第7話 僕の名は――コモノン!
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連日連夜セックス三昧。流石に妹を抱き続けるのは、もう飽きた。少し味変しようと思い僕は今、屋敷を飛び出し隣町へ来ていた。
「コモノン! 奴が動いたぞ! 早く来い!」
宿屋の一室。ドアの外から男の声が聞こえる。
「へ、へい! 分かりやした!」
僕は姿見の黒い霧を纏うと、
そう。今日の僕はヴィムではなく――コモノンだ。うん。いいね。やせ細っていて、顔の造りも汚らしい悪人面。下卑た笑いも良く似合うなぁ。ゴブリンの人間版みたいで最高だよぉ。
なんて自惚れた事を考えつつ、僕は荷物持ちに相応しい大きなリュックを背負って扉を開けた。
今日の僕は真面目モードだ! いつもの泥人形ではなく、信頼できる仲間達と友情を深め、チームで働く! 今日で最後だし、皆で気持ちの良い汗を掻いて終わろう!
頑張るぞ!
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「アレが噂の美人三姉妹か……。すげぇ。マジで可愛いじゃん」
「美人は美人だが、まだ子供じゃねぇか」
「だから良いんだろうが!」
「ははは! 間違いねぇ!」
それほどまでに整った三姉妹は、もう慣れているのか周囲の視線に一々反応しない。
「盗賊退治、かぁ~。最近この街の少女が
元気な声で喋るのは、薄い桜色の長髪が特徴的な少女――アリシア。
小柄だが、三人の中で一番胸が大きい。天真爛漫な笑顔と、身軽な動きに適した短パンからはみ出した太ももが魅力的。「冬なのに元気があってええなぁ」と、周囲の男達は鼻の下を伸ばしていた。
「クソオスが……。汚らわしい……ッ」
灰色の髪を腰まで伸ばした少女――セレスト。
彼女は中背だが他の二人が低身長なので、少し高く見える。背筋を伸ばし歩き方からして毅然としており、服装は黒を基調としており、チュニックにロングスカート。
童顔っぽいが綺麗系の印象が強い。アリシアよりもずっと大人びた印象である。
「正直気は進みませんが、報酬が良いんですよねぇ、こういう依頼。助けられる女性もいるでしょうし、手早く仕事を終わらせましょう」
水色の髪を腰まで伸ばした少女――フローラは、背も低ければ胸も小さい。しかし長女である。胸の小ささを気にしているのか、いつもローブを身に纏い、体のラインが見えそうな服は避けていた。
冒険者らしいチュニックは少し大きくてダボッとした印象。因みに短いスカートを穿いているが、下着が見えないよう中に短パンを穿いているのは珍しい事じゃない。
冒険者は走り回る事も多いし、足を上に上げる機会もあるだろう。一々下着を見せるのを嫌がる女性は多いので、基本的に女冒険者はスカートの中に短パンを着用している。
「そうだね! 早く助けてあげよう! まぁでも、油断は禁物ッ! もしかしたら何人かは強い奴いるかもだし!」
「まぁ私達の敵じゃ有りませんよ。三級以上の賊だとしたら、こんなしょうもない誘拐なんて、コソコソ隠れてやる必要も有りませんし」
「でもでも! 四級はいるかもじゃん? 油断は駄目! 全力を尽くさないと!」
「……はいはい。でも、気合い入れ過ぎて先走り過ぎない様にしてくださいね」
口では慎重な事を言いつついつも一人で突っ走るアリシアに、フローラは肩を竦めて溜息を漏らした。
「…………」
腹違いの三姉妹。彼女達は男が嫌いだった。特に――セレスト。
彼女はかなり男への偏見が強く、少し近づくだけでも不快感を示す。だが無理もない話ではある。彼女達の母親は一人の男によって強姦されたのだから。
冒険者だったが同じパーティの男性に襲われ、三人共身籠ってしまったらしい。その所為で当然と言えば当然だが、彼女達は親に愛を殆ど注いで貰えなかった。
いや母親達は愛情を注ごうと努力してたが、どこかぎこちなかった。時折、父親に似た表情や発言で顔を曇らせる事が多かったらしい。
子供ながら彼女達は敏感にそれを察し、いつの間にか母親達とは疎遠となった。今では三人で強く生きて行こうと冒険者活動をして生計を立てている。
そんな彼女達にとって、今回の依頼は私怨が混ざっている事は言うまでもない。性欲に任せ犯す連中が相手となれば、それは嫌でも父親を想起してしまう。
性欲に負けるケダモノは人間扱いできない。殺すべきだと、三姉妹は全員考えを一つにしていた。
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月の明るい夜。木々に囲まれた山道にも強い光が差しており、それなりに周辺はハッキリと見えた。昼間はそれなりに人も通るので、道自体は平らに
「ヒャッハー! 女だぜぇ!」
「たまんねぇな!」
「お嬢ちゃん! ベタな罠に引っ掛かっちゃたねぇ! あの依頼書は、俺達が出したのさ……!」
「大人の世界が怖いって事を教えてやるぜ!」
賊共は口々に
「はははは。噂の三姉妹も大した事なかったな。こんな簡単な罠に引っ掛かるなんて。多少腕が立つと言っても、所詮は子供か」
大型でただ物ではなさそうな、大物っぽい雰囲気を漂わせる――オオモノン。
彼はベタな蛮族らしく刺青の入った上半身を晒し、ダボッとしたズボンを穿いている。そして腰にはサッシュとかいう、布がグルグルと巻かれれていた。
「はぁ……。哀れですね」
フローラが呆れて溜息を吐いた時だった。
「――クソオスがッ」
剣を握ったセレストの姿が、一瞬ブレる。
「なん……だと……?」
オオモノンは空を仰ぎ、舞い上がった血飛沫が視界に入る。たった一瞬の隙を突かれ、あまりにも鮮やかにあっさりと彼は、腰から肩を斜めに斬られて絶命した。
「「おやぶ――――ッん!」」
取り巻きの賊が一斉に叫び、「クソッ! コイツ実力を隠してやがったのか!」とコモノンは震える体で剣を構えた。
「くそッ! こいつ等強い⁉」
「何で⁉ 四級の中でも弱い部類のはずだろ!?」
「今の三級くらいの実力はあったよな!? どうなってやがる!」
震える賊達。「ま、まさか――」とコモノンが何かに気づいた様に声を上げる。
「――貴方達が嘘の依頼書を作った様に、我々も嘘を吐いているって事です。というか馬鹿正直に実力を喧伝する訳じゃないでしょ。私達はそれでなくても容姿端麗で狙われやすいというのに」
「そういう事! 観念してねッ! オジサン達ッ!」
フローラが小馬鹿にした様に笑い、アリシアも駆け出した。
「「ひぃ~~~~っ!」」
数十人いた賊は一斉に叫んで散り散りになって逃げ出すが、身体能力は段違いで容易く追い付かれ背中から斬撃を食らってしまう。
次々に減っていく仲間。残ったのはコモノンだけだった。
「俺だけは勘弁してくれぇ! 仲間が他にも居るッ! 連れ去った女達も、まだ生きてる……ッ! ここで俺を殺したら、女達は殺されちまうぞ! 俺達が時間通り、無事に帰還しなかった時点で、その手筈なんだッ! だから俺の命だけは助けてくれぇ~~! 俺の話が嘘だったら殺しても構わねぇからよ~~っ!」
泣き叫びコモノンは尻もちをついて、盛大に失禁していた。ドバドバと漏れており、すぐに異臭が漂う。それには三姉妹はドン引きし、顔を顰めていた。
「……やはり、失踪事件の犯人は貴様等だったのか」
冷たい表情。セレストは蔑む視線をコモノンに向ける。
「彼の言葉を信じましょう。今は時間が惜しい。此処で彼を拷問する時間も有りません。女性の救出を優先します」
冷静にフローラは優先順位を決める。そしてアリシアは「じゃあ、とりあえず生け捕りだね」と、片手に紫色の魔力を灯す。
「深追いは危険な気もするけど、依頼だしねぇ。お兄さん、動けない様に〈呪印〉を施すからね? もしも怪しい動きをしたら、殺しちゃうから。うわぁ。あまり暴れないでねぇ。おしっこに触りたくないか――」
近づき尿の水溜りを避けながら後ろに回り込むアリシア。勝利を確信し油断している、その一瞬を彼が見逃す訳もなく――。
「うぎゃ!」
「形勢逆転だな」
尿の水溜りに顔を叩き付けられたアリシアに、コモノンは冷たい視線を向けて上から押さえつける。
「き、きちゃない……」
顔が尿で濡れ、口の中にも若干入った。その不快感でアリシアは苦しそうに顔を歪め、必死に抵抗を試みた。しかしガッチリと体は固定され、首元の近くに鋭いナイフが突き刺さる。
「この集団のボスは――俺だったのさ。化かし合いは俺の勝ちだな」
不敵な笑みを浮かべ、数メートル先の二人を見るコモノン。
「…………ッ。クソオスがッ‼」
「落ち着きなさい……! まだ勝機はあります……!」
妹を人質に取られた怒りでセレストは剣を握る力が強くなり、フローラは冷静に状況の打開に思考を巡らせた。
「ねぇよ。大事なんだろ、この女が」
コモノンが押さえつける力を抜き、アリシアの髪を引っ張って立ち上がる。
「うぅ……。ごめん……」
アリシアの口から出る謝罪。髪を引っ張られているだけで、押さえつけられている訳でもないのに対抗しない意味。それは――。
「呪印……⁉」
フローラの視線の先には、顔に黒い文様が刻まれたアリシアがいた。
「もう刻み終わるだなんてッ……。有り得ない……」
通常、呪印を刻むのには少し時間が掛かるし、何より気配で分かるはずだった。しかしフローラは違和感を抱く事すらできなかった。
「一瞬隙を突き人質を取り戻して、仕切り直しを
下卑た笑みを浮かべ、「いいおっぱいしてるなぁ。ガキの癖に、大人の誘惑するなんてけしらん奴だ」コモノンはアリシアの乳房を服越しに楽しみ始めた。
「貴様はッ‼」
怒りで我を忘れたのか、人質がいるというのに突っ走るセレスト。いや一瞬で距離を詰めて攻撃すれば防御せざるを得ない。人質に危害を及ぼす時間は与えない。そういう狙いがあったのだろう。しかし――。
「「…………ッ」」
セレストとアリシアは腹部を貫かれていた。完全な死角だった。コモノンは迫り来る剣を恐れる所か、人質を盾にセレストの剣を受け止めようと自ら突っ込む。
簡単に人質を捨てるという判断に戸惑った彼女は、当然だが剣の軌道を変えようと僅かに体勢を崩してしまう。そのたった一瞬の隙を見逃して貰えなかった。
腹部という完全な死角から、人質ごとセレストを貫く。あまりにも容赦のないゲスの戦法だが、これほど合理的な策も中々ないだろう。
至極単純な策だが、即座に判断し行動に移せる彼を見て、フローラとセレストは経験の差を痛感していた。
命懸けの状況で冷静さを欠いた二人とは違う。コモノンは恐ろしい程に冷静だった。冷静に自分の傷が最も少なく済む策を選択したのだ。
人質は二人。コモノンは一つの負傷すらしておらず、万全の状態でフローラと対峙可能という事――。
「……くそがッ」
コモノンに抑えつけられながら、セレストは涙を流していた。
目の前で動かずアリシアを見て、彼女は深い罪悪感を抱く。自分の馬鹿な行動の所為で妹が死ぬのだと、後悔の渦が胸中で巡っている。
私の所為で……。私の所為で……、アリシアが……!
セレストは悔しくて、ボロボロと涙を流していた。アリシアは意識が曖昧になって、体は着々と死に向かいつつある。
「――お前、〈治癒〉を使えるんだよな? だったら……、分かるな?」
「はい……」
コモノンの冷たい視線を受け、敗北を悟ったフローラは武器を地面に落とした。
【あとがき】
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