せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~ 作:霧里
一週間。それが、凪への沙汰だった。
悪いのは、先に手を出したほうじゃないのか?
僕だって庇ってはみたものの、病院まで蹴り飛ばしておいて、お咎めなしとはいかなかった。
先生たちとの面談中、凪はただ小さく頷いただけ。
あんまりな物分かりの良さに、立ち上がりかけた僕は彼女に引き止められる。
「ありがと」
頼りなく微笑んで、初めて言われたのに全然嬉しくない。どうせなら、バーガーを奢った時に言われたかったよ。ギュッと、耐えるように。僕を掴んだ指は、微かに震えていた。そんな風にされたらもう、無理矢理にでも飲み込んで、席につくしか出来なかった。
しかし、これは……。
初めて入った女の子の部屋。踏み込んで言えば彼女の部屋。
もちろん、期待は大きい。可愛いぬいぐるみが置いてあったりだとか。僕の写真が机に貼ってあったりなんて。その、どれもない。現実なんてそんなもんだ。
夢みたいな部屋は、夢にしかない。人が住んでるんだ、散らかりだってする。
取り繕う暇は……なかったよね。
急に来た僕も悪いとはいえ、にしてもなぁ。
嘆息。苦笑。愛着は薄れないでも、別の色味を帯びてきそうだ。
床に散らばった課題の山。部屋の隅へ投げ飛ばされた枕。ひっくり返った布団に、脱ぎ捨てられた着替えが巻き込まれている。
もう、大暴れだ。
何とか飲み込んだものかと思っていたけれど。大人しくしていたのは、一度口を開けば火を吹きそうだったからに違いない。
二人でよかった。
僕一人じゃ納得できなかったし。凪だけだと、一週間の謹慎で済んだかどうか。
「だと思ったよ」
拾い上げた課題の一枚は白紙のまま。
謹慎が明けても、彼女が手を付けるとは思えなかった。別に、僕がやってもいいんだけどさ……。二枚、三枚と拾い上げ、どうしたもんかと頭をひねる。
課題を束ねて、布団を畳んだ。着替えはなるべくそのままにして、ベッドの脇へと丸めておいた。
抱き上げた枕から、広がる甘いオレンジの香り。
苦みのある残り香に、鼓動が乱れた。いつもより深く息を吸い込んで、心臓が止まる。バっと、勢いよく扉が開いた瞬間。そこに立っていたのは、ほとんど裸みたいな格好をした凪だった。
*******
「冷たっ!?」
シャワーから飛び出した水の勢いに驚いて、蛇口を弾く。
「あっつっ!?」
瞬く間に熱湯に変わった水が降りかかり、慌てた拍子に足を滑らせた。
もう、最悪。ふんだり けったり だ。ドスッと尻餅をついて、固いタイルにお尻を叩かれる。立ち込める湯気の中、とっちらかった感情をまとめるように、あたしは足を抱えていた
「来るなら来るってさ……」
言えないか。今のあたしは、スマホですら取り上げられて。暇つぶしどころか、連絡手段にさえ事欠く始末。
突然だった。
平日の朝から、学校はどうした。
しつこいチャイムの音に、焦れたあたしは不機嫌を隠さずに扉を開ける。
舌打ちだってしたかもしれない。ギロリと睨むように視線を投げて「おはよう、瀬戸さん」微笑んだ律と、しばらく見つめ合う。
バタンっ!
扉を締めた。
声をかけてくれれば、あたしだって素直に出たのに。
驚くのを分かって、ずっと黙ってたんだ。意地悪な顔してた。だけど好き。家から出られないのはいい。スマホを取り上げられたのだって、まだ耐えられた。
一番キツかったのは、一週間も律に会えなくなること。
会えて嬉しい。
驚きと感動で鳴り響く鼓動は、一人でオーケストラを奏でているようだ。
なんで? どうして? 家の場所だって教えてないのに。コンコン、扉を叩かれヴァイオリンが音を外す。「瀬戸さん? あーえと、凪?」名前を呼ばれて、トランペットが吹き出した。乱れた指揮から外れた演奏は、てんでバラバラ。
違うの。イジケてるんじゃない。
名前を呼ばれたくて、拗ねてるなんて思われたくなかった。
「ちょっと、待って。えーと、あぁ……もうっ。部屋、上がってていいから。2階の奥。いま寝起きで、あたし あっきーに見せらんない」
「あははっ。ちょっと髪跳ねてたよね」
そうだよ。分かってんじゃん。
寝癖だけならまだいい。外れかかっていた肩紐を引き上げる。見下ろした自分の格好は、キャミソールにショートパンツ。部屋着にしたって、ラフが過ぎた。
ほんと、最悪。
跳ねた前髪を指で引っ張ると、湯気の重さで沈んでいく。
モクモクと白くけぶって視界が霞む。いつまでも、律を待たせる訳にもいかない。
早く部屋に戻って……。
「やばっ!?」
そうだった。
一番彼に見られたくないもの。
寝起きの自分なんて問題じゃない。
部屋の惨状を思い出した あたしは、慌てて風呂場を飛び出した。濡れた素足のまま、階段を駆け上がる。転がり込む勢いで扉を開くと、枕を抱きしめている律と目が合った。
*******
ポタリ……ポタリ……
雫が頬に落ちる。お風呂上がり、銀色の毛先に膨らんだ水玉が また一つ、僕の頬を濡らしていく。
「なに……やってんの?」
「ごめんね? 勝手に……。部屋、散らかってたから、ちょっとだけ」
どうして、こうなった?
押し倒されていた。ヒタヒタと濡れた足音を響かせながら、凪が部屋に入ってくる。タイミングも悪かった。拾い上げた枕を抱え込んで、丁度ドギマギしていた頃。驚いた僕は、固まったまま動けない。見せつけられた素肌を前に、言い訳を考える余白も濁ってしまう。
辛うじて、引っ掛けているだけ。
だらんと首からぶら下がったバスタオルに、隠せている所なんてほとんどない。
凪が歩くたびユラユラ揺れて、僕の視線は猫になる。何をそんなに急いできたのか、頭どころか体だってまともに拭かないで。
踏み込まれて、一歩下がった。
雨を被った枝葉みたいに、雨粒を散らしながら迫ってくる。
初めての部屋、後ろなんて見えていない。躓いて、倒れ込んだ先はベッドの上。
ドンっ……。顔の横に落ちた凪の手が、起き上がりかけた僕を釘付けにした。
「……いい匂い、した?」
「へ、いや……その。誤解だってばっ」
背中に汗が浮き上がる。頬の熱を抑えるのも難しい。
だって、あれは事故だ。枕を拾っただけ。匂いは……確かにしたけれど、凪が思うような事は絶対に……。
「枕、抱えてたじゃん」
「拾っただけだっ……うぷっ!?」
言い訳の途中、枕を顔に押し付けられた。
息苦しい。無理矢理にでも空気を吸い込むと、胸いっぱいに広がる凪の匂いに、体が熱くなる。何とか抜け出そうと藻掻いても、ぐっと余計に体重を掛けられた。
水の中で息を止めているようだ。
凪の匂いに溺れていく。
頭がクラクラするのは、空気が足りてないだけじゃなかった。
ささくれだった苛立ちと、息苦しさに重なる焦燥感。理性の殻に爪が立つ。何度も何度も引っ掻いて、崩れたのは、ほんの一瞬。
「違うってっ。はぁっ、はぁっ……いってる、でしょっ」
脳裏によぎったのは、初めて凪を押し倒した光景だった。
全身の血が入れ替わるようだ。乱暴な鼓動に押し負けて、枕ごと小さな悲鳴を振り払った僕は、凪を組み敷いていた。
ぎぃっ……。
軋むベッドの音が生々しい。目を丸くした彼女は、小さく吐息を漏らす。
抵抗はない。むしろ、強張っていた体から力が抜けていく。明後日の方を向いたまま動かない。
そんなつもりじゃなかった。
ただのお見舞い。どうせ、課題なんてやってないだろうから。お節介なのは分かっていても、これ以上凪の立場が悪くなるのを見てられない。
本当にそれだけ?
振り返れば、自信が無くなってくる。
波多野さんは、思ったよりあっさりと凪の家を白状してくれた。交換条件は、ちゃんとドラッグストアに寄っていくこと。
「凪すけの好きなアイスが売ってるからさ。ガツンとくるやつ」
にはにはと笑って、言葉の裏を隠さない。完全な出歯亀。
余計なお世話だ。けれど、状況は彼女の思惑通りに進んでいた。
放課後の秘密基地で、二人でエロゲをプレイしていた時から。
押し倒されたり、押し倒したり。バーガーショップでも酷い目にあった。もしかしたら……。考えないはずがない。凪の裸を見た時から、体の震えを誤魔化すのに必死だった。
お風呂上がりの瑞々しい素肌。
濡れた前髪が艶めいて、薄い朱色がよく映えた。
据え膳か。垂涎か。僕がいるのを分かって、裸で突っ込んできたのは何でだ。
その気があってもなくても、もうちょっと取り繕ってほしい。裸にバスタオルだけ添えられたって、扱いに困るだろう。
凪の体に伸びる手が、一瞬ゲームの主人公と重なって見えた。
ダメだ。勇者(そんなの)に触ってほしくない。
これは、僕のだ。
頭を振って、妄想を振り払う。
同時に、凪への気遣いも転がり落ちる。何を聞くでもない。抵抗しないって言うなら、遠慮も何も。
初めて触れた彼女の素肌は、しっとりと指に吸い付いて、少しだけ冷たかった。
*******
声を上げそうになるのを、あたしは何とか飲み込んだ。
放課後。いつもの場所で、押し倒された時と同じ。見下ろす律の影に包まれる。
違っていたのは、盾(スマホ)が手元にないこと。自分の部屋じゃ、チャイムの音にも期待は出来ない。何もしなければ、このままきっと……。引き止めるなら今だ。
でも……。
その後、気まずくなるのがイヤだった。「ごめん」と謝った律は、そのまま帰ってしまうかも。謹慎中の あたしは、連絡する手段もないまま離れ離れ。煩いばかりの鼓動が音色を止めた。深と、頭の奥まで静になる。天秤は傾かない。針はとっくに振り切れてしまっている。
おずおずと、体から力を抜いた。
聞いてみたんだ。静かになった頭の中で、明日のあたしに問いかける。
次の機会ってさ、アンタどうするつもり? 答えはない。自分のことだ、分かってる。からかって、押し倒してくれるのを待つのが関の山。可愛げもない上に、素直にもなれない女だなんて、どうして彼が好きでいてくれるんだろう。
そもそも、次があるのかも。
責任を丸投げするみたいなことして、未遂じゃすまない。
罪悪感を感じた律が、あたしから距離を取ろうとすることだって考えられた。
だからコレは、既成事実(ライフハック)。
責任は取ってもらう。それは、あたしにしたってそうだ。丸投げした分は、あたしが受け止めなきゃいけない。
下手っぴ。
内心で毒づいたのは、及び腰になる自分を蹴飛ばすため。
主導権は手放せない。律を本気にさせたら、あたしはきっとダメになる。お尻を叩かれた日を思い出して、背筋が震えた。引いたはずの痛みが、さざ波のように打ち寄せる。
期待と興奮が、吐息を揺らす。
ギュッと、いきなり胸を掴まれた。
濡れっぱなしで冷えた肌が、彼の熱に浮かされる。
気の向くまま揉みくちゃにされて、手のひらに擦れた乳首がヒリついた。
唇を引き結ぶ。気を抜けば、声が漏れてしまいそう。夢見たほどの快感はまだ。
湯冷めして縮こまった肌は、中々解れてはくれない。律が夢中になってくれているから。乱暴を許しているのはそれだけ、その事実に飲み込まれる。
太ももの内側に、彼の手形が焼き付いた。
ゆっくりと肌を舐めるように。火傷するんじゃないかと思うほど、熱い手のひらが、閉じた足の隙間を昇ってくる。太ももの付け根。最後の境界線。律の指先が、そっと あたしを撫でた。
クチュリ……
微かな水音が、頭に響く。
明後日へ投げていた視線が引き込まれた。
足の間、閉じた股間の上。あたしを撫でる彼の指。
女の子みたいに細いのに、自分で触れた時よりも、少し角が立つような。下から上へ掬い上げられると、滲んだ愛液が涎みたいに垂れてきた。糸を引いた雫が、彼の手のひらに流れ込む。
何やってんだか。
愛液に塗れた手を、閉じたり開いたり、目の前の光景を確かめるようだ。
信じられないって顔してさ。喉仏が、大きく動くのが見えた。あたしだってそう。
ついこの間まで、律とこんな風になるなんて考えもしなかった。
最初はただからかうつもりで、飽きるまでの暇つぶし。
見られたり、触らせたり。何でも出来たのは、異性とすら思っていなかっただけ。
犬に戯れつかれるのと変わらない。
冗談が、冗談で無くなったのはいつからだっけ?
同じドキドキを共有している内に、鼓動の音が似通ってきていたのは……。
*******
裸の凪を見下ろしながら、触れた肌に指が沈み込む。開いた手のひらから、愛液が滴り落ちた。いっぺんに流れ込んでくる情報に、頭の処理が追いつかない。
まだ、一線は越えていないだけ。腹立たしくなるほどの衝動が、僕の全身を駆け巡る。
薄い唇が震えていた。
瞳に涙が浮かんでいる。
枕の端を掴んだ指が、固く握られるのに気づいても、頭は冷えない。
罪悪感なんてこれっぽちも。落ち着くどころか、視界が霞むほどの興奮に、下腹が熱くなる。
「あのさっ!」
呼びかけられて、ハッとなる。
最初に大きく弾けた凪の声は、だんだんと言葉尻を下げていき、最後にはもう消えてしまいそうだった。
「せめて、その……アレ。もってない……の?」
ある。
お守り。気休め。自分への言い訳。僅かばかりの義理立ても。今日までのことを振り返れば、むしろ無い方が怖い。今になって、その重さを思い出す。
中に出さなければ平気なんじゃないか。
あやうく口にしそうだった。裸を見ただけで我を忘れていたのに、その瞬間から抜け出せるもんか。もし、声を掛けてもらえてなかったら……。これ以上、凪を不安にはさせたくない。
ポケットに押し込んでいた小箱の角が、僕を引っ掻く。
指が滑り、取りこぼす。焦って開いた箱の中身が飛び出した。
その裏表すらも分からない。
慌てて説明書を読み始める自分が、恥ずかしくて仕方なかった。
服を脱ぎながらも彼女の視線が気にかかる。引かれたらどうしよう? 呆れたりしてないかな? むしろ準備が良すぎて嫌がってたり……。そんな不安をよそに、凪の視線は僕の一点を見つめたまま。
「あのさ……あんまり見られると、その?」
「……うん」
頷きはしても、視線を逸らす様子はない。
驚きと、戸惑い。確かな期待が、熱を上げて注がれる。お陰で助かった。期待に膨らむ自身が、情けないやら頼もしいやら。
袋を摘んで先端にあてがう。
クルリと被せれば、それでおしまい。恥ずかしさに萎えるどころか、着け終わった後から苦しくなる。けれど、こんな薄いもので安心が買えるなら……。息を整え、準備を終えた僕は、再び凪と向き合った。
*******
太ももに触れた律の手に力が入る。グッと、押し開かれた。
あたしはそれに逆らわない。なんて恰好だ。男の子に組み敷かれて、自分から足を開いて見せる。まともじゃいられなかった。ファンファーレを奏でた鼓動は、リズムの波に乗せて理性を追いやっていく。
「凪」
「……うん」
名前を呼ばれて、頷き返す。
少し強張った律の声。あたしはそれをよく知っていた。お尻を叩かれた時と同じ。
言葉足らず。もう少し気遣いがほしいのに、その強引さに流される。
枕元に手が落ちた。
彼の影が、あたしを覆い尽くす。
なんだろう? ミルク感のある香りに、青い箱が思い浮かんだ。少しだけ酸っぱいような。石鹸と汗が混じった彼の匂い。息をするたび、鼻の奥から、頭の中まで一杯になる。
水面に一滴。
波紋が広がるように。
ピンク色のカバーに覆われた律は、ちょっとだけオモチャみたいだ。
ゆっくりと、近づいてくる彼に目を奪われる。あたしに触れる直前。心臓が跳ねると同時に、下腹に力が入った。見なければいいのに。見ていないともっと怖い。枕の端を掴んでいた手が、いつのまにか彼の肩に触れていた。
「ぁっ……」
押し返そうとして、でも……。
律は構わず あたしに触れた。肘が曲がる。彼を支えていられない。入口が開いて、変な感じ。自分で触れた時よりも全然太い。二本か、三本くらいかな。まとめて挿れて、ようやく同じくらいかも。
無意識に背筋が伸びた。
軽く、腰が引けてしまう。
添えられていた手が、あたしを掴む。お尻に指が沈み込んで、引き戻された。
そんなのは……でも。声にもならない。震えた吐息は戸惑うばかり。
話に聞くほど痛くはないか。異物感には苛まれても、我慢できないほどでもない。
早く、力抜かないと。
奥に進むにつれて、腹筋に押された あたしの中は、どんどんと狭くなる。
濡れたゴムのような無機質さが残っていたのは、入口まで。奥に進むほど繋がりは深くなって、律の熱さがあたしの中に溶けていく。
これで良かったのかな?
あたしが声なんてかけなければ……。
慌てて準備を始める彼の姿思い出して、ちょっと申し訳なくなった。
まぁ、可愛いとは思ったかな。口にすれば萎んでしまいそうで、ニヤけた頬を抑えるのも大変だった。それに、あたしにだってそんな余裕は残ってない。
足で、指で、ズボン越しに何度も触れたもの。
実物を比べれば、当然エロゲで見たより小さくはあるんだけれど。
その、生の迫力といったらなかった。言葉を失う。目を離せない。あれよあれよと押し倒されて、あたしの中にその半分が埋まっていた。
律がその気になったら、もう。
まだ、引き返せるところにいる。
チクリ……
お腹の奥が熱っぽい。
彼の肩に手を回し、ギュッとしがみつく。
「……んぁっ♥」
甘い鳴き声が、僕の胸を打つ。
根本まで押し込むと同時に、凪の中がざわついた。少し苦しいくらいに抱きつかれる。痛かったかな。拒絶でないと思いたい。大丈夫? 一言でも気遣ってあげられればよかったのに、動かないようにするだけでも、今はツライ。
着けてて、よかった……。
安心という意味では、僕の方こそだ。
いつ出しても良い。いや、なかったらもうとっくに。
ゴムの質感が、僅かに快感を遠ざけてくれている。文字通り、薄皮一枚だ。無遠慮に締め付けられれば、ないのと変わらない。
凪と繋がってる。
ヒダの形から、波打つ感触まで、イヤというほど彼女を思い知らされた。息苦しさに負けて、腰を引く。我慢出来なくなって、押し戻す。
最初は、気の所為だと思うくらい。
身じろぎ程度。根本が少し離れて、また戻ってくる。
「んっ……はっ、ぁっ、ゃっ……♥」
微かな吐息に色がつくように、あたしは声を抑えられなくなっていた。
大きくなっていくストローク。ヌチャリ……クチャリ……と、響く水音に耐えられない。
歯が浮きそう。
腕を、どうしていたらいい?
強く握ったつま先が、元に戻ってくれない。
落ち着かなかった。お腹の中を掻き回されてる。顔から火が出そうだ。
彼の体温、呼吸、鼓動の音、全部が近くにあって、律に抱かれている自分を教えてくれる。
「ぅぁっ♥ あぁぁ……っ。はぁっ、んぅぅ……ふぅっ……っ♥」
トンっ……トンっ……。おヘソの下から響く刺激に、声が溢れ出す。
我慢なんか出来なかった。だって、ちょっと高い声をだしたらさ。ちょっとだけ律の体が強張って、ちょっとだけ打ち付ける腰の力が強くなる。気持ちいいんだ。あたしで感じてくれてるの、嬉しい。
「凪……声、もっと」
聞きたかった。
抱きしめる手に力が入る。
首筋に顔を埋めるみたいに。口元で耳をそばだてた。
本当は演技かもしれない。ただ、僕に合わせてくれてるだけ。
早く終わらせてあげるのが、凪の為なんじゃないかとも。だったら、余計に。雑念すらも溶けていく。沼にハマったかのように、繋がった先から彼女の中に引きずり込まれる。
「いいよ?」
律の耳元で囁いた。
聞きたいって言うなら聴かせてあげる。羞恥心を押しのけながら、少しずつ、ちょっとずつ。荒い吐息に嬌声が混ざりだす。見様見真似。エロゲのワンシーンの様に。それも、分からなくなっていた。彼を本気にさせるつもりで、夢中になっていたのは あたしの方。
そんな、凪の反応だけが頼りだった。
上手くは出来ない。意識が白く飛びそうになるほどの快感の中、手探りに彼女を追い求める。
射精するのも忘れてた。
いつのまに、終わったのかもわかんない。
気づいた時には僕らは汗だくで、あたしたちは裸のままで抱き合っていた。
寄りかかる彼の体重が愛おしい。柔らかな彼女の肌が愛おしい。
「凪」「律」
『あっ』
同時に名前を呼んで、同時に固まった。
さっきまで、もっと凄いことをしていたのに。見つめ合うのすら、なんだか照れくさかった。
ここまで御覧頂きありがとうございました。
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