から喜ぶ姿を想像するだけで、僕の表情は