僕のファーストキスを奪った幼馴染が、超ドSだった件 作:微熱@
ひまりちゃんは着水プールから上がり、僕に手を差し伸べた。
「堀田君、大丈夫? 上がれる?」
上がれない。今上がったら水着の膨らみが丸見えだ。
「あ、うん、もうちょっと涼んでから……」
「そう? じゃあ待ってるね」
ひまりちゃんは不思議そうな顔をしつつも、プールサイドに戻っていった。
僕は水の中で一人、必死に勃起が収まるのを待った。冷たい水温をフル活用して、九九を暗唱し、数学の公式を頭の中で唱え、ありとあらゆる性的でないことを考え続けた。
五分後。ようやく完全に勃起が収まった。
プールサイドに上がると、六人で集合写真を撮った。僕を挟んで美優とひまりが並ぶ。斉藤と山本が後列でピースサイン、伊藤が自撮り棒を持って全員をフレームに収める。
「はい、チーズ!」
カシャッ。
画面には、夏の日差しの下で笑う六人の高校生が映っていた。完璧な夏の思い出。
だがその写真の中の僕の笑顔が、どこか引きつっていることに気づけるのは、世界で美優だけだろう。
午後四時。プールが閉まる時間になり、着替えて外に出た。
帰りのバスの中で、ひまりちゃんが隣の席に座った。美優は通路を挟んだ反対側の席で、伊藤と何やら話している。
「今日、楽しかったね。……スライダー、ごめんね。びっくりさせちゃって」
「ううん、全然。こっちこそ、ちゃんと支えてあげられなくて……」
「ふふっ、堀田君の背中、温かかったよ」
ひまりちゃんが小さく笑った。その横顔が夕暮れの車窓に照らされて、茜色に染まっていた。
「……ねえ、堀田君」
「うん?」
「今日の堀田君、すごく楽しそうだった。なんていうか……いつもより自由な感じがして。ちょっと嬉しかった」
自由。その言葉が、胸に突き刺さった。
そうだ。今日の僕は、確かにいつもより自由だった。貞操帯がない。金属の拘束がない。ただの男子高校生として、夏のプールを楽しめた。それは贅沢な、けれど期限付きの自由だった。
あと数時間後には、美優の家で再び金属の檻に閉じ込められる。そしてその前に──ウォータースライダーでの勃起の清算が待っている。
「由紀人」
通路の向こうから、美優の声が飛んできた。
「今日の帰り、うちに寄って。お母さんにジュース箱で買ってきてって頼まれてたの忘れてて、重いから手伝ってほしい」
嘘だ。美優の母親は、娘にジュースの買い物を頼むような人ではない。
帰宅後の「お話」が待っている。一ヶ月のおあずけの宣告が。
「あ、うん……分かった」
バスを降りる時、ひまりちゃんが僕の手をきゅっと握った。ほんの一瞬だけ。
「また遊ぼうね、堀田君。夏祭りも、一緒に行きたいな」
桃の匂いが鼻先を掠め、それが消えて、ひまりちゃんの背中が駅の雑踏に消えていった。
そして僕は、美優と二人きりで彼女の家に向かった。
夕暮れの住宅街を並んで歩く。蝉が、まだせわしなく鳴いている。
美優は一言も喋らなかった。
まるで死刑囚が処刑場に連行されるような、沈黙の行進だった。
美優の部屋に入り、首輪を着けられ、服を全て脱がされた。
「さて」
美優は椅子に腰掛け、脚を組んだ。
「報告しなさい。今日、何回硬くなった?」
嘘はつけない。水面下で美優に触診されている。もう証拠は握られている。
「……一回、です」
「いつ?」
「ウォータースライダーで……ひまりちゃんが密着した、時に……」
「どのくらい?」
「完全に、硬く……なりました……」
美優は静かに目を閉じ、深呼吸をした。そして目を開けた時、その瞳には、見たことのない種類の感情が宿っていた。怒りでも嫉妬でもなく──傷ついた獣が捨て身で爪を立てる直前の、悲しくて危険な光。
「一ヶ月ね。約束通り」
カチャリ。
貞操帯のロックが閉まった。
「それまで、一度も開けないわ。その間にひまりのことを忘れる努力をしなさい。あの子の肌の感触も、胸の柔らかさも、全部忘れて、あたしのことだけを考えなさい」
美優の声は平坦だった。いつもの嗜虐的な愉悦がなかった。
それが、僕の胸を酷くかき乱した。