僕のファーストキスを奪った幼馴染が、超ドSだった件 作:微熱@
八月に入ったある日、ひまりちゃんからのLINEが届いた。
『堀田君! 来週の水曜日、みんなでプール行かない? 伊藤さんと山本くんと斉藤くんも来るみたいだよ! 坂本さんも誘ってみて! 楽しそうじゃない?』
プール。
その二文字を見た瞬間、僕の脳内に三つの爆弾が同時にセットされた。
一つ目。水着になるということは、貞操帯を外さなければならない。あのゴツい金属の塊を装着したまま水着を履くことは物理的に不可能だ。サーフパンツだろうが競泳パンツだろうが、股間に不自然な膨らみができることは避けられない。
二つ目。貞操帯を外した状態で、水着姿の女の子たちに囲まれる。美優の匂いを毎日嗅いで性的感受性が極限まで高まっている今の僕の体が、水着のひまりちゃんを見て勃起しない保証はどこにもない。
三つ目。そもそも美優がプール行きを許可してくれるのか。
案の定、美優にLINEを見せた瞬間、美優の眉間に深い皺が刻まれた。
「ひまりとプールね。へえ」
翌日、美優の部屋で首輪を着けた僕に、美優は冷たい声で言った。
「あの子と水着で一緒に泳ぐんだ。楽しそうね」
「あ、あの……行かなくてもいいんです、美優様が嫌なら──」
「嫌だから行くなって言ったら、ひまりにまた不自然に思われるでしょ。しかも伊藤や斉藤も来るんでしょ? グループで行くのに由紀人だけ断ったら、なおさら変に思われる」
美優は腕を組み、しばらく考え込んでいた。
「あたしも行くわ」
「え……美優様も?」
「そうよ。ひまりが『坂本さんも誘って』って書いてるじゃない。都合がいいわ。あたしが一緒に行けば監視できるし、由紀人とひまりが二人きりになる隙もなくせる」
美優は立ち上がり、クローゼットを開けた。水着を選ぶつもりらしい。
「問題は貞操帯よね。さすがにあれつけたまま水着は無理だから、プールの間だけ外してあげる。ただし──」
美優が振り返った。その目は、氷をでできた刃物のように鋭く冷たい。
「条件。プールにいる間、一度でもおチンポを硬くさせたら、一ヶ月のおあずけ。一ヶ月間、一度も鍵は開けないわ。硬くなったかどうかは、自分でわかるわよね? きちんと自己申告なさい」
い、一ヶ月。あの一週間ですら死にかけたのに、一ヶ月……想像もできない。
「そ、そんな……水着を見たら、その、男として……」
「男として反応するのが自然だって言いたいわけ? じゃあ聞くけど、あんたは誰の水着を見て反応するの? あたし? それともひまり?」
「あ……」
答えられるはずがなかった。
「あたしの水着で硬くなるならまだ許容範囲よ。でも、ひまりの水着で硬くなったら……わかるわよね?」
「は、はい……」
「よろしい。当日の朝、あたしの家で貞操帯を外して、プールから帰ったら即装着。その間の数時間だけ、自由にしてあげる。その自由をどう使うか、由紀人の理性にかかってるわ」
プール当日。八月七日、水曜日。
朝八時半に美優の家に行き、貞操帯を外してもらった。
「あ……ぁ……」
金属が外れた瞬間、下腹部に広がる解放感に全身が震えた。拘束されていた部位が急に自由になると、まるで長い間正座していた後に足を伸ばした時のような、痺れと安堵が混ざった感覚が走る。
「さっさとそれしまいなさい。一応あたしだって恥ずかしいんだから」
美優は僕のペニスを一瞥し、ぷいと横を向いた。しかしその横顔がわずかに赤くなっているのを、僕は見逃さなかった。
「あと、念のため確認するけど……跡、残ってないわよね」
僕は自分の股間を確認した。長期間の装着で、金属が当たっていた部分の皮膚がほんのりと赤くなっている箇所がある。特に鼠径部のベルトが食い込んでいた跡は、薄い赤い線として残っていた。
「ちょっとだけ赤いかも……」
「日焼けした後みたいな感じに見えるわ。サーフパンツの丈が長ければ隠れるでしょ。ひまりにアピールするために、丈の短い水着なんか選んだら殺すわよ」
「は、はい……」
集合場所は駅前のバスロータリー。参加メンバーは僕、美優、ひまり、斉藤、山本、伊藤──六人のグループだった。
「おはよう、堀田君!」
ひまりちゃんが小走りで駆けてきた。白いサンドレスにサンダル、薄いピンク色のキャップをかぶっている。
「あ、坂本さんもおはよう! 来てくれたんだ、嬉しい!」
「おはよう、ひまり。誘ってくれてありがとう」
美優が完璧な微笑みで応じる。どこからどう見ても「仲良しクラスメイト」の姿だ。
「堀田ぁ! お前ほんと顔に似合わないたらしだよな、美女二人侍らせてよぉ!」
山本健太が大声で割り込んできた。バスケ部所属の長身で、日焼けした肌と短く刈り上げた頭が体育会系ど真ん中を主張している。声がでかい。とにかくでかい。常にテンションが振り切れていて、空気を読むという機能が先天的に搭載されていないタイプの男だ。悪い奴ではないのだが、デリカシーという概念を辞書から削除して生まれてきたような存在で、隣にいる斉藤と並ぶと「うるさい二人組」として周囲からセット扱いされている。
「やっぱ堀田はモテるんだよなぁ。分けてくれよ、なぁ斉藤!」
「無理に決まってんだろ……」
斉藤が眼鏡を押し上げながら呆れた顔をしているが、その視線はちゃっかり美優の方に向いている。
「おはよー! みんな揃ったー?」
伊藤麻美が小走りで駆けてきた。ゆるく巻いた茶髪のセミロングにピアスが三つ、爪にはパステルカラーのネイルが施されている。クラスの女子グループの実質的な情報網の中枢であり、他人の恋愛事情を燃料にして生きているような女の子だ。誰と誰が付き合った、誰と誰が別れた、誰が誰を好き──そういう情報を集めて流すことに異常なまでの情熱を注いでいる。悪気はない。たぶん。ないと信じたい。
伊藤は僕と美優、また僕とひまりちゃんを交互に見比べ、すぐにスマホを取り出してメモを打ち始めた。あの指の速さはフリック入力の達人のそれだ。今日のプールの出来事は、間違いなくクラスのグループLINEに流されるだろう。
バスに揺られて二十分。市営の屋外プールに到着した。
更衣室で着替え、ロッカーに荷物を入れる。僕は黒のサーフパンツを選んだ。膝上丈で、貞操帯の跡が残る鼠径部を完全にカバーできる長さ。
斉藤と山本と一緒にプールサイドに出ると、青い水面が真夏の太陽を反射してキラキラと輝いている。塩素の匂い、子供たちの歓声、焼けたコンクリートの熱さ。夏のプールの光景。
そして──女子三人がプールサイドに出てきた。
ひまりちゃんの水着は、淡いピンクのワンピース水着だった。フリルがついた可愛らしいデザインで、華奢な体のラインを恥じらいがちに包んでいる。首元から頬にかけてほんのりと赤く、日差しのせいなのか照れているのか判別がつかない。ショートボブの毛先がそよ風に揺れ、鎖骨のくぼみに夏の光が溜まっている。
伊藤はオレンジのスポーティーなビキニで、小麦色の肌と茶髪がよく映えている。普段の教室での華やかさに加え、スタイルも決して悪くない。斉藤と山本の視線が露骨に伊藤の胸元に集中しているのが丸分かりで、伊藤本人も気づいているのか、わざとらしくポーズを取って「撮っていいよー! あ、スマホ持ち込み禁止だったね!」と叫んでいた。
そして美優。
紺のビキニだった。
シンプルで飾り気のないデザインだが、それゆえに美優の体のラインが剥き出しにされている。引き締まったくびれ。小ぶりだが形の綺麗な胸。白い肌がまるで磁器のように夏の光を弾き返し、目が痛くなるほど眩しい。
クラスでは常に制服で包まれ、ミステリアスなオーラで武装している美優の生の肌が、公共の場で晒されている。その事実だけで、僕の股間がじわりと熱を持ち始めた。
(だめだ。勃起したら一ヶ月おあずけだ。落ち着け。落ち着け。九九を暗唱しろ。三三が九。三四、十二──)
「由紀人。何背中丸めてるの。ほら、行くわよ」
美優に腕を引かれ、プールサイドの日よけの下にシートを広げた。六人分のバスタオルや荷物を並べ、準備が整う。
「あ、日焼け止め塗らないと! 私、すぐ焼けちゃうから」
ひまりちゃんが、トートバッグから日焼け止めのチューブを取り出した。
「堀田君、背中塗るの大変でしょ? 私が塗ってあ──」
「由紀人の背中はあたしが塗るわ。幼馴染だし、やり慣れてるから」
美優が間髪入れずに割り込んだ。ひまりちゃんの手が、中途半端に差し出されたまま宙に浮く。いや、僕、美優に日焼け止めを塗ってもらったことなんてないけど。
「あ……う、うん、そうだね」
ひまりちゃんは少ししょんぼりとしたが、すぐに笑顔を作り直した。
「じゃあ私は伊藤さんと塗り合いっこしよう! ね、麻美ちゃん!」
「いーいーよー」
伊藤が気のいい返事をしながらも、美優とひまりの間に流れた微妙な空気をしっかり観察しているのが分かった。あの目は、完全に「ネタ収集モード」だ。
美優は僕の背中に日焼け止めを塗り始めた。冷たいクリームと、美優の指先の体温。
「ひまりに塗らせるわけないでしょ」
耳元で囁かれた。小さな声だが、その声に含まれた独占欲は濃密だった。
「あの子に由紀人の肌を触らせたら、そこから匂いが移るわ。あたしが由紀人の体に触れるのはいいの。マーキングだから」
美優の手が背中の肩甲骨から腰のラインまでを丁寧になぞっていく。日焼け止めを塗るという体裁の下で、所有権を主張するように僕の背中を隅々まで撫で回した。
「あとで腰の辺り確認するから。跡、目立ってないわよね?」
「た、たぶん大丈夫……」
「たぶんじゃ困るのよ。もし誰かに何の跡って聞かれたら、適当にごまかしなさい」
日焼け止めが終わり、いよいよプールに入った。
最初は25メートルプールで軽く泳ぎ、それから流れるプールに移動した。六人で浮き輪を持ちながら流れに身を任せ、山本が斉藤を沈めようとしてプールの監視員に怒られ、伊藤がスマホ禁止のプールでもスマホを持ち込もうとして入口で没収された。賑やかで、楽しい、普通の夏休み。