僕のファーストキスを奪った幼馴染が、超ドSだった件 作:微熱@
「堀田君! 次、ウォータースライダー行こうよ!」
ひまりちゃんが水面から顔を出して手を振った。プールの端に設置された大型のウォータースライダーが、青い空に向かって螺旋状のカーブを描いている。
「いいね、行こう!」
斉藤と山本は流れるプールから出る気配がなく、伊藤は、まだ休憩中。美優は──
「あたしも行くわ」
当然のように言った。三人でスライダーの列に並ぶ。
列は意外と長く、十五分ほど待った。階段を上がっていく間、目の前にはひまりちゃんの背中があった。ピンクのワンピース水着が彼女の華奢な肩を包み、水滴が背骨のラインを伝って腰のくびれに消えていく。そして、華奢だけど女性らしく丸みを帯びたお尻──
その後ろ姿を見ただけで、下腹部がほのかに疼いた。
(だめだだめだだめだ。見るな。考えるな。九九だ。七七、四十九。七八、五十六──)
「堀田君はスライダー滑ったことある?」
「え、あ、小学生の頃に……」
「私も! あの頃は怖くてお父さんと一緒に滑ったなぁ。えへへ」
ひまりちゃんの無邪気な笑顔。その笑顔の裏に、靴下の一件以来の「計算」が潜んでいるかもしれないと思うのは、考えすぎだろうか。いや、ひまりちゃんに限ってそんなことあるわけない。考えすぎだ。
スライダーの入口に到着した。一人用のスライダーで、インストラクターの指示に従って一人ずつ滑り降りる。
「じゃあ、由紀人が先に行きなさい」
美優が言った。由紀人が先、ひまりちゃんが二番目、美優が三番目。そういう順番だ。
「うん。じゃあ──」
僕が、スタート位置に腰を下ろした時だった。
「きゃっ……!」
背後で、ひまりちゃんの小さな悲鳴が聞こえた。
振り返ると、ひまりちゃんが足を滑らせていた。スライダーの入口は水が流れて常に濡れているから、足元が滑りやすい。ひまりちゃんの体が前のめりにバランスを崩し、そのまま──
「わっ、ひまりちゃん!?」
「ごめんっ、堀田く……きゃあっ!」
ひまりちゃんの体が僕の背中にもたれかかった。咄嗟に支えようとしたが、僕自身がスタート位置に座った状態で踏ん張りが効かない。二人分の体重がスライダーの傾斜に乗り、そのまま──滑り出した。
「うわあぁっ!!」
「きゃあぁぁっ!!」
二人乗りの状態で、螺旋状のスライダーを滑り降りていく。
水しぶきが顔に叩きつけられ、カーブを曲がるたびに遠心力で体が振られる。そして何より僕を動揺させたのは──ひまりちゃんが、僕の体に後ろからしがみついていることだった。
背中に、ひまりちゃんの胸が押し付けられている。ワンピース水着の薄い布地が水で肌に張りつき、その下の柔らかな膨らみが、僕の背中に直接密着していた。腕が僕の腰に回され、指先が腹筋の上をぎゅっと掴んでいる。
滑り落ちる恐怖でパニック状態の甲高い声が耳元で弾け、ひまりちゃんの熱い吐息が首筋に当たる。桃の匂いと塩素の匂いが混ざった、水に濡れた少女の匂い。
「堀田君っ、怖いっ……! 離さないでっ!」
ひまりちゃんの腕が、さらに強く僕の体に巻きついた。
華奢な体のわりに驚くほどの力で、まるで命綱にすがるように。その力加減が──恐怖からくるものなのか、それとも密着するための口実なのか──分からない。
だが一つだけ、決定的に分かることがあった。
勃起していた。
冷たい水の中にいるにもかかわらず、ひまりちゃんの体温と密着と匂いが全てのブレーキを吹き飛ばし、サーフパンツの中で急速に膨張したペニスが、もう取り返しのつかない状態になっていた。
美優の匂いで鍛え上げられた嗅覚が、ひまりちゃんの濡れた肌の匂いまで拾ってしまう。汗と塩素とシャンプーと桃。それが背中越しに伝わる胸の柔らかさと合わさって、理性のタガが弾け飛んだ。
(まずい。まずいまずいまずいまずい──!)
ざぱぁんッ!
スライダーの着水プールに叩き込まれた。水飛沫が上がり、二人の体が水中に沈み、そして浮かび上がる。
水面から顔を出した瞬間、ひまりちゃんの腕がまだ僕の体に巻きついていた。至近距離で目が合う。水に濡れたショートボブが額に張りつき、丸い瞳が間近で揺れている。水滴が睫毛の先に宝石のように光っていた。
「は、はぁ……びっくりした……ごめんね堀田君、つい……」
「だ、大丈夫……怪我、ない?」
「うん、平気。堀田君がいてくれたから安心だった」
ひまりちゃんの顔が、真っ赤だった。恐怖の余韻なのか、密着した興奮なのか。視線が一瞬だけ僕の唇に落ちて、すぐに逸らされた。
水中で勃起したペニスが暴れ狂っている。腰から下を水面下に沈めておかなければ。幸い着水プールの水深は胸の高さまであり、水面下のサーフパンツの膨張は誰にも見えないはずだ。
「ほら、二人とも。いつまで抱き合ってるの」
冷たい声が降ってきた。
スライダーから降りてきた美優が、いつの間にか近くに立っていた。その表情は──笑顔だった。完璧な、欠点のない、微笑み。
だからこそ、怖かった。
「あ、坂本さん! ごめんなさい、私が足滑らせちゃって、堀田君に巻き込んじゃって……」
「大丈夫よ、怪我がないならよかった。由紀人、ひまりちゃんを支えてあげて偉いわね」
美優は穏やかに言いながら、僕の横に並んだ。
その手が、水面下で僕の腰に触れた。指先が、サーフパンツの上から、僕の股間の膨らみを正確に捉える。
「っ……!」
声が出そうになるのを歯を食いしばって押し殺した。水面下で美優の指が、勃起したペニスの輪郭をゆっくりとなぞっている。ひまりちゃんが、すぐ目の前にいるのに。
「ふーん」
美優の口から、乾いた一言が漏れた。
その「ふーん」に含まれた感情の量は、辞書一冊分に匹敵したと思う。
「由紀人、楽しそうね。もう一回滑る?」
美優の目が笑っていない。口元だけが弧を描き、瞳の奥は真冬の湖のように硬く凍りついている。
水面下の指が、僕の勃起したペニスの先端をつんと突いた。腰が跳ねそうになるのを、全身の筋肉で押さえ込む。
「美優、さ──ちょっと……」
「一ヶ月。覚えてるわよね」
耳元で囁かれた。ひまりちゃんには聞こえない囁きで、底冷えするような声音。
「ひまりの体でこうなったんでしょ。帰ったら、たっぷりお話しましょうね」
美優は何事もなかったかのように手を引き、プールから上がった。
「ねえ、みんなで写真撮りましょう! 斉藤くーん、山本くーん!」
明るい声で仲間を呼ぶ美優の横顔は、誰がどう見ても楽しいプール遊びを満喫する女子高生そのものだった。だがその背中が発している殺気を、僕だけが感じ取っていた。