朝来玲の淫果異聞1 百合調教の果て、理不尽報復に責められて 作:高牧園
7
玲が自宅で辱められている間に、莉乃の退院日がやってくる。
(……妙ね)
病院の前に立つ雨夜は、道行く人々に視線を向けながら眉を寄せた。
予定では、雨夜と玲は病院前で落ち合い、玲は莉乃を迎えに行き、雨夜は病院との手続きを済ませることになっていた。しかし約束の時間を過ぎても玲の姿は見えず、雨夜は待ちぼうけを喰らっているのだ。
何度も玲に連絡を取っているはずなのに繋がらない。
あの玲が莉乃の退院日を忘れることは有り得ない。何かおかしなことが起きている予感を覚えて雨夜が眉間の皺を濃くする中、退院の用意を終えた莉乃がエントランスから姿を見せる。
「お待たせしました。……? 雨夜さん、お姉ちゃんは……?」
キョロキョロと周囲を見回す莉乃は、すっかり元気になったようだ。
前に会った時より少し痩せてはいるが、栄養状態は万全に整っている。日常生活が送れるくらいには心身が復調した莉乃は、玲がいるはずだと信じて周囲を見回している。
「まだ来ていないわ」
「え……?」
莉乃からしても考えにくいことなのだろう、愛らしい顔に不安の色がよぎる。
「何かあったのかもしれない。……とにかく、家に行きましょう」
「……はい……」
悄然と頷く莉乃を連れて、雨夜は二人の家へ向かう。
運転手の使用人と雨夜、そして莉乃の車中は気まずい沈黙に満ちていた――移動中も雨夜は玲に連絡を送り続けるが、やはりレスポンスは一つもない。
(……)
あの玲が莉乃との約束をすっぽかすだけのことが起きているとしたら――雨夜に想像できるのは一つだけ。
(まさか……ね)
玲の家が近づくにつれ、その予感は膨らむ。
家の前に車をつけて、雨夜は使用人にもついてくるよう示す。雨夜と使用人が先導し、莉乃が後ろについていく形で自宅のドアを開けると。
――部屋の真ん中に、裸で拘束される玲の姿があった。
「……ああ、そう」
玲の姿を見た瞬間、雨夜から漏れたのは乾いた呟き。
実現してしまった予感に溜息をつきながらも、雨夜は素早く玲の身体に目を走らせる。
部屋の床に仰向けに転がされた玲は、右の手首と足首、左の手首と足首を束ねた開脚姿勢。
むき出しの肛門からはアナルパールの取っ手だけが伸び、膣口には極太バイブがテープで留められている。バイブの振動のせいで透明な汁は絶えず溢れ出て、玲の足元はびしょびしょに濡れていた。
(まんぐり返しにピアス……それに入れ墨まで)
クリトリスや乳首で光るピアスを瞬時に認めた雨夜は、濡れた太ももに『性処理穴』の文字があることにも気付いていた。
タトゥーが刻まれた部分の皮膚の赤らみから、玲がこんなことになってからの日数も想像がつく。
「ぅ――あ、……うぅ……」
力なく呻く玲の口にはギャグボールが嵌められていた。
顎どころか首まで唾液まみれになった玲の目は虚ろで、この責めが始まってから長い時間が経ったよう。そんな玲を囲む二人の女は弾かれたように振り向くと、雨夜の姿にハッと目を見開く。
「あなたは――!!」
激情をあらわにする女の名前が由宇であることも、雨夜は覚えていた。
由宇は雨夜に食ってかかろうと迫るが、使用人の反応は早い。使用人は即座に由宇と雨夜の間に割って入ると由宇の手首をひねり、その場に組み伏せてしまった。
「っ!?」
「由宇ちゃん……!?」
由宇と乙女からすれば、何をされたかも分からなかっただろう。
前に立つ使用人が動いたことで、後ろにいる莉乃にも部屋の様子が見えた――ヒュッと息を吸う音が雨夜の後ろで響いたかと思えば、莉乃の悲鳴が迸る。
「お姉ちゃんッ!!」
悲痛な叫びとともに莉乃は駆け出した。
靴を脱ぐのももどかしい。莉乃は玲に駆け寄ると玲の肩や頬に触れる。
「あ……ああッ……!!」
玲の肌は驚くほど熱く、この距離に莉乃がいるのに反応ひとつ示さない。
「あぁあああ……!!」
「り、莉乃ちゃんっ……その、これは……その――」
大声で泣き出す莉乃のそば、乙女はオロオロするばかり。
泣きじゃくる莉乃、戸惑う乙女、使用人に組み伏せられたままもがく由宇――混乱する室内をじっくり見回した雨夜は、ぷっと吹き出して。
「っふふ……本当に、本当に愚かね!」
「……何……? 何が言いたいんですか……ッ!?」
使用人に取り押さえられたまま由宇が噛みつけば、雨夜は優美に髪をなびかせて首を振る。
「玲が愚かだと言ったのよ。大金を捨ててまで助けたお前達にこんなことをされて、本当に愚か!」
「――え……?」
雨夜の言葉がとっさに理解できず、乙女はぽかんと口を開ける。
「こうなるだろうから、あの時そんな義理はないと言ったのに!」
「……そ、れって……」
使用人の下で、由宇は声を絞り出す。
頭の中に無数の記憶が駆け巡る。
――スタジオで由宇と乙女を調教する時、不自然なほど無抵抗だった玲。報復に出た二人を、玲はどうして逆らわずに受け入れたのか。
――どうして、雨夜は唐突に二人を解放したのか。
「……私たちが……解放されたのって――」
「玲さんが……助けて、くれたから――?」
「本当に愚か」
吐息とともに声を漏らし、雨夜は玲の元へ。
泣いて玲にすがりつく莉乃はそのままに、雨夜は玲の膣からバイブを、肛門からアナルパールを抜き取る。淫具を抜き取られても二穴はぽっかり開いたままで、戻らない秘部を見た莉乃はまたもや涙を流してしまう。
「貴女にとっては悲劇ね」
ギャグボールと拘束も外して、雨夜は玲を抱き上げる。
「玲は病院へ連れて行くわ。莉乃、残念だけどもう少しお預けね」
「――」
床にへたり込んだままの莉乃は、見開いた瞳から滂沱の涙を流す。
雨夜は莉乃の返事を待たず玄関へ向かう――取り押さえられた由宇へ向ける一瞥は、性奴隷へ向けるものよりずっと冷たかった。
「あ……」
その冷ややかさに、由宇と乙女は、自分たちのしでかしたことを理解する。
「あ……あ……」
「――出て行って……」
何を言えば良いのかも分からず口を開閉させる由宇に、莉乃は告げる。
「出て行って……もう来ないで、お姉ちゃんに近づかないでッ!!」
絶叫が家を揺らす。
「出て行ってッ!! お姉ちゃんは悪くないのにッ、どうしてお姉ちゃんを――出て行って、早く出て行ってよおッ!!」
「あ――う、……あ……」
莉乃のひどい剣幕に、由宇は腰が抜けてしまう。
乙女はのろのろと動きだした。玄関先にへたり込む由宇に手を伸ばし、乙女は力なく呟く。
「……由宇ちゃん、もう行こう……」
「あ……お、乙女……」
「……ここから出て行こう、ね……?」
「出て行ってってばあッ!!」
莉乃の怒号を背に受けて、由宇と乙女は家を後にする。
すでに雨夜の車はなく、玲は病院へ連れて行かれたのだろう。
家の外に出ても莉乃の泣き声は聞こえた。重い足取りで街へ向かうにつれて声は聞こえなくなったはずなのに、由宇と乙女の背中には莉乃の泣き声と雨夜の笑い声が張りついていた。
「……どこに行く?」
由宇の問いかけに、乙女は力なく首を振る。
「どこに行っても……もう、何も変わらないよ」