※この作品はR-18です。

スーパーチートオリ主が 謎催眠パワーでアルクェイドを恋人にして 桜を救ってもらうために聖杯戦争を頑張ってもらうお話   作:kitsutsuki

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06話

 

 

穂群原学園

 

 

昼休み

めちゃくちゃヤバい大学生風の金髪美女が校門前でウロウロとしていると話題になっていた。

一緒に昼食を食べていた凛と士郎は目をあわせて一目散に校門に向かって走り出す。

 

 

「あー凛ちゃんに士郎くん。ひっさしぶりー。青少年諸君、勉強励んでますかー」

 

この星で最重要といって過言でない人物。

真祖の美女が楽しそうにぴょんぴょん跳ねて手を振っていた。

聖杯戦争当時は、なんかすごい人という認識しかなかった士郎。

この三ヶ月の間に遠坂凛にしっかりと魔術世界の常識について叩き込まれていた。

 

親しみやすいのはいいんだが、さすがに自由が過ぎる

息切れしながら校門に辿り着いて。

 

「あんた——っ、なんでここに——!」

 

周囲の生徒たちの視線が集中していた。

 

「遠坂さんの知り合い?」「めちゃくちゃ美人」「外国人?」「あの金髪ヤバくね」

 

——ざわめきが波のように広がる。

凛は優等生の仮面が剥がれかけるのも構わず叫びかけて、慌てて声を落とした。

 

アルクェイドの腕を掴んで校舎裏に引っ張りながら小声。

 

「ちょっと! 真祖が穂群原の校門前うろつかないでくれる!?

 一般人だらけなのよここ!」

 

士郎は後を追いながら、冷や汗をかいていた。

この三ヶ月で叩き込まれた知識が頭の中でぐるぐる回っている。

——その人が校門で「青少年諸君」とか言っている。

 

引っ張られながらけろっとして。

 

「えー、だって桜ちゃんに連絡しに来たんだけど。

 間桐の家に行って待ってるのもねー、そしたら学校見つけたから待ってたわ」

 

凛は額を押さえて。

 

「携帯は」

 

「聞いてなかったのよねー。だって聖杯戦争中はずっと一緒にいたでしょ?

 アハハーうっかりよねー、じゃーどうしようかな。

 よし後で士郎くんの家に行くことにするから、授業終わったら放課後まっすぐ家に帰ってねー。

 私、ちょっと散歩して食べ歩きとかしてくるからー」

 

凛はがしっとアルクェイドを掴んだまま離さない。

 

「散歩って——あんた一人で冬木うろつく気!?」

 

必死の形相で。

 

「せめて案内をつけなさい。士郎、あんた早退!!」

 

突然振られて。

 

「え、俺?」

 

有無を言わさぬ目。

 

「あんたの家に来るって言ってんだから当然でしょ。監視よ監視」

 

ぱあっと顔を輝かせて。

 

「じゃあ士郎くんが街を案内してくれるの? やったー!」

 

助けを求めるように凛を見たが——返ってきたのは「諦めろ」という無慈悲な目線だった。

聖杯戦争の後処理より厄介な案件を押し付けられた気がする。確実に。

 

早退することになった衛宮士郎はアルクェイドに街を案内する。

 

「いい街よねーここ。

 都会と、閑静な住宅街と、賑やかな商店街。

 宝石を宝箱に詰め込んだみたいな街

 うん。守れてよかったわ」

 

士郎はその言葉に少し驚いた顔をした。それから、素直に頷いた。

 

「……ああ。俺もそう思う」

 

 

冬木の午後。春の陽射しが商店街のアーケードを暖かく染めていた。

八百屋のおばちゃんが威勢よく声を張り、豆腐屋から湯気が立ち上る。

どこにでもある日本の地方都市の風景。

 

たい焼き屋の前で足を止めて。

 

「ねえねえ、たいやき。久しぶりにあれが食べたい」

 

思わず笑ってしまった。

 

「これは生クリームが入ってるんだ」

 

一つ買って渡すと、アルクェイドは一口で半分いった。

目を丸くして——それから尻尾まで一気に平らげた。

 

「おいしい!

 たいやきってあんことカスタードだけじゃないのね。

 士郎くん天才!」

 

俺が作ったわけじゃないが、と思ったが。

 

——守れてよかった。

 

さらりと出たその一言が衛宮士郎の耳に残った。

この街がどれだけ危うかったか、遠坂からの三ヶ月の勉強で嫌というほど知った。

それをわずか二日で片付けた人物が今美味しそうにたい焼きを食べて笑っている。

 

「あ、これなんかデートっぽいけど私にワンチャンないからね。

 すっごい彼氏がいるんだから」

 

ぶっと噴き出した。

 

「デ、デート!? いやそんなつもりじゃ——」

 

顔の赤さは夕焼けのせいではない。

残りのたい焼きを指先でくるくる回しながら、にんまりと。

 

「すっごいのよ? 次元の向こう側にいるんだけどね、もう格好良くて優しくて——」

 

突如始まった。謎の彼氏自慢。次元の向こう?なんの話だ?

星を砕く真祖が語る恋バナは、商店街を歩く高校生には刺激が強すぎた。

 

身振り手振りで。

 

「名前がね、「田中太郎」っていうの。普通でしょ?

 でもそこがいいのよ。特別じゃないのに特別っていうか——」

 

聞きながらも相槌を打つ。

なんだかんだ楽しそうな顔をしているアルクェイドを見て

この人は本当にその人のことが好きなんだなと素朴に思った。

 

商店街を行く二人の影が長く伸びる春の夕暮れ時。

世界の命運を左右した二人が、たい焼き片手にのんびり歩いている。なんとも平和な光景だった。

 

「まぁ士郎くんは凛ちゃんと仲睦まじくなってるみたいだし、心配はないか。

 で、でで、ででで、もう付き合ってるの?」

 

足が止まった。

 

「——は!?」

 

顔面が一気に茹でダコになった。商店街を行く主婦が振り返るほどの動揺っぷり。

 

しどろもどろで手と首を同時に振って。

 

「いや、その、遠坂とは別にそういう——」

 

目を細めて、完全に獲物を見つけた猫の顔。

 

「へぇー? 「別に」?」

 

追い詰められていく。

 

「同じ屋根の下にいるだけで——セイバーもいるし——」

 

「じゃあ告白は? 凛ちゃんから? 士郎くんがしたの?」

 

口をぱくぱくさせて——観念したように小声になった。

 

「……俺から」

 

きゃーっとアルクェイドが黄色い声を上げて飛び跳ねた。

通行人がびっくりしている。

 

「で!? で、返事は!?」

 

 

初々しさたっぷりの話を聞き込みながら衛宮邸に向かっていく

遠坂凛と衛宮士郎の関係は切れないだろう

 

であるならば、幸せになって欲しいと願っていた桜ちゃんの淡い恋心は報われない結果となる。

 

よくある話だ。好きだった人と付き合えなかった。

それは別に悲劇でもなんでもない。

 

もう間桐桜の体を蝕む蟲はいない。

聖杯の欠片もなく、堕ちる心配もない。

 

――であるなら考えていた計画通りにしよう。

 

桜ちゃんを太郎の元に。私と一緒に太郎と恋人になればいいのだ

 

 

 

衛宮邸への道すがら、

士郎から聞き出した初々しい恋愛事情にアルクェイドは大いにはしゃいでいた。

——その裏で何を考えているかなど、赤面する少年には知る由もない。

 

 

ふと空を見上げて。

 

「いい天気。桜ちゃんにも見せてあげたいな、この空」

 

独り言のように呟いた言葉の意味を、士郎は拾えなかっただろう。

太郎の元へ。三人で。

——それはアルクェイドがこの冬木で過ごした二日間の、もう一つの目的だったのかもしれない。

 

 

衛宮家の玄関が見えてきたところで、ぱんっと自分の頬を両手で叩いた。切り替えるように。

 

「おっじゃましまーす。

 あ、セイバーも久しぶり。頑張ってニートやってますかー」

 

居間のちゃぶ台で正座したまま、むっとした顔で。

 

「ニートではありません。家事手伝いです。シロウの負担を軽減するという立派な役目が——」

 

凛が台所から顔を出して。

 

「食費だけ異常にかかる役目ね」

 

ぐっと言葉に詰まった。

 

靴を脱ぎ散らかして上がり込みながらケラケラ笑って。

 

「あはは! 変わんないねーみんな!」

 

 

聖杯の呪縛から解放されたセイバーは受肉し、今は衛宮家に居候している。

騎士王がエプロンをつけて米を研ぎ、箸の持ち方に苦戦している姿はなかなかにシュールだった。

——もっとも本人は至って真剣なのだが。

 

ちゃぶ台の上の煎餅を一枚取って。

 

「それで、今日は何の用です?

 突然の来訪なのです。何か厄災を持ち込むのでは——」

 

ぶんぶん手を振って否定。

 

「違う違う! 桜ちゃんに電話したいんだけど番号わかんなくて。誰か知らない?」

 

エプロンで手を拭きながら。

 

「え、まだ連絡してなかったの!? それなら衛宮くんの携帯に——」

 

ぴっと士郎を指差して。

 

「貸して!」

 

もしもしと聞こえる桜の声。

久しぶりの会話に喜ぶアルクェイド。

家での用事が済み次第すぐに衛宮家に駆けつけると連絡を付けることに成功した。

 

 

 

 

 

 

道場で剣道をする士郎くんとセイバーを桜が来る前での間、全員で眺めていた。

思いついてポンと手のひらに拳を。

 

「士郎くんには、聖杯戦争頑張ったご褒美でもあげよう」

 

「え、ご褒美?」

 

驚いて振り返る。

ごそごそとポケットを探る。

剣は。持ってないな。いや志貴からパクったナイフが出てくる。

これにしようとポンと閉じたナイフを投げて渡す。

 

「ナイフ?」

 

「真祖の持ってる武器よ。とんでもナイフかも。

 ――あれ、どこにでも売ってそうね、市販?」

 

さっと駆け寄った凛が覗き込んでいた。

 

「誂えは結構いいはずよ。

 投影で持ち主の経験とか技量? 体運びぐらいパクれるかも」

 

ま、あの目がないとどうにもならないけどと聞こえないように呟く。

 

「ああ、ありがとう。大事にするよ」

 

いいよーいいよーと手を振った。

 

「ふーん。士郎ずるいわね。ところで私には何かないのかしら?

 冬木のセカンドオーバーとして魔術協会に聖杯戦争の報告に行って、

 すんごい大変な目にあったんだから、何か報酬があってもいいと思うわ」

 

あっと声を上げて手をぽんと打った。

 

「ごめんごめん! 凛ちゃんのこと……忘れてたわけじゃないのよ?」

 

こめかみがひくひく動いている。

今の「忘れてた」の間は何?

ごそごそとポケットをまさぐって——何も出てこない。首を傾げて。

 

「あれー。色々あったと思うんだけど。えっとね——」

 

 

 

 

 

しばらく無言の時間が流れた。全員が察した。「ない」のだ。

 

じとーっとした凛の目。

 

てへっと舌を出して。

 

「凛ちゃんにはほら、士郎くんがいるじゃない? プライスレス!」

 

がたっと立ち上がって。

 

「そういう問題じゃないでしょうが!」

 

セイバーがそっと士郎に耳打ち。

 

「……リンがあそこまで取り乱すのは珍しいですね」

 

肩をすくめて。

 

「あれは怒っているんじゃない。拗ねているんだ。——君の担当だろう、衛宮士郎」

 

「なんでさっ!」

 

「確か遠坂は宝石魔術だっけ? 

 宝石ぐらいならいくらでもあるんだけど、こんな石ころもらって嬉しい?」

 

ぴたりと止まった。「宝石」の一言で目の色が変わる。

 

「——石ころ?」

 

アルクェイドがひょいと手のひらを開くと、そこに色とりどりの宝石がじゃらりと現れた。

ルビー、サファイア、エメラルド——どれも拳ほどの大きさがある。

しかも内包する魔力量が尋常ではない。遠坂凛の瞳孔がかっと開いた。

 

震える手で一つ摘み上げ、光にかざした。

 

「これ……純度いくつよ……嘘でしょ……」

 

けろっとして。

 

「こっちの基準だとちょっと違うかもだけど。綺麗でしょ?」

 

声が裏返った。

 

「ちょっとじゃないわよ! こんなの見たことない——!」

 

全員が凛の豹変ぶりに一歩引いた。

 

やれやれとアーチャーは首を振る。

 

「現金なものだ。」

 

 

はっと我に返って咳払い。髪をかき上げる。

 

「べ、別に宝石ごときで喜んでなんか——

 でもまあ、くれるっていうなら貰ってあげてもいいわ。セカンドオーバーとしての正当な報酬としてね」

 

 

 

笑っている凛の姿がキッカケだったのか。

アルクェイドは、唐突に昔のことを思い出した。

 

口が滑るように呟きだしていた。

 

 

 

「昔、ずっと昔にね、ゼル爺とこんな話しをしたのよ。今、なんか思い出した。

 

 ――ゼル爺はなんで笑うの? お城の人はみんな笑わないよ

  ――笑うのは己の生が楽しいからだ

   ――楽しいってどういう事? 私にも分かる時がくるのかな

    ――いつか気がつく。君の人生は、目が覚めているだけで楽しいのだ

 

 この場所は、楽しくて、あったかくて、とてもいい場所だと思うわ」

 

アルクェイドは、にっと笑った。

 

道場に差し込む夕陽が橙から赤に変わりつつあった。

誰も口を開かなかった。開けなかった。

 

宝石を握ったまま凛は——唇を噛んで、目元を袖でごしっと拭った。乱暴に。

 

セイバーは静かに目を伏せた。「生が楽しい」

——かつて王として、その感情を切り捨てた自分を思い出していた。

 

アーチャーは壁に背を預けたまま天井を見ていた。

その口元がわずかに緩んでいたことに、本人は気づいていないだろう。

 

手の中のナイフを見下ろして、それからアルクェイドを見て。

——ああ、この人がなんでこんなに強いのか、少しだけわかった気がした。

 

凛は鼻をすすって、無理やり笑顔を作った。でも目が赤い。

 

「——当たり前でしょ、ここがどこだと思ってんの。冬木最強の拠点よ」

 

あかいあくまの声は少し震えていたが、それは確かに——楽しいから笑う、という種類の笑顔だった。

 

 

それを見て、ふわっと笑い返した。

ゼルレッチの言葉通りだった——目が覚めているだけで、楽しい。

 

 

「というより、大師父の話はもっと聞かせなさいよ。

 あなたの後見人なんでしょ?

 せっかくこんな大物がいるのに遠坂家の当主として聞かないとかありえないわ」

 

「はいはい。そういうのは後でー。

 さーて、湿っぽくなったから夕ご飯食べましょう

 士郎くん、アーチャー。美味しいのを任せたわ」

 

グッと親指を立て笑った。

 

士郎はふっと笑って立ち上がった。

 

「ああ、任された。——今日はちょっと奮発するか」

 

アーチャーもエプロンをどこからか取り出しながら。

 

「和食でいいな。人数分作るならその方が早い」

 

 

 

二人の弓兵が台所に並ぶ。

奇妙な光景だが、息はぴったりだった。

——というよりアーチャーが士郎の三手先を読んで動くので士郎が楽をしている。

 

ちゃぶ台を拭きながら。

 

「あんた食器出すの手伝いなさいよセイバー」

 

既に皿を三枚重ねて運んでいた。

 

「心得ています」

 

アルクェイドはちゃぶ台の前にどすんと座って腕と足をパタパタさせながら。

 

「いい匂いしてきたー!」

 

夕暮れが衛宮邸を包んでいく。

味噌汁の湯気、魚を焼く音、誰かの笑い声。

何でもない夕飯の支度が、こんなにもあたたかい。

アルクェイドは頬杖をついて台所を覗き込み

 

——ああ、やっぱりここはいい場所だと、もう一度思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食前には桜もライダーを伴ってやってきた。

久しぶりって抱きついて笑顔を見せる。アルクェイドは桜の耳元で言う。

 

「あとで少し一緒にお出かけしてもらうからね」

 

よく分からなそうな桜であったが、話を受けることにしたようだ。

賑やかな夕食。間桐桜はたおやかな笑顔を浮かべるが、それでも少しだけ表情に影が差していた

ある意味聖域だった衛宮邸。そこに衛宮士郎と恋仲になった姉がほぼ毎日通っているのだ。

凛の性格からすれば、桜のその心の澱に気付けないのもやむなしでもある。

僕が先に好きだったのにBSSならぬ、私が先に好きだったのにWSS。

まさにこの展開を桜は喰らってしまったのだから。

 

 

賑やかな食卓だった。七人分の箸が動き、笑い声と皿の音が混ざり合う。

士郎と凛が肩が触れそうな距離で座り——桜はその向かいにいた。

たおやかな微笑み。よくできた笑顔。

 

白米を口に運びながら。

 

「おいしいです、先輩。この煮物、味がしっかり染みてて」

 

士郎は照れたように頭の後ろを掻いて。

 

「アーチャーに教わりながら作ったんだ」

 

凛が自然な仕草で士郎の湯呑みにお茶を注いだ。

もう体に染みついた動作のように。

 

桜の視線がその指先に一瞬だけ落ちて——すぐに戻った。

「姉さん、すっかり馴染んでますね」と笑う声に棘はない。

ないからこそ、深い。

 

黙々と食事をしながらも、マスターの横顔をちらりと窺った。

——ライダーにはわかっていた。桜の中に渦巻くものが。

臓硯は消え、聖杯の欠片も失せた。だが心の傷はそう簡単には消えない。

 

隣の桜にだけ聞こえる声で。

 

「大丈夫」

 

桜が小首を傾げた。

その瞳に映るのは、かつて自分を救った真祖の赤い目。

——大丈夫、の意味がまだわからないまま。

 

 

 

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