僕のファーストキスを奪った幼馴染が、超ドSだった件 作:微熱@
修学旅行が終わって、月曜日。
たった二泊三日の旅行だったはずなのに、僕の日常は旅行前とはまるで異なるものになっていた。
何が変わったのか。端的に言えば、美優が変わった。
いや、変わったという表現は正確ではないかもしれない。美優の本質的なドS気質はそのままだ。ただ、そこに纏わりつく感情の色が、明らかに以前とは違っていた。修学旅行前の美優は、猫が毛糸玉で遊ぶような余裕を持って僕を弄んでいた。しかし今の美優は、その毛糸玉を奪われるかもしれないという恐怖に駆り立てられた猫だった。爪が、以前よりもずっと深く毛玉──僕に食い込んでくる。
「由紀人。スマホ、出して」
朝、登校して席に着くなり美優が言い放った第一声がそれだった。
僕は嫌な予感を覚えながら、鞄からスマートフォンを取り出した。美優はそれをひったくるように奪い、慣れた手つきでロック画面を解除した――パスワードは、とうの昔に教えさせられている。
「LINEのトーク履歴、見せなさい」
「え……全部?」
「全部よ。あと、今日からルールを追加するわ」
美優はスマホの画面をスクロールしながら、冷たい事務的な口調で告げた。
「橘ひまり。あの子とのLINEは、返信する前に必ずあたしに文面を見せること。あたしが許可した内容以外は、一文字も送っちゃ駄目」
「そ、そんな……!」
「嫌なら、今すぐひまりをブロックしなさい。どちらか選んで」
究極の二択。ブロックすれば不自然すぎるし、検閲を受け入れれば完全にプライバシーが消滅する。
だが、美優の選択肢に「拒否する」という項目が存在したことは、一度もない。
「わ、わかった、よ。見せます……」
「よろしい」
美優はスマホを返してくれたが、その際、僕の手の甲を爪の先でキッと引っ掻いた。薄い赤い線が、まるで所有権を示す焼き印のように残った。
この日から、僕のスマートフォンは実質的に美優の監視端末と化した。
ひまりちゃんからLINEが届くたびに、僕はまず美優に画面を見せなければならなかった。美優はその内容を冷たい目で読み、返信の文面を一字一句指定してくる。
「『そうだね。僕もすごく楽しかったよ』? なんでこんなに愛想のいい返事を送ろうとするわけ?」
「だって、ひまりちゃんが修学旅行楽しかったねって送ってきただけだし、普通の返事を……」
「普通の返事はこう。『そうだね』。以上。それだけで充分よ。絵文字もスタンプもなし。そっけない方がいいの。距離を取りなさい」
美優が口述し、僕がそれを入力して送信する。まるで秘書と上司のような関係だが、この上司は僕の股間に金属の枷を嵌めている。
しかし、美優の検閲は予想以上に僕の精神を蝕んでいった。
なぜなら、ひまりちゃんからのメッセージは日に日に増えていったからだ。
『堀田君、明日の英語の小テストの範囲って、教科書の何ページだったっけ?』
『お昼、食堂のカレーが美味しかったよ! おすすめ!』
『帰り道、紫陽花がすごく綺麗に咲いてたの。堀田君と一緒に見たいな』
一つ一つは何気ない、年頃の女の子が気になる男の子に送るであろう他愛のないメッセージ。だがその全てを、僕は美優の冷たい目の前で開封し、美優に検閲された返事だけを返さなければならない。
ひまりちゃんの温かい言葉と、美優に強制されたそっけない返信のギャップが、胸の奥に鈍い痛みを生んでいた。
「由紀人、今のメッセージ読んで、どう思った?」
昼休みの教室の片隅で、美優が僕の耳元に囁いた。
「別に、何も……」
「嘘つき」
美優の手が、机の下で僕のズボンの太ももに触れた。
「今、ひまりの『一緒に見たい』っていうメッセージを読んだ瞬間、由紀人のここ、ピクンって反応したわよ。貞操帯越しでもわかるくらい」
「そっ……そんなこと、ない……」
「由紀人。あたしに嘘をついたらどうなるか、覚えてるわよね?」
美優の指が太ももの付け根まで滑り込み、制服のズボンの上から、貞操帯の金属の膨らみを親指でグリッと押し込んだ。
「ひぐっ……!」
「正直に答えて。ひまりのメッセージで、おチンポ、少しでも硬くなった?」
答えたくない。だが、嘘をつけば美優のお仕置きが待っている。そして何よりも恐ろしいのは、正直な答えが、美優を傷つけることだった。
けれども僕の身体は、あまりにも正直だった。
「……す、少し、だけ」
「そう」
美優の声にはいっさいの感情が乗っていなかった。しかし、机の下の指先が、わずかに震えていた。
「今日から、おあずけの期間を延長するわ。来週の金曜日まで、一度も鍵は開けない」
「えっ……! い、一週間も!?」
「一週間よ。来週の金曜日まで、一度も鍵は開けない。その間ずっと、あたしだけを想いなさい。ひまりのことなんか、頭から完全に消し去って。由紀人の頭の中、あたしでいっぱいにするの。そうしたら、開けてあげる」
一週間。
僕は目の前が真っ暗になった。
修学旅行中だって毎日のように射精させられていたからどうにか耐えられたのであって、一度も出せないまま丸々一週間を過ごすなんて、考えただけで気が狂いそうだ。しかも美優は毎日のように僕を焦らし、寸止めし、貞操帯越しに刺激してくるのだ。
人間として、正気を保てる自信がなかった。