朝来玲の淫果異聞1 百合調教の果て、理不尽報復に責められて 作:高牧園
8
時は平等に過ぎてゆく。
「あったかぁい……」
浴槽に肩まで浸かる莉乃が寛いだ声を上げると、玲は微笑みを浮かべる。
「莉乃、のぼせすぎないでね」
浴槽に浸かる玲は莉乃の腕の中。身体の小さい莉乃に後ろから抱きしめられるのは何だか不思議な感じがして、玲は口元が緩んで仕方ない。
「うん。今日はこの後パーティーだもんね」
莉乃も同じようで、玲の後ろからは莉乃のクスクス笑いが響いてくる。
――今日は、玲と莉乃の退院祝いのパーティーをする日だった。
莉乃が退院したのと入れ違いで玲が入院してしまったせいで、お祝いは延びに延びてしまった。しかしそのおかげで莉乃の心身は完全に復調し、玲も万全の状態でお祝いができるようになったのだ。
「えへ」
悪戯っぽい笑い声を上げて、莉乃は玲のお腹をさっと撫でる。
「っ……莉乃?」
「えへへへへ」
ふざけて何度もお腹を触る莉乃に、わざとらしく怒った声を上げる玲。
――玲のお腹にあった卑劣な文字はすでに消されていた。
雨夜の口利きのおかげで、玲のタトゥーとピアスは痕跡すら残さず消し去られた。胸や下腹部、太ももにあった痕は目を凝らしても見えず、由宇と乙女から報復を受けた五日間のことは綺麗さっぱり拭い去られている。
「でも、いいの?」
不意に莉乃に問われ、玲は少しだけ息を整えて。
「何が?」
「――今日、ケーキ二個も食べていいんでしょ? ほんとに? 本当にーっ?」
楽しそうに尋ねる莉乃に、玲は莉乃の方に向き直って。
「いいの」
言いながら、莉乃の身体をぎゅっと抱きしめる。
「莉乃、まだ体重戻ってないんでしょ? 体重戻るまでは、いっぱい食べないと」
「えへぇっ、はーいっ」
クスクス笑い合いながら、玲と莉乃は浴槽の中で互いの肌を感じ合う。
柔らかな素肌はとろけるようで、幸福感に満ちた会話はいつまでも終わらない――。
●
時は平等に過ぎてゆく。
板張りの床に裸体を投げ出す由宇と乙女は、互いの身体をまさぐっていた。
「っは……ぁあ……」
熱い溜息を漏らしながら、由宇は乙女の膣穴に三本指を抜き差しする。
グポッ、グポッと激しい水音が響いて、フローリングの床に乙女の愛液が垂れる。日課となったまぐわいのせいで、この古アパートの一室のあちこちには濡れた染みがこびりついていた。
「ぁうんっ……ん、んぅ……」
力なく喘ぐ乙女は、由宇のアヌスをかき混ぜる。
こちらも指は三本。指はバラバラに動いては由宇の菊肉をえぐるが、由宇は快楽だけを覚えて身体を震わせる。
「はぁっ……あ、ああッ、乙女ぇ……っ」
「ん……っ、由宇、ちゃん……っ」
互いの名前を呼び合う二人の嬌声は狭い部屋いっぱいに響く。
隣の部屋で誰かが身じろぎするのが聞こえた。きっと二人のまぐわいの声も隣室に聞こえているはずだが、由宇も乙女も、そんなことを気遣う余裕はなかった。
「ああ……乙女、私、ずっとこうしたかった――」
溜息のような声を漏らす由宇は、乙女に口づける。
舌を差し伸べたのは乙女から。舌を絡め合う女二人の湿っぽい音が響く間だけは、由宇と乙女は全てを忘れられた。
――性奴隷として解放されたあの時、雨夜から渡された金のほとんどは玲への報復のために使った。
残されたわずかな額では不便な土地の安アパートしか借りられない。このアパートは一年後に取り壊しが決まっているが、二人は次の行き先も見つけられなかった。
「ふ……ぅう、乙女ぇ……」
「んぅ……っは、ぁあっ……」
舌を絡ませて快美に耽る。
性奴隷として開発されきった身体ではとてもまともな生活は送れない。二人は浅ましいやり方で日銭を稼いでは、この暮らしから抜け出すことも考えず互いの身体に溺れる――そうすることがふさわしいのだと思えて、自罰的なまでに行為を繰り返すのだ。
「ん、あっ……乙女……」
「はぅっ……ん、んう……っ」
二人暮らしには狭すぎる四畳半で身体をくねらせた拍子に、ローテーブルにぶつかってしまう。
ゴミ捨て場から拾ってきたテーブルには粗大ごみのシールが貼られたまま。テーブルの上で便箋が乾いた音を立てても、二人の交わりは止まらない。
その手紙は、雨夜を通して玲から渡されたものだった。
――あなたたちを傷付けたことを、本当に申し訳ないと思っています。――
そんな書き出しで始まる手紙の中で、玲は二人を責めなかった。
――どんな理由があっても、私がやったことは、許されないことです。あなたたちがしたことは、仕方のないことです。――
綴られる言葉は誠実だ。
――お互いのためにも、あの出来事のことは触れない方が良いと思います。どうか自分を責めすぎないでください。――
そう締めくくられた手紙を忘れたくて、でも忘れられなくて、二人はますます行為に沈む。
「乙女……乙女、もう……」
「うん……一緒に……っ――」
息を合わせて達すれば、何も考えられないはずなのに。
真っ白になった意識の中で、罪だけが克明に浮かび上がる――。
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