朝来玲の淫果異聞1 百合調教の果て、理不尽報復に責められて 作:高牧園
1
準備には数日を要した。
由宇と乙女がこれまで経験したプレイをまとめた目を覆いたくなるような資料に目を通し、調教と撮影の計画を立てる。それらを使用人に共有してアドバイスを受けつつ計画をブラッシュアップする。
三日間で当面の用意を済ませたその日、身支度を終えた玲は改めて鏡の中の自分を見つめる。
「……」
莉乃が攫われてからこびりついた目のクマは化粧でも消えず、冷ややかな美貌に迫力を加えている。
黒いロングヘアと同じ色のワンピースは長袖でロング丈、玲の素肌の大半を覆い隠す布地は、彼女を性奴隷ではない存在だと主張しているようでもあった。
「……行かないと」
ためらいは胸の奥に押し込んで、玲は莉乃のことだけを想う。
部屋を出る玲の顔は、雨夜に似た残酷な厳しさを帯びていた。
●
使用人たちには、由宇と乙女の二人を撮影スタジオへ連れて来るよう伝えていた。
玲がスタジオに入れば、すでにスタジオで待機していた二人はパッと顔を上げる。由宇と乙女、それぞれの顔に驚きの色が宿るのを、玲は自分でも驚くほど冷静に見つめていた。
「玲さん……!? 玲さんもここに来たんですね!」
目を見開く由宇は、玲の姿に声を弾ませる。
長身もあいまって大人びて見える由宇だが、表情が明るくなると人懐っこい大型犬のような可愛らしさだ。
あの屋敷で着せられていた奴隷服すら奪われてさらけ出された裸身はスラリと伸びやかで、しなやかな筋肉を纏う身体は健康的に美しい。
首には濃紺の首輪があり、首輪から伸びるチェーンは隣にいる乙女の首輪に繋がっていた。鎖は短く、横並びになった二人は手が触れ合うほどの距離から離れることは出来ないだろう。
「一年ぶり? でしょうか……また会えて嬉しいですっ」
乙女は表情を華やがせ、玲と会えたことに嬉しそう。
ピンク色の首輪は乙女の柔らかな雰囲気によく似合う。由宇と同じく首輪以外は全裸の乙女は絵画の中のヴィーナスを思わせる肉感美をたたえ、バストは会わないうちに大きくなったような気もする。
「……でも、服……?」
乳を揺らしながら乙女が小首を傾げると、由宇もコクリと頷く。
「私たちは、ここに着てすぐにあの服も取られてしまったんです。玲さんは、今来たばかりですか?」
「いいえ」
由宇の問いかけに首を振る玲の声は硬い。
「私はもう性奴隷ではないわ。ここへ来たのは、あなたたちを使ってAV撮影をするため」
「……え」
静かな宣告に、由宇と乙女の顔はぽかんと口を開ける。
「私が、あなたたちのAVを撮る」
もう一度言えば、二人の顔にジワジワと絶望が滲み出る。
「そのための調教もする。これは決まったこと……雨夜の許可も取っているわ」
「――っ――どうして……!!」
由宇は食ってかかろうとするが、音もなく肉薄する使用人に後ろから押さえつけられる。
羽交い締めにされてなお由宇は玲に迫ろうとする。首輪に繋がれた鎖が引っ張られた乙女がつんのめると由宇は止まるも、苛立ちを乗せた瞳は変わらない。
「どうして! あなたも私たちと同じ性奴隷だったのに! どうして玲さんだけが助かっているんですか!?」
「今は違うわ。私は――」
言いかけて、玲は言葉を切る。
(……由宇たちには、私の事情は隠しておきたい)
ここで働くことが決まってから今日まで、繰り返し悩んだことだった。
玲は、自らの意思で由宇と乙女を調教するわけではない。あくまで仕事として、莉乃を見つけ出すために彼女たちを責めるのだ。
(でも、そんなことは知らない方が良い)
事情を秘しておきたいと思う理由は、玲の経験にある。
玲はかつて性奴隷として、雨夜が擁する使用人たちから凌辱を受けた。その後は突如として現れた泥堂という男にも犯されたが、行為の内容を除けば、話の通じない化け物のような男だった泥堂に凌辱された時の方が気は楽だったのだ。
人として会話ができる雨夜が、屋敷の中では性奴隷たちをああも残酷に扱うのだと思う方がずっと恐ろしい――由宇と乙女たちには、あんな怖い思いをして欲しくはなかったのだ。
「どうして……ねえッ、答えてくださいよッ!」
ヒステリックに叫ぶ由宇に、玲は努めて冷然と言い放つ。
「言う必要はないわ」
「ッ玲……!!」
年上の玲を呼び捨てに叫ぶ由宇の隣、乙女はおろおろと首を振る。
「ゆ、由宇ちゃん、やめようよ……私たち、仕方ないんだよ……逆らったらまた怖いことされちゃうよ……」
性奴隷に堕ちてからの数々の仕打ちに傷ついた乙女は抗うことの方がずっと怖いらしい。
由宇を見ては首を振り、縋るような目つきを玲にも向ける。何かの間違いではないかと何度も確かめるような視線に乙女の甘さを感じるたび、玲の胸に痛みが走る。
(――由宇は強い。乙女は優しい)
知っている二人とともに犯されたあの日も辛かったが、知っている二人を使わなければいけない今も苦しい。
険しい表情のまま沈黙する玲の姿が、性奴隷の日々から抜け出せない二人には冷酷に見えた。
「ッ……!」
射殺さんばかりに玲を睨む由宇と、玲から視線を向けられただけで肩を震わせる乙女。
二人から視線を外さないまま、玲は傍らにいる使用人に声を掛ける。
「チェーンの交換を」
「はい」
それだけの短い会話をするだけで奇妙な気分だった。
使用人たちからは、敬語を使ってはいけないと言われていた。このスタジオでの力関係は、玲をトップに使用人が続き、最下に性奴隷の由宇と乙女。特に由宇と乙女にそれを知らしめるためにも、雨夜のように尊大にも見える振る舞いをした方が良い――そうアドバイスを受けていたから、玲は使用人に端的な言葉かけを行う。
「っ……本当に、もう……奴隷じゃないんですね……」
そんな様子を見た乙女の瞳に涙が膨らんだ。
短い指示を下す玲に、敬語で応える使用人。あの屋敷で性奴隷として過ごした日々が長い乙女たちからすればとても信じがたい光景に乙女がうなだれる中、玲は二人に向き合うよう求める。
「こんな格好で……!」
歯噛みする由宇と乙女は向き合って、身体の前面をぴたりと重ねる。
二人のバストが身体の間でむにゅりと潰れると、由宇の顔は火を噴きそうに真っ赤。乙女も恥ずかしそうな表情ではあるが由宇の恥ずかしがりようは乙女の比でないことは明らかだ。
「まずは、あなたたちの状況が知りたいわ」
使用人は玲の後ろに椅子を用意した。背もたれも肘掛けもある一人用ソファに腰掛けると、裸で突っ立っている二人を見る自分が悪役そのものだとの実感が強く湧く。
「由宇は膣、乙女は肛門を責めてあげなさい」
「ッ最低……! 自分が何を言ってるか分かってるんですか!?」
「ゆ、由宇ちゃん……大きい声出さないで、怖いよ……」
「――ッ……!」
不安に揺れる乙女の声に、由宇は押し黙るしかない。
「早くしなさい。さもなくばどうなるかは、もう分かっているわよね?」
「最ッ低――」
吐き捨てて、由宇は乙女に目を向ける。
二人の身長差は五センチ程度。乙女を見下ろす由宇はわずかに目を細め、乙女は上目遣いに由宇の表情を窺っている。
手が動くのはほぼ同時。由宇はおそるおそる乙女の恥丘から秘所に手を滑らせ、乙女は由宇の引き締まったヒップをなぞって尻の割れ目を指で開いてアヌスに忍び寄る。
「由宇ちゃん……ごめんね」
「乙女は何も悪くない。悪いのはあの女よ」
「……うん」
諦めたような溜息を漏らして、由宇と乙女はそれぞれの大切な場所に手を這わせる。
「っん……」
乙女の指先が由宇の菊座の皺をなぞり始めると、それだけで由宇は肩を跳ねさせる。
「い、痛くない……?」
「痛くない。……というか、むしろ……」
「……由宇ちゃん?」
「な、何でもないっ」
ボブヘアを揺らして首を振れば、揺れは胸にまで波及する。
由宇は身長に見合う体つきだが、バストサイズは乙女の方が上。由宇の乳が揺れようとしたところを乙女の乳丘が押さえ込む形なうえ、使用人によって乳首が重なるように調整されているせいで、胸が揺れるだけで二人の乳頭はこすれてしまう。
「ぅあっ……!」
「ん、ぅう……っ」
由宇が、続いて乙女が腰を反応させる。
比べた時に背の低い乙女の乳房はわずかに持ち上げさせられ、由宇の胸板に乗り上げるようにして乳首の位置を合わせられていた。
ここにいる面々の中でもっとも胸が大きい乙女の乳首は可憐なピンク色で、素肌との境界が曖昧な乳輪はわずかに膨らんでいるようにも見える。由宇の胸は平均かそれ以上にはあるはずなのに乙女の乳にほとんど押し潰されていて、見え隠れする乳首の赤味がよく目立った。
「は……っ、ぁ――あっ……」
「んぅう……っ、ふ……ううっ……!」
乳首が刺激されるたび喘ぐところを見るに、二人とも玲が知る頃よりも感度が上がっているのだろう。
その証拠に、由宇がなぞる乙女の割れ目からは淫蜜が滴り始めていた。
濡れた指は慎重に乙女の秘所を探る。挿入はごく浅く、緩慢に繰り返されるせいで水音は音高く響く――由宇なりの遠慮だが、乙女はかえって恥ずかしそうに腰をモジつかせる。
「ゆ……由宇、ちゃ……っんん……!」
乙女の膣穴が締まったのだろう、指先を膣内に引き込まれた由宇の身体がわずかに傾ぐ。
泥堂の支配があった頃、由宇が陸上競技をやっていたことは聞いていた。種目までは聞いていなかったが、引き締まった身体を見るに体幹にも優れているだろう。
そんな由宇が身体を傾がせたのだから、乙女の秘所の締まりは相当強かったと見える。
「はっ……ん、それ、恥ずかしい……よ……っ」
吐息混じりに言う乙女は、ひっきりなしに腰を揺らしては由宇を見上げる。
潤んだ瞳に間近で見上げられた由宇は瞬きも忘れて乙女を見つめる――由宇がどんな気持ちかは想像するしかないが、由宇の菊門に指を挿れる乙女には、彼女の身体の反応が伝わったらしい。
「んぅっ……! お、おしり、強い……っ?」
「――!!」
乙女が言えば、由宇の顔はますます赤い。
「なんでそん――ぁっ、ああっ……!」
「だ、だって由宇ちゃんが――ん、ぅう……っ!」
互いの指先から伝わる快楽に言葉は蝕まれ、甘ったるい呼吸ばかりが交わされる。
快楽を受けた時、由宇は長身を屈め、逆に乙女は裸身を伸ばすのは玲の記憶と変わらない。座ったまま二人の行為を見つめる玲は、二人の顔や身体の隅々に視線を走らせる。
「ん……っ! ぁ、あ……っ!」
苦しそうにも聞こえる喘ぎを漏らす由宇は乙女の首筋に顔をこすりつける。
「ゆ……う、ちゃ……んっ……!」
乙女は喘ぎながら由宇の名前を呼んで、しきりに身体を揺らしている。
双方ともに、指の動きは激しくなっていた。初めは遠慮がちだった由宇の指は乙女の膣内を深く出入りし、重なる調教によって覚えてしまった乙女の弱点をしつこく擦り上げる。
由宇の菊座を出入りする指のストロークも長い。乙女自身が快楽に悶えるせいで指の動きは不規則に変わり、そのせいで由宇の声はますます悩ましげに色づくのだ。
「……っぁ、もう……乙女、乙女……ッ!!」
「ん……んぅ、うっ……!!」
切羽詰まった嬌声を上げたかと思えば、ほぼ同時に達する二人。
秘所から溢れた糖蜜が、由宇と乙女の下半身を濡らす。淫らな水音を立てながらなおも互いをまさぐる二人の裸身は薄紅に色づき、全身に帯びた汗がスタジオに少女の甘い香りを広げてゆく。
「――っは、ぁ、ああ……っ……!!」
「んぅう……っく、ふ……ぅう……っ」
なおも敏感な場所を探り当てようとする由宇と乙女を前に、玲はどこまでも冷静だった。
(今)
膝の上に載せた手は、知らず知らずのうちに拳を握っていた。
(私が、二人を傷付けている)
握りしめた手の下、私服の黒ワンピースに皺が寄る。
ソファに腰掛ける玲の隣に立った使用人の視線が一瞬だけスカートの皺に向けられた。このスタジオ内には、玲の生活の面倒を見る使用人もいる。彼女たちの手によって玲の着衣は完璧に整えられ、明日には葛藤を示す皺すらも失われているのだろう。
――だからこそ、玲は自分の心に刻まなければいけなかった。
莉乃のために、由宇と乙女を犠牲にすると決めた事実を。