せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~ 作:霧里
嫌なことは後回し。
期限切れの間近になって、積み上がった問題の多さから目を逸らす。
夏休みの宿題なんかがいい例だ。謹慎中も、律に甘えてエッチして。課題なんて一枚も進んじゃいない。
彼が帰った後、一人になったあたしは机に向かう。
これ以上手間を掛けさせたくはない。やる気がないわけじゃなかった。
ただね。
握ったペンを放り出す。
全部やってしまうと、もう来てくれなくなるんじゃないか。
たとえ顔は出してくれても、学校帰りに寄るだけになるかも。朝から付きっきりなんて望めない。
子供みたいな気の引き方をしているな。
分かっても、一向に余白は埋まらない。
虫食いだらけの問題用紙は、まるで あたしの心を映しているみたいだった。
「ねぇ……律?」
「だめ」
「ちがくて、トイレ……」
「さっき行ったばかりでしょ」
「ちっ」
「舌打ちしない」
「……」
謹慎も残り一日。週末に足を突っ込んだ時点で、実質開けているようなもんだ。
なのに課題は終わってないどころか、名前ですら書いていない。半ば無理矢理。
律にペンを握らされたあたしは、机とお見合いさせられる。どうにかサボろうと思っても、全然許してくれなかった。
「……ご褒美」
「へ?」
「課題、終わったらさ?」
「前借りしたじゃんか……僕に女装までさせて」
「うっさいっ。自分だってノリノリだったくせに」
「それ、はっ……。思い出させないでよ、あんなの……」
頬を染めた律の横顔に、また自分を見失いそうになった。
押せばいけるか? 逆に襲われるくらいならいいんだけど、怒って出ていかれるのはイヤ。
「……家、いきたい」
「家って、僕の?」
「うん。あたしん家ばっか入り浸ってさ?」
「じゃあ、ちゃんと課題やってくれる?」
「うん」
素直かよ。
ようやくペンを持つ指に力が入る。さっと片付けて律の家に行こう。
こんなことなら、ちょっとは進めておくんだった。一日が掛かりで課題を終わらせたあたしは、ようやく彼の部屋の前に立つ。
「じゃあ、どうぞ?」
招かれて、扉が開く。
パッと付いた灯りに目を細め、広がる視界の先にあったのは、なんとも普通の部屋だった。
机があって、ベッドがあって、クローゼットの中には私服が入ってるんだろう。
特に散らかってるわけもなく、目を引く何かが飾られてるわけでもない。
ビジネスホテルの一室よりは生活感があるとはいえ、正直期待外れ。
もうちょっとこう。抱き枕や、ポスターの一枚くらい。エロフィギュアと言わないでも、アウトラインを攻めたようなモノを飾ってて欲しかった。
「ズルい」
「え、なにが?」
僕の部屋に入る前は、ソワソワしていたくらいだったのに。
唐突に唇を尖らせる凪の事が分からない。面白くない部屋だと思われても仕方がないが、そんな期待されても困る。
「片付けたんでしょ? どうせ……」
「そりゃ、ちょっとはね。だけど、いつもこんな感じだよ?」
「どうだかっ」
プンスカと、クローゼットの前に立つ凪を、だけど僕は止めなかった。
隠してるものなんて特にはないし。見られて困るものは、スマホの中くらい。
クローゼットの扉を全開にして、ベッドの下を覗き込む。
押し入れの奥にまで手を伸ばされた。もう少し、期待に沿うべきだったかな。きわどいポスターの一枚でも貼ってみたりして。
「なに、急に笑いだして?」
「ううん。魔除けの御札みたいだなって?」
「何の話?」
「凪が可愛いって話」
「なっ……ぁ、ちっ。あっそ……」
そっぽを向かれてしまった。舌打ちの音ですら耳に心地良い。
台風一過。後に残ったのは、散らかった部屋の真ん中で不貞腐れる凪だけ。ドカっとベッドに腰を下ろした彼女は、猫のように寝転がる。
だけど困った。
律の家、部屋に行きたいと言ったのはあたしだけど、それからどうするかだなんて考えてない。いつも、何してたっけ? ほとんどスマホしか触ってなかったような気もする。
ミルク色の匂いがした。
彼の布団を抱きしめて、深く息を吸い込む。
耳の先が冷たく感じるほど、顔が熱くてしかたがない。
手繰り寄せた布団を、足の間に挟み込んだ。もし今、一人にされたら……。ついバカなことを考えてしまう。ほんの僅かな時間でも、我慢できる気がしない。
なんなら、今すぐにでも襲われたりしないだろうか?
期待と……まぁ、半々くらい。
床に座り込んだ律は、ベッドに背中を預けていた。盗み見た肩越しの向こう側。
手元にはスマホがあって、そこには見慣れたゲームの画面が映ってる。
何も、今しなくたって。
「新キャラ?」
「うん。この前配布されてたんだって」
「ふーん」
彼の肩にアゴを乗せたあたしは、スマホの画面を覗き込んだ。
指を伸ばして女の子を突っつく。再生されたシーンは、なんとも たどたどしい。
初めて見たモノに、驚き、戸惑い、恐る恐るにキスをする。でも、一生懸命だ。
それは、あたしが出来なかったこと。いたずらして、からかって、それっきり。
一足飛びに体を重ねてしまってた。
「あんまり面白くなかった?」
いつもの凪なら、もう笑い出しそうなものなのに。今日はやけに大人しい。
その横顔はイヤに真剣で、なにか考え込むようでもある。
「ご褒美……」
「ん? 何してほしいの?」
ポツリ。耳元に吹き掛かる吐息が、なんとも悩ましい。
動揺が出ないように、ぐっと鼓動を抑え込んで、スマホから凪の方へと視線を移す。
「あたしじゃなくて、律の……」
「僕?」
「だってあたしの謹慎、ずっと付き合わせて」
歯切れが悪い。シーンを見た後なせいか、頬も赤く、呟く声は湿っぽい。
ただ面白がってた頃のようにはいかないな。誘ってるのか、誘われてるのか、二人でこんなの見てたら、どうしても考えてしまう事はあった。
「何か、してほしいことないの? あたしに……」
「んー……。これからも一緒にいれたら満足かな、僕は」
「なっ、あっ……。バカじゃないの、そんなの」
プロポーズみたい、かな?
肌が白い分だけ、染まった頬がよく映えた。その顔が見れただけで十分。
何か言い返そうとして口ごもる。続く言葉に期待はしても、それが聞けるのはもう少し先になりそうだ。
分かってる。
だから誤魔化した。
凪が聞きたかったのは、そんな将来の話じゃなくて、もうちょっと目先のこと。
気持ちがないわけじゃなかった。誘われればその気にもなる。
ただ、なんだ……。体目当てみたいに思われてるみたいで、ちょっと。愛情表現がそればっかりなのは寂しい。一緒にいられるなら、くすぐりあってるだけでもさ。気づかないふりをして、悶々とする彼女を眺めるのも悪くはなかった。
「いったっ……。え、なに?」
噛んだ。
耳の先を少しだけ。
なんかムカつく。言語化できない不満を、こんな形でしか発散できない。
どうしてあたしは、もっと可愛く出来ないんだろ。子供っぽいどころか、まだ犬猫の方がマシなんじゃないか。
困惑する律を尻目に、ムクリと体を起こす。
「出来ないと思って……」
有無なんて言わせない。さんざん迷惑をかけているのに、何も求められないのでは、収まりが付かなかった。彼の前に跪いたあたしは、そっと指を伸ばす。ジッパーの金具を摘んで、だけど中々下に降りてはくれない。股間の盛り上がりが邪魔になる。
それが、ちょっとだけ嬉しかった。
口では何と言ってもさ、その気にさせてしまえば こっちのもの。
意地なんて張ってないで、さっさと襲ってくれればいいのに。それでも言い訳が欲しいのなら、あたしのせいにしたらいい。
摘む指先に力を込めて、強引にジッパーを引き下げた。
引っかかりが弾けて、広がった股間からムワッとした熱気が立ち上る。
パンツが引っ張られるほどの怒張。先走りが滲んで、染みが広がっていく。一直線に立ち上がった先端が、あたしを指さした。
「ねぇ、そっち……座って? やりづらい」
「う、うん」
ベッドの縁に座り直した律の足から、ズボンとパンツを引き抜いた。
開いた足の間に跪いた あたしの前には、剥き出しになった彼がいる。ビクビクと震えて、あたしを急かすみたい。何もされてはいないのに、吸い寄せられるように指が伸びる。
こんなの、挿ってたんだ……。
血管の浮き出る肉の棒は、随分と凶暴だ。
これが律のモノじゃなければ、悲鳴を上げていたかもしれない。素直なんだ。指先で触れて、大きく跳ねた。口ごもる彼とは違って、小刻みな脈動から苛立ちが伝わってくる。
熱い。
それに、固くて。
裏筋をなぞりながら亀頭に触れる。
ドップリと、溢れた先走りが指に絡んだ。どうしたらいい? どうして欲しい?
見上げた律は、顔を真赤にして唇を引き結ぶ。我慢しなくたっていいのに。それとも、もっとしてほしいって おねだりなの?
言われなくてもするけれど、言ってくれないと分からない。
初めての見様見真似は、思っていた以上に上手くは出来なかった。
両手で包み込もうとしても、手の中で暴れる彼をどう扱ったらいいのか。こんなに大きく腫らして、痛くはないの?
辛い、苦しい。
降りかかる吐息から感じ取れるのは、そればっかり。
本当に、これであってる? どうにかして上げたいけれど、乱暴に扱いたら、破裂しそうでちょっと怖い。射精と一緒に血まで吹き上がるんじゃないかと思うと、どうにも踏み切れなかった。
「ねぇ、律?」
上目遣い。助けを求めるような凪の表情に、目を奪われる。
何だよ、自分から始めておいて。でも、止めなかった僕も同罪だ。やりたいことは分かる。して欲しいこととも重なった。
でも、本当に良いのかな?
別になんてことはない。女装プレイに比べたら、至って普通のこと。
目の前に跪く凪の姿に、沸々と湧き上がるものがある。罪悪感か。違う。もっと背徳的な……黒々とした欲望だ。
両手に包まれたモノが大きく跳ねた。
手のひらに擦れて、自身の先走りで滑る。
甘美な痺れと誘惑が、理性を揺らす。
おもむろに彼女の頭に触れて、そっと髪を梳いた。
「凪……お願い」
「うん」
小さな頷きは、戸惑いを飲み込むように。
声だって、今にも消え入りそうだ。繊細な指の感触は、ズボン越しにいじめられていた時とはまるで違う。一本一本が別の生き物みたいだ。僕のより冷えた指先が何本も絡みついて、締まる。じんわりと体温が彼女に移っていき、包まれた手の中はすぐに、ぬるま湯よりも熱くなった。
キス……したんだっけ? あたし達。
なんかエッチに夢中で、そういう段階は踏み飛ばしたような気がする。
今だってそう。彼に顔を寄せている。丸っこい先端だけを見れば、ちょっとは可愛いかも。
浮き出た血管に手のひらを擦られると、先端の割れ目から透明な汁が溢れでた。
窪みに溜まって、隙間に流れ込む。流れているのは、本当に血液なのかと疑うくらい。先走りが彼と、あたしの境を溶かす。あれだけ熱いと思っていたのに、今はもう何処からが自分なのかも曖昧だ。
舐めるの、これ?
見上げて、見下されている。
前髪に隠れた瞳は、じっとあたしを見つめたまま。そこにあるのは、照れでも、戸惑いでもない。不慣れなあたしに対する不満。髪を梳いていた指が固まり、鼻先に先端が掠めた。
すんっと、蒸れた残り香が鼻を突く。
青臭くて、汗臭くて。女の子みたいな顔をしている彼からは、想像もできないほど粗野な匂いだ。鼻先に付いた汁が垂れて、唇を舐めた。塩気と、僅かな苦み。
慌てて顔を引こうとしても、頭を抑えられてそれ以上には動かせなかった。
これだもん。
本気になった律は、ちょっと強引だ。
分かった。分かりました。やればいいんでしょ。おかしくなるのは、あたしも一緒。認めたくはないけれど、凄く、ドキドキしてた。ううん……。むしろ、気持ちが楽ですらあったかも。
ままならない感情の全部を、彼に委ねる。
嬉しいのに、イラついて。楽しいのに、ムカついて。
首輪をギュッと引かれたみたい。躓きながらも、あたしは彼の側に駆け寄るしかない。
ちっ……
舌打みたいな口づけ。先端にちょっとだけ、唾をつける。
一度やってしまえば、あとは簡単だった。後悔はないけれど、なんかやらかしたような、どうしようもなさはあった。
先走りで照り返す、凪の唇から目を離せない。
こんな事をさせて、本当に良いんだろうか? そんな憂いは一瞬で吹っ飛んだ。
好きな女の子が、自分のモノを甜めてくれている。愛情を重ねるのとはまた別の、愛情を差し出させる行為に興奮を覚えないわけがない。
髪を梳いていた指は、いつの間にか頭を抑えていた。
それ以上は下がれないように。もっと近づけようとさえ。
ただのキスだけじゃ満足できない。息継ぎしようとする凪の頭を強引に引き寄せた。次第に、唇が触れている時間のほうが長くなる。
綺麗だ。なんて、言う資格もない。
目尻に浮かぶ涙の雫に、興奮を煽られた僕は、両手で凪の頭を掴んでいた。
先端に固いものが触れる。僅かな抵抗を押し開くように、ゆっくりと僕のモノが口の中に割り込んでいった。
「んっ……」
えずき そうになるのを何とか耐える。
後で文句言ってやろう。絶対だ。思いながらも抵抗する気は湧いてこない。それどころか、潮が引くみたいに素直になっていく自分を止められなかった。肩から力が抜けて、アゴから力が抜けて。開いた歯の隙間から、熱い塊が押し入ってくる。
舌で受け止めようとして、ヌルリと滑った。
狙いを外した先端が、頬の裏へと突き刺さる。
一度引き抜かれて、また奥へ。
舌の上を滑りながら、今度は正しく喉奥へと亀頭が触れた。反射的に、お腹が竦み上がる。涎と先走りが溢れて、口の端から涎が垂れた。
ちょっと、まって。
あたしが、するから。
抗議をする暇もない。激しくはないけれど、優しくはもっとなかった。
もういいから。それならそれで、早く終わらせて。頭で思う以上に、体は素直だ。
唇をすぼませてみたり、熱い塊に舌を這わせてみたり。息苦しさに負けて息を吸い込むと、強すぎる律の匂いに頭がクラリとする。
白いことは、白いのか。
安い石鹸の匂い。いつも感じていたミルク色の雰囲気じゃない。
白く濁った色。エッチした後に漂う気だるげなあの匂いが、次第に強くなってくる。
出すの?
見上げた律の顔は、もう必死だった。
犬みたいに息を荒げて、必死に腰を振って。頭を抑えられたあたしは、受け入れるしか出来ない。使われちゃってる。胸の奥がチリチリとしていた。酷いと怒ってもいい場面なのに、強気に出れない。
被虐的な好奇心。
お尻を叩かれた時に感じた違和感の正体。
犬みたいなのは、あたしも一緒だった。
「けほっ!?」
咳き込む声と同時に、股間に熱が広がった。
飛び散って、ベタリ、張り付く。駆け上る快感を、止められない。何度も吹き上がっては、苦しそうな凪の声が聞こえてきた。最後の一瞬。腰が抜けて、ようやくだ。抜け出た途端に、吹き上がった精液が花びらを散らすように、彼女に降り注ぐ。
ゴクリ……。聞こえた音に耳を疑った。
苦しそうに息をつまらせながらも、凪の細い首筋が大きく動く。
ゴクリ、ゴクリ、ゴクリ……。指先に付いた花びらさえも舐め取って、ようやく。
「はぁ、っ……出しすぎ」
悪態は付いてみせても、瞳は潤んだまま。
恍惚とした溜息を吐き出して、僕を見上げた彼女は物欲しそうだった。
「ありがとう」
「ごめんね」
「えらいよ」
「がんばったね」
頭を撫でて、頬を擦る。
飲ませてしまった。飲んでくれた。
口から出る言葉は凪を気遣うものばかりなのに、心持ちは穏やかでいられない。
「……律?」
小首をかしげ、甘えるように。
触れた手のひらに、彼女は頬を擦り付ける。もっと褒めろか。もっと撫でろか。
あるいはどっちも。その仕草が、ますます僕を焚きつけた。
凪と仲良くなるまでは、全然気にもしなかったのに。
クラスで、学校で、誰が一番可愛いだとか。
踏み込んで言えば、もっと下世話な話。付き合いたい。それだけならまだしも、飛び交う言葉に凪の名前が上がる度、僕の心はささくれだった。
……ちっ。
舌打をしたのはいつ以来かな。凪の癖が移ったのかもしれない。
吐き捨てた苛立ちは自分に向かう。「僕の……」なんて口走っておきながら、好きな女の子一人守れない。不安だったんだ。飽きられるんじゃないかって、ほとんど八つ当たり。自信のなさを彼女のせいにして、僕は……。
首筋へ伸びた指が、首輪(チョーカー)へと触れる。
何を考えた訳じゃない。何も考えられなくなっただけ。
隙間に指先が入り込んだ瞬間、カッと乱暴な感情が燃え上がる。
指を掛けたまま首輪を引いて、凪を引き上げた。
ベッドが軋んで、小さな悲鳴が上がる。恨めしそうに僕を振り返った凪は、シーツをギュッと握りしめて、枕に顔を埋めてしまった。
何だよ……それ。
文句の一つも。なんなら、蹴り返されててもおかしくない。
うつ伏せになった凪は、何も言わない。ホットパンツに包まれたお尻が、丸みを帯びて浮き上がる。
窮屈そうだな。
すごく中身が詰まっていそうだ。
厚手の生地に押し込まれたお尻。締め付けられた太もものくびれは、いやでも肉感を思い描いてしまう。触れれば、張りがある。撫でると、手に吸い付いた。
グッ……
腰が、浮き上がりそうになる。
強引にホットパンツを引っ張られて、あたしはシーツにしがみついた。
「ちょっ、まってってっ律。くるしっ、ひっぱんなっ。ほんとに、脱ぐから、ベルトっ……はずさせっ!?」
それが、堪らない。これが、いい。
首輪(チョーカー)を引っ掛けられた時からもう、ネジが外れてしまった。
跪いて、ちんこ甜めて、飲んじゃった。お腹の奥から、律の匂いが立ち昇ってくる。濃くて、重いのが、まだ喉にへばり付いて、呼吸の度に むせ返りそう。
焦る指先は滑ってばかり。
ようやく指先がベルトを持ち上げた瞬間。下着と一緒に、ホットパンツがズリ降ろされた。足の間がやけに涼しい。恥ずかしさに太ももを寄せれば、内側がヌルリと滑る。
つぅっ……と、糸を引くような。
不埒な想像が頭を染めた。
見なくても、自分がどうなってるかなんて嫌でも分かってしまう。
ちょっと乱暴にされて、悦んでる。お尻を叩かれたときのことを思い出して、甘い痺れが蘇る。
「ひゃっ……」
一本、二本……触れる律の指先が、お尻を舐めた。
さっきまで乱暴だったのが嘘みたい。ゆっくり、やさしく、円を描いて、手のひらが下腹にまで滑り込む。
肩を竦ませ、腰を引く。
でもそれは、彼にお尻を差し出しただけだった。
つぷっ……と、指先が割れ目に沈み込む。でも、欲しかったのはコレじゃない。感じた違和感は、物足りなさに繋がっていた。
さっきまで、頬張ってたのに。
今だって、お尻に擦り付けられてるのに。
どうして?
もっとゴリゴリに削られたい。熱くて、固いのに、無茶苦茶にされたい。
律に犯されてる実感が欲しかった。彼のモノになりたい。彼をモノにしたい。
「あ、っ……胸、掴むなっ。つぶれちゃっ……ん♥」
胸を鷲掴みにされて、揉みしだかれる。
前戯の為じゃない。ただ、そこにあって、掴みやすそうだったからだ。抱き寄せられて、背筋が反り返る。艶めかしい律の吐息が、首筋に降り掛かった。
あたしが、彼を男にしてるんだ。
優越感もあった。ふだん振り回してる相手に手籠めにされる。悔しいのと、恥ずかしいので、気が狂いそう。いつもの仕返し、またお仕置きされるんだ。
律の指が割れ目を開く。先端が、何度もあたしを掠めた。
はやく……はやく……。
息は乱れて、気は急くばかり。
探られてる。挿りそうで、挿ってこない。
ポタリ……ポタポタ。割れ目から滴る雫の音が、遠くから聞こえてた。焦れて、焦れて、仕方がない。逃げていく先端を、追いかけたくなる。唇がワナワナと震えだし、自分を留めておくのも限界だった。
「はや、く……この体勢、きつい、んっ……から」
四つん這いとも言い切れない。
お腹と、胸を支えられて、遠吠えをする狼みたい。アゴを反らして上がった声は、想像に反して情けない。
「ぁっ……」
お腹を押されて、漏れただけのか細い悲鳴。
お腹の中を広げられ、焼け付くような違和感が宿る。溢れ出した愛液に、彼の興奮を冷まるどころか、いよいよと熱を上げて固くなった。
思っていたより、息苦しい。
お腹に溜まるほど飲んだ後なのに、なんでさっきよりも固いの。初めての時と比べても、変わらないどころかむしろ……。
あれ?
初めてって、そいや……ゴム。
「律、ちょっと、まっ……ぁぁぁっ♥」
生々しくて、艶めかしい。
ゾクゾクと、背筋を伝う甘い痺れに、あたしは言葉を見失う。
なにこれ。
なんだこれ。
蕩ける。
そうとしか言いようのない。
湯立つような快感に、頭が沸騰しそうだ。グツグツと煮えたぎって、すぐにも吐き出しそうになるのを必死に堪えた。
ヒダの一枚を押し開く度、圧縮された興奮が根本に溜まる。
ヒダの一枚を捲られる度、秘密を暴かれるみたいで堪らない。
分かってる。気づいてた。
一瞬、視線は重なって、だけど何も言えないまま。パンっと乾いた音に、葛藤が吹っ飛んだ。お尻を叩くように腰を打ち付け、お尻を叩かれたみたいに背筋が伸びる。
ベッドの上に崩れたあたしを、だけど律は離してくれない。
腰を抱えて、抱き寄せる。一秒だって凪から離れたくなかった。
沼に沈めるように、細い腰を押さえつける。奥へ、奥へ、何度も先端を押しやると、ザラリとした感触に纏わりつかれた。歯噛みして、もう何度も意識が飛びそうだ。快感の檻に囚われた僕は、獣と一緒だ。腰を動かすことしか頭にない。
出せ。
身勝手な欲望に、頭の中が静まり返った。
でも、それは……。躊躇いに動きが鈍る。それも一瞬、僕の目を覚まさせたのは、他の誰でもない凪の声だった。
「出せ……。出して、いいからっ。その、ままっ……。今やめたら、ゆるさなっ……ふぅっ、あぁ♥」
もうちょっと、可愛くおねだりしたかったのに。
りっちゃんの真似をしたつもりで、付け焼き刃じゃ上手くは出来ない。だけど、それでも。止まりかかった律の動きが戻る。「凪っ、なぎ……」何度も名前を呼んでくれて、その度に胸が熱くなった。
もう、何度イッたのかも分からない。
下腹に火が付いたかと思えば、キュゥっとなって、頭が濁る。
お尻を叩かれるみたいな衝撃の後、奥を突き上げられ、弓なりに体がしなった。パンっと弾ける快感を少しでも逃がそうとして、でも……。
女の子を組み敷いて、犯す。背徳感を孕んだ興奮に、息が詰まる。柔肉に絞られて、今にも射精しそうだ。なのに、出ていってくれない。あまりの興奮が邪魔をする。苛立ちをぶつけるように、凪の背中を抑えつけ、何度も……何度も何度も、腰を打ち付けた。
「んっ、ぐすっ……はっ、あっ。り、つ……あたし、また、また……あ、あ、あ、あっ____♥」
いつも強気な凪がさ。鼻を啜って泣いていた。
快感に声を焦がして、言葉をなくす。腰を引けない。力任せに締め付けられて、そのまま奥へ。
とんっ……。
思いの外柔らかい衝撃に、気持ちが緩む。
一番深い所で凪と繋がったその瞬間、僕の気持ちの全部が、洪水の様に溢れかえった。コレを愛情と言うには、苦い。我慢できなかっただけ。いくら凪が良いって言ったからって、僕が言った時とは事情が違う。
歯を食いしばっても堪えられない。
受け入れてもらえたことがあんまりに嬉しくて、涙が溢れる。
「……ごめん」
あやまんないでよ。
ポヤポヤとした頭の中で、律の泣き言を聞いていた。
なんだか悪いことをさせたみたい。良いって言ったのはあたしなんだから、素直にあたしで気持ちよくなってればいいのに。
お腹……重いな。
擦れたような熱さに、痛みが霞む。
随分激しくされたみたい。何度もイかされて、思うように体が動かせなかった。
もう一回。求められれば、もう抵抗すらも出来ない。オナホみたいに使われる自分を想像して、ちょっと浮ついてしまった。
「はぁ……」
大きく息を吐いて、気持ちを切り替える。
体を起こすのも億劫で、隅っこで縮こまっている律を呼びつけた。
「律、こっち」
「え、あ……うん」
手招きをしても、まだ足りない。
「ちっ」舌打をしてようやく、顔を覗き込んできた彼の頬を掴まえたあたしは、強引に唇を奪ってやった。
*******
昼休み。
謹慎開け直後ともなれば、まあ話題にもなる。
上級生を病院送りにしたという噂に尾ひれもつけば、尚更だ。怖がって遠巻きにされたり、面白がって話しかけられたり。
_何見てんの?
_いや、別に
送られてきたメッセージから目を逸らせば、教室の端から端へ、つまらなそうにスマホを弄る凪の背中があった。それにさっきから話しかけている男子は、なんだろう? 妙に必死で、漏れ聞こえてくる単語はあまり面白いものじゃない。
_妬いてんだ?
_悪い?
_あはっ♪ 素直じゃん。珍し。でもさ、勝手に話しかけてくんだよ? あたしにどーしろって?
からかうような返信は、まるで僕のことを試すようだ。
後で覚えてて。それでもいい、二人きりになれれば仕返しはいくらでも。だけど……それじゃ足りない。見てるところでもこんなに気分が悪いんだ。見えない所で、また凪に何かあったらと思うとどうにも落ち着かない。
「なぁ? いいだろ瀬戸? 試しにでいいからさ、俺と……あ、おいっ」
完全に無視。静かに席を立った凪は、カバンを持ってこっちへ来る。
で? 言葉はない。にっと唇を持ち上げて、視線で煽られる。同じように荷物をまとめた僕は、彼女を抱き寄せると、そっと頬へと口づけた。
「ちっ、ヘタレ。日和んなよ」
「いいでしょ。ほら、行くよ凪」
「はーい」
舌打はしても、頬は赤い。僕だってまともに彼女の顔を見られなかった。
手を引いて教室を出るのが精一杯。
「あーっ! りっつんが凪すけに唾つけてるぅ♪」
波多野さんの大げさな煽りを皮切りに、ザワリ……ザワザワと。どよめきに追いつかれる前に、二人で教室から逃げ出した。
「やーい、振られてやんのー。ざんねんしょー」
「うっせーぞ、波多野。なんで、秋月みたいなのが……俺でもよくないか?」
「そういうとこじゃね? あちきもノーサンキューですし?」
「こっちだってお呼びじゃねーよっ」
「やーい、やーい、振られまーん」
一週間くらい、これで煽られる。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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