せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~ 作:霧里
巨乳が好きなんだろうか?
毎日とは言わない。週に1回か2回。屋上の前の踊り場。瀬戸さんの秘密基地に僕は呼び出されていた。クラスの中では相変わらず。流石にもう教室でエロゲをやろうなんては思わないけど。その繋がりは今も緩く続いている。
僕が顔を出すなりスマホを奪い、女の子を取っ替え引っ替えだ。
突っつき回しては、胸を揺らして遊んでいる。いつかの自分をみているようで、ちょっと気恥ずかしい。その内に、気に入った女の子を見つけると、おもむろにエロシーンを再生し始めた。
「せめて、イヤホンしてくれない? 聞こえたら不味いって……」
「こんな所、誰も来ないでしょ?」
「気分の問題。僕が居た堪れなくなるから」
「はいはい」
渋々と瀬戸さんはイヤホンを耳に引っ掛けると、余った片方を僕の耳に押し込んできた。
「え、ちょっと」
「見ないの?」
「……えっと。じゃあ……みる、かな?」
距離が近い。ともすれば肩が触れ合ってしまいそう。
正直、画面なんてほとんど見ていなかった。視線の大半は、隣で笑う瀬戸さんで一杯だ。
耳に掛かった髪がハラリと解ける。苦いシトラスの香りが甘く漂った。
黒いチョーカーに締め付けられた首筋。白い肌と、項が際立つ。伸びてきた夕日が、鎖骨の影を浮かび上がらせた。光を透かす微かな産毛。白磁めいた丸みが陰影を帯びると、急に生々しく見えてしまう。
血が集まってくるのを止められない。少女の喘ぎ声が、熱を帯びてくれば尚更だ。
瀬戸さんとは似ても似つかない声なのに、すぐ隣で彼女が喘いでいるような気がして堪らなくなった。
視界の端が白く光る。
悲鳴にも似た嬌声を遮って「すけべ」ポツリと、瀬戸さんの声が割り込んできた。
返す言葉もない。慌てて視線をそらしても、瞼の裏には白い肌が焼き付いたまま。
胸元を押し下げる指先に誘われて、まんまと谷間を覗いてしまう。
「ゲームよりあたしの見たいんだ? こんなにおっぱい揺らしてたのに、見てもらえないなんて可哀想にねぇ……よしよーし♪」
悪戯に笑いながら、スマホの画面を突き回す。
情事の余韻はそこになく、繰り返されるセリフに、だんだん責められてるような気がしてきた。
「ねぇ、秋月。これって、課金とかしてんの?」
「まぁ、少しは……?」
「そっか」
歯切れ悪く頷いた瀬戸さんは、少し悩む素振りを見せた後。
「触ってみる?」
何を……言っている? 触るって、それは。
言ってる意味が分からなかった。違う。分かっていても、そんな訳無いと頭が理解を拒む。
「あ、それともパンツの方が見たいかな? どっちでもいいよ?」
「まって、まってっ。急に、なに? そういう からかい方は流石にっ。見ちゃった僕も悪かったけど」
「いや見るでしょ? 女子とエロゲーやってりゃ。まったく反応されないのも怖いわ」
それは、そうかもしれない。
だとしたら、僕は彼女に男扱いされてないのか。見られはしても、手は出されない。安全だと思われていることの裏返しは、決して信用じゃないはずだ。
「勘違いすんな? 秋月の趣味にただ乗りしてるのがモヤるだけ。帰りにバーガー奢れって言うなら、それでもいいけど?」
試されている。
でも何をだ?
手を出すのか、出さないのか。
正解が分からなかった。手を出せば友人としては終わるかもしれない。何もしないでも、それはそれで行き詰まるような気がする。今はただ、瀬戸さんの興味がエロゲに向いているだけ。気が変わってしまえばそれまでだ。彼女のことを何も知らないまま、僕には引き止めることも出来やしない。
「はい後3秒。沈黙は損だよ、あっきー♪」
理屈はいい。
正直、ちょっと苛ついた。
「さーん、にー……♪」調子のいい声に、眉根が寄ってしまう。
緩んだ胸元はそのままに、ヒラリとスカートの端が捲られる。白い太ももが眩しい。ゴクリと、飲み込んだ生唾が乾いた喉に張り付いた。勘違いしてるのは瀬戸さんの方だ。そんな風に煽られたら僕だって……。
「うはっ。こっちきたっ♪」
正しいよ、瀬戸さんは。僕にはコレが限界だ。
柔らかさに飲まれる。指が固まったまま動かない。手の中に感触を、どう処理したらいいか分からなかった。きっと、ゲームの中の彼なら違うんだろう。
このまま押し倒すことだってきっと。現に、そういうシチュエーションもあったはずだ。
「感想は?」
「うっ……あ。やわら、かい……です」
「あはははっ♪ 素直かよ。もうちょっとなんかさぁ……いひひひっ♪」
笑われても仕方なかった。怒られなかっただけ、良かったかもしれない。
気が緩んだのか、少しずつ指が動くようになっていた。自分でも気づかないくらい、ほんのちょっと。
手触りの良いブラウスの感触に指が滑った。胸を包むブラの固さも分かるようになる。手のひらを打つ鼓動が近い。じわっと、肌が汗ばんだ。空気が湿り気を帯びていくにつれ、段々と大胆に。
「……いつまで触ってんの?」
そんなの、いつまでもだ。押し倒すような覚悟はなくても、手放すにはあんまり惜しい。白いブラウスにシワが寄る。衣擦れの音が、指の隙間を通り抜けていく。重いんだ。ゲームと一番違うのはそこだった。
持ち上げて、落とす。
ブラの中で窮屈そうに弾む。
薄い布地をかき集めるように、刻んだシワの深みにハマる。
「ちょっと……」止める声も聞こえない。引っ張られたボタンが とうとう弾けて、薄青いブラの色が顔をだした。
「ぇ、ぁ……」
氷のように冷たい青。のぼせていた頭がようやく冷える。
変にからかってきた瀬戸さんが悪い。それは今も変わらない。少し脅かしても、やり返さないと気が済まなかったのはそう。
だとしても……
流石に、これは……
端から見たら、僕が彼女を襲ってるようにしか見えないんじゃないか?
「ごめんっ……」
慌てて離れようとして、逆に手首を掴まれた。
瀬戸さんの目が細くなる。それが、狙いを定めた狼に見えて、肌がゾワリと波打った。マウンティング。その時点で勝敗はついていたんだろう。
寄りかかってきた彼女を押し返そうとして、胸の膨らみに指が沈み込む。「んっ……」微かに喉が鳴るのを聞いて、心臓が飛び出しそうになった。
「じゃあ、やり返してもいいんだよね?」
生温かい吐息が、首筋に吹きかかる。
情けない。悲鳴を飲み込むのがやっと。驚いた拍子に手が掛かり、耳からイヤホンが弾け飛んだ。探るようにズボンの上を弄られ、指先が先端を引っ掛けた。
「お、なんかヌルヌルしてる? え、もう出たの?」
「いや、ちが……それ、はっ」
「ああ、我慢汁ってやつか……」
興味深そうに頷かれてしまった。
瀬戸さんの影に隠れながら、固まったまま動けない。食い入るように谷間を見つめて、下着の色に頭を冷やされる。
痛いほど、勃起してた。
撫でられたそばから甘く痺れて、気が遠くなっていく。滲み出した先走りが、ズボンに染み渡るのも時間の問題だ。いい子、いい子、冷やかすように。円を描いた指先に、つい甘えたくなる。
「いいよ? だしちゃえ♪」
手招く声に総毛立った。羞恥と興奮が、引き結んだ唇から溢れ出る。
辛い、出したい。でも、こんな所で果ててしまうのは……。僕にだって意地はある。
なけなしのプライドを掻き集めながら、頭の中では財布の中身を心配させられた。
「その代わり。帰りにバーガー奢ってね?」
「ちょっ、そんな……急に言われてもっ」
「なら、我慢すればいいじゃん。ゆ、う、しゃ、さ、ま♪」
敵わない。瀬戸さんにとっての勇者さまは、世界を救うヒーローなんかじゃなくて、早漏の代名詞だ。僕だって、もうそんな長くは持たないだろう。
「んっ……はぁ。あ、あたしアレが良いな。新作のさぁ……ふぅっ」
瀬戸さんの声が微かに揺れる。喋っていなければ、きっと分からなかった。
手のひらを打つ鼓動も大きくなって、薄っすらと頬に紅が差す。このまま続けていればあるいは、彼女のほうが先に果ててくれるんじゃないか? 下腹に力を込めなおして、胸への愛撫を再開する。
お互い、完全に止めどきを見失っていた。
吐息は熱を上げていく。口数はだんだんと少なくなった。もう、どっちが降参するまで終われない。薄く開いた瀬戸さんの唇から、甘いオレンジジュースの香りがする。引き寄せられるように顔を寄せて、僕たちは初めての……。そんな微かな希望を吹き消したのは、ただの時間切れ。
下校を告げるチャイムの音だった。