朝来玲の淫果異聞1 百合調教の果て、理不尽報復に責められて 作:高牧園
6
スタジオでの仕事から解かれ、莉乃と二人で暮らしていた家に戻った玲は、静かに過ごしていた。
外に出るのは最低限の買い物の時だけ。後は粛々と家の掃除をし、退院した莉乃を迎える準備を進める。
その日は夕方に雨夜から連絡があり、病院からの報告を聞いていた。ベッドに入って目を閉じると、雨夜から聞いた内容が蘇る。
(あと五日)
莉乃は大きい怪我を負ってはいなかった。
しかし、重度の栄養失調により衰弱し、精神的にも不安定な状態だという。今は栄養管理とメンタルケアを受けている最中で、まだ玲には会わない方が良い――と医師からアドバイスがあったのだという。
玲が莉乃と会えるのは五日後、莉乃が退院する時のこととなるだろう。
(莉乃と会ったら、私は何がしたい?)
何度も繰り返した問いを自分に投げかけるが、やはり答えは見つからない。
何をするかは関係なく、とにかく莉乃と一緒にいたいのだ――そうとしか思えないことを自覚するたび、もっと具体的に未来を見据えていた由宇と乙女のことを思い出す。
(今頃は外に出て、自由になったはず)
性奴隷でなくなったらフルマラソンに出たい由宇と、南の島に行ってみたい乙女。
二人の願いは叶っただろうか――それとも、今はもっと別の夢を描いているのか。あんなことをしでかした自分が二人と会うことはもうないはずだが、
(もう会うことはないけど……あの子達も願いが叶って、幸せに――)
そんなことを考えながら眠りに落ちた瞬間。
突如として、寝室の窓ガラスが叩き割られた。
「――っ……、!?」
心地よいまどろみが退いて、ガバリと身を起こす。
慌てて照明のリモコンを探す玲だが、窓から入ってきた何者かは玲の顔にライトの光を浴びせかける。
「!」
突然の白い光に目を灼かれ、視界が潰れる。
かろうじて人影が二つ見えたが、玲に分かるのはそこまで。素早く背後に回り込んだ何者かが腕で玲の首を絞め上げ、玲の意識は落とされてしまう。
(誰――?)
気絶寸前に特有の浮遊感に襲われ、玲の身体が弛緩する。
莉乃を攫った犯人は雨夜に囚われていた。あの男がどうなったかは知らないが、少なくとも雨夜が野放しにするわけはない。
(それに……これ、は――)
首に巻き付く腕のしなやかさに、背中に触れる膨らみ。
(――女――……?)
それだけ考えて、玲の意識は完全にブラックアウトした。
●
嫌になるほど天気の良い朝だった。
「――……ぁ……?」
閉じていた瞼に初夏の陽光が容赦なく突き刺さって玲を叩き起こす。夜はカーテンを閉めるはず、との疑問がよぎってから、玲は昨夜、窓を割って入ってきた何者かの存在を思い出す。
「……だ、誰……」
失神したせいで眠りが足りていない。朝日に目を慣らそうと何度も瞬きしながら身体を起こそうとした玲は、そこで自分が全裸で拘束されていることに気付いた。
「……!?」
ベッドの四隅に取り付けられた枷に手首足首を囚われた大の字姿。
黒い枷は性奴隷だった頃に使われていたものと酷似している――混乱を深める玲の元、不意に部屋のドアが開いて女の二人組が現れた。
「な――」
女の姿を見間違えるわけがない。
一人は背の高いショートボブ。もう一人は豊満な体つきのロングヘア。
もう二度と会うことはないと思っていた由宇と乙女が、目の前に立っていた。
「由宇……乙女……!」
見慣れた性奴隷姿でも全裸でもないが、二人の姿を見間違えることはない。
Tシャツにジャージの上を羽織り、ショートパンツを穿いた由宇の姿は健康的な美しさに満ちている。クリーム色のシャツワンピース姿の乙女も元の愛らしさを存分に引き立てる格好で、とても少し前まで性奴隷としてアダルトビデオに出演させられていたとは思えない姿だ。
「二人とも、どうして――」
「どうして?」
訊き返す由宇の声は刺々しい。
「私たちにあんなことをしておいて、もう忘れたんですか?」
「……」
由宇の表情は冷たい。
玲があのスタジオで調教と撮影を繰り返していた時よりも研ぎ澄まされた害意がある表情だった。由宇の半歩後ろに立つ乙女は不安そうに瞳を揺らしてはいるものの、それは由宇の行為への疑問というよりは、周囲への警戒のように見える。
「……覚えているわ」
由宇と見つめ合うだけで、玲は一切を理解した。
「私も覚えています」
冷たく言い放つ由宇はベッドに上がると、全裸の玲に跨って顎を掴む。
「ッ――」
「一生、忘れることはありません。玲が私たちにしたこと、乙女を傷付けたこと! 絶対――絶対に忘れません」
目は血走っていた。
(ああ……)
こんな状況になっても敬語は捨てない生真面目な由宇。
屋敷を出たらフルマラソンに出たいと夢を語った由宇。
乙女を守りたいと、熱っぽい眼差しを向けていた由宇。
玲が二人への調教と撮影に狂いそうになっていたとき。
由宇は狂わされ取り返しがつかないほどに病んだのだ。
「――そう……」
頷く玲の身体から力が抜けていく。
背後にある事情を説明するつもりはない。由宇と乙女にとって自分が仇であることは、事情を伝えたところで変わらない事実だと思えたのだ。
「だから、復讐します。私たちが、玲を性奴隷にします」
力を込めて言い放つ由宇のかたわら、乙女はガラスの割れた窓を補修する。
段ボールをガムテープで貼るだけの応急処置だ。隙間から陽光は漏れ、雨が降ればすぐに台無しになるだろう――でも、乙女はそれ以上のことをするつもりもないらしい。
「玲さん、ごめんなさい」
窓ガラスの補修を終えた乙女の瞳も暗い。
「復讐がいけないことなのは分かっています。……でも、こうしないと私たち、どうしても前に進めないんです」
「……」
少なくとも、今の由宇と乙女は、これを必要なことだと信じている。
(なら、私は――)
由宇の指が顎に食い込んで骨が軋んでも、玲はされるがまま。
(――二人のために、全てを受け入れないと)
何も言わないまま、報復の全てを受け入れる覚悟を固めるのだった。
●
「――大人しいんですね。もう奴隷の自覚があるんですか?」
早々に抵抗を諦めた玲に由宇は意外そうな表情だが、それでも瞳には残酷な光が宿っていた。
「でも、もっと性奴隷らしい見た目にしてあげます。……乙女、ピアッサーある?」
「うん」
頷く乙女は部屋を出て、すぐにビニール袋を手に戻ってきた。
ガサガサとビニールを鳴らしながら取り出されたのは新品のピアッサー。ピアッサーを手にした由宇がパッケージを剥く間に乙女もベッドに上がり、玲の右乳をむんずと掴む。
「っ……!」
「私たちより恥ずかしい身体になって欲しいんです」
呟く乙女は、ピアッサーとピアスの準備をする由宇を横目に玲の乳を弄ぶ。
玲のすぐそば、はるかに豊かな乙女の乳が揺れている。体型をふんわりと覆い隠すようなシャツブラウス越しにも胸元の存在感は窺えて、玲は嫌でも乙女の裸を思い出してしまう。
「私……お尻まで、あんなことになったんですよ」
長い睫毛に縁取られて存在感の強い瞳が一段と暗くなる。
「お尻の穴……脱肛して、アナルローズって呼ぶんですよね、ああいうの」
「……」
「あんなところまで撮られて……AVにされて……今も私たちの恥ずかしい姿を見てる人がいるって思うだけで、頭が変になりそうなんです」
明るかったはずの乙女の声は沈んでいる。
「だから、玲さんが、もっと酷い身体になってくれなきゃ……もうダメなんです」
――気持ちの問題なのだ、理屈は通らない。
由宇と乙女が傷付けられたことと、玲が傷付けられることは別の話。しかし由宇も乙女も正当な反論を聞き入れられる状態ではなく、玲もまた彼女たちのために全てを委ねることに決めていた。
「消毒なんてしませんよ」
吐き捨てる由宇は、玲の右乳首にピアッサーをあてがう。
玲の乳房は乙女の両手に挟まれて楕円形に歪んでいた。由宇の狙いが逸れないように固定されたバストの先、乳首の付け根をピアッサーが捉え――バチンッ!!と大きな音が響くと同時に、玲の胸に鋭い痛みが走った。
「ッぅ――」
あまりの痛みに眉が寄る。
「痛いですか?」
「……ええ」
「そうですよね」
頷く玲に当然とばかりに返して、ピアッシングされたばかりの乳首を指で弾く由宇。
「っづ……!」
「でも、痛みなんて一瞬ですよ。半年も酷いことさせられた私たちと比べたらマシですよね?」
由宇の問いかけはどこか言い訳がましい。
きっと、由宇だって今の自分の行いが間違っていることは理解しているのだろう。間違っていると薄々感じながらも報復に打って出ずにはいられないほど苦しんだ由宇と乙女のことを思うほど、玲の胸にはピアスを着けられた時以上の痛みが迫る。
「……」
「左胸もです」
同じようにして、左乳首の付け根にもピアス穴が開けられた。
着けられたピアスはオーロラカラーに煌めくフェイクジュエリー入りのもの。乳首の存在を強調するようなきらめきは恥辱的だが、由宇と乙女の行為はこれで終わりではない。
「下にも着けてあげます」
「……下に……?」
「クリトリスですよ」
当然のように言い放ち、由宇と乙女は玲の下半身に目を向ける。
全裸で大の字に縛り付けられた玲のその場所は丸出しになっていた。乙女はためらいも見せずに玲の割れ目を指で開くと、軽い手さばきで包皮を剥いて生のクリトリスをむき出しにする。
「ここにも、ピアスを開けますから」
ここ、と言った由宇が淫核にピアッサーを押し付けるだけで、望まぬ感覚が玲を襲う。
「……っ……」
「この程度で感じたんですか?」
問いかける由宇は、さらにトントンと玲のクリトリスを叩く。
「っ……そこ、は……」
それだけで、玲の腰は跳ねてしまう。
性奴隷ではなくなって一年半以上になる玲だが、奴隷生活の中で高められた感度はそのままだ。日常生活を送っていても布とこすれるだけで反応してしまうほど敏感なクリトリスは、由宇の手の中でゆっくりと膨らんでいく。
「もうこんなに大きくなってますよ」
ぷっくり尖った肉芽をつつく由宇は、そこにピアッサーをあてがう。
「敏感な場所に、ピアス――開けてあげます」
無慈悲な宣告とともに、玲のその場所を針で貫いた。
「づ――っ……!!」
乳首へのピアッシングとはまるきり質の違う痛みが玲を襲う。
神経がいくつも通るクリトリスの付け根に刺さった針は強烈だ。純度の高い痛みが玲に襲いかかり、身体が意志とは無関係に跳ね始める。
「ぅう゛ッ……!! ぅ、うう……!!」
「う、動かないでください……!」
悶える玲の身体を乙女が押さえつける。
腰骨をベッドに押し付けるようにして玲の動きは阻まれる。三人の体重を載せたベッドが軋む中、玲は殺しきれない悲鳴を漏らしてしまう。
「ッく……う、うう……ッ……!!」
「恥ずかしいところのピアス、どんな気分ですか?」
クリトリスにもオーロラカラーのピアスを装着させ、由宇は静かに問う。
「私たちが感じた痛みも苦しみも、こんなものじゃないんですよ。――性奴隷になった証拠、もっと増やしてあげますから」
言って、由宇はベッドから下りると自分の手荷物の中から何かを取り出す。
「……それ、は……?」
苦しげに目を細めながら、玲はソレを見つめる。
ぱっと見はドライバーにも見えたが、先端部は細く短く、玲の知る工具ではない。由宇はその道具を玲の前に突き出すと、静かにソレの名前を告げた。
「ペン型のタトゥーマシンです」
「――!!」
由宇に言われて、玲は目を見開く。
二週間そこらで自然に消えるタトゥーペンやタトゥーシールではなく本格的なタトゥーマシンを持ち込んだということは、彫り込まれる文字は一生消えないものになるということ。
「スタジオから解放された時に、あの人が少しだけお金をくれたんです」
呟く由宇は、マシンの駆動を試している。
「全部使って、復讐の道具を買い揃えました。……恨むなら、あの人――雨夜にしてくださいね」
「……」
由宇の言葉に、玲は返事をしなかった。
性奴隷ではなくなった由宇と乙女に渡された金の出どころは、間違いなくアダルトビデオの利益だ。雨夜が玲に渡そうとした金は二人を解放するための資金となり、そのうちの僅かばかりが二人にも現金として渡されたということだろう。
――そして、その金は巡り巡って、玲を性奴隷に堕とすための道具になった。
(……皮肉ね)
巡り合わせに、玲が呪うは己の運命ばかり。
タトゥーマシンの用意はすぐに終わった。由宇と乙女の間ではどこにタトゥーを入れるかは共有されているようで、乙女は玲の乳房を掴んではまじまじと見つめ、タトゥーを入れる位置の最終確認をしているようだ。
「乙女、準備はいい?」
「うん。計画通り、左胸のところが良いかも」
「分かった」
頷く由宇が、玲のバストに迫る。
乙女は手のひらで、玲の左乳を上から押し潰している。乳肉が潰れると同時に開けられたばかりのピアスにも負荷がかかり、我慢しようとしても顔が歪むほどの痛みが玲を苛む。
「始めますよ」
囁く由宇の手元、タトゥーマシンが駆動した。
静かな駆動音を立てるマシンが玲の左乳房に当たる。胸の上、膨らみのアーチに合わせてマシンのペン先は動き、何か文字を刻み込んでいく。
「ここなら、ブラを着けても隠れないですね」
目を細める由宇の言葉は冷たい。
由宇の言う通り、乳房の上部分に書きつけられる文字はブラジャーからも覗く位置だ。乳首とクリトリスのピアスを下着や水着で隠したとしても、胸に刻まれたタトゥーは隠しきれるものではないだろう。
「……」
「……」
三人の沈黙が支配する中、文字は刻みつけられる。
乙女に乳房を押さえつけられる玲は、まだその文字を見ることも叶わない。初めて使うタトゥーマシンに由宇の手つきは慎重で、ようやく文字を刻み終える頃には由宇のTシャツは汗に湿っていた。
「っふう……」
溜息をついて身を起こす由宇と乙女に合わせて、玲も自分の胸元に目を向ける。
鎖骨から指一本分下にある左胸の膨らみには『性奴隷』の文字がある。タトゥーが入った周囲の皮膚は赤らみ、反対に入れたての文字は黒々として存在感が強い。
「……」
その言葉に、玲はあの屋敷で受けた受難の日々を思い出してしまう。
ただでさえ卑猥な言葉には不快な思い出が無数にこびりつく。こんなタトゥーを入れられたことはもちろん、性奴隷の三文字にこそ玲の心は痛むのだ。
「次はお腹です」
乙女は言うと、玲のその場所に手を添える。
妊娠出産を経験したとは思えないほどほっそりとした腹だった。妊娠線の痕もないその場所の真下には子宮があるだろう――ちょうどその位置を狙って、由宇はまた新たな文字を刻み込む。
「次で最後です。……今はね」
含みを持たせて言いながら、次は右の太ももにタトゥーが刻まれる。
何と書かれたのかは分からないが、文字とも違うペン先のストロークが肌に感じられた。
(絵? いえ、図……?)
大の字姿で拘束された玲はすぐには確かめられず、頭の中で嫌な空想は膨らむばかり。
「――出来た……!」
三箇所のタトゥーを全て終えた由宇は、達成感を滲ませて声を上げる。
タトゥーを入れるのには時間がかかった。割られた窓から差し込む陽光が激しさを増しつつあるせいもあって由宇と乙女は汗ばんで、タトゥーを入れたばかりの玲の裸身も汗に濡れ光っている。
「どんな格好になったか見たいですよね?」
乙女は言うと、玲の返事も待たずに玲の裸身を撮影。
ケースも着けていないスマートフォンが連続でシャッター音を響かせる。玲を辱めるためだけに何枚も写真を撮ってから、乙女はそのうちの一枚を玲に見せつけた。
「見てください」
「……」
有無を言わせぬ声に、玲は画面に目を送る。
黒髪をベッドの上に広げる玲の全身が映っていた。胸と股間にピアスの輝きをたたえ、さらに左胸と下腹部、右太ももにタトゥーを入れられた全身を見せてから、乙女は画像を拡大し、恥ずかしい場所の一つひとつを見せにかかる。
「胸はこんな風になってます」
画面いっぱいに映し出された左乳房には『性奴隷』の文字。
乳首にはピアスが打ち込まれているのだから、その文字に偽りがないことは明らかだ。小粒ながらも成熟した乳頭は今もピアッシングの痛みに苛まれ、ズキズキと膿んだような不快感が強い。
「それと、お腹のところは――」
拡大したままの画像を下に動かし、玲の下腹部が表示される。
そこには『人権放棄済み』の文字。文字数と画数の問題でタトゥーを入れるのに時間がかかったのは記憶に新しいが、時間をかけるだけのことはあって文字には少しの歪みもない――つまり、誰が見ても、この恥辱的な文言は読み取れてしまうだろう。
「……」
タトゥーを見るたび表情が暗くなる玲を、由宇はじっと見ていた。
報復は進んでいるのに由宇も乙女も表情は暗いまま。かつて玲が二人を調教した時と同じような気持ちに苛まれながらも、由宇も乙女も今さら止まることは出来ない。
「あと、ここのピアスも……」
画面をスクロールして、玲の秘所が映し出される。
女性的なYラインがアップになれば、太もものタトゥーも見える。右の太ももには膣に向けて矢印が引っ張られ『性処理穴』との文字がある。
矢印を辿って淫裂に目を向ければクリトリスにはピアスが着けられていて、矢印つきのタトゥーの文字に間違いがないと証明しているようでもある。
「……」
「こんな身体になって……辛い、ですよね」
スマートフォンをしまう乙女は問いかける。
「でも、私たちも、ずっと、ずっと苦しくて……!」
囁くようだったはずの乙女の声が乱れてゆく。
可愛らしい顔を険しく歪めた乙女の顔には確かな葛藤があった。
性奴隷として身体を使われることがどれほど苦しいかを知っている乙女は、今の玲がどれほどの屈辱を味わっているかが手に取るように分かるのだろう。
それでもこうしなければいけないほどに心は追い込まれて、しかしこの行為によっても心は痛んで――自分でも何が何だか分からなくなった乙女の声は、息は、気持ちは乱れるばかりだ。
「だから、――だって、だから、こうしないと――!!」
「乙女!」
そんな乙女に、由宇は呼びかける。
「由宇、ちゃん……」
言葉を切った乙女の肩を、由宇はそっと抱き寄せる。
「大丈夫。私たちは間違ってない。……間違ってなんかない……」
「……うん。そうだよ、ね……間違ってない……よね……」
由宇の言葉は、乙女だけでなく自分にも言い聞かせているよう。
乙女よりは覚悟が決まっていても、由宇も似たような葛藤を抱いてはいる。
(私のせいで、こうなった)
性奴隷になった苦しみの全てを玲になすりつけなければ正気も保てないほどに苦しむ二人を見るほど、玲の胸には同情心が湧く。
由宇と乙女にとって自分が悪者であることは間違いないのだ。ピアッシングとタトゥーに痛む身体を横たえたまま、玲は今から始まるだろう全てを受け入れるつもりで二人を見つめる。
「――間違ってなんて……ない……間違ってなんか……」
うわごとのように呟きながら、由宇は次の行為に取り掛かる。
ビニール袋の中から取り出されたのはチェーン。見覚えのある白銀色の輝きに、玲は思わず声を上げる。
「……それは……」
「覚えていますよね。私たちに着けたのと同じですよ」
由宇と乙女の首輪を繋いでいたものと同型のチェーンは、玲の乳首に着けられたピアスに引っ掛けられる。
さらに由宇が取り出すペニスバンドもあのスタジオにあったものと同型だ。由宇と乙女のヴァギナを双頭ディルドで貫きながら、乙女のアヌスだけを犯した――あの時のことを思い出したのか、由宇の瞳には怒りの炎が揺れて。
「あの時、乙女にばっかり酷いことをして……あれだけは、絶対に許せないんです」
服の上からバンドを着けた由宇の股間、ディルドがそそり立つ。
長身な由宇の身体であってもアンバランスに見えるほどディルドは長大だ。犯す側から犯される側に回ったことで、玲にもこのイチモツの恐ろしさが身に染みる。
「……っ」
報復の全てを受け入ると決めたのに身じろぎする玲の両肩が、乙女に押さえつけられる。
「逃げちゃダメですよ」
「……!」
元から四肢を拘束されて逃げられない玲をわざわざ押さえつけるのは、抵抗は無駄だと悟らせるためか。
「動かないでくださいね。動いたらもっと酷いことするって……由宇ちゃん、言ってましたから」
動きを止めた玲の太ももを割り広げた由宇は、右太もものタトゥーをそっと撫でる。性処理穴、との文字から矢印の先へ視線を動かせば、玲のヴァギナはすでに水気を帯びていた。
「もう濡れてる」
呟く由宇の顔が奇妙に歪んだ。
(……)
望まぬ場所にピアスとタトゥーを刻まれたのに膣を濡らした玲を嗤おうとして失敗したのだとすぐに分かった。
報復を繰り返すほど深みに嵌る由宇と乙女。二人を助けたいのは玲の本心だが、二人をこれほどの暗がりに突き落とした自分に出来ることなど何もないことも分かっていた。
だから、玲はただ黙って、ペニスバンドを生やした由宇が自分を犯すのを受け入れた。
「全部、奥まで……挿入れ、ますから……!!」
力いっぱい腰を打ちつけ、玲の膣奥にディルドを叩き込む由宇。
「っく……!!」
膣肉をかき分けられる痛みに、玲の顔が歪んだ。
身体の自然な反応として多少は濡れていたものの、長大なディルドを受け入れるほどのものではなかった。
思えば、玲が最後に膣穴に何かを受け入れたのは性奴隷として呵責を受けていた時のこと。二年近くも何も挿入れていない場所は固く窮屈で、ペニスバンドから伸びるディルド越しにも玲の膣の感触が伝わるようだった。
「なんで……こんな、キツ、……ッ……!!」
性奴隷の身を抜け出したばかりの由宇には、玲の窮屈さ自体が意外なようだ。
「私もッ……乙女も、毎日あんなことされて――緩くなっちゃって、身体も変に敏感になったのに……なのに、なのに……ッ!!」
腰をぎこちなく往復させながら、由宇の苛立ちは燃え広がる。
「なのにッ、玲だけは先に解放されて! あんなコトもして――乙女に!! 乙女にあんな――!!」
自分がされたこと以上に、乙女が受けた仕打ちを思い出しては怒りを燃やす由宇。
激情に駆られた由宇の腰使いは乱暴だ。乙女の尻を犯した時以上の苛烈さでピストンを繰り出すだけでは満足できず、由宇は玲の乳首ピアスに着けたチェーンまで引っ張りはじめる。
「……!!」
まだ安定していないピアス穴は貫通創でしかない。
傷の内側でピアスの軸が動けば、身体を内側から炙られるような痛みが襲いかかる。耐えきれずに玲が苦しげな息を吐けば、由宇は玲の痛みを呼び起こすようにチェーンを引っ張る手に力を入れる。
「玲さんのおっぱい、引っ張られちゃってますね」
囁く乙女は、玲の顔を覗き込む。
肩を押さえていた手が玲の首筋を撫で上げたかと思えば顎を掴む。無理やり顔を起こさせられた玲の目の前には、チェーンを引っ張られたせいで釣鐘型に引っ張られる自分の乳房があった。
「ッう……あ、あッ……!!」
自分の身体がどうなっているのかを目の当たりにしたことで痛みは強くなる。
乳首のピアスを引っ張られたせいで形が歪んだバストは、由宇の手の力加減によって揺れ動く。乳を一方的に弄びながら、由宇は力強い往復運動を繰り返す。
「ぐ――ぅあッ、あ、ッううぁ……!!」
声を抑えようにも、力強く胎をえぐられて悲鳴を上げてしまう。
「――こんなものじゃ、なかったッ……」
ピストンの烈しさに息を乱しながら、由宇はそう絞り出す。
「乙女は、もっと……ッ、もっと苦しかった――もっと苦しんだ……!!」
「由宇ちゃん……」
叫ぶ由宇の姿を前に、乙女は見ていられないと目を伏せる。
二人に囲まれた玲は膣をえぐられてばピアスの痛みに苛まれる。押し寄せる痛苦に息を荒くする玲の上、由宇は身体が熱くてたまらないとTシャツを脱ぎ捨てる。
「――っはぁ……!!」
スポーツタイプのブラジャーの谷間には汗染みが出来ていた。
激しいピストンを一方的に加えるだけでも体力を消耗することは玲も知っている。この三人の中では一番体力がありそうな由宇も汗をかき、激しく呼吸するたびに腹が動いて腹筋の影が見え隠れする。
「っふー……っふぅう……!!」
疲れた身体に鞭打ってでも、由宇は腰を叩き込む。
「ぅう……ッ!!」
ペニスバンドを着けた腰は鋭く玲の膣肉をえぐり、子宮口まで打ちのめす。
「んぐ……ッう、う……!!」
「こんな家で、莉乃さんと二人で暮らしてて……私たちが苦しんでる間も、ずっと、幸せな顔してて――」
凌辱のさなか、恨み言は止まらない。
「――私だって、そうしたかった……! 乙女と一緒に暮らして――あんな形で乙女となんて――違うのに、違うのにッ……!!」
由宇の悲嘆の叫びがどのような想いから来ているのか、玲は想像するしかない。
いつだって乙女を見つめている由宇の姿。乙女と話す時に弾む声、乙女を見つめる時にだけ見せる甘い眼差し――親友相手に見せるものとしても熱が強すぎるそれらは、きっと。
(由宇は、乙女のことが――)
結論に行き着く寸前で、由宇は玲の子宮口を押し潰す。
「ぁぐう……ッ!!」
視界が明滅するほどの痛みが玲を襲う。
ディルドを深く突き立てた由宇は、腰をグリグリと旋回させていた。チェーンを思いきり引く腕には筋肉が浮き上がり、スポーツのために鍛えた由宇の全身は、今は玲を痛めつけるためだけに使われていた。
「もう、全部――取り返しがつかないんですよ……! だから玲も――全部、全部なくなってくださいよおッ!!」
ヒステリックに叫んでは腰を突き立て、玲の膣内を容赦なく引っ掻き回す由宇。
「ぁ――く、うう……ッ! ぅぐ……ううぅッ……!!」
好ましい行為ではないのに、玲の膣肉は調教の日々を思い出してヒダをさざめかせる。
防衛反応に愛液の分泌は過剰だ。由宇が腰を振るほど玲の膣は水気を増し、ペニスバンドの下に穿いたままの由宇のショートパンツにまで玲の体液が飛び散ってしまう。
「汚い――」
濡れて重くなったズボンを見下ろし、忌々しげに呟く由宇。
「汚いッ、汚い――こんなの汚い……!!」
叫びは、由宇自身にすら向けられていた。
望まぬ形で女を消費させられた悲嘆が由宇を包む。悲しみと怒りをぶつける先が玲しか見つからない由宇は怨嗟とともに玲の膣肉を叩きのめす――感情任せの性交が終わるのは、由宇の体力が尽き果てた時だった。
「ッ……!」
連打の勢いでピストンを続ける由宇は、不意に玲の身体に倒れ込む。
玲の胸元に飛び込む由宇は肩で息をしていた。玲の裸の胸に伝わる鼓動は早鐘を打っていて、玲を犯すと同時に自らを限界に追い込んでいたことが分かる。
「由宇ちゃん……!」
「……っは、……ぁ、……ぉと、め……」
乙女の呼びかけにも、由宇は息を乱すばかり。
玲の頭を掴んでいた乙女は大急ぎでベッドから下りるとキッチンへ向かう。キッチンに出していたグラスの一つに水を汲んで戻ってきた乙女は、顔を翳らせながら由宇にグラスを差し出した。
「お水飲んで……ゆっくりでいいから、ね?」
「ん……」
気だるそうにグラスを受け取り、またたく間に中身を干す由宇。
喉を鳴らして水を飲み終えると少しは復調したらしい。由宇は緩慢な動きで玲の上から身を起こすと、腰を引いて玲の中からディルドを引き抜く。
「……ぅ……」
繰り返し膣肉を掘りぬかれた玲は呻きを漏らす。
ディルドなのだから射精はないが、抜き取られると同時に生温かい液体がドロリとこぼれた。数え切れないほど繰り返された出し入れによって玲の蜜液は泡立ち、色の濃い本気汁まで混ざっている。汁を垂れ流しにしたまま動かない玲を見下ろす由宇は、火照った玲の膣穴に指を突っ込む。
「ぅあッ……!」
「グチョグチョになってます。穴も拡がって、私たちみたい」
わざと乱暴に指を動かす由宇だが、グチョグチョと粘ついた音が響くばかり。
指で直接膣内をまさぐれば、膣肉が熱を持って絡みついてくるのが感じられる。性奴隷の立場を抜け出した玲のヴァギナにまだ性奴隷の気質が残っているのを感じ取って、由宇は目を伏せる。
「性奴隷じゃなくなっても、まだ……」
自分より先に性奴隷ではなくなった玲ですら、まだ奴隷然とした膣なのだ。
ならば由宇と乙女の身体からあの頃の残滓が消えるのは、まだまだ先のことだろう――果てしなさにわずかに目を細める由宇は、溜息を漏らして玲の蜜口から指を抜く。
「……まだ、終わったわけじゃないです」
告げる由宇は、今度はバイブを取り出す。
先ほど玲を貫いたディルドと大差ない大きさのバイブは二本。それだけで玲は何が起きるかを予期して、開かれた脚の奥、窄まった尻の穴がヒクヒクと動きだしてしまう。
「お尻の穴、動いてますよ」
冷たく指摘する由宇のかたわら、乙女はビニール袋の中からギャグボールを取り出す。
「これ、苦しかったんですよ?」
恨みがましく言いながら、玲にギャグボールを噛ませる乙女。
「ンう……!」
これまでも呻きと喘ぎばかりを漏らすばかりだった口が完全に封じられ、玲はくぐもった声を上げるのみになってしまう。
呼吸はすでに乱れている。ギャグボールを噛まされただけなのに玲は口から唾液を垂らしてしまうが、みっともない姿を見ても由宇も乙女も笑いもしない。
「本当は、あの酷いアナルパールが見つかれば良かったんだけど」
ぼやきながら、由宇は玲の膣穴にバイブを突っ込む。
「うぐうッ!!」
ピストンの時と同じくらいの力でバイブを奥までねじ込んだかと思えば、由宇は玲のヒップを手で開く。
「さ、乙女」
「……うん」
乙女の目の前には、玲の尻穴があった。
窄まった菊門を見るだけで、乙女は玲によってもたらされた最大級の苦しみを思い出す。
アナルパールをいくつも尻に押し込まれ、トドメに拳ほどのパールを埋め込まれたあの時。乙女は気絶してしまったが、意識を取り戻した乙女に、由宇は泣きながら事の顛末を教えてくれたのだ。
「バイブは太いけど、あのパールよりは小さいですから」
乙女の目の前、由宇の手によって広げられてなお肛門は小さい。
「だから、こんなの余裕ですよね?」
小首を傾げて、乙女は玲のアヌスを貫いた。
「――!!」
肛門括約筋を打ち破るような力強さに、玲は声にならない悲鳴を上げる。
流れた膣液が菊座を濡らしてはいたものの、水気はまったく不十分。勢いよく突き立てられたバイブのせいで肛門がわずかに裂けたのか、ピアスを開けられた時にも匹敵する痛みが玲の尻穴に襲いかかる。
「乙女、準備はいい?」
「うん」
由宇の問いかけに乙女が頷く。
由宇は膣の、乙女は肛門のバイブの柄に手をかけていた。二人の手は電源ボタンに添えられ、同時にスイッチを入れるつもりらしい。
「……ッ……」
「いくよ。せー……のっ!」
由宇の掛け声とともに、二本のバイブが強烈な振動を叩き込む。
「んふぅうう――ッ!!」
前後の粘膜を盛大にかき回され、玲はあられもない悲鳴を迸らせた。
バイブは二本とも最大出力。暴れ狂うかのように振動を続けるバイブは玲の性感を引っ掻き回し、快楽とも苦痛ともつかない桁外れの刺激を玲の全身に加える。
「んうううッ!! ぅうッ!! うぐうう――ッ!!」
とんでもない感覚にのけぞった玲の股間から潮が飛ぶ。
「!」
驚きながら横に避ける由宇の真横に潮が降りかかり、ベッドどころか部屋の床まで汚す。
「すごい……」
またたく間に潮吹きに追いやられた玲の姿を前に乙女は目を丸くするばかりだ。
「しばらくそのままでいてくださいね」
由宇は言うと、二穴のバイブをガムテープで固定までしてしまう。
「んふぅうッ!? ううッ、くふうぅ……ッ!!」
ガッチリと奥に押し込まれたまま抜けなくなったバイブは、玲の深い場所を揺さぶり続ける。
下腹部に刻まれた『人権放棄済み』の言葉にふさわしい惨めな姿だった。脚を開きっぱなしの玲の腰は絶えずガクガク上下して、そのたび手足の枷が軋む。
「ンぐぅううッ!! ふ――ぅぐッ!! ぐぅううッ……!!」
乳房が揺れるたびにピアスの痛みが強くなる。
両乳首のピアスはチェーンで繋がれたままだった。まるで家畜を引っ張る綱のようなチェーンは玲が腰を跳ねさせるほどに揺れ、チャリチャリとかすかな金属音を響かせる。
「ん……んぐッ、ぅう……ッ!! ふ……ふぅうう……!!」
膣肉も菊座もあらん限りの締め付けを示し、テープで押さえられていなければバイブはすっぽ抜けていただろう。
ガムテープに押さえ込まれたバイブは一本調子に玲の中を責め立てる。濁った水音にくぐもった悲鳴が満ちる室内は異様な湿度を帯び、鬼気迫った叫びを上げる玲の姿に乙女は後退りする。
「乙女」
そんな乙女の肩を、由宇はそっと抱き寄せる。
「あ……」
乙女は由宇の身体にもたれるようにしたまま、玲の姿を見つめていた。
――玲が二人との思い出を持つように、二人にも玲や莉乃との思い出があった。
想い合う姉妹の姿を美しいと思ったことすらあったのに、記憶の全ては恥辱の撮影の日々に塗り替えられた。玲の姿に数多の感情がよぎって乙女は顔を伏せ、そんな乙女を全てから守ろうと由宇は彼女の肩を抱き寄せる。
「気分、悪くなった?」
「……ん……」
「無理しないで。向こうの部屋、行く?」
「……うん」
乙女が力なく頷けば、由宇は乙女の肩を抱いたまま部屋を出る。
「ぅぐ……ッ、ふ……、ぐうッ……!!」
乙女を気遣う由宇は玲の方を振り向きもせずにドアを閉める。
――時刻は昼下がりを迎え、段ボールでおざなりな補修をされた窓からは陽光が差し込む。
部屋の温度が上がるほど淫臭は強く漂う。
「んぐうッ――うぐッ、ぐううう……ッ!!」
ギャグボールに口を封じられた玲がくぐもった叫びを上げようと、聞きつける者は誰もいない。
報復のためだけに二穴を犯される玲を見る者は、誰一人としていなかった。
●
翌朝まで、玲はそうして二穴バイブ責めを喰らっていた。
何度気をやったかは分からない。シーツはビショビショに濡れて、玲が腰を跳ねさせるたびに水音がうるさい。途中から意識は途絶えたが失神しながら達していたようで、由宇が部屋に現れる頃には喉はカラカラに渇いていた。
「食事を持ってきました」
言い放つ由宇は、玲の膣と肛門からバイブを抜き取る。
「ぅ……っふ……うう……」
ギャグボールも外される玲だが、四肢の拘束はそのまま。
遅れて部屋に来た乙女の手には深いスープボウル。乙女が皿を傾けて玲に中身を見せると、中には何とも言いがたい灰色のスープがあった。
「……これ……何……?」
「煮物かスープです」
曖昧な答えだった。
野菜や肉が原型を失うまで煮込んだのだろう。表面に肉の脂らしいものが浮いていたり野菜の繊維らしいものがところどころに見えはするものの、決して美味しい類のものではなさそうだ。
乙女は皿の他にチューブも持っていた。何をするつもりかと二人の様子を見つめる玲の前で、由宇は下半身の衣服を脱ぎ捨てる。
「これを私の腸に入れるから、私が出したものを飲んでください」
「……っ、それって――」
指示された絵面を想像するだけで、玲の顔には嫌悪がよぎる。
食欲の湧かない灰色の物体を由宇の肛門に送り込み、玲は由宇の肛門に口をつけて食事を啜るということか。想像するだけで気分が悪くなる玲は渋い顔でかぶりを振るが、由宇は自分の肛門にチューブを突き立て、乙女にスープを送るよう指示を出している。
「お尻は洗浄していますから」
「……」
そう言われても抵抗感は強いものの、由宇は肛内にスープを送り始めている。
透明チューブを通る灰色の液体は生コンクリートのようにも見えていかにも不気味。ただでさえ食欲の湧かない物体を、由宇の肛門から口にしなければいけないのだから気は進まないが、由宇は無理やりにでも強行するつもりだろう。
「乙女。後は私が出来るから――」
「うん、ご飯の準備、だよね」
そういう手筈になっていたのだろう、乙女は頷くと部屋を出て行く。
「……」
復讐に駆られた由宇でも、これから始まる行為を乙女に見られるのは恥ずかしいのだろう。乙女が部屋のドアを閉めたのを確かめてから、肛内にスープを詰めた由宇はベッドに上がった。
(……拒否権はないわね)
由宇に気付かれないように溜息をつく。
昨日、タトゥーを入れられたように今の玲は人権を放棄した性奴隷として扱われている。
「自分で吸い出すんですよ」
尻の中に全てを詰め込んだ由宇はベッドに上がると、仰向けになった玲の顔の上に尻を載せる。
「早くやってください」
「……」
観念したように目を閉じて、玲は言う通りに。
玲が気絶している間に風呂を使ったのか、馴染みのあるボディソープの香りがした。嫌々ながら菊門に舌を這わせると、可憐な窄まりが舌先に応えてヒクついた。
「ん……」
声を漏らして、由宇が肛門に力を入れる。
入れたばかりの異物がドロリと玲の口に流れ込む――最小限の塩気を含んだスープの味だけで言えば、想像よりは悪くないが。
(こんな、もの……)
由宇の尻から出てきたものを飲まされる気分は最悪だ。
雑に煮込んだスープがドロドロしているのも気持ち悪さに拍車をかける。肛門から直接食事を取り込む自分が畜生にでもなった気がして、喉に流れ込む食事を呑み込むのにすら勇気が要る。
「全部飲んでくださいね。吐いたら最初からやり直しですよ」
横柄に言う由宇の表情が玲には分からない。
「ん……う……う……」
不快感に囚われながら、玲は静かに喉を動かす。
アヌスの洗浄は完璧なようで、肛門に特有の不快な臭気はちっともない――舌にはえぐみが感じられるものの、きっと灰汁取りをしていないせいだと言い聞かせながら、玲はそれを飲み下す。
「ふ……ぅく……う……」
由宇のヒップの内側で臀筋が規則正しく動いて、少しずつ中身を送り出す。
少量に分けて送られるスープをこぼす心配はないが、それはこの不快な行為が長く続くことを意味する。眉を寄せてスープを呑み込む玲はこの行為を一刻も早く終えたいが、積極的に由宇のアヌスに吸い付く気にもなれなかった。
「もうすぐ全部――ん、ん……」
排泄に似た感覚に襲われたのか、小さく声を漏らす由宇。
声を漏らしたことをごまかすように由宇は咳払いを一つ。それからわざと横柄に、自分の下にいる玲に命令する。
「……っ……汚れも、全部舐めて綺麗にしてくださいね」
「ぅ……」
言葉とともに、肛門から流し込まれるスープが途絶えた。
口にしたものを何とか飲み下した玲は、ひどい嫌悪に苛まれながら舌先を由宇の肛内へ。
「ッンぅ……!」
とたんに肛門が締まって、舌が奥まで引き込まれてしまう。
「ぅく……ッ、う……うう……!!」
アヌスの内側まで舐めさせられた不快感はもちろん、肛門の強い締め付けが玲の舌の付け根を苛む。
玲が悶えているのが分かるのだろう、由宇は引き締まったヒップに力を入れて、玲の舌を引っこ抜かんばかりに締め付けて。
「私は、お尻の穴……ちゃんと締まるんですよ」
「うう……!?」
「玲が乙女のお尻ばっかり虐めるからです。乙女じゃなくて私に……色々してたら、そんなに苦しまずに済んだのに」
由宇の声は低かった。
(……恨んでいるわね)
スタジオでの撮影の中で、玲は乙女に負荷をかけることが多かった。
抵抗を続ける由宇は全身を拘束する必要があって行為や姿勢に制限がかかり、逆に乙女は比較的大人しいからそうした――というのが本音だが、それはあくまで玲の都合。
由宇からすれば、玲は乙女に不公平な行為を強いたようにしか見えないだろう。大事な幼馴染をそんな風に扱われて、由宇が怒り狂うのも無理はないことだった。
(……謝っても償いきれることじゃない)
何度目かの溜息を漏らして、玲は由宇の肛内に舌を這わせる。
スープの残滓が舌に触れるたびに警戒心が湧く。今度こそ不快なものを口にするのではないかと神経を尖らせながら肛内を舐めるせいで、由宇の肛内が清められる頃には、玲は随分と気疲れしてしまっていた。
「っは……ぁあ……」
ようやく尻の中を舐め終えて舌を抜けば、今度はアヌスの皺を舐めなければいけない。
「……ん……」
肛門を舐めるのよりいくらかマシではあるが、やはり抵抗感は相当だ。
「……う、ん……――ん……?」
嫌々ながら尻の皺に舌を這わせていると、不意に淫臭が鼻をつく。
(このにおいは――)
部屋を満たす玲自身のにおいとも違う、しかし淫猥な香りは、由宇の前穴から。
「……」
「ッ……ん、ぁ……」
尻穴に舌を這わせるたび、由宇は吐息のような喘ぎを漏らし、ささやかな快楽を覚えているらしい。
(……そうよね)
アナル舐めに感じる由宇を浅ましいとは思わなかった。
玲ですら性奴隷の身から解放されてからしばらくは高まりすぎた感度に苦労したのだ、玲よりずっと長く雨夜の屋敷に囚われ、調教と凌辱を繰り返してきた由宇は尚のこと苦しんでいるだろう。
肛肉をまさぐられるだけで由宇のラビアは綻び、内側は豊かな水気を溢れさせる――それに気付かないふりをしながら、玲はぐるりと舌先を一周させる。
「従順ですね。性奴隷の自覚があるんですか?」
「……」
玲は何も答えない。
「何でも良いですけど。……今日は、もっと別の方法で犯してあげますから」
言い放つ由宇が四肢の拘束を解いても、玲は抗わないまま。
由宇と乙女の心が元に戻ることを願いながら、恥虐的な復讐を全て受け入れるのだった。