検証♡推しと二人きりでどこまで耐えられるのか〜黛冬優子の場合 作:高牧園
トレイの上には布地が三枚。
しかし、それはハンカチではなく、愛らしいデザインのパンティだった。
「……え、あれ?」
引きつりそうになる顔を必死で保って、冬優子は小首を傾げる。
「ふゆがお渡しした私物と、違うみたいなんですが……」
スタッフに助けを求めるように、冬優子は戸惑い顔をセットの外に。
スタッフたちは冬優子がこちらを見ていることには気づいているようだが、ノーリアクションを貫く。
『ふゆちゃんにもサプライズとして、事前にお借りした私物とは別の私物をご用意しました!』
あっけらかんと言ってのける司会者の声をよそに、冬優子は並んだパンティを愕然と見下ろす。
驚いたのは、そのパンティのうち一枚、『B』の札が掛けられたものが、本当に冬優子自身のものだったからだ。
今日はこの収録の前に、ダンスレッスンがあった。
レッスンを終えた後は汗だくで、下着も履き替えたのだが……鞄の奥底にしまったはずのソレが、どういうわけか目の前にある。
(か、鞄を漁ったってこと……!? 非常識すぎない!?)
あまりの事態に驚愕して黙ってしまう冬優子に、目隠しをされたファンは不安そうだ。
「ふ、ふゆちゃん? 今どういう状況?」
「いえ、行き違いがあったみたいで……ええと、じゃあ物は取り替えていただくってことですか……?」
『いや、ソレで合ってますよー。時間押しちゃうんで、ささっと始めましょう。ファンの方ー、手を伸ばしてみてくださーい』
司会が一方的に話を進めて、男は言われるままにトレイの中のパンティのうち、ハズレの『A』を手にする。
冬優子が履いていたパンティに、残りのパンティもデザインを似せたのだろう。
腰回りに施されたフリルや、フロントを彩るリボンとレースなどのデザインはおおむね一致しているから、ハズレのパンティを触る姿を見ていても落ち着かない。
「ていうか、これ何ですか? ゴム入ってる感じの……んん?」
『さー、何でしょうねー。触ったり、嗅いだりしてみてくださいねー』
「!」
司会の言葉から、これから待ち受ける辱めに気付いてサッと顔を赤くする。
「手触りは普通の布? で、フリルと……リボンと……うーん、ふゆちゃんっぽい可愛い感じなのは分かる……」
言いながら、男の手の中ではハズレのパンティがくるくる回転。
「嗅いでみますね。……うん? 布のにおいしかしない」
その後も男はハズレのパンティをまさぐるが、これといった情報は見つけられなかった。
「今のが『A』なんだよね? ふゆちゃん、『B』のを貰ってもいいかな?」
「……! …………はい、どうぞっ」
Bこそが正解、冬優子の汗つきパンティだ。
つまみ上げて、震える手で男の手のひらに自分のパンティを置く冬優子。
(早く終わって! 早く……)
強く念じる冬優子だが、男の手つきは慎重。
「ん? モノとしてはさっきと同じ形? いやビミョーに違うかも」
まずは外側に触った男の手が、ふとした拍子にパンティの内側、冬優子の生尻に触れた部分に潜り込む。
「うわっ、なんか湿ってる」
「……!!」
ダンスレッスンの間、ずっと履いていたのだ。
当然のように湿りを帯びた布地に声を上げて、男はクロッチ部分に指を伸ばす。
ねと……♡
「うわっ、なんかネトっとした! これ触って大丈夫なやつですか!?」
『ふゆちゃんどうでしょう、これって触って大丈夫なやつなんですかー?』
「えっ……と、ふゆは、あんまり触らない方がいいかもって思います……」
今すぐ手を離せ、と叫び出したい気持ちを堪えて、それだけ言う冬優子。
「じゃああんまり触らないで、においだけ――」
言って男の鼻は、よりにもよってクロッチの内側に近づいて。
「くっさ!!!!」
息を吸った瞬間、男は叫んで大きくのけぞった。
「…………!!」
『ぷっ……ふふ、そんなに臭いんですかー?』
「ナニ塗ったんですかこれ!? チーズ!? になんか変なモノ足してますよね!? 明らかこれがハズレじゃないですか!」
被害を強調するように声高に叫んで、男は冬優子のパンティのシミがいかに臭いかを主張。
周囲のスタッフ、そして司会者は答えを知っている。彼らは笑いが堪えきれない様子だが、目隠しをした男からすれば、自分のオーバーリアクションに笑っているようにしか感じられないのだろう。
『んっふふ……ふふっ、じゃあすみませんけど、特に臭かった部分を広げて見せてくれますか? ぷふっ』
「なっ……!」
おぞましい要求をする司会者に鼻白む冬優子だが、男はお構いなしにクロッチの内側を広げて見せる。
「……わ、わあー……」
ネタバラシを受けた後の男性のことを考えて、無難なリアクションを取るほかない。
クロッチの内側は、ピンクの布地全体が濡れてグレーがかっていた。
ダンスレッスン中にお尻に食い込んだのだろうか、クロッチの中央には大きく皺が寄っている。
皺の窪みのところ、陰唇が当たった部分には、白い分泌液がねっちょり♡とへばりついていた。
(なんで……こんな屈辱……!!)
排泄物の汚れがないのは不幸中の幸いだが、内心で歯噛みするほかない。
「Bは絶対無いです。……ふゆちゃん、うるさくしてごめんね。Cのを貰っていいかな?」
投げ捨てるようにBの、正解のパンティを手放して、男は優しく冬優子に声をかける。
「……は、は~い♡」
半端な優しさをかえってつらく感じながら、冬優子はハズレのCのパンティを男に手渡す。
「におい嗅ぐの怖いなー……ん、これはいい匂いがする」
スンスン鼻を鳴らして、男はパンティのクロッチ部分の香りを堪能。
「お花みたいな……すげーいい匂い……これCが正解ですよね?」
『おっと! 正解はCと回答しました! いかがでしょうふゆちゃん、何かヒントなどはありますか?』
「え? えぇっと……」
何を言おうと、この男に「臭い」と言われたパンティが自分のものだと白状するのは勇気が要る。
『特にヒントはなさそうかー? では、正解はC! で良いですね!?』
「はい! Aは新品っぽいし、Bは絶対ありえないんで、Cがふゆちゃんの私物です!」
『ではふゆちゃん! 正解発表を……どうぞっ!!』
司会の声に、スタジオ中の意識が冬優子に向けられる。
嘘をつきたい――冬優子を覆ってふゆを演じるよりも強く、B以外を正解だと答えたい。
だが、正解を知るスタッフの目がある状況でその嘘はつけない。
「正解は~…………B! でした!」
「え、ええっ!?」
驚きの声を上げて、男はアイマスクを取り去る。
「あんな臭いのが……ってかパンツ!? 俺ふゆちゃんのパンツ嗅いだの!? ふゆちゃんってあんなにパンツ臭いの!?」
「ち、違うんです……! ダンスレッスンがあって、汗をかいちゃったから……」
『やー、でもあんなにベトベトになるもんですかねぇ』
茶化す司会の言葉に真っ赤になる冬優子をよそに、驚いた男は冬優子のパンティを拾い上げる。
「うわっ、汗すっご……あ、いや、ふゆちゃんレッスン頑張ったんだよね! 偉いと思うよ、ほんとに!!」
クロッチの内側を正視してドン引き顔になる男だが、冬優子の目の前だったと思い直して慌てて取り繕う。
「ふゆ、悲しいです……番組スタッフさんもひどいと思います……!」
ふゆモードを崩さないまま出来る最大限の怒りを表明してみせるが、スタッフたちはどこ吹く風。
『では、一問目は不正解ですね。二問目は正解なるか!?』
一問目からこれなら、後に続く問題はどんな酷いものなのか。
空恐ろしいものを感じて、冬優子はブルっと身震いした。